実装石保護センター 今日もたくさんの実装石。 地域住人からの苦情により、公園を巣食っていた連中を捕獲。 捕獲した実装石を施設にて保護する。 それが私の勤め先である実装石保護センター。 公園にいるような実装石はとても不潔。 愛玩動物として大きく疎まれる原因の一つと言える。 次にとても実装石は悪食である。 与えた食事を食べず嗜好品贅沢な食事を要求するものや汚物食べたり、共食いを始める者もいる。 実装石と言う生き物は脆弱で短命で多産であるためかこの辺の禁忌を簡単に犯すものが多い。 一般的に実装石の成体はゴム毬ぐらいの大きさと言われている。 そのサイズのものが群をなして公園などを屯しているとなるとどんなに可愛かろうと駆除の対象になってしまうのは仕方ないことと言える。 しかし駆除と言ってもいきなり殺傷して回ることはあまりないのだ。 余程の問題ある個体以外は基本的には捕獲のち保護である。 里親が現れるまで一定期間保護する。 けれど私が所属する管区の実装石保護センターはあまりに野良の実装石が多いため、保護できる数に限りがある。 そして里親に巡り合うことのできる実装石は稀だ。 稀なのにあまり出来の良くない子が里仔に出されるのは不幸の種。 出来の悪い個体は里親の愛情も反故にし、いわゆる糞蟲を産み落とす。 糞蟲は最終的に野良となって保護センターの厄介になる。 悪循環、糞蟲の輪廻。それは悲しいこと。 できるならより良い個体に生き残ってもらいたい。 そのためうちのセンターでは保護した実装石をあらかじめ篩にかけ、より良い個体に残ってもらうセレクションを実施している。 今日も五匹の仔実装が選ばれた。 ではここからさらに一匹、里親に紹介する実装石をセレクションしてみようと思う。 それぞれ五匹はアルファベットのA、B、C、D、Eで区別する。 味気ないのでAはアップル、Bはビスケット、Cはチーズ、Dはドーナッツ、Eはエッグと呼ぶこととしよう。 まずアップルから特徴を紹介する。アップルは比較的一番古株になる。 常時うるさく食べることが好きで食欲は旺盛。おでこに根性焼きされた跡が残っている。 ビスケットは比較的おっとりしたタイプの性格で食事もあまり食べない。 腕に赤いスカーフをつけている。 チーズは仔実装の中では太っている。特に食事をたくさん取るわけでもないのに肥満体型。 ドーナッツはほとんど寝ている。どんな時でも眠たそうにしている。 エッグはいつも怒っている。なんに対して怒っているのかわからないがジタバタと何か不満をアピールしている。 少し広めの水槽に入った五匹は私の方を見る。 「テチュ❤︎」 思い思いに媚びた仕草を見せつけてくる。 私は五匹にセレクション第一の設問した。 餌の入ったペットボトルの蓋が5つ。 この中に毒を入れた。さあ五匹はこの餌に対してどのような反応をみせるか。 私は少し笑みを浮かべてその結果を見守った。