タイトル:【虐殺】 選ばれた勇者
ファイル:選ばれた勇者.txt
作者:特売 総投稿数:39 総ダウンロード数:588 レス数:1
初投稿日時:2023/02/08-15:27:04修正日時:2023/02/08-22:00:50
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選ばれた勇者


デギャッ

響き渡る哀れな生贄の声

握りしめたバールから伝わる破壊の手応え

同時に広がる血と糞の臭い

ああ…最高だ…この屠った時に感じるすべてがたまらない

どんなオンラインゲームやソシャゲでもこの快感は味わえない

この楽しみを知ったらもう他の何をやってもつまらない
もう病みつきだ…

このままずっとこうしていたい位だ…

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俺の名は敏明

自他共に認める実装石虐殺派というやつだ

休日前になると深夜の公園に忍び込んで
野良実装を殺しまわって日々の生活での鬱憤を晴らしている

強いて難点を言えば飛び散った血や糞が降りかかるので
服や自分自身が汚れて臭くなりがちな事か

対策として使い捨てのレインコートを着るとかあるのだが
蒸れて暑いのと動きづらいのであえてそういうのは着ないでいる

しかし実装石というナマモノはつくづくデタラメな存在だな
週末にあれ程徹底して潰して回っていると言うのに
翌週になったらまだ同じくらいの数に回復してやがる

巧妙にどこかに隠れているのか?俺が去った直後にまた繁殖しているのか?
はまたまた渡りで移住したり何者かがこの公園に野良実装を放流しているのか?
とにかく訳が分からない

どっちにしろ見つけ次第
賢い奴も糞蟲も仔も蛆も関係ない
ただひたすら叩き潰すだけだ

時刻は深夜に差し掛かろうとしている
そろそろ虐殺パーティの時間だ
俺は愛用のバールをケースに収め夜の公園に向かった

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だがその日の夜は何時もと様子が違っていた
何と言うか変なのだ
奴らの巣が集まるところに来ているはずなのに
糞の臭いがしない
奴らの出す不快な鳴き声も聞こえない

まさか大規模駆除でも行われたのか?
いや…それならば事前にこの地域に通達が来るはずだ
知らない内に行うなんてあり得ない

狐につままれたような気持ちで辺りを探していると
公園中央の広場がやけに明るい事に気が付いた
とりあえず何があるのか確かめるため歩いて向かった

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公園中央に辿り着いたのだが
そこで俺は今まで見たこともない不思議な場面に出くわした

一体どこからやってきたのだろうか
中央の広場が実装石で埋め尽くされていたのだ
成体や仔ばかりか蛆や親指までがひしめき合っている

そして皆奥で光輝いている何かをじっと見つめていた

その異様さに呆然と立ちすくんでいると
そこにいたすべての実装石が一斉に振り向いて
俺の顔を見上げたのだ

ふっ…上等だ…皆まとめてブッ潰してやる!

ケースからバールを取り出すと正面の一列に勢いよく叩きつける
水風船が破裂するような音を立てて数体まとめて弾け飛ぶ
そのまま今度は横に薙ぎ払い横殴りにぶっ飛ばした

だがこれだけの事をされているのに悲鳴一つ上げない
しかも一匹たりとも逃げようとしないのだ

そればかりか次々に俺の前に出てまた見上げて来る
潰しても潰しても実装石の群れが前に出て来るのだ
このままでは埒が明かない

俺は直感的にその奥にある謎の光が何か関係していると察知した
実装石の肉壁をバールで薙ぎ払いながら奥へと進んで突破する

突破した先にあったのは光に包まれて浮かんでいる
一匹の実装石だった

いや…それは確かに実装石の姿はしていたが

何かが違っていた

目は見開いている様に大きく血走り
頭の頭巾には唐草模様が入っている
一番不可解なのはその実装石が空中に浮かんでいるという事だ

「何だありゃあ?」

今まで見たこともないその光景を目の当たりにして思わず声が出る

やがてゆっくりとその実装石は俺の前に近づいてきた
そして上から見下ろすような位置で立ち止まりじっと見つめていた

「くそっ!実装石の分際で人間様を見下ろすなんて生意気なっ」

何だかムカつい来たので足元の石を拾って投げつける

だが当たったはずなのに投げた石はすり抜けて落ちていった

何度も投げてみたが結果は同じであり
俺は得体のしれない薄気味悪さを感じ背中に冷たいものが走った

初期型実装石…

脳裏にふとその言葉が浮かんだ

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実装石に関わる者ならそれの事は一度は聞くという
ある種都市伝説的な存在
それには決して関わってはいけない
虐待も殺害も不可能
実装石に関わるものは全て不幸になるというのは
本来この初期型実装石の事を指して言っていた事だという

「嘘だろ…まさかあの話は本当だったのか…」

その場を逃げようとしたが足が動かない

焦っている間にも初期型実装石は近づいてきていて
ゆっくりと腕を伸ばしてきた

それに触れられるとヤバいと直感的に感じ
思わず手にしていたバールで振り払おうとした

ゴスっ

鈍い音と手に伝わる手ごたえを感じ見てみると
初期型実装石の腕がくの字に曲がっていた

初期型実装も曲がった腕を不思議そうに見つめて
首を傾げていた

どういう訳なのかバールの打撃は通るようだ
思わず顔が二ヤけててくる

「そうかバールで殴るのはダメージになるのか
もしかして今コイツを倒せるのは世界で俺だけなのかもな
そうか…俺は選ばれた勇者なのかもしれない…」

そう考えるとニヤニヤが止まらない
興奮で体が奮い立つ

「そうだよ…俺は虐殺派だ実装石はどんな奴だろうと
区別なく叩き潰す!ただそれだけだ」

ヒャッハァー

俺は雄たけびを上げて初期型実装石に飛び掛かった

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早朝公園の清掃を行っていた管理業者が
公園中央で変死体を発見し警察に通報した

周辺は黄色いテープが張り巡らされて封鎖され
警察による捜査が行われた

潰された実装石の死体が多数転がる中

男の死体の胸にはバールが深々と突き刺さり
それが支えのようになって膝からしゃがみこんだ姿勢のまま
倒れずに立っていた

だがその死に顔は何故かとても満たされた穏やかなものだった

その後警察は事故か自殺の両方から捜査を続けたが
最終的に自殺として処理された

                        終

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1 Re: Name:匿名石 2023/02/08-20:03:16 No:00006765[申告]
流石の虐殺派も初期型には勝てないのか…なんとも辛い話だ
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