タイトル:【観察虐】 とりんさまを使用して書きました。初スク
ファイル:箱入り仔実装.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:2726 レス数:18
初投稿日時:2023/05/18-02:32:07修正日時:2023/10/16-19:02:10
←戻る↓レスへ飛ぶ

あるところに、優しい飼い主と賢いペット実装石がいました。
このペット実装石は、何世代にもわたり、愛玩用に徹底的に改良された品種でした。
彼女たちは、産まれる前から出荷するまで、工場で厳重に管理、調教され、
飼い主に従順で賢く愛情深く、忠実な個体に仕上げられていました。
優しい飼い主はそんなペット実装石を大層気に入っており、家族のようにかわいがっていました。
ある日、飼い主はペット実装石に言いました。

「ミドリ、仔実装は欲しくないかい?」
「……デッ!?デデッ、デッスーン」

ペット実装石は飼い主の許可なく仔を産むことは絶対に許されません。
ペット実装石の出産には飼い主の許可が必要だったのです。
しかし、飼い主はこのペット実装石を家族のように思っていました。
そのため、ペット実装石が望むなら、仔実装を産ませてやっても良いと考えたのです。

「デス!デェスッ!」

ペット実装石は喜びの感情を露わにしました。
彼女は飼い主が大好きでしたが、品種改良を重ねてもなお残る実装石の本能として、
自分の仔を産みたいという欲求もあったからです。

ペット実装石の意志を尊重した飼い主は、さっそくペット実装石用の妊娠目薬を用意することにしました。
本来、実装石は花粉などで妊娠しますが、ペット用に品種改良につぐ改良を重ねられたペット実装石は、
専用の薬剤でしか妊娠することができません。
また、この薬剤は副作用が比較的少なく、安全性が他社の製品と比べて高いことも特徴です。

「デッデロゲ~、デッデロゲ~♪デデロデッデロゲ~♪」

妊娠中のペット実装石の母胎の中でも、通常の実装石と同じように5~6匹の蛆実装が蠢いています。
胎教の歌を聴きながら、かわいいウジちゃん達が、スクスクと成長しています。
しかし、ペット用に遺伝子改造につぐ改造を重ねられたペット実装石は、一度に一匹しか仔を産みません。
消費者のニーズに合わせた品種改良と遺伝子改造の果てに、彼女たちの繁殖能力は著しく低下させられました。
もちろん、このペット実装石の母胎の中でも、通常の実装石と同じように5~6匹の蛆実装が蠢いています。
どのウジちゃんも、ママのおウタを聞きながら、未来への夢と希望に胸を膨らませているはずです。
そして一匹目が出産されると、残ったウジちゃん達の目の前で総排泄肛と未来が閉じて、
あとはママのお腹の中でゆっくり溶けて、いなくなります。

なので実際に産まれてくるのは、一匹だけなのです。

そして三日後、ペット実装石は無事に一匹の仔を出産することができました。テッテレ~!
産まれたばかりの蛆実装の粘膜を優しく舐めとり、無事、髪と手足が伸びた仔実装を抱き上げると、
親実装はとても幸せそうな表情を見せました。

「テチュテチュ、テッチュ~ン!」

仔実装が、親実装の腕の中で嬉しそうにはしゃいでいます。

「デェス……デッスゥ……!」

親実装も、夢にまで見た我が仔の誕生に涙を流して感動していました。

「良かったね、ミドリ。無事、元気な仔を産んでくれて嬉しいよ」

飼い主も、まるで自分のことのように喜んでいました。
しかし、幸せなのはここまででした。

「テチュ!テチュテチュ!テッチュー!」

まだ、歯も生えていない産まれたての仔実装が、いきなり飼い主を奴隷呼ばわりして、
スシステーキコンペイトウを寄越せと要求してきたのです。

「デデェッ!?デース!?」

いくら品種改良を施されたペット実装石でも、どうしても一定数のエラー品が発生することがあります。
それがまさに今、飼い主と親実装の前に現れたのです。

「テッチャー!テチュテチュ!……テッチューン♪」

さらに、自分に相応しいアワアワのお風呂とフリフリなお洋服と遊びきれない程のオモチャをさっさと用意しろと,
プリプリと怒りながら、プリプリとパンコンしました。

「……ミドリ、残念だけど、この仔はちょっと……」
「……デエェ……」

こうして、飼い主は、いらない仔を処分することにしました。
しかし、それでも親実装にとっては初めて産んだ愛しい我が仔。
なんとかして、命だけでも救おうとしました。

「デスッ!デデスデス、デース!!」

必死に懇願する親実装を見て、飼い主は少しかわいそうになりました。

「……しょうがないなぁ、じゃあ、こうしよう。
三日だけ時間をあげるから、それまでにお前が責任をもって躾けなさい」
「……デス?デスデス!」
「もし、三日間の間に矯正できなかったら、この仔は捨てるからね」

飼い主の言葉に、親実装は一瞬戸惑いましたが、すぐに決心しました。

「デスデスデス!デエエエエエエスッ!」

親実装は、こんな仔にも恩情を与えてくれている優しい飼い主にむくいるためにも、
絶対にこの仔を立派なペット実装に育ててみせると決意しました。

「テ?……テチャ!テッチャアアァーーー!」

仔実装は、飼い主とママがよく分からない話をしているけど、
そんな事よりセレブな自分に奉仕しろと、わめき散らします。

こうして親実装は、なんとか愛しい我が仔を生かしたい一心で、
一生懸命に仔実装を躾けることにしました。
親実装は、可愛い我が仔がカナシイコトにならないように、
優しくトイレの使い方を教え、優しく言葉遣いを教え、優しくマナーを教え、
そして、精一杯の愛情を伝えました。

飼い主は、期待しながら結果を待っていました。
飼い主としても、大切なペット実装の仔を捨てずにすむなら、それにこしたことはないのです。
この三日間、ミドリがつきっきりで、仔実装の躾と世話をしているので、
少しはマシになっているだろうと思っていました。
ミドリのような優秀なペット実装とはいかなくても、せめてトイレだけでも覚えてくれていたら、
それだけでも良いと思っていました。
それどころか、便意を口頭で伝えれる程度の改善が見られたらヨシとさえ思っていました。
すると、そこに現れたのは、なんとも立派に育った仔実装でした。

「テチュッ!テチャッ!テッチャー!」

飼い主の姿を見るなり、糞を投げつけます。

「おやおや、これはまたずいぶんと……」

仔実装はこの三日間で、気に食わない事があれば泣き叫んで糞を撒き散らせば、
ママが優しくあやしてくれるという事を学んだのでした。
そして、自分によく分からない要求を突き付けてきた、
この生意気なクソニンゲンに糞を投げつけて反省させてやるのだと息巻いています。
仔実装の投擲力では飼い主のいるところまで糞は届かず、仔実装の周囲が糞まみれになるだけでしたが、
仔実装の知能では物事の因果関係が上手く理解できません。
飼い主と親実装が何を言っても、ただ「テチュ!テチュ!」と糞を投げ返すだけで、
相手が何を言ってるのか理解しようとすらしません。
クソニンゲンとママが、「それじゃあ、残念だけど約束どおり……」「デェ……デスー」と何か話してますが、
仔実装には関係ありません。

「テチュッ!テチャッ!テッチュー!」

親実装は、我が仔のあまりの成長ぶりに涙を流しながら、仔実装に何かを訴えていました。

「テチュ!テチュ!テッチュ~ン♪……チププププ♪」

仔実装はそれを、親から褒められていると勘違いし、ますます調子に乗って糞を投げ続けました。
そして満足したので、いつものようにママに抱っこして撫でて貰おうと親実装に飛びつきました。

「テッチュテチューン♪」

ところが、親実装はそんな仔実装を両手で捕まえると、そのままトボトボとケージの中へ戻っていきました。
飼い主との協議の結果、やはりこの仔を飼うことはできないという結論に至ったからです。
親実装は、飼い主の恩情により最後に仔実装を寝かしつけるまで待ってもらえたことを、
感謝しながら我が仔と寝床に潜り込みました。

「テチャ……?テチュ!テチュ!」

仔実装は、いつもみたいに自分の頭をナデナデしてあやしてくれないママにプリプリと怒りましたが、
ママの横であたたかいフワフワに包まれていると、すぐに眠くなってきました。

「……テェ……テチャ……テピ~……」

あしたもいっぱいママに甘えて、いっぱい遊んで、いっぱい食べて、いっぱいウンチして、
もっともっとシアワセになるテチュ……。
そう考えながら、仔実装は夢の世界に旅立っていったのでした────。






「……テチュ……?」

────暗闇の中、寒さで身を震わせながら仔実装は目を覚ました。
隣にいるはずのママがいない。不安に思って起き上がり、あたりを見回す。

「テチャッ!?」

ママを呼ぶが返事は無い。
それどころか、寝る時に包まれていたはずの暖かいフワフワも消え失せていた。
寒い、とても寒かった。

「テヒィィイイイッ!」

思わず声が裏返ってしまうほど、寒くてたまらなかった。

ここは公園の片隅、ゴミ箱の陰に隠れるような場所。
そこに仔実装は捨てられた。
いや、正確には遺棄されていたというべきか。
ダンボール箱に詰められ、蓋を閉められたため、
一見すると不法投棄されたゴミにしか見えなかったからだ。
その中には生まれて間もない仔実装が入っている。
幸いにも、この公園の野良実装は駆除済みで、周囲に他の個体はいない。
しかし、12月も半ばを過ぎたこの時期に、
立地が悪く遊具も殆どないこの小さな公園に来る物好きな人間もいなかった。

「テチャアアァァァーーーッ!!テッチャアァァーーーーーッ!!」

ダンボールの中で仔実装は泣きわめく。
ママの愛情をいっぱいに受け、ワガママ放題に育ってきた仔実装にとって、
今の状況はまったく理解できなかった。
暖房の効いた暖かい部屋と、親の愛情しか知らない仔実装にとって、
産まれて初めて体験する身を切るような寒さに、暗闇と孤独。
この世に、ウンチをガマンしろと言われる事よりつらい事があるなんて、
仔実装は思いもよらなかった。

(ママァーーーッ!!はやく来るテチュ!ここはさむいテチュ!まっくらテチュ!コワイテチァー!!)

常に親の庇護の元にあった仔実装にとって、
一匹で暗闇の中に閉じ込められるというのは想像を絶する恐怖だった。
足元はフカフカのカーペットではなく固いダンボール。
大好きなママどころか、あのクソニンゲンすらいない。
あるのは冷たく固い床と暗闇だけ。
暗闇の中、不安と恐怖に突き動かされて闇雲に走りだすと、
ゴツンと固い壁に頭をぶつけてしまった。

「テッヂャアアアアアアッ!?」

あまりの痛みに、再び悲鳴をあげてしまう。
ここはどこなのか、なぜ自分の隣にママがいないのか、
仔実装は何も分からないまま、とにかく痛くて怖くて泣き続けた。

「テエェエーーン!テエェーーン!」

しかし、状況は何一つ変わらない。

(可愛いワタチがこんなに泣いてるのに、なんでママがこないテチュ!?)

幸せになるために産まれてきたはずの自分が、何故こんな目に合うのか、
仔実装あまりにも理不尽な状況に憤りを感じ始めていた。

「テチャアァアー!テッチャアアァーーッ!!」

いくら泣いてもママが来ない。
それどころか、自分を探しにくる気配すらない。
自分が泣きわめけば、すぐにママがやってきてあやしてくれるはずだった。
それが当たり前だと思っていたし、疑いもしなかった。
産まれてからの三日間、そうやって生きてきたのだから、
それは当然の事だと仔実装は思っていた。

「チャァ!テチャッ!!…………テェ?」

ところがおかしなことに、今回に限っては一向にママが来ない。

(かわいいワタチが、こんなにもつらい目にあっているというのに、
どうしてママがまだ来ないテチャ!?)

仔実装は、プリプリと怒りのパンコンをして、周囲に糞を撒き散らし始めた。

「テッチャーッ!テチュッ!テッチュー!」

糞を撒き散らかす事で、ママに迎えに来てもらおうと考えたのだ。
泣きわめいてダメでも、糞を投げていれば、ママはすぐに飛んでくるはず。

(チププププ……♪これ以上ウンチ投げられたくなかったら、早く来るテチュ!)

仔実装は、ママが自分の糞を嫌がっている事を理解していた。
なので、こうして糞を投げて脅してやればすぐに飛んできて、
自分を抱き上げてくれるだろうと高をくくっていたのだ。
それなのに────

「……テ?」

いくら糞を投げ散らかしても、ママは来なかった。
いつもなら、すぐにママが駆けつけて、糞と涙を拭ってくれて、
優しく抱っこしておっぱいを飲ませてくれるはずなのに……。

「…………テチャアァ!テヂャアアァーーッ!!」

寒くて暗い箱の中で一匹で放置され続ける恐怖。
ママがすぐに来てくれるはずなのに来ない現実。
仔実装は癇癪を起こし、何度も何度も暗闇にむかって糞を投げ散らかした────。



「テェエエン……!テェェエン……!」

この光の差さないダンボールの牢獄に閉じ込められて、すでに半日が経過していた。
泣いてもダメ。糞を投げてもダメ。四方の壁は冷たく固く、天井にも手が届かない。
仔実装にはもう、打つ手が無くなっていた。

「……テヂャァアアアッ!……ママッ!ママァッ!」

どんなに呼んでも、どんなに泣いても、どんなに糞を投げ散らかしても、ママは来てくれない。
床一面、自分の糞と涙でグチャグチャになっていた。

「テチャッ……テチャアアァァァアアッ!!!!」

臭くて、悲しくて、寂しくて、どうしようもなく腹が立った。
自分は何も悪くないのに、どうしてこんな目に遭うのか!
親と飼い主の庇護のもとで、寒さも空腹も知らずに育ってきた仔実装にとって、
この扱いは耐え難いものだった。

(サムいテチュ!おなかへったテチュ!ママのおっぱい飲みたいテチュ……!)

空腹に耐えかねて自分の糞を食べようとしたが、あまりの不味さに嘔吐してしまった。
飼い実装の仔として産まれ、親の甘い乳と、もっと甘い流動食しか口にした事のなかった仔実装にとって、
初めて感じた強烈な苦みだった。

(マズイテチャアッ!!こんなの絶対食べれないテチャッ!!
…………かわいいワタチがこんなに苦しんでいるのに、どうしてママがまだ来ないんテチャアッ!!)

仔実装は、ダンボールの底でプリプリと脱糞しながら、イゴイゴと泣いているうちに、
いつの間にか意識を失っていた。



つぎに仔実装が気付いたとき、そこには、いつも通り隣にママがいて優しく抱きしめてくれていた。
仔実装は、さっきまでの事は、悪い夢だったんだと思った。
あの、辛く恐ろしい夢からやっと解放されたのかと思うと、嬉しくてたまらなくなった。
ママに愛された特別な存在であるはずの自分が、暗くて寒い箱の中で糞まみれになるなんて、
なんて酷い夢を見たんだろう。

「テッチュ~ン♪チュワァ~~♪」

甘えた声を出してママの胸に顔を埋める。
フワフワした感触が心地よいが、さっきまで見ていた怖い夢のせいで、身体の震えが止まらない。

「ママ!ワタチこわい夢をみたテチュッ!ママに助けてほしかったテチュッ!」

ママの大きな手が仔実装を優しく撫でてくれる。
嬉しくてたまらなくなり、甘えた声を出しながら身をすり寄せると、いつものママの匂いがした気がした。
安心する。もう寂しくないし、怖くない。けれど、身体の震えはまだ止まらない。

「ワタチ、くらくてせまくてコワイところに一匹だけで閉じ込められて、
もう二度とママに会えないと思ったテチュ……!」

ママの胸に顔をうずめて甘える仔実装。
辛く苦しい思いをしたが、今はママがいるからもう大丈夫。
怖い夢のせいで、身体の震えが止まらないから、いつも以上にママに甘えよう。

「でも、おきたら、ちゃんとママがいたテチャ!
だからきっと、ワタチはこれからもママといっしょテチュ!」

そう言って仔実装は嬉しそうに笑う。
親実装はそんな仔を愛おしそうに抱きしめていた。

「テッチュ~ン♪」

仔は幸せそうに目を細めて安堵した。悪夢は終わったんだ。
今日もあったかいお部屋でママにいっぱい甘えて、お腹いっぱいミルクを飲んで、楽しく遊んで、
疲れたらフワフワのベッドで眠るのだ。
そんな幸せな日常に戻ったはずなのに、いつまで経っても身体の震えが止まらない……。



「……テ?」

ふと気づくとそこは変わらず真っ暗な空間だった。

(テェ……?ママはどこテチュ?)

見回してみるものの誰もいない。
あるのは底冷えする固いダンボールの床と、全身にこびり付く自分の糞だけだ。

(……なんでワタチがこんなところにいるんテチュ?ママは!?フワフワは!?アマアマは!?)

しばらく茫然としていた仔実装だったが、幸せな夢は終わり、
悪夢のような現実が再び戻ってきたことにやがて気づいた。
こびり付いた糞の水分が、気化しながら体温を奪っていく。

「……テチャアァァァァアアアアア!!チュワァアアアアアアンッ!!!」

仔実装は泣いた。
今までにないほど大きな声で泣くことで、
今度こそ悪夢から目覚めたかったのかもしれない。

(ママ!ワタチはここテチッ!早く、早く助けテチィイイイッ!!)

無力な仔実装には泣く事と糞を垂れ流す事しか出来なかったので、とにかくひたすら泣いて脱糞した。
そのまま、一時間近く泣き続け、糞も涙も枯れ果てて、ようやく少し冷静さを取り戻した。
しかし、冷静になったところで状況は何も変わらない。
仔実装は、小さくうずくまって、飢えと寒さと孤独と不安に圧し潰されそうになりながら
一晩中ガタガタと震え続けていた……。



二日目も、仔実装は暗い箱の中で親を待ち続けた。
飢えと寒さには慣れない仔実装だったが、暗闇はあまり恐れなくなっていた。

暗闇の先に何かがいるかもしれない、という想像をするだけの知能がないので、あまり恐怖を感じないのだ。
しかもこの仔実装は、知能が低すぎたおかげで、自分が親に捨てられたのかもしれない、
という可能性を考えることも出来なかった。
さらに、想像力が足りないおかげで、絶望的な未来を想像することも出来ず、
精神的な擬石の崩壊から免れていた。
絶望出来るほどの高度な精神構造を持ち合わせていなかったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
仔実装が考えていた事は、ひとつだけである。

(おなかすいたテチュ……)

昨日から何も食べていない仔実装は、飢餓状態だった。
怒りに任せて、胃や腸の中の消化物を全て排泄しきったせいで、ただお腹が鳴るだけだった。
空腹のあまり吐き気がしてきたが、吐くものも無いので、ただひたすら耐えるしかなかった。

(アマアマたべたいテチュ……おっぱい飲みたいテチュゥ……)

餓えというのは、本当に辛いものだと仔実装は知った。
これまでは、ママのおっぱいをたらふく飲み、アマアマなデザートまで貰って、
満腹になり幸せな気持ちで眠っていたのだ。
それが当たり前だと思っていたため、
何も食べられないということがここまで苦痛を伴うものだとは知らなかった。

(はやくママに会いたいテチ……)

ママの柔らかい胸の感触を思い出すと涙が出そうになる。
しかし、今の仔実装が口に出来そうなものは糞しかない。
空腹のあまり身体に力が入らなくなり、ただじっとうずくまってガタガタと震えているしかなかった。
そのせいもあってか、精神的にも追い詰められていた仔実装は、
ついに我慢が出来なくなり、目の前の糞に口を付ける事にした。
仔実装の小さな手で恐る恐る糞を掬って口に入れてみるが、あまりに不味くて吐き出してしまう。

「ヂッ、ヂゲェエエェッ!……テヂァッ!!」

この仔実装は、ペット実装として品種改良をされ続けてきた個体の仔である。
ペット実装に求められる知能や性格の良さは受け継がなかったが、
食糞に対する忌避感と嫌悪感は改造された遺伝子に刷り込まれていた。
本能的に身体が拒絶反応を起こしてしまっていたのだった。
それでも、このままでは餓死してしまうと思い、もう一度だけチャレンジしてみたのだが、
やはり耐えられず吐いてしまった。

「テェェェェン……グシュッ……」

何故か、涙と鼻水が止まらなくなって、何度も袖で拭ったが、
次から次へと溢れ出してくるのでキリがなかった。
泣きながら鼻をすすっているうちに、なんだか頭がボーッとしてきて、
そのまま気絶するように眠ってしまった……。



三日目は、さらに状況が悪化した。
本格的な冬が近づき、うっすらと雪まで降ってきたようだ。

(さっ、さむいテチュゥウウッ!!)

仔実装は、寒くて寒くて仕方がなかった。
空腹も忘れて、ガチガチと歯を鳴らしながら震えていた。
産まれてまだ六日しか経っていない仔実装の実装服は、
保温性がまったくないと言っていいほど薄い。
しかも、その半生を過酷な環境で栄養を一切取れないまま過ごしてきたため、
仔実装同様、実装服もボロボロになっていたのである。

「テェェッン……テピィィ……」

あまりの寒さに全身が震えてうまく鳴き声を出すことすらできない状態だ。
少しでも暖かくしようとダンボールの中で限界まで小さく丸くなるが、
それでも寒くて震えるばかりだ。

(もう、サムイサムイはイヤテチュ……!
ヌクヌクでフワフワのおふとんでねたいテチュ……!ママ……ママァーーー!!)

寒さに耐えるためギュッと目をつぶると、まぶたの裏にある光景が浮かんだ。
それは自分の寝床でママと一緒に眠っている風景だ。
いつも自分を温かく迎え入れてくれたママの記憶を思い出しながら目を閉じると、
少しだけ安心できたような気がした。

(ママといっしょにねたいテチュ……あったかいおふとんでいっしょにおねんねするテチュ……!)

仔実装は、最後の力を振り絞るように、自分の身体を抱きしめるようにして縮こまっていた。
そして、かじかんだ手で必死に身体を擦るとある事に気づいた。
低反発ウレタンのような柔らかいクッション性があったはずの自分の身体が、
まるで劣化してヒビ割れたゴムタイヤのようにガチガチになっている!

「テッ、テチャア!?」

プリプリおはだの、まんまるかわいい仔実装であるはずの自分が、見る影もなく痩せ細り、
シワとヒビ割れだらけになっていた事を知り愕然とする。

「テヒッ!?テヒィィイイイ!!」

そんな自分の身体に気づいてショックを受けたせいか、
それとも極度のストレスによる擬石崩壊の前兆なのか、
仔実装はまるで狂ったかのようにその場でジタバタと暴れ始めた。

「テチャアアァァアッ!!テチャッ!テヂャァッ!!」

喉が裂けるほどの大声をあげてママを呼ぶも、
その声はダンボールの中で虚しく反響を繰り返すだけ。

「テヂャアアアアァッ!ヂィイイィィッ!」

仔実装は気付いていなかったが、絶叫しながらイゴイゴと全身を床に擦りつける度に、
栄養不足で弱った毛根からプチプチと髪が抜けていく。

(こんなのウソテチッ!カワイイワタチのぷりちーぼでぃガ、
こんなコトになってるワケないデチュォオオオオッ!!)

パニックに陥った仔実装は、醜くガリガリになった自分の惨状を認めたくなくて、更に激しく暴れる。
その度にプチプチと髪が抜け落ち、ビリビリと実装服も破れていくのだが、
本人はそんな事にも気付かないほど錯乱していた。
しかし、衰弱した身体は言うことを聞かないようで、全ての髪を擦り切り、
服もパンツもボロボロに擦り切った頃には、ぐったりとしてしまう。

「テェ……テェ……テチャァ……」

全ての体力を使い果たして、ハゲハダカになった仔実装は、そのまま意識を失ってしまった……。



そして、誰も助けにこないまま、四日目の朝が来た。

「……テ…………テヒュー……」

暗闇の中、ガリガリに痩せ細った仔実装は、より粘度を増した汚物の中で、弱々しい呼吸をしている。
仔実装は、ほとんど身動きできないほどに衰弱していた。

「テッ……テヒュ……テチャ……ァー……!」

それでも助けを求める声はやまなかった。
たとえ蚊の鳴くようなか細い声であっても、ママに届くと信じているのだろう。
ママが可愛い自分を見捨てるはずがない!絶対に助けに来てくれるはずだ!!と信じて疑わない。

(ママ……早くワタチを起こしテチュ……これは悪い夢テチュ……
ホントのワタチは、あったかいおウチで、アマアマとヌクヌクでシアワセいっぱいのはずテチュ……
だから早く起こしてほしいテチュ……)

すでに声も枯れて、鳴き声を出す力も殆ど残っていない。
仔実装の意識は妄想と現実の間を行ったり来たりしている状態だった。

(…………テッチュ~ン♪ワタチもママ大好きテチュ~!もっとナデナデしてほしいテチュ~ン♪)

仔実装は妄想の中で、大好きなママに抱きしめられている幸せな気分に浸りながら、意識を手放した。
このまま何もなければ、遠からず仔実装の命は尽きるだろう。
飢えか、寒さか、あるいはどこからともなくやってくる野良実装に食われるか。
いずれにしろ、この仔実装はもう助からないだろう。
せめてもの救いは、幸せな妄想の中に浸って死ねることだろうか。
誰もがそう思った、しかしその時────



「ヂ……?」

気のせいだろうか? それとも誰かが近くにいるのだろうか? 
かすかに近づいてくる足音で、仔実装は現実に引き戻された。

(やっと……やっと、ママがワタチを迎えに来たテチュ……?)

間違いない、誰かいる! きっとママだ!ママがやっとワタチを助けに来たんだ!
枯れた喉で力いっぱい鳴き叫ぶ。自分はここにいると、精一杯の鳴き声をあげる。

「テッ……テヂャアッ!!テヂャアアァー!!テヂャアアアアアアッ!!」

ママァーッ!!ワタチはここにいるよ!ワタチを早く助けて!
そして、いつものように優しく抱っこして!
喉が裂け、血を吐きながら、命の限り泣き叫ぶ。
そんな、仔実装の必死の叫びに応えるように、
ダンボールの蓋がゆっくりと開いていく。

「ヂャッ!!テヂャッ!!テヂャアーーーーーッ!!!」

ああ!やっぱりママだ!迎えに来てくれたんだ! ついにここから出られる!
嬉しさのあまり、涙があふれる。希望の光が悪夢を切り裂き、近づいてくる!

「テッ!テヂャ……ッ!テェエエエンッ!!テェエエエーーーンッ!!」

もう大丈夫なんだ、もう安心なんだ!ここは暗くて怖くて寂しかった!
死んじゃうかと思った!!でも、やっとママが来てくれた!!
今度こそ本当に、いっぱい甘えて、いっぱい抱っこしてもらって、いっぱい可愛がってもらうんだ!
大好きなママの胸の中まであとちょっと、もうちょっと、もう少しで届く!! 
仔実装は思わず手を伸ばす!
しかし、その手がママに届くことはなかった。

「……テ……チャ……?」

目の前の光景に呆然となる仔実装。

(ママじゃない……? )

何故なら、目の前にいたのはママではなく、見知らぬニンゲンだったからだ。
それも今まで見た事もないくらいの巨大なニンゲンだ。
まるで小山のような体格のニンゲンが、自分をじっと見下ろしている。

「……………………テェエエエエッ!!?」

────仔実装の前に、ゴミ収集作業員がやって来たのだった!



「テッヂャアアアアアァァーーーーーッ!!!」

仔実装はダンボールの中で必死に鳴きわめく。
やっとママが助けに来てくれたと思ったら、そこにいたのは大きな知らないニンゲンだった!
怖い顔のニンゲンが、ジロリとこちらを見下ろしていた!

「まったく、こんなところに仔実装なんか捨てられたら、迷惑なんだよなぁ……」

男はブツブツとぼやきながら、仔実装の入った段ボールの蓋を閉める。
そしてガムテープを貼ると、それを軽々と持ち上げてしまった。

(テヂャッ!?)

仔実装はそれどころではない。
男の独り言を聞いて、ようやく仔実装は理解した。

(捨てられ……?ワタチ、捨てられテヂュ!?!?)

自分がママに捨てられたという事を。
捨てられてしまったのだという悲しい現実やっと理解した。

「テェェエエエーーン!!テヂャアアーーっ!!」

仔実装は大声で泣き叫んだ。
ウソだ!あの優しいママがカワイイワタチを捨てたりするはずがない!
信じていたものがガラガラと音を立てて崩れていくようだった。

「ヂィッ!!ヂギャアアアアアァァァーーーッ!!」

あまりのショックで混乱してしまい、まともに思考が働かない。
いや、そもそも仔実装には最初からまともな思考能力などなかったのだが……。

「うるせえなぁ……静かにしてくれよ」

男は面倒くさそうに言うと、乱暴にダンボールを揺すった。

(ヂギュウゥウッ!!)

狭いダンボールの中で激しく揺さぶられて目が回る。
恐怖と絶望のあまりのたうち回る仔実装だが、
そんな事はお構いなしに荷物のように運ばれていく。


作業員が、ガチャンガチャンと音を立てて、ゴミ収集車に荷物を放り込んでいく。
その中には、仔実装が入っていたダンボールもあった。
彼が開封して確認したところ箱の中は糞塗れで、
ガリガリに瘦せこけた汚らしい禿裸の仔実装一匹しか入っていなかったので、
そのまま捨ててしまうことにしたのだ。
通常は、ダンボールは資源ゴミ、実装石は実装ゴミとして髪と服を分別して回収するのだが、
これはすでに仔実装に汚染されていたので、まとめて可燃ゴミ扱いとした。
ゴミ収集車がガタガタと揺れるたびに、小さな身体があちこちにぶつかって痛いが、
そんな事を気にする余裕はなかった。

(イタイテチュぅぅううっ!!ワタチをどこへ連れてくつもりなんテチャァアアァッ!?)

そして、ちょうど赤信号で停止した時、潰れかけたダンボールの僅かな隙間から外が見えた。

(テチャアアアアアアアアアアアアッッ!!?!?)

そこには、飼い主だった人間とママだったペット実装石が楽しそうに散歩している姿があった。
ママは両手で見知らぬ小さな仔実装を抱き抱えていた。
その表情はとても優しくて、愛情に満ちているように見える。
その小さな仔実装も、嬉しそうにママの胸に抱かれて甘えているように見える。

(誰テチュ!!ソイツ誰テチャァッ!!こそはワタチの場所テチャァアアァーッ!!!
ママァーッ!!ワタチはここデチィイイッ!!!)

仔実装の悲痛な叫びをよそに、飼い主とペット実装親子は仲睦まじい様子で去っていく。

(イヤテチュ!行かないでテチュ!ワタチも一緒に連れて行ってデチュ!
ママ、置いていかないデチャァアアァーッ!!)

いくら叫んでも、どんなに手を伸ばしても届かない。

(出してっ!!ここから出しテチイイイイィッ!!ワタチはママに会うんテチャアァァアァッ!!)

悲痛な叫び声がダンボールの中に響いたが、その声は誰の耳にも届かない。

(イヤデチュ!コワイデチュ!もう独りはイヤデチュ!ママァーッ!!早くワタチを助けデチィイイッ!!!)

捨てられた仔実装は、当然自分が棄てられていることなど知らない。
やがて二人の姿が見えなくなってしまい、仔実装は一人取り残される。

(ママーーー!!マ゛マ゛ァーーーーーーッ!!!テヂャアアアアアアアァァァアアアーーーーーーッ!!!)

ひとりぼっちの仔実装の叫びが響き渡る中、無情にもゴミ収集車はどこかへと進んでいく。
仔実装には、そのガタガタとどこかに運ばれている感覚が、何故かどうしようもなく恐ろしかった。



そこから先の仔実装の記憶はあやふやである。
ただはっきりしているのは、やっとゴミ収集車が止まったというだけ。

「チャア……テチャァア……」

ここはどこなのか、自分はこれからどうなるのか、何一つわからなかった。
なぜ、ママは自分ではなく見知らぬ仔実装を抱っこしていたのか。
なぜ、自分は独りぼっちでこんなにつらい思いをしているのか。
どうして、ママは迎えに来てくれなかったのか。

(ママはウソつきテチュ……ワタチは幸せになるために産まれてきたって言ってたテチュ……
幸せにするって約束してたテチュ……でも違ったデチュ……ママはワタチが嫌いなんテチャァア……!)

結局、自分もママにとってはただのゴミでしかなかったのだ。
そのことを悟った時、仔実装の中で何かが壊れた。

(許さないテチュ……!!絶対に許さないテヂャアアァッ!!ワタチを捨てテチャァアアアァッッ!!
ワタチはずっといい仔だったテチィイイッッ!!それなのにどうして捨てたデチィイイッッ!!
捨てるくらいなら最初から産まなければよかったんテヂャアアアァアーッ!!)

現実を受け入れることを止めた仔実装は、訳のわからない怒りの感情に身を委ねる。

(ここから出してデチィイイィッ!!出せテチャアーーッ!!殺してやるテチャアアアーーーッ!!)

すでに仔実装の中では親実装は、優しいママではなく、
自分を捨てた悪魔だという認識になってしまっていた。

「テチャァアアアーッ!!ヂィイィイッ!!」

ダンボールの中からけたたましく鳴きわめきながら、ガリガリに瘦せた身体でもがく仔実装。

「ったく、うるせえなぁ!」

その時、ゴミ収集車から男が出てきて、仔実装の入ったダンボールを放り捨てた。

「ヂィッ!?ヂァアアアアアッッ!!」

突然の出来事に、ダンボールの中で短い手足を精一杯バタつかせて抵抗するが、何の意味も無い。
そうこうしているうちにも、ゴミピットにゴミがどんどん投棄されていく。

「テヂャッ!ヂィアッ!テヂャアアアアァーッッ!」

仔実装も、全身をダンボールに何度も打ち付けられながらゴミピット転がり落ちていく。

(痛いテチャァアアッ!もうグルグルは嫌テチイイィ……ッ!助けて欲しいテチィイイ……!!)

そして、仔実装を入れたダンボールは転がり落ち、集積されたゴミの山にぶつかり、
大きくひしゃげて動きを止めた。

「テチャアアァァッ!?」

その衝撃で、ダンボールが壊れて、仔実装はゴミの海に放り出される。

「テエェ……チャア……」

仔実装は、呆けたようにあたりを見回す。
そこに広がっていたのは、薄暗い室内にうずたかく積まれたゴミの山。
そして、起き上がろうとした仔実装の全身に激痛が走る。

(痛いテチィッ!嫌なんテチ!ワタチのおててが……テヂャァアアッッ!!)

仔実装は悲鳴を上げてのたうち回ろうとして、
自分の手足がまともに動かない事に気がついた。

「テ……ッヂャァァアアアーーーーーーーーッッッ!!!?」

仔実装の手足は落下の衝撃で、弾け飛んでいた。

(テヂィイイッ!?どうしてワタチのおててが、あんよがないテヂャアアアァッ!?)

パニックになった仔実装は訳も分からないまま、
失った手足をジタバタ動かそうとするが、動くはずもない。

(テェエ……テチャアァアア……!?これは夢テチャ……?
ワタチのおてては……?ワタチのあんよはどうなってるテチュ?)

仔実装の小さな手足は、冷たいゴミの上にベチャリと投げ出されていた。

「テチャッ!テチィッ!テチャァアアァーーーッ!!」

自分の身体を恐る恐る確認する。
幸せを掴むためにあるはずの、ちっちゃくて可愛いおててが、どこに行ったのかわからない。
夢を追いかけるためにあるはずの、ぷくぷくのあんよは、どこへ行ったのだろう。
そこにいるのは、ガリガリに瘦せこけた頭と胴体だけの蛆蟲だった。

「チュワアァアーーーッ!?ヂゥィーーッ!!ヂィィーーーッ!!」

現実を受け入れられない仔実装は、ゴミの中で狂ったように鳴き喚く。

(テチャアアァァーーーーーッ!!ワタチのおててとあんよはどこテチィイイイイーーーーーッ!!)

仔実装はもがくようにゴミの上を這って行く。
しかし、手足の無い矮小な体ではろくに移動できるわけもない。
ガリガリの身体をどれだけ必死に動かしても、数センチ移動できたかどうかだ。

「ヂュワーッ!!ヂィギャアアアァアアーーーーーーッ!!テチュューーーーッ!!」

ガリガリの身体を震わせ、ゴミに埋まって絶叫する。
その上に、ゴミピット内のゴミを回収するクレーンの腕が伸びてきた。
仔実装は為す術もなく、クレーンに捕まって持ち上げられていく。

(テチャアアアァーーーーーッ!!何テチッ!?怖いテチィイイィイッ!!
ワタチをどこ連れて行くテチィイイイーーーーーーッ!?)

クレーンが、焼却炉の入り口となるゴミホッパーの方へゆっくり移動していく。
ダンボールを出たものの、状況がまるで理解できていない仔実装。
焼却炉の扉にたどり着くと、扉がガラガラと音を立ててスライドし開く。
そして焼却炉の入り口の縁にまで来た時、

「テヂャアアアァアアアァァーーーーーーーーッ!?」

たまらず悲鳴を上げる。

(ヂュワアアアアァアアーーーーッ!!熱いデチィイイィーーッ!!痛いデチィイイィーーーーッ!!)

焼却炉の入り口から噴き出した熱が、仔実装の小さな身体を容赦なく灼いた。

(苦しいデチィイイィイイッ!!痛いデチュゥウウーーーーッ!!助けテチイイィイイーーーーッ!!)

助けを求めるが、その願いが叶うことは無い。
クレーンが、焼却炉の中に仔実装を放り込む。

「ヂギェアアァッ!!テヂャッ!ヂビャアアアァアッ!!デチャァアアアアァァーーーーーーッ!!」

目まぐるしく変わる視界と全身を灼く熱に混乱をきたし、わけも分からず泣き叫ぶ。
床は火格子という、ゴミを炉に押し出す、ベルトコンベアのような機構になっている。

(熱いデチュ!ワタチ、死んじゃうテチィイイーーーーーーッ!!)

わけが分からないが、前方に致命的な熱を感じてなんとか逃げようともがく。
手足の無い身体で蛆蟲のように這って逃げようとする。

「ヂギャッ!ヂュアッ……ギァアアァッ……ピャアアァアアーーーーーーッ!!」

しかし、仔実装の必死の抵抗は火格子がゴミを押し出す力にすぐに抗えなくなっていく。

(ヂワアアアァァーーッ!死にたくないテチュゥウウーーッ!
ワタチは幸せになるために産まれたんテチィイイィイッ!!
こんな所で死んでたまるかテチィイイィッ!ワタチはまだやりたい事がいっぱいあるんテチュゥウウウーーッ!!)

そんな事を考えたって無駄なことは、
炉に放り込まれようとしている仔実装本人が一番分かっている。
だがそれでも、死の恐怖から逃避しようと無駄なことを考えるしかなかった。
そんなささやかな抵抗さえも許さないとでも言うように、炉にグングン近づいている。

(ヂィイイアアアッ!熱いテヂィイイーーッ!
痛いデヂィイイイーーッ!!ワタチが燃えてるデチィイイーーーーッ!)

すでに視界の全てが、真っ赤に埋め尽くされた。
そこはまさに焦熱地獄、仔実装の意識が一瞬ごとにバラバラになっていく。

(ワタチが……可愛いワタチが死んじゃうテチィイイィイーーッ!!
ワタチがいったい何をしたって言うテチャアァァーーーーッ!?)

事ここに至って、ようやく自分の状況と死の運命を理解した仔実装。
彼女の偽石が、確定した死の苦痛とストレスを少しでも和らげようと、
幸せだった記憶の残滓を流し込む。
この世に産まれてきた喜び、美味しい物をたくさん食べた事、おっぱいを好きなだけ飲んだ事、
大好きだった親にいっぱい甘えて幸せだったこと。

「ヂィイイイイッ!!ヂギュゥウウゥゥッ!チギャアアァァアァーーーーーーッッ!!」

そして、偽石の見せる幸せだった記憶の残滓もすでに仔実装にとっては憎悪の対象となり果てており、
それらを見るたびに苦痛が増す。

(よくもワタチを捨てやがったテチャァアァァッ!よくもワタチを裏切ったヂュアアアァァッ!
ヂィギャアアァアァアアーーーーッ!!)

すでに胴体部分は炭化しており、仔実装の頭部も焼けていく。

(ヂクショォオオオオォッ!!呪ってテチィイイィィィッ!!
ワタチを苦しめた全員、呪われて永遠に不幸になれェエェエーーーーッ!!)

偽石の記憶と憎悪だけで、辛うじて意識を保っている仔実装は、
炭化し眼球が剝き出しになった眼を見開いて絶叫する。

「ヂッ……ヂギィッ!ヂギャアアアアアアアアアアーーーーーーーッ!!!」

断末魔の悲鳴と共に、ポンッと飛び出た眼球が、
炉の中でカラカラと音を立て転がり回り、それもすぐに灰になった。

こうして仔実装は、誰に惜しまれることも無く、燃え尽き灰になり、
青いお空に上らないように集塵装置によって適切に取り除かれ、環境に優しく処理されていきました。

めでたし、めでたし。





****************


読みにくいとの指摘を頂いたので、改行を増やしてみました。
あと仔実装を燃やしておきました。

■感想(またはスクの続き)を投稿する
名前:
コメント:
画像ファイル:
削除キー:スクの続きを追加
スパムチェック:スパム防止のため8190を入力してください
1 Re: Name:匿名石 2023/05/18-03:40:16 No:00007176[申告]
面白かったデス
できれば無惨に潰されるか焼かれるところまで
書いてほしかったデス
2 Re: Name:匿名石 2023/05/18-04:48:47 No:00007177[申告]
虐待派からしたら糞蟲が何日も苦しんで死ぬのはウェルカムだけど
飼い主も自分が愛護派の自覚あるならその辺に捨てずに実装ゴミに出してサクッと死ねるようにしてあげればいいのにな
あと作業員さんナイスアシスト!
3 Re: Name:匿名石 2023/05/18-05:56:57 No:00007178[申告]
糞蟲以下の超絶ハズレ仔実装過ぎて嘲笑も悲哀もない
とっとと〆てちゃっちゃと捨てるのがコイツの為だったんだろうなぁ…野良でも真っ先に脱落する個体だし
間引き容認しそうな飼い主なので、出産時早い者勝ち選定タイプじゃないペット実装だったら親実装も良かったのにね(当然この仔実装の居場所はどこにも無い)
4 Re: Name:匿名石 2023/05/18-09:57:29 No:00007185[申告]
餌すら入れてないあたり糞蟲は出来る限り苦しめて処分するタイプの飼い主なんだろうな
5 Re: Name:匿名石 2023/05/18-10:46:22 No:00007186[申告]
公園に捨てられたのに他の野良にも食われず4日も生きられるなんて糞蟲として生まれたのに望外の幸福を貰ったんだね。
6 Re: Name:匿名医師 2023/05/18-11:54:17 No:00007188[申告]
一行の長さを短めにしてください
7 Re: Name:匿名医師 2023/05/18-12:06:15 No:00007189[申告]
ブラウザでは読みにくいのでtxtを落としてエディタで読みました

読み応えあり!

でも、生体を段ボールに入れて公園に捨てるのは違法ですよ?
スクにもコンプライアンスを(なんちゃって)

四肢を斬り落とし、腹を割き、眼を潰し、親の目の前であらゆる責め苦を与えてからパキンさせて、細切れにして燃えるゴミの日に出す筋でも読みたいです
8 Re: Name:匿名医師 2023/05/18-12:10:07 No:00007190[申告]
残念ながら、このゴミ収集車はただのトラックのようです
パッカーで段ボールごとぐちゃぐちゃに潰される瞬間の仔実装の醜態も読みたかったですね
でも、出来れば自らこの仔実装を八つ裂きにしたいです
9 Re: Name:匿名石 2023/05/18-23:55:02 No:00007192[申告]
より愛情深い親なら仔だけを捨てるわけにはいかない
わたしも野良になって一緒に・・・というストーリーもありうるのか
10 Re: Name:匿名石 2023/05/24-03:33:57 No:00007217[申告]
糞蟲じゃあ飼えないから仕方無いねえなるべくしてなったお話デスね
11 Re: Name:匿名石 2023/05/30-17:01:57 No:00007250[申告]
最後まで自分の行為に一切の反省無しなのがガチの糞蟲で笑う
こんなん野良でも間引きで食い殺されて死ぬ奴じゃん
12 Re: Name:匿名石 2023/06/30-17:30:31 No:00007395[申告]
間引きされた仔実装のゴミらしいありきたりな死に様を見てみたいそう思わせる名作
13 Re: Name:匿名石 2023/10/17-10:21:18 No:00008123[申告]
死ぬまで無駄にしぶとくて好き
14 Re: Name:匿名石 2023/10/19-22:41:59 No:00008136[申告]
壮絶な死に様でした
短い生の最期まで醜さを貫いた立派な糞蟲
15 Re: Name:匿名石 2023/12/16-01:15:15 No:00008533[申告]
名作の部類に入るスクデスゥ
16 Re: Name:匿名石 2023/12/17-15:07:39 No:00008540[申告]
加筆されてる!
糞虫にふさわしい末路ご馳走様でした
17 Re: Name:匿名石 2023/12/17-22:50:57 No:00008541[申告]
灰すら残さぬ苛烈な末路がガッツリ加筆されてて有難い
誰にも必要とされない糞蟲以下の廃棄物に相応しい最後だった
18 Re: Name:匿名石 2024/03/24-22:42:34 No:00008947[申告]
>「デッデロゲ~、デッデロゲ~♪デデロデッデロゲ~♪」
「なんでだろ~♪なんでだろ~♪なんでだなんでだろ~♪」のリズムで脳内再生された
戻る