タイトル:【観察】 実装石親子、山に捨てられる(お山で起きた一晩の話)
ファイル:実装石親子、山に捨てられる.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:893 レス数:10
初投稿日時:2023/03/12-04:09:16修正日時:2023/03/16-13:09:52
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どのジャンルか分からなかったから観察にしたデスゥ


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ある実装石が山を必死に歩いている。

数は1.2.3…蛆もいれると6匹だろう。

およそ似つかわしくないピンクの服を着て汗だくで歩いていた。

何故この親子は飼いのようの格好をして山を歩いているのか。

親子は、飼い主に少し行った先で待ってるよと言われ必死に向かっているのだ。

クルマで適当なところで降ろされて…。

こうなったのも元々は躾をされてきちんと言う事を聞く実装石だったのだが、案の定仔を生み愛情が仔に向いてしまう。

段々と増長して、ついにはワタシの家だ出ていけと糞を投げる。

怒った飼い主は、公園へと捨てようとするのだが…中途半端に頭の良かった親がきっちり全員連れて生還してしまった。

…本当いうとたまたま公園にいた愛護派に見つかり、外し忘れたタグ付き首輪にあった住所等が原因だが…。

普通なら「言う事聞くデス!ごめんなさいデス…」となろうものがすぐに連れて帰ってこられた為ますます増長し始める。

飼い主はそこで、もっと遠くへと離れた山へと捨てたのだった…。


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『ママ、本当にドレイニンゲン何処行ったんテチ…?』

『本当テチ…可愛いワタチタチを歩かせるなんて”シケイ”テチ…』


胎教と親の間違った愛情によって完全なる糞蟲個体になってしまっている長女と次女。

実装石の足で山道は、想像以上に苦しむ形になる。

昼に捨てられたのだがもう日が暮れ始めている、だが捨てられた場所からさほど離れてはいなかった。

汗だくになっている長女と次女、もちろん親も汗だくになっている。

 
 『デェェ…デェ…あのドレイは…オウチに帰ったら教育し直しデス…』


ゼイゼイ言いながら親実装…マーガレットとタグの付いた実装石が悪態をついた。

マーガレットの頭の中では昔受けた躾と呼ばれる教育を思い出している。

それぞれのお出かけ用の小さな肩掛けバックに入ったフードもすでに尽きている。

仔実装達の服があるのもまだ増長する前のマーガレットが、言う事を聞くいい個体だったので買ってあげたのだ。

まさかここまでとは飼い主も予想だにしなかっただろう。

飼い主もマーガレットも「仔を生むと不幸になる」という事を信じなかった結果である、よくある事だ。


『テェェ…?ママ!あそこに何かあるテチ!』


その時姉妹の間でも比較的頭の働く3女が何かを見つける。

疲れ果てている親子が3女が指す方向を見やる。

…そこには洞窟があった、少し道から外れた洞窟。


『ほ、本当デス! 三女チャン!よく見つけたデス!』


一家の目に希望が灯る、人間にとってはなんて事無い距離だったが実装石には死地への道であっただろう。

ちなみに姉妹には名前は無い、つける前に増長したマーガレットのせいである。

希望に満ちた一家は、汗を必死に拭い今晩の宿と決めた洞窟へと足を進めた。


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『やっと着いたデスゥ…絶対ドレイニンゲン殴って糞つけて殺すデス…』

『賛成テチ…ママの強さを思い知らせるテチュ…』


ゼイゼイと息を切らせ入口へとたどり着く。

すでに日は暮れている、だが今日は月の光が強くやけに明るい夜だった。


『…ママ、夜ってこんな明るかったテチ…?』


四女が、ママに呟く。

生まれてこんなに明るい夜があったとは知らなかった、山の中という慣れない場所もありなんだが怖い。

疲れていたが不安がる四女、実は四女だけ糞蟲個体では無かった。

だが気の弱い臆病な四女は、飼い主に歯向かう親子の後ろで、飼い主の顔が恐ろしいものになっているのに唯一気づいていた。

なんでママ達は優しいニンゲンサンに悪口を言うのだろうか…そんな事を思っていたが口に出したら怒られる。

きっと飼い主にもそれに気づかず捨てられた四女は不幸だったろう、飼い主に飼う気がまだあったらだが。

四女は蛆のお世話役でもある、腕に抱いた蛆も怖がり四女の胸に顔を向けて震えていた。


『それはきっとワタシタチを出迎えてるんデス~セレブなワタシ達が来たんデス、当たり前デスゥ!』


マーガレットが胸を張り少々イラつきながら四女に言う。

四女はマーガレットの態度を見て、それ以上言及するのを止めた。

洞窟の奥はなんだか暗い、マーガレットの後ろに隠れる姉妹。

だがマーガレットは得意げにバックから何かを出した。

すると若干だが洞窟が手前くらいは明るくなった、バックに入っていた100均に売っているライトであった。


『ママ!すごいテチ!魔法使いテチ!?』

『明るいテチ!これで怖くないテチィ!』


長女と次女がすごいすごいと騒ぎ出す、マーガレットは腰に手をやりどうだとばかりにふんぞり返る。


『さぁ、夜だからもうお外は危ないデス…今夜はここで休むデスゥ』


そう言ってマーガレットを先頭に服を掴んで仔実装達も続くのだった。


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そんな洞窟から少し離れたところに同じく赤と緑に光るものがある。

…2匹の実装石、一方は成体、もう一方は仔実装のようだ。

洞窟の前にいるマーガレット達を見つめている。


『… …ママあいつら入っちゃうテチ』

『…滅多にニンゲンが来ないここで来たと思ったらこれデスゥ…しかもよりによって…』

『ママどうするテチ…?』


ママと呼ばれた実装石がため息をついた。

仔実装が心配そうに親実装に顔を向けて聞く。

しかし親実装はなんて事の無い顔をしている。


『どうするも何も無いデス…オオババ様から見張っておけと言われただけデス。』

『でもあいつらあそこに入っちゃうテチ? 今日はあそこは…』


仔実装が最後まで言い切る前に親実装が口の前に手をやり、もういいとばかりに首を振る。

2匹はこのお山の山実装と呼ばれる個体だった。

滅多に人の来ないこのお山に昔から住んでいる、2匹はオオババと呼ばれるリーダーのような個体から人間が入ってきたから悪さをしないかと見張りに駆りだされた。

…悪さとは別の意味もあった、よりによって”今日”に人間が来て、しかも飼われている同族を残していくとは…。


『いいんデス、ワタシ達に迷惑かけないかどうかオオババ様は見張れと言ったんデス
 あそこに入ったなら…”代わり”になるだけデス』

『テェェェ…どうなるんテチ…?』


そう問いかけた仔実装は体を震わせている。

親がそれに気づき、仔に近づいて抱き寄せ頭を撫でる。


『心配ないデス、ワタシ達はきちんとこの日の為に用意したから何もされないデス』

『本当テチ…?』

『本当デス…さぁ一度皆のところに帰るデス』


そう言って親実装は我が子と手を繋ぎ、草木の奥に消えていった。


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『ママ?奥に何かあるデス』

『デェ…?デェ!すごいデス!ご馳走デスゥ~ン♪』


入り口に入り、奥を照らすとそこには山のように積まれた木の実や果物、まだ動いている川魚や鳥…そして山の動物達が横たわっている。

お腹を空かせた一家はそこに疲れも忘れて走り出す。

そして空腹を満たすように果物を口にする…。


『…!ウマウマデスゥーーン!こんなウマウマのドレイニンゲンが持ってきた事無いデス!』

『これも見た事ないテチ!ウマウマテチィ♪』

『ママ!これも食べれるテチ?』

生の川魚や動物をまだ余り見た事無かった仔実装達には食べれるかどうかの判断がつかなかった。

まだ新鮮に跳ねている魚を掴み、マーガレットが一口齧る。


『これもウマウマデスゥ!…ドレイニンゲンはこんなウマウマのがあるのを隠してたデスゥ…帰ったら躾するデス』


その言葉を聞いて魚にも飛びつく仔実装達。

1匹の川魚に4匹が食らいつく。

そして今まで味わった事の無いその肉の旨味に感激をし、次へ次へと貪り始めた。


『イモウトチャ、これウマウマテチ、一緒に食べるテチ♪』

『オネエチャありがとうレフ~♪』


先程まで怖がっていた四女と蛆も嬉しそうに果物を食べ始める。

親子は口の周りや服を汚しながら今まで味わった事の無いご馳走に夢中になっていた。


『…ママ?このドウブツサン達どう食べるテチ…?』

『その貢物デス? …それは石とか無いと食べれなそうデス…明日また何か探して食べるデスゥ』


しかし皮のある動物はそのままでは、実装石達が食べるのは困難であった。

今日はここをねぐらにして明日道具を探そうと提案するマーガレット。

姉妹もそれに賛成する、食事にはありつけたが既に夜、尚且つ厳しい山道である。

飼い主に見切りをつけられてからは満足な食事も取れていなかったのだ、親子の宴は続く。


『テェェ~もう食べれないテチ…シアワセテチュ~♥』

『本当テチー、初めてこんなウマウマアマアマ食べたテチュン♥』

『ママもこんなウマウマは初めて食べたデス~、残りは明日皆で食べるデッス~♪』


マーガレットと四女以外の姉妹が、お腹がいっぱいになり横になろうとしている。

四女と蛆も、初めてのご馳走や甘味にシアワセを隠し切れないようだった。


『イモウトチャ?お腹いっぱいテチ?』

『ウジチャ、もう食べれないレフ~こんなにシアワセなの初めてレフー♥』


それを聞いた四女が嬉しそうに蛆のお腹をプニプニして、食後の運動のように世話をする。

笑顔の蛆を見るのが四女の何よりの幸せだった。

プニプニするとレフレフ喜び先ほど食べたものを押し出すように糞を出す。

その匂いに気づいたマーガレットが四女に言う。


『四女ちゃん、ここじゃ我が家が臭くなるデス、蛆ちゃんのウンチはお外でするデス』

『あ、ごめんテチ!イモウトチャ、お外でウンチするテチ~』

『プニプニ気持ちいいレフ~もっとして欲しいレフ~♪』


横になり屁をこくマーガレットが四女に対し迷惑そうに伝える。

すでにマーガレットの頭の中では食事の置かれたこの洞窟を我が家と厚かましく認識し始めたようだ。

四女が腕に蛆を抱き、外へ歩きだす。

だがそこに目を向けた時、今まで気づかなかった影があった。


『テェ…?何テチ…?』


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今まで見た事無いような明るい夜。

大量の食事の置かれた洞窟に落ちる影。

それはまるで人間のようだった。


『テェェ…?ニンゲンサンテチ…?』

『レフ~?蛆ちゃんまだまだウンチ出るレフ~』


目が慣れてくる、その姿は体全身が葉っぱだらけで出ている手足は木のように細く長い。

四女が顔を見ようと、上を見上げる。

そこには人間の顔があった。


『テテェ…!?ここニンゲンサンのオウチテチ!? ママー!ママァーー!』


四女は、慌てて振り返りマーガレットへと助けを求める。

もし人間の家なら大変な事になるからだ。

疲れて横になろうとしていた親子が顔を上げ、四女の方を見た。

慌てた声を出す四女の後ろの影に気づいた、四女は怖がりそのまま姉妹の方に行き蛆と一緒に縮こまる。

…人間? 見た事ない恰好をしている、マーガレットが立ち上がり”それ”に近づく。


『デェ?ここのニンゲンデス? もう遅いデス~ここはワタシ達のオウチデッス~ン♪』

『それともワタシ達の為にアレを用意したデス?そしたらお前はワタシ達のドレイニンゲンデスゥーン♪』


マーガレットは”それ”に対しこの洞窟は自分達のものだと主張をする。

増長したマーガレットは、すでにワタシ達は人間よりも偉いという縮図が出来上がっていた。

きっと公園で運よく愛護派に助けてもらって余計にそう思うようになったのだろう。

しかし”それ”は一歩も動かない、動かずそのまま立っている。

”我が家”に侵入し、謝罪もせずに立っている”それ”にマーガレットはイラつき始める。

山道で歩き、腹も満ち足りもう寝ようとしていたところ邪魔されたのだ。


『デェェ…!何なんデス!? セレブなワタシ達のオウチから出ていくデス! 出ないとお前をボコボコにするデェッスー!』


マーガレットが四つ足でデジャアアアアアアと威嚇をする。

しかし相手は動かない、それが更にマーガレットの怒りを買うことになる。


『デジャアアアアア!早く出ていくデス!このオウチとあのご馳走はワタシ達のものデスゥゥ!!!』


怒りでパンコンをし頭に青筋を立てるマーガレットが、その糞を投げようとパンツに手を入れた。

その時だった。


(বলিদান বলিদান আপুনি কোন)


頭の中で直接何かが喋る音が聞こえた。


『デ…?何デス…?』


糞を取る手が止まる。

その声はその場にいる全員に届いたのか、姉妹達も騒ぎ始める。


『ママ!?ママ!?今の何テチ!?』

『何テチィーー!怖いテチーー!お耳さんじゃなくて頭さんに響くテチィ—!』


姉妹は何が起こっているのか泣き始めた。

しかしマーガレットは愛する仔達に何かされたと思い余計に怒り始める


『何するデェェェス!可愛い仔達をいじめるなら覚悟するデスゥ!!!』


マーガレットが糞を”それ”に向かって投げた。

葉っぱだらけの体に命中する、それを見てニヤリとするマーガレット。


『デッピャッピャッピャ!ウンチが当たったデス~!お前はこれでワタシのドレイデッスーン♪』


笑うマーガレットがニンゲンの顔を見ようと見上げる、暗くて分からなかったその顔。

やたらと明るい夜の月がその顔を照らした。

その顔は、似つかわしくない赤子だった。


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赤ん坊のような顔がマーガレットを見つめる。


(অশুচি কৰা অশুচি কৰা)


またしても頭に響く声、しかしマーガレットは糞が当たり奴隷が出来たと馬鹿にするように笑っている。


(এই জন্তুটোক বলি দিয়া হৈছিল এই জন্তুটোক বলি দিয়া হৈছিল)

(ニエ…ニエ…ニエ…)


その言葉が聞こえたと思ったら、その木のような腕はマーガレットを持ち上げた。

ニヤニヤ調子に乗って笑っていたマーガレットがスッっと空に持ちあがる。


『デス?抱っこデス?ドレイの癖に仕事が早いデッス~ もっとワタシを褒め』


そう言い切る前か後か、赤ん坊のような顔をした”それ”が大きく口を開けマーガレットの体の右側にそのままかぶりつく。


『デ?』


急な事にマーガレットの少ない脳は処理が追いつかない、右に顔を向けるとその赤子のような顔が自分の体の右半分を食い尽くしていた。

自分の血が飛び散り顔に斑点をつくる、遅れてくる痛み、先ほどした糞が更に垂れ流される。


『デギャ!デギャアアアアアアア!!!!! やめ!やめるデジャアアアア!イタイ!イタイデジィイイイイ!!!!』


しかし”それ”が止める事はない、次にマーガレットの頭の上を齧る。

もちろん姉妹達をそれを見ていた、しかし頭の処理がまだ追いつかない皆フリーズして月明かりに照らされた母親の食われ叫ぶ姿を見つめていた。


『やめるデェェス!た、助けるデスゥゥゥ!!!返すデス!返すデスゥ!全部返すデスゥゥゥゥウウウ!!!』


クチャクチャと咀嚼する”それ”を見つめ、残った左の手足で必死に逃げようともがく。

そして情けなく垂れ流される糞、きっと先ほどの食事のせいだろう。

次第に体が痙攣しはじめる、しかし”それ”はマーガレットを食べるのを止める事は無かった。


『ご、ごめんなさいするデスゥ!!!ごめんなさいデスゥゥ!!!! 助けるデス!助けるデス!!!ドレイニンゲンーーーーー!!!!』


ついには自分が見下したドレイニンゲン、飼い主に助けを求め始める。

マーガレットの頭の中では昔の記憶が思い出されていた、ショップでの躾…売られていた記憶、初めて飼い主とあった記憶、遊びにいった記憶。

泣き叫ぶ中でどんどんと記憶が溢れてきた。


『イイコになるデス!許してデスゥーー!ゴシュジンサマ!助けてデスウウウウウウ!!!!!』


そして増長したものが抜け、ついに大好きだったゴシュジンサマだった時の気持ちが蘇った、いや蘇ってしまったのだ。

あんなに大事に愛してくれたゴシュジンサマになんて事をしてしまったのだろう、ただ仔を見て喜んで欲しかっただけだったのに。

そうだ、ゴシュジンサマに会えたらちゃんと謝ろう、そして皆で仲良く楽しくシアワセに暮らそう。

きっと楽しい…きっと面白い…きっとシアワ


デベヂュ!


そんな変な声を出してマーガレットが動かなくなる。


(…ニエ…ニエ…)


甲高い声が頭の中に響き続ける、糞と血を垂れ流すそのマーガレットだったものにやっと脳が追いついた姉妹達が叫ぶ。


『ママーーーーーー!!!ママが死んだテチィーーーーーーーーーーー!!!!!』

『テチャアアアアアア!!!ママ!ママァァァアアアア!!!』

『テェェエエエエン!テエエエエエン!何テチィ!ドレイニンゲン早く助けにくるテチューーーー!!!!』


目の前に起こった急な惨劇に大声で泣き叫ぶ仔実装姉妹。

あの強いママが何も出来ずに一方的に食われパニックを起こし皆泣き、叫び、パンコンを壮大にする。

”それ”がマーガレットだったものを食い尽くしても頭の中の声は鳴りやまない。

皆それから離れようと後ずさる、糞の跡を残しながら…。


(ニエ、ニエ)


しかし離れたと思ったのに何故か次の瞬間に次女が捕まっていた。

あの細い気のような長い手に捕まれている。

急な事に再度頭が追いつかず、目を大きくし他の姉妹へ助けを求める。


『テチャアアアアアアア!!!オネエチャ!イモウトチャ!助けテチィィィ!!!』

『テェェェ!イモウトチャ!イモウトチャが捕まったテチィィィ!!!!』

『テエエエエン!ドレイニンゲン何処テチューーン!早く来るテチィィ!』


長女と三女が何故急に捕まったか分からず更にパニックになる。

次女は必死に手を伸ばし、助けてもらおうとするが無駄な努力だった、同じように体から齧られていく。


『テチャアアアアアア!!イタイテチュ!やめろテチィィ!!!世界の宝のワタチに何するテヂュウウウウウウ!!!』


必死に抜け出そうと血まみれの体を動かすが、細いはずのその腕は動く事も無かった。

先程よりもその細い手に力が入る、すると次女の体の糞が垂れ流され抜けていく。


『デビャァァァァァ…ぐ、ぐるじいテジィィ…やめ、やめテジュウウ…!ワタチもイイゴ…イイコ…になるテヂイイイ…!』

ヂュ!


更に力が入ったその細い手に次女が握りつぶされた。

頭がカクンと横に垂れ、舌を出して静かになる次女。


『テギャアアアアア!!次女チャが!次女チゃがぁぁ!!!』

『ごめんテチィ!ごめんテチュゥゥ…!いい仔になるテチ…!ワタチいい仔になるテチィ…!』


目をまんまるくして泣き叫ぶ長女に、体を縮め手を頭で抑えて咽び泣く三女。

しかし”それ”は握りつぶした次女を飲み込んでも止める事は無かった。

次に捕らえられたのは三女、小さい体が掴まれ宙に浮かぶ。

一気に地面と離れるその光景は、恐怖しか無かっただろう。

だが三女はマーガレットと次女が食われ殺された光景に、現実逃避をし始めていた。


『テェェェ…ドレイニンゲンが助けにきたテチ…♪ 遅いテチュー、国の星でもあるワタチを待たせるなんていい度胸テチュ…テププ…』


そういい涙を流して笑っている。

尚も頭へ繰り返し聞こえるニエという声。

”それ”が口を開ける、三女は、ヂ! という声を残して動かなくなった。


『テェェェェェン!テェェェェン!ママァ…ママァ…助けてテチュゥ…!』


もう長女はその場から動けず泣く事しか出来なかった。

しかし助けは来るはずも無く、そのまま捕まる長女。

赤子のような顔は血まみれであった、ママや次女や三女の血で塗れている。

それに恐怖し体も歯もガタガタと震える。


『助けてテチ…助けてテチ…ワタチはいい仔テチ…いい仔テチ…」


きっと生まれてから初めてここまで涙と糞を流したであろう長女が必死に命乞いをする。

その時頭に響く声が変わる。


(ঘূৰাই দিয়ক ঘূৰাই দিয়ক ঘূৰাই দিয়ক)


何故かは分からない、だけど先程まで肉親たちを食らったこの声が変わった事にきっと意味があるのだ。

そう思った長女は必死に考える。


(ঘূৰাই দিয়ক ঘূৰাই দিয়ক ঘূৰাই দিয়ক)


尚もあの顔は表情も変えずに、こちらを見つめている。

…!そうだ!こういう時はママから教わったアレだ!…あれできっと…!


(ঘূৰাই দিয়ক ঘূৰাই দিয়ক ঘূৰাই দিয়ক)


長女が恐怖に震えた体に鞭を打ち、右腕をゆっくりゆっくり動かす。

そして顔の前に手をやり…


『テ…テッチューーン…♥』


ママから教わった人々をシアワセにする、メロメロにする一族に伝わる技。

一瞬静まる洞窟内、長女は思った、これはもしかして…もしかして!


『テッチュ~~~ン♥テッチュ~~~~ン♥』


やはりワタチは宇宙のアイドルなのだ、皆をメロメロにするのだ、長女の幸せ回路が駆動した。


(カエセ)


助かったと思った長女が次に見たのは大きく開かれた血塗られた口だった。



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『ママ、大丈夫テチュ…?』


昨日の山実装の親子が、一夜明けた山を歩く。

手を繋ぎ仲睦まじく、しかし仔実装は何処か心配げに。


『もう大丈夫デス、オオババ様も言ってたデス』


2匹が向かっているのは昨日あの実装石親子が入っていった洞窟だった。


『山の感謝の日に入ってくるなんてとんだ罰当たりデスゥ…』


親実装がため息をつきながら歩く、仔実装はその握られた手に力が入るのが分かった。

そうこうしていると件の洞窟の入口へとたどり着いた。

そっと2匹が中を見る…中は血と糞の臭いで充満している。


『見るデス…昨日あいつらが来てた服の切れ端があるデス』

『テェェ…!本当テチ! …ママあのピンク達どうなったテチュ?』


仔実装も怖くなったのか握る手に力が入る、それに気づいた親実装が昨日と同じようにそっと仔実装を抱きしめる。


『大丈夫デス~、”山のカミサマ”はこの日以外は優しいんデス、昨日はご飯を捧げないといけない日だったデス、お前も一生懸命色々集めてくれたデス』

『集めたテチ…頑張って木の実や果物集めたテチュ』

『そうデスー、お前は偉い仔デス、”カミサマ”は昨日だけ一年山を守った力を取り戻すのにご飯を食べるデス、だから昨日だけは近づいちゃいけないんデス』


そんな話をしていると仔実装が何かを見つける。

…?隅の大量に残されている糞…何か…? 動いた?


『ママ!ママァ!あそこ何か動いてるテチュ!』

『デデ!?何デス!?』


緑の糞で何かが蠢いている…あれは…。

親実装がそこに近づき、糞を掻き分けるとそこには…。


『テェェエ…』


放心状態になっている仔実装、糞で汚れているがあの実装石親子の生き残りだった。

糞だまりから助け、汚れを拭う。


『デェ!オマエ!デェ!分かるデス!?』

『テ…オバ…チャン…誰テチ…?』


体を揺らし親実装がそれに呼びかけるように話すと徐々に意識が戻ってきているようだった。


『テ…テェ…テエエエエエ…テエエエエン!テエエエエン!怖かったテチ!怖かったテチィーーー!
 ママがオネエチャ達が!イモウトチャがぁぁぁ!!!テエエエエエン!テエエエエエエエエエエエン!!!』


親実装に抱きつき大泣きする生き残り…、そう生き残ったのは四女だった。

どうやって四女が生き残ったかは分からないが、他に生き残りはいなかった。


『ママ…その仔どうするテチ…?可哀そうテチ…』

『…可哀そうだけど連れて… …?デェ?お前顔見せるデス』


何かに気づいた親実装が四女の顔を掴む。

そして顔を掴まれた四女が何事かと泣き止み、四女の顔をよく睨むように覗く親実装を見つめる。

様子がおかしい事に気づいた仔実装が、親実装に問いかける。


『ママ…?どうしたテチュ?その仔何かあったテチ?』

『…こいつ魅入られてるデス…』

『テ…?魅入られ…テチ?』


親実装がスッっと立ち上がり、四女の手を掴んで入口へと足を進める。

何が何だか分からない仔実装は慌てて親実装の後を追う。


『ママ!?ママ!?どうしたテチ!?何があったテチ!?』

『…たまにいるんデス…こうやって貢物に手を出して罰当たり…そして生き残る奴デス』

『テェ…?たまたま生き残ったんじゃないんテチ…?』


親実装は歩みを止めずにそのまま洞窟を抜ける、四女の手を離さないまま。

仔実装はその後を追って歩く。


『そうデス、オオババ様のところに連れていくデス』

『テ!?何でテチ!?あそこはワタチ達以外…』

『一度だけワタシの小さい時にいたんデス…罰当たりデス… そいつも同じように”カミサマ”に選ばれたんデス…』

『選ばれた…テチ?』

『そうデス、そうなったら最後死ぬまで仔を全て捧げないといけないデス…だからこいつは逃げないように連れて行かないといけないデス…』


ぼんやり会話を聞いていた四女だったが段々と頭に話と昨日の光景が思い出される。

ママが食われ、オネエチャ達も全員あのコワイコワイニンゲンに食べられた。


(オネエチャァァァァァ!まだウジチャ、シアワセに遊びたいレフ!助けてレフゥゥゥゥゥゥ!!!)


大切な妹の悲痛な叫びが、泣き顔を思い出し四女のぼんやりとした記憶を覚醒させた。

そして今の会話… 自分の仔を全て食われる…!?


『テ…テェ…!い、嫌テチ!またあのコワイコワイニンゲンに会いたくないテチ!たすけ、助けてテチューーーーー!!!!ゴシュジンサマ!ゴシュジンサマァァァァァアl!!
 ママァ!!!ママァ!!! ワタチの仔がワタチの仔が食べられるテチィィィーーーーーーーーー!!!!!』


逃げようとした四女は後ろ髪を掴まれ、山実装に引きずられて行く。

昨日出尽くしたと思った涙がまた溢れ、山に響くような悲痛な叫びを上げながら。


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1 Re: Name:匿名石 2023/03/15-12:48:07 No:00006919[申告]
普通に怖ええええぇ…
観察スクとしても素晴らしいしホラーとしても楽しめてお腹いっぱいです
2 Re: Name:匿名石 2023/03/15-15:26:57 No:00006922[申告]
山のカミサマってなんだったんだデス…これは続いてほしいデス
3 Re: Name:匿名石 2023/03/15-23:48:29 No:00006924[申告]
怖すぎるだろ…
4 Re: Name:匿名石 2023/03/16-12:48:34 No:00006927[申告]
読んで頂いてありがとうデスゥ
ご感想頂けるのが何より嬉しいデス

>山のカミサマってなんだったんだデス…これは続いてほしいデス
続いて欲しい希望頂いたのは有難いデス
希望頂けたのであれば嬉しいので書きたいデスが四女のその後もしくは昔の罰当たりの話とかデス?
5 Re: Name:匿名石 2023/03/16-23:52:26 No:00006928[申告]
現代怪談っぽいノリで面白かった
四女かその子供がトリックスターになって欲しくもある
6 Re: Name:匿名石 2023/03/17-06:45:14 No:00006931[申告]
>希望頂けたのであれば嬉しいので書きたいデスが四女のその後もしくは昔の罰当たりの話とかデス?
そりゃあもちろん昔の罰当たりがどんなだったかデス
7 Re: Name:匿名石 2023/03/17-11:51:23 No:00006932[申告]
>現代怪談っぽいノリで面白かった
ご感想ありがとうデス~怪談好きだからそういうのも入れてみたデス

>そりゃあもちろん昔の罰当たりがどんなだったかデス
リクありがとうデス、じゃあ昔の罰当たりの話書くデスゥ
待って頂ければありがたいデス
8 Re: Name:匿名石 2023/03/17-18:41:02 No:00006935[申告]
糞蟲個体の罰当たりは半端無さそう
山実装って清貧ってより因襲的で不気味な面もそれなりにある気がするのでどうなるか
9 Re: Name:匿名石 2023/03/22-18:09:27 No:00006964[申告]
続き書かせて頂いたデスゥ
http://jissou.pgw.jp/upload_ss/index.cgi/view/0_3104.html
リクありがとうございましたデス
10 Re: Name:匿名石 2023/04/17-20:19:54 No:00007058[申告]
試しに翻訳かけてみたら「生贄」「汚い」「返して」
って出てきてゾッとしちゃった
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