タイトル:【虐観察】 お腹の声
ファイル:お腹の声.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1505 レス数:6
初投稿日時:2023/08/18-23:03:44修正日時:2023/08/18-23:03:44
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「デッデロゲ~デッデロゲ~♪」
一匹の実装石が胎教の歌を歌う。
時期は真夏だが初めての妊娠に実装石は大きな喜びを持っていた。
場所は家の裏手。日中の殆どは日陰になっている上にエアコンの排水によって水には困らず餌も近場のゴミステーションから取ってくれば良いので公園よりも遥かに安全だ。
自前のダンボールハウスにも備蓄がたっぷりと用意してあるのでなんの心配もない。
「ここは安全ご飯もいっぱい楽しい楽しい生涯が送れるデス~♪」
ここを見つけるまでの苦難をすっかり忘れ能天気な歌詞を続けていく。
それに続いて親実装にしか聞こえない微かな声が返ってくる。
「早くお外出たいテフ~」
「ご飯食べてみたいテフ」
「オネチャ達と遊びたいテフ~」
「ポカポカお昼寝楽しみテフ!」
腹の中から我が子達が楽しそうに言葉を返してくる。
なんとこの親仔は既に会話が出来るのだった。
否、実装石の仔は胎教によって大きく性格が変わると言われている。ならばそれは胎内の仔が親の言葉を聞き、理解しているということであり、ならば逆に親が仔の言葉を聞けるというのも大多数の実装石が気付いていないだけでごく自然なことなのかもしれない。
「もうすぐデスゥ。もうすぐみんなで楽しいことが始まるデスゥ~」
だがそんな歌も唐突に終わりを告げた。
突然人間の男が現れたのだ。
「デデェ!?」
あまりに突然の事態に親実装も悲鳴をあげて立ち上がる。
家の裏手には自分の建てたダンボールハウス以外にはもう随分と開けられていない物置とクーラーの室外機しかない。そんな場所に人間が現れるなど全くの予想外だった。
「まさかと思ったがこんな処にいやがったのか…!下手くそな歌でイラつかせやがって…!」
しかもその形相は実装石から見ても怒り一色に染まっており馬鹿な糞蟲でもなければすぐさま身の危険が迫っていることを分からせるようなものだった。
彼の部屋は親実装のいる場所と壁一枚隔てた先であり、連日の胎教の歌も響いていた。
今まではすぐに静かになるだろうと多めに見ていたがついに堪忍袋の緒が切切れたというわけだ。
「勝手に住み着いたのは謝るデスッ!でも今まで通り迷惑は掛けないデスッ!どうかそっとしておいてほしいデス!」
リンガルが無いため意思疏通は出来ていないが必死になって頭を下げる親実装。
人間を相手にしても勝つ見込みはない。なにより自分は今妊娠中だ。相手が誰であれ争い事は是が非でも避けたいことだった。
「だりゃっ!」
だがそんな願いもむなしく人間の爪先が親実装の右顔面へと突き刺さった。
「デギャッ!?」
一瞬宙を舞う親実装。その一秒にも満たぬ空中浮遊の直後、その後頭部は室外機に激突し頭蓋骨の一部が粉砕され脳の一部が潰れて地面へとしゃがみこむような体制で痙攣を始めた。
「ったく、ダンボールまで持ち込みやがって。俺が戻ってくるまでに消えてろよな!」
親実装の状態を確認することもなく男は家へと戻っていった……。

「レギャァァァ!」
「テビェビェェェェ!」
「許してテフ!許してテフゥ!」
「ママァァァァァ!」
15分ほどした後、親実装はどこからともなく響く仔実装の悲鳴で目を覚ました。
「デッ!?デッチャァァァ………!」
目を覚ますと同時にうずくまる。
顔の右半分と後頭部がすごく痛い。ずぐさま動き出すのは無理だ。しかも姿勢を変えたと同時に臭ってくる悪臭がより気分を悪くする。
痛みに耐えて目を開けてみれば莫大量の糞が詰まったパンツが見えた。
悪臭の原因は自身の漏らした糞だったのだ。
「デヤッアァァァァァァ!」
たまらず軋む体を起こして臭いを避ける。
ここに移り住んでからは食料も豊富であり糞など全く食べていなかった。野良なりに裕福な生活に慣れきった親実装に糞の臭いはあまりに強烈だった。
嘔吐しそうになるのを必死で耐える。
そして余裕が出てきた頃に再び周囲に耳を傾けた。
「やめテフ!ママやめテフゥゥ!」
「ワタチ達なにもしてないテッフゥゥゥゥゥ!」
「ワタチの身体がなくなっちゃうテフゥゥァァ!」
「死んじゃうテフ!死んじゃうテフゥゥ!」
「デデェ!?」
なんと悲鳴は腹の中から響いてきていた。
そこで親実装は思い至った。
しまった!さっきニンゲンに蹴られたときに血か何かで目の色が変わったんだ!
実装石は両目が緑で妊娠、赤で出産へと移行する。
もし仮にそのどちらかの状態の時に目の色が普段通りになってしまったら身体は仔を捨て通常通りに消化しようとする。このままでは自分がお腹の仔を溶かしてしまう。
「デズ…デズゥゥゥゥ!」
軋む身体に鞭打って立ち上がる。
なんとかしなければ。なんとかしなければ。
親実装の頭の中はその詞だけがぐるぐると周り必死に歩き始めた。
糞がたっぷりと詰まったパンツが地面を擦って歩きにくい。だが今の親実装にはパンツを脱ぎ捨てるとか、糞を右目に塗りたくって両緑目にするとかの発想は浮かんでこなかった。
こんななにもない場所では駄目だ。とにかく外へ、外へ出て目を戻す方法を探さなければ!
その一心でL字クランクになっている道を進み家の表へと出ようとする。
「テヒジィィィィ!」
「ママァァァァァ!」
「あづい!あづいテジャァァァァァァァ!」
「テ…ベ……………(パキン」
今こうしている間にも消化が進み一匹が死んだらしい。
声からしてもう一匹も諦めるしかないだろうが仔実装達は腹のあちこちに粘膜と共に張り付いており高いところにいる者はまだ平気だろう。
しかし猶予が無いことは親実装もひしひしと感じていた。
「急ぐデス…急ぐデ…デ…?」
外へ出る直前に親実装は見つけた。
目を緑に戻す方法ではない。それは大きめのガラス片だった。
ガラス片は少し曇っているが親実装の姿を写し出す。その姿に親実装は愕然とした。
「デ、デ、デ…デデデデデデデデギャァァァァァァァァァァァ!!!」
痛みも忘れて自分の顔をペタペタと触る親実装。
無い。無い無い無い無い!ワタシの顔半分が、右目が無い!
男が蹴ったのは偶然にも親実装の右目でありそれを即座に破裂させていた。
更には眼球が納まっていた穴、眼窩はもろともに砕けており、皮膚も裂傷と弛みで目が嵌まっていた場所が何処にあるのかすら分からない。
妊娠は両方の目が同じ色でないと成立しない。それは片目が潰れていても同じことだ。
「デギャァァァァ!待つデズゥゥゥゥ!」
待て、待て待て待て待て待て!これでは仔を助けられないではないか。
こんなの間違ってる。折角授かった仔供達を自分の身体が殺すなんて間違ってる!
なおも慌てる親実装は必死になってパンツを脱ぎ捨て中に溜まっていた多量の糞を顔面に擦り付け、その中へとダイブする。
「デボヴェェェェェェェェ!!」
あまりの臭さに悲鳴を上げてのたうち周り全身を汚すがなんの効果も得られない。
その間にも実装石の旺盛な胃袋は仔実装の消化を続けるばかりで勢いが全く衰える様子がない。
それどころか僅かばかりだが開いた口へと糞が飛び込み胃酸の嵩増しまでしてしまっていた。
更には実装石は恐怖から糞を生成する習性も災いした。
胃袋に何も入っていなくても糞を生成可能な酵素が存在するがこの親実装の腹には仔供達という栄養豊富な肉の塊が入っておりこれ幸いと糞への変換を加速させていく。
「テジャァァァァァァァ!ママに食べられるテチィィィィ!」
「ワタチを食べヘベェェェェ…(パキン」
「何してるテフゥゥゥゥゥァァァ!早くワタチを助けろクズ親ぁぁぁぁぁ……!(パキン」
「ママは糞ママテフゥゥ!」
次々死んでいく仔実装達。その言葉に親実装の動きがピタリと止まる。
「ママは…糞蟲デス…?」
「糞蟲テフゥゥ!!生まれる前の仔供を喰う糞蟲!糞蟲!糞蟲!糞むっテボボボボボボ……………(パキン」
最後の仔が消化されて糞として排出される。
親実装はただ呆然と立ち尽くしていた。
不意に自分の母親が口癖のように幾度も告げていた教えが脳裏をよぎる。
糞蟲にだけは絶対になるな。糞蟲は家族を崩壊させ全てを不幸にする。仔に糞蟲がいたら即座に間引け。でなければ他の仔も全員死ぬことになる。例外は絶対に無い。
それが母親に教えられた絶対の決まりだった。
事実そんな母親が死んだのは糞蟲の四女がもっと旨い餌を献上しろとニンゲンサンに糞を投げつけたのが原因だった。
運良く早々に仮死状態になった自分を除いて家族は全滅した。
この事からも糞蟲は生きていてはいけないというのを嫌というほど味わい、自らもそのような振る舞いはすまいと常に律してきた。
そんな自分が糞蟲。そう腹の中の仔に言われたのだ。
「デギャァァァァァァァァァァ!アアァァァァァァァァァァ!!!」
親実装は力の限り泣いた。
家族の最後の生き残りとして自分が仔をなし次代へと繋いでいく。そんな使命を持ち、仔実装一匹でありながら成体になるまで生き延び、仔を授かり、後少しで本懐を果たそうとした。そんな自分が糞蟲。
自分が糞蟲だから家族は死んだのだろう。自分が糞蟲だから仔供達を消化したのだろう。自分が糞蟲だから幸せになどなれず周囲を巻き込み不幸になるのだろう。
そんな絶望の雄叫びだった。
普通ならストレス死するような多大な負荷だったが、栄養状態が良かった為か偽石も簡単には割れない。
だがそれもその分長く苦しむだけであり、その責め苦すら自身が糞蟲だから与えられた罰のように感じていた。
「てめぇ…まだいるだけじゃなく糞までしやがって…!」
その姿を見た男は地獄の鬼もかくやという形相で実装石を睨み付ける。
手には棍棒の代わりに細い角材が握られ、その姿はまさしく鬼だ。
「うるっせぇ!」
大泣きする実装石の口へと角材が滑り込み、後頭部へと貫通する。
「デゴ…ベギャ………ヂ…」
痛みと絶望で泣くことも叶わなくなった実装石は百舌鳥のはやにえのように壁へと立て掛けられ、無惨な姿を晒すことになった。
「ワダッ…ワダヒ…クヒョム……みん…ふこ…デベ……」
実装石が死んだのはその三日後の事だった。

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1 Re: Name:匿名石 2023/08/19-03:48:42 No:00007808[申告]
うーん見事すぎる不幸ぶり
実装石の生涯なんてのはこうでなくちゃね!
2 Re: Name:匿名石 2023/08/19-06:30:52 No:00007809[申告]
胎児すら親を呪うのエグい…
面白かったです
3 Re: Name:匿名石 2023/08/19-07:15:28 No:00007810[申告]
胎教の歌なんて人間には騒音、胎仔には大概呪いみたいなもん
ニンゲンの棲家裏でずっと歌ってれば結果そりゃそうなるし呪詛返しの通り糞蟲だったって事だね
4 Re: Name:匿名石 2023/08/19-15:26:18 No:00007811[申告]
そもそも何でその過去があるのに人間の家に巣を作ったのか
5 Re: Name:匿名石 2023/09/08-05:50:57 No:00007945[申告]
公園に住んでいれば…
6 Re: Name:匿名石 2024/04/12-14:55:57 No:00009012[申告]
お腹の中からすげーしゃべるな
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