~4日目~ やっぱり昨日はやりすぎたかもしれないデス 一晩明け冷静になった頭で悔やむ 既に残り少ない水は親が管理し勝手に飲むことは禁止していた 仔は後先考えず有るだけ全部飲んでしまうためだ いつ来るとも知れぬ御主人様を待ち続けるため長期戦の構えというわけだ おおよそ朝昼夕方晩で4時間おきと思われるタイミングで親が給水器から水を口に含み、口移しで仔にそれぞれ与えていた。 「ノドが乾いたテチ…」 「ワタチもテチ…」 「…」 昨日殴られた仔は黙っている また殴られてはたまらないからであろう、極力不必要な発言は控え最小限に抑えるようにしていた 仔たちが口にする不満も空腹の訴えから渇きへの訴えに移行していた 親としても水をあげられるものならあげたい しかし元手がなくては長丁場をしのぐことは出来ない どうすべきか思案にふけ、思いつく 「オマエたち、こっちに来るデス」 やや怯えつつも言う通りに親の下へ集まる仔たち 親は服をまくり上げ乳房をさらけ出す 「ママのお乳を飲むデス。オマエたちも生まれてすぐからしばらくはママのお乳で育ったんデス。ちょっと前の話だけど懐かしいデスゥ」 自分の中の水分は減るかもしれないが、これで仔たちのノドを潤すことは出来る。わずかではあるが空腹の足しにもなるだろう。 疲れ切った表情をしていた仔たちも途端に喜色をあらわにし我先に乳房に飛びつく 我ながらグッドアイデアだと思った親は得意げであった。しかし重大な欠陥を見落としていた。 「テチャアアアアアアアア!ママのおっぱいを飲むのはワタチテチ!あっち行けテチィ!」 「イモウトチャのくせにナマイキテチ!ここは姉のワタチに譲るのがレイギテチャア!」 「オネチャこそ年長として譲るのがレイギテチ!イモウトが可愛くないんテチィ!?」 そう、実装石は多産でありながら乳首は2つしかないのだ! 姉妹で醜く罵り合い押し合いへし合いのお乳争奪戦が勃発した。 「お、オマエたちおとなしくするデス!順番、順番デス!行儀よくすれば飲めるからそんなに暴れないデ…痛ッ!」 テジャテジャと乳首に吸い付こうと必死な仔たちには親の制止が耳に届かない そうこうしてるうちに乳首に吸い付いた仔が、あまりに必死だったためか歯を立てかじりついた。ガリッ 「痛いデジャアアアアア!」 バキィ! 昨日も見た光景だ。昨日の仔とは別の仔ではあるが。 乳首にかじりついた仔は殴り飛ばされ、床に転がって一拍置き、仰向けのままサイレンのように泣きわめいた。 しかしこの日はそれだけには留まらなかった。 「親に歯向かう口はこの口か!?この口かデスゥ!?」 ドボッ! 「テボァ!」 激昂した親は仰向けになったままの仔を踏みつける。 「テボ!テギャ!テピィ!テ!テベ!テジャパァーッ!」 しこたま痛めつけられた仔はかろうじて息をしているだけのボロ雑巾状態だ。 「デフー!デフーッ!」 親は肩で息をし、息を整えてからようやく我に返ったようだ。 殴られなかった2匹の仔はキャリーの隅で怯え震えていた。 またやってしまった。でも言うことを聞かない仔たちが悪いんデス。ワタシは悪くないデスゥと自己正当化を完了する。 しかしこうなるともはや授乳どころではない、親はバツが悪そうに横になり昼寝に入った。 ……テチテチ… ………ウ…ウマ…テッチュン …テッチューン まどろみの中で何か聞こえる…。 「ウマウマテッチュン♪ウマウマテッチュン♪」 親は飛び起きた 「ハッ!?な、何を口にしているデスゥ!?まさか水をデス!?」 水…は無事だ。そもそも給水器の給水口は仔実装には届かぬ高さにある。 では一体何を? 仔たちが群がっている場所、そこはトイレのあった場所だった。 「ウンチ美味しいテチ~♪」 「まろやかクリーミーな舌触りテチ♪コクのある風味テチ♪」 「こんな珍味があったとは知らなかったテチ!世紀の大発見テチィ!ムシャムシャ」 顔や涎掛けを糞まみれにして元気よく口の中に糞を掻き込む仔たちの姿がそこにあった 「デデェ!?こ、こいつら糞を食ってやがるデスゥ!?やめろデス!糞食いは糞蟲デス!そんな仔に育てた覚えはないデスゥゥゥ!!」 仔たちのとんでもない行動をやめさせるべくドスドスと足音をたてて駆け寄る するとテピャアアアアアアと叫び声を上げて蜘蛛の子を散らすように逃げ回る仔たち 「デ!?なんで逃げるデスゥ!?」 「またイタイイタイされるテチ!ママはギャクタイハテチィ!」 もはや仔たちにとって親は暴力と恐怖の象徴となっていたのだ 「デデ!?いつ虐待なんかしたデス!人聞きの悪いことを言うなデス!」 「嫌テチ嫌テチ!もうイタイイタイは嫌テチィィィィ」 しばし不毛な言い争いと追いかけっこが続く。 やがて双方息が上がり追いかけっこを停止する。 運動したせいで余計ノドが渇いた。 しかし水はもったいない。 親はじっとトイレを見やり熟考する。 (仔たちは糞を食ってたデス…食おうと思えば食えるデス?でも糞食いは糞蟲デス…ワタシは誇り高き飼い実装デス、糞食いはドレイのやることデス…。) (でも…もう丸2日何も食べてないデス…。今朝折檻した仔がある程度回復しているのを見るに、意外に栄養があるんデス?いやでもでも…) フラフラとトイレに近づき溜まった糞を見ながら逡巡する。 むせ返るようなアンモニア臭。吐き気すらこみ上げてくる。 だが我が仔が出来たのだ、いずれ迎えに来る御主人様のためにもワタシは生き残る。手段を選んでいる余裕はない! 意を決し糞をひと掬いし、目をつむって口に入れる 「デボ!ゲボハァ!ゲー!ウゲェェェオロロロロロロロ」 目眩とともに口に入れたモノ以上のゲロを吐く。 クラクラした頭で己の行為に後悔する。 (ななな、なんてものを食べてたんデスあの仔たちは!?とても食えたもんじゃないデスゥ!やっぱりうちの仔は糞蟲なんデスゥ!?) おそらくだが、親と仔の違いは舌の肥え。仔たちは母乳からの離乳食、そしてフードを食べるようになってまだ日が浅く、 金平糖やステーキなど定番の美味極まるご馳走は与えられたことがなかった。飽食を知る親と違い、仔たちの味覚のランクは低いままであった。 もっとも飼い主が仔たちに贅沢なぞさせる気がなかったのだが。 えずきながらも忌まわしい糞貯めから距離を取るべくキャリーの端へと歩き横になる。 無駄に体力を消耗してしまった。疲れからか異常なダルさを感じる。今日はもう寝てしまおうと目をつむった。 仔たちは親と距離を保ちながら回り込み、親が横になってからトイレで食事を再開した。 「ウマウマテッチュン♪ウマウマテッチュン♪」 この日も御主人様は迎えに来ず日が暮れていった **************************************************************************************************************** ~5日目~ お腹が減りすぎてお腹が痛いデス… もう丸3日何も食べてないデス…立ち上がるのも億劫になってきたデス… 最終手段としてウンチを食べようとしたけど無理だったデス… 何か…何か食べないともうもたないかもデス… 衰弱し寝たきりのようになった親を見つめる者たちがいた。 仔実装たちである。 ヒソヒソ…テチテチ…ヒソヒソ…テチテチ… 何事かコソコソ内緒話しているかと思えばテッチャア!と気合を入れ3匹揃って親に歩み寄る。 「ママ…いや、ワタチたちはオマエに宣戦布告するテチ!」 「…デ?」 あまりに想定外な発言に親は戸惑いの表情を浮かべる。 「ママはもうママじゃないテチ!親なのにゴハンを持ってこないテチ!ママ失格テチ!」 「しかもワタチたちに暴力を振るうテチ!そういうのDVって言うテチ!モンスターペアレントテチ!毒親テチ!」 「弱りきった今ならワタチたち3匹力を合わせれば勝てるテチ!水もウンチもワタチたちで全部イタダキテチ!」 なんという連帯感であろう、同じ釜の飯を食った仲、もとい同じトイレの糞を食った仲とでも言うのだろうか。 これがかつて母乳を巡って醜い争いをした姉妹であろうか?ママという共通の敵を持ったためだろうか? とにかく糞食で英気を養い気が大きくなったようだ。 「…ハイハイそうデスか。バカなこと言ってないで寝てろデス。先は長いかもしれないデス」 昨日までのママならばキレてボコボコにしてもおかしくない蛮行だが違った。 正直痛い所を突かれたし、飢餓で精神的にもまいっていたのだ。対照的なまでの塩対応だった。 「バカにするなテチ!ワタチたちは本気テチ!」 覚悟、抗議、怒りなど様々な感情を否定された気になり、ヒートアップする仔。 「あまり行儀悪くしちゃいけないデス。御主人様が迎えに来た時でもそんな調子じゃ怒られるデス」 かつてのように諭すようになだめすかす。しかし… 「ゴシュジンサマなんて来ないテチ!ワタチたち捨てられたんテチィ!」 言ってはいけない言葉を言い放った。 「…!そんなワケないデス!きっと御主人様の身に何かあったんデス!必ず迎えに来るデス!」 さすがの親も体を起こし面と向かい、仔の発言を否定する 「捨てられた捨てられた捨てられたんテチィィィィ!!」 「捨てられた言うなデス!そんなことあり得ないデス!捨てられたというならその根拠は何デスゥ!」 捨てられたという言葉に強く反応する親。 「こんなに待っても迎えに来ないテチィ!それにワタチ見たテチ!ここに入った後に何か吹きかけられたテチ!その時の御主人様笑ってたテチ!」 「でもいつもの優しい笑みじゃなかったテチ!ゾッとするような悪い笑みだったテチ!そしたらすぐに眠くなったテチ!きっとそういうおクスリだったんテチ!」 「…仮に捨てられたとして…その理由は何デス…」 仔の言ったこと、実は心当たりがないわけでは無かった。ただの見間違いだ、と。たまたまそう見えただけだと自分にそう言い聞かせていた。 「そこまでは分からないテチ。きっと何か怒らせちゃったんテチ」 「…怒らせた…デスか…じゃあやっぱりオマエたちに原因があるデス」 「テ?」 「考えてもみろデス。ワタシはオマエたちくらい小さい頃から可愛がってもらったデス。それがオマエたちが生まれてからこうなったデス。どう考えてもオマエたちのせいデス」 親から不穏な雰囲気が醸し出される。それは忠義かそれとも狂気なのか… 「オマエたちこそワタシの仔じゃないデス。糞蟲デス。糞蟲は御主人様に相応しくないデス。御主人様が来る前にこのワタシが処理しておくデス」 プジュッ 一番手近の仔を持ち上げると、右肩から右胸まで大きくかじり取った。 「ヂイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」 バタバタと手足をバタつかせてもがき苦しむ仔。 仔たちは親を倒すつもりだったようだが、4倍は体格が違った。衰弱しているとはいえ力の差はまだまだ歴然だったのである。 バツンッ プジュッ ブチン ブツッ 「ヂッ テギャ テヂィッ も、もうやめ、テピィ!!」 続けて手足を食いちぎりダルマにする 「ごごご、ゴメンナサイテチママァ!もうやめテチィ!死んじゃうテチィ!もう逆らったりしないテチ!口ごたえしないテチ!何でも言う事を聞くテチ!お願いテチ許しテチ!ママーッ!」 助命を懇願する仔だが親は淡々と解体していく。 他の仔はあまりの惨状にお互い抱き合って怯え震えていた。 「クッチャクッチャクッチャ、御主人様の寵愛を受けるのはこのワタシだけで十分デス。ワタシの糧になるがいいデス。クッチャクッチャクッチャ」 我が仔を咀嚼しながら無情な言葉を突きつける。 「イヤテチイヤテチ!死にたくないテチャアアアアアアアア!シニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナヂッッ──」 言葉が途切れたと同時に仔の命も潰えた。 頭の中にある偽石が噛み砕かれたからである。 こうして仔の体全てが親の胃の中へ収まった。 「ゲプッ、…さて、食ったら余計腹が空いた気がするデス」 「「テヒャア!?」」 もはや仔はただの食料と成り果てた。 「テチャアアアアアアアア!ママー!やめテチ!もうウンチしないテチ!ワガママ言わないテチ!ワタチのアンヨがああああ!お手々食べないでテチィィィィ!!」 「テギギィィィィィィ!!ワタチもテチ!オクルミ返しテチ!髪を返しテチ!アンヨを返しテチ!お手々返しテチ!これ以上奪わないでテチャアァァァ!!」 …こうして親一匹だけになった。キャリーバッグ、まこと広うなり申した。 今日も御主人様は来ず無限の静寂が訪れた… **************************************************************************************************************** 一方その頃の飼い主はというと 仔食いをするだろうなと予想はしていたが思ったより早かったな しかしミドリがこれほどまでに狂気を内包していたとは 親仔ともに糞蟲気質があるのは察していたが予想以上のものが見れた 俺の悪意に気づいていたとは思わなかったがな さて、そろそろフィナーレが近くなってきたが地獄はまだまだこれからだぞミドリ… ~~~~~~~~~~~~~~~続く~~~~~~~~~~~~~~~~
1 Re: Name:匿名石 2023/02/12-03:42:52 No:00006786[申告] |
やはりこうなったか…飼い実装も極限に追い込まれると野良と変わらないなあ… |
2 Re: Name:匿名石 2023/02/12-22:55:24 No:00006797[申告] |
非常に好きなシチュエーションなので面白く、期待してるデス |
3 Re: Name:匿名石 2023/06/26-21:45:30 No:00007360[申告] |
全然親は糞蟲じゃないだろ |