タイトル:【虐】 テンプレ託児です 13年前の書きかけを完成された初投稿デスゥ
ファイル:俺実装 託児 完成.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1298 レス数:10
初投稿日時:2022/10/10-23:28:16修正日時:2022/10/10-23:28:16
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2009年頃かいていたらしい未完の初スクを発掘したので13年後に完成させてみた!
大好きな託児をテーマにテンプレで



■



「テッチューン♪」

コンビニ袋の中に仔実装が入っていた。
正確には、私が買った今夜の食事の入ってる袋の中。

お気に入りのえび三匹ミニ天丼をあらかた食べつくし、
あろうことか袋の中に大量の糞を残している。
ふと気付けば、袋の中はずっしりと重い。



……やられた。

コンビニの入り口付近でよく行われると言われている、実装石たちの「託児」だ。

親実装が仔実装をコンビニ客の買い物袋に投げ入れて、
あとはワンチャン、親仔ともども飼って貰おうとする独自の習性。
避けられたり、踏まれたり、そもそもうまく投げ入れられなかったりと、
その成功率は著しく低い。はず。
コンビニの前はよく実装石のものだろう赤と緑のシミがある。

……まんまとやられた。
知ってたのに。いつも気を付けていたのに。



時刻は日付の変わる寸前。
深夜、ワンルームの自室の玄関。
私は、ブラックな仕事の疲労と、
託児を見抜けなかったほどの判断力の低下をまざまざと自覚させられて、
がっくりと膝をついた。




「テチュテチュテチュウ♪」

私を見上げて仔実装が鳴いている。
楽しそうに。まるで歌うように。
デザートのパックがまだ開いてはいなかったが、もう食べれらるわけもない。

仔実装は私の握りこぶしより少し大きい程度。10センチちょっとの歪なヒトガタ。
だけど、もわっと上がってくる悪臭はすさまじい。
思わず顔を背ける。
そのままため息をついて、無感動にコンビニ袋の口を縛った。

「テ!?テヒャ!?」

右手の下の物体がバタバタして、コンビニ袋が右に左に不快にあばれた。
私の夕飯が……。



「あああー!」

やっと怒りがこみ上げてきた。
私は叫んでどたばたと自室に入り、コンビニ袋をバスルームに放り込んだ。

「テチャア!?」

仔実装の入った袋が、壁に叩きつけられ浴槽の中に落ちる。
いつの間にかビニール袋がどこか破れていたらしく、仔実装がモゾモゾ這い出てきた。

「テチー!」

水の張られていない浴槽の床を走り出す。
どこかへ逃げようとしているのか、けれど仔実装はまっすぐに進めない。
壁にぶつけた時に手足が折れたのか、糞の跡を残しながらグルグルと回る。

「テチャア!テチー!」

「はぁあ……」

私はまた大きくため息をついた。
食事を失ったことも、今がもう夜中なことも、これからすぐ寝られないことも。
すべてが煩わしく、腹が立った。
私は怒っていた。



■



私は世間で言う、愛護派でも虐待派でもどちらでもない。
今までなるべく実装石には関わらないようにして生きてきた。

実装石が不潔で愚かでどうしようもない生き物だってことは、
毎日普通に駅やコンビニや公園で見て、十分に分かってるつもりだった。

そもそも臭いがひどい。くさい。体臭もそうだけれど、だいたいは糞の臭いだ。
私の生活圏ではお願いだから遠慮したい。
だから、好んで関わろうとする愛護派のことも、虐待派のことも理解できない。

身なりも清潔な知人から一瞬、生ごみのようなホームレスのような実装臭を感じた時。
あちら側だ、と直感して距離を置いたことがある。

「あちら側」ではない私からすれば、わずかでも臭うことはそれくらい異世界なのだ。



そんなごく普通の一般のブラック勤務の私が今日。
携帯のリンガル機能を初めてオンにした。

私の機種、プランだと最初から入っているのだ。
使うことがあるなんて思ってもみなかった。



「実装石は大嫌い。飼わないし、すぐ捨てるから」
浴槽の中の仔実装に目を合わせて、はっきり言った。




「ニンゲンの癖に身の程をわきまえないヤツテチ!
 ニンゲンはワタチにおいしいエサを運ぶものだって決まってるテチ!
 ワタチはもっとたくさん食べたいテチ!あのうまいエサをもっとよこすテチ!」

私と目が合って、ニンゲンに向き合った仔実装がヒステリックに鳴いた。
リンガルの表示は、話に聞いた、ネットで見た、まさにテンプレだった。



■



じゅーーーーーー

「テギャギャギャギャギャア!?」

私はシャワーの設定温度をマックスまで上げて、仔実装に浴びせた。
仔実装は大きく悲鳴を上げて、不自由な手足で必死に浴槽の中をグルグル逃げ惑う。

じゅーーーーーー

「テギャギャギャギャギャギャギャァ!!」

仔実装が火傷と骨折の痛みで絶叫している。
耳障りでうるさいが、10センチちょっとの生き物の声。せいぜい浴室にくぐもる程度だ。
正直、どうでもよかった。

まずは実装石独特の悪臭を消さなくては。

本当に、玄関のところで気付けて良かった。部屋までこの臭いに汚染されていたら。
私は間違いなくこの仔実装を踏み潰し、後始末に途方にくれていたことだろう。



触るのもイヤなので、ボディソープを直接たらして、
柄の長いトイレ用ブラシで思い切りこする。
熱湯シャワーは浴びせたまま。

「テチャア!テチュテチュウ!テギャア!!」

リンガルに「熱い」「痛い」「どうして」「やめて」「餌」などの単語が並んでいく。



はーーーー。

怒っているは怒っているけど。
初めて使った実装リンガルアプリ。
こんな小さな蟲のような汚物と会話が成り立つことに、少しだけ頭が冷えてきた。

私は極力冷静を保つようにして、仔実装に話しかけた。



「あんたが勝手に食べ散らかしたものは私のご飯だってこと、分かってる?」

「テチ…。熱くて痛くて死んじゃいそうテチ…。ニンゲンは酷いテチ…。ママは嘘つきテチ…」

「ひどい臭い。汚い。自分がどんだけ不潔かも分かんないの?
 ごめんなさいもできない悪い子は死んじゃえば?」

再び熱湯を浴びせ続け、タワシでこすった。仔実装が絶叫する。

「ごめんテチ!ごめんなさいテチ!ニンゲン、謝るから今すぐやめるテチ!!」

のた打ち回りながら激しくパンコンしている。あれだけ糞をしたというのに。
何も分かってない。



私はしばらくその仔実装の洗浄を続けた。
ボディソープと温水のにおいに混じり、それでも立ち上る実装臭。
換気扇はフル稼働だけど、あたまがクラクラしてくる。

大きく肩で息をつく私。怒りだけでは今日の疲労はどうにもならない。
買い置きから消臭力をありったけ持ってきて、浴室に置いた。
サーキュレーターも、浴室から換気扇へ向けて「強」で点ける。

そして、虫の息の仔実装を放置して浴槽の蓋を閉めた。



仔実装の泣く声が大分小さくなった気がする。

「テチウ」

リンガルの履歴には「ニンゲン」「謝る」「熱い痛い」「ママ」「飼い」「餌」etc。

「あんたのことだけど」

蓋の中の仔実装に声をかけた。

「私は不潔なのも臭いのも嫌い。
 潰すのも臭そうだからしないけど、明後日の実装ゴミの日にはお別れだから」

「テッチュー!?」
リンガルには「ゴミナンデ!?」「そんなはずは」的な。

「わかった? 明後日にはあんた、ゴミ焼却場で燃やしてもらうから」

「テチ!?」
仔実装は小さく声を上げると、気絶した。

私も疲れていた。
よろよろと洗面所に向かい、クレンジングして、洗顔して、歯磨きをして——。
たぶん、最後の記憶だと、よろよろとベッドに倒れ込んだ。

夕飯は食べれなかった。



■




翌朝、起きていつものようにシャワーを浴びようとした私は異臭で現実に引き戻された。

くさい。
そうだ。仔実装。託児。

浴槽なんて使えるはずもないし、シャワー? ここで?
せめて洗い場でシャワーだけでも? いやいやいや。この臭いの中で?
あれだけ洗って、消臭力もこんなに置いて、換気もめっちゃしておいたのに!

私、これから出勤だよ!? どうすればいいの?



「テチ…」

仔実装の弱々しい声が聞こえた。
私は、恨み言の一つでも、と浴槽の蓋をめくる。



「テチィ…!」

リンガルの翻訳機能が勝手に「光」とログを残した
。
見下ろす私と仔実装の目が合う。
浴槽の蓋の隙間からこちらを見上げ、テチテチ何か話しかけてくる。



「助けて」「謝る」「餌」
そんなことがリンガルに羅列されていく。

「何を謝るの?」

私は自分でも驚くほどに冷たい声でそう言った。
仔実装が恐怖に全身をびくびくと震えさせながら、テチテチ鳴く。



「ニンゲンさんはきれい好きテチ。キレイにするテチ。がんばるテチ」

はーーーーー。

私は大きくため息をつく。
まともに仔実装を見ることもせずに、吐き捨てるように文句を叫んだ。

「ばかじゃないの?」

「テチ!?」

「実装石は汚い。臭い。醜い。下品。最低。
 実装石とキレイなんて言葉、一生縁のないうわごとじゃない」

「テェッ」



怯える仔実装を見下ろし。
少しだけ違和感に気が付いた。

一晩仔実装を置いておいた浴槽が思っていたよりもきれいだったのだ。

実装臭、糞の臭いは変わっていないのに……?



消臭力はあんまり仕事をしている気がしない。
サーキュレーターと換気扇は実装臭をかき混ぜているだけにも思える。

けど。



浴槽の床に仔実装の糞は散らばってはいない。
その代わり、浴槽の排水口には糞がたくさん一点に集めてあった。
仔実装はどうやら、排水口に糞を捨てようと努力はしていたようだ。



「はいはい……」

私はシャワーのノズルを向けた。

「テチ!?」
と仔実装が縮みこんで震える。さすがにこれが恐ろしいものだとは理解しているらしい。

じゅーーーー

排水口に向けて熱湯を流し続けた。流しきれるだろうか。詰まっちゃうかもしれない。
排水口用の洗浄剤を買ってこないと。

はあーーーーーーーー。

また大きくため息。
そういうの、いらないから。
何も期待してないから。

「がんばらなくてもいいよ。どうせ明日は焼却炉だし。骨まで燃やしてさようなら……」

独り言のように呟いた。

「テッチィ!?燃やされたくないテチュ!死にたくないテチュ!」

リンガルで言葉が通じるとはいえ、蟲の命乞いは全然響かない。



「実装石が嫌い。あんたも嫌い。すぐに死んでほしいし、助ける理由がない」

「一番美しく気高いワタチでもテチか!?」

「どうでもいい。私、実装の区別なんてつかない」

「テェ!!!?」

仔実装が期待するようなニンゲンとの交渉は成り立たなかった。当たり前だ。



■



シャワーは諦めた。職場のシャワー室を朝イチで使おう。
それはいいとしても、実装臭が気になってつい強めの香水を選んでしまう。

おかしくないだろうか。混ざってどうしようもない臭いになってないだろうか。
気が気じゃなかった。

とにかく、一刻も早く出勤して誰にも気づかれないうちにシャワーを浴びたい。
なにもかも痕跡を消したい。悟られたくない。

だって私は、「そちら側」じゃない。



「テェ……」

「テチュン」



浴槽から仔実装が化粧をする私に何か話しかけてくる。
煩わしかった。
私にもう少し決心があれば、すぐに潰して後片付けだけを考えれば済むのに。



「助けて」「死にたくないテチュ」「キレイにする」「餌」



「「「臭い!!!!!!」」」

私は叫んだ。

「テビャアッチュウ!!?」

勢いに気圧され、仔実装が跳ねて脱糞する。

私も大分参っているけども、それもすべて実装石のせいだ。



シャワーを諦めたためいつもより一時間は早く出勤しようとしてる私、急いでいる。

「臭いのをなんとかして!いい?何度でも言ってあげる。あんたは臭くて、不潔」

「テヒャア」

バスタブに大小の洗面器を三つ放り込んだ。
そこに水を満たす。
それぞれにボディソープを容器からからっぽになるくらい混ぜた。

三つの洗面器はあわあわになる。



「これは水。あわはセッケン。きれいになる薬。わかった?わかるよね?」

「テェ」

キれ気味に言う私。
ただ、仔実装には伝わってる感じがする。

リンガルの「餌」は全て無視してるので仔実装が餌を得ることはないのに。
食べなければ生きていけない生物は、どうやらきちんと順序を理解している?

言うことを聞けなければ死ぬ。

実装ゴミの日に出される。

焼却炉で焼かれる。



「それを使って、きれいにして。私が帰ってきても臭かったら」

私ははっきりと命令をした。

「殺す」



■



「デスデスデッスーン♪」

マンションの玄関の外。醜くて大きめのカタマリが不快な声で鳴いている。
恐らく親実装だろう。オートロックだから入れなかったのだ。

託児した仔実装の後を追いかけられないまま、ここで一晩を過ごしたのか、
今は出勤する住人達に媚を売っていた。

当然、誰にも相手にされていない。

私もこの上親実装にまで関わりたくなかったので、大回りで避けた。



「デギャッ」

視界の端で、大柄な男性の靴に蹴り飛ばされるのが見えた。
すかっとした。少し、気分が晴れた。



■



仕事はきちんとは終わらなかったが、今日は早めに退社した。
少し遠くの大きなスーパーに寄って、色々と買い物をする。

消臭剤や排水口の強力洗浄剤、ファブリーズ、除菌アルコールそのほか。
それと実装石のコーナーで、専用の脱臭剤や糞抜きの薬、フードなども買う。



マンションのエントランスでは少し警戒したが、親実装の姿はもうなかった。
地面や床も掃除した形跡があったので、管理会社の人が来てくれたのだろう。
よかった。
24時間常駐してるわけではないが、ゴミ出しの時間から昼の間は大体いてくれる。

ワンルームなのに家賃がそこそこするマンションだけど、
こういった管理やオートロックなどのセキュリティには助かっている。



「ただいま」



私が玄関でただいまを言うのはただの習慣。仔実装に対してではない。

靴を脱いだら、不織布マスクを交換し、髪の毛を纏めてビニール地のキャップに納める。
袖付きのディスポエプロンをする。最後にディスポ手袋をつけた。
感染症の現場の看護師のような恰好。今日はきちんと防御しないと。

一応、鼻を塞ぎながらバスルームの扉を開けた。



実装臭がする。けれど、昨夜ほどじゃない。どうやら結構がんばったようだ。
熱湯シャワーがきいたのか、それともそれなりに賢い個体だったのか?
過度な期待はしないことにする。



「テチィ…」

弱っていた。私を見上げる。目に哀しみの色をたたえ、その体は空腹でガリガリだ。

「帰ったよ」

「テチ!?ニンゲンさんテチ?お、お帰りなさいテチ」

私の格好が今までと違うので戸惑っている様子。でも、私だということは分かったらしい。



「髪も服も汚れてる」

「テチウ!?」

慌てて自分を見返す仔実装。服にも髪にも緑色の染みが残っているのだ。
恐らく洗ってはいたのだろう。けれど、染みは落ち切れてはいない。

「き、キレイにしたテチ!もう充分テチ!」

やっぱり、聞いていた通りだ。思い上がり、いつでも都合のいい妄想に溺れる。

「いや汚いから」

「テチャ」

「もう一回、ちゃんとやって。まずは服。脱いで、洗う。いいセッケン買ってきたから。
 あったかいお湯足すから」

私はつとめて穏やかな声で仔実装にそう指示した。

買ってきた実装専用の道具を開ける。
まずは実装用のソープをたくさんプッシュして洗面器の一つに出して仔実装を促す。

「きれいにできたらご褒美をあげる」

言うことを聞かせるためにも飴は必要だ。
買って来た実装フードの箱を振って見せた。

「テチ!」

仔実装はがぜんやる気を出して、服を脱ぎ、泡立てたソープで洗濯を始めた。



据え置きの実装臭用の強力消臭力。
TMRがCMしてたかは記憶にない。実装に興味がなかったから。
実装用の空間消臭のバルサン的なものも焚く。
殺傷力のあるものとないものがあるが、これは実装にも無害なやつ。

バスルームの中にもやもやと白煙が立ち込める。
私がそのままでいることや、仔実装に苦痛がないこともあってか、状況に変化はない。

私は続ける。

「あとこれ、ご褒美の前払い。ご飯じゃないけど甘いやつ」

洗濯中の仔実装に金平糖に似た糞抜きの薬を投げた。

「テチャ!?」

仔実装の赤緑の目が見開かれ、それに釘付けになる。
フルフルと体を震わせて、その一瞬後、文字通り飛びついた。

「いいよ。食べて。食べたらまたお洗濯続けてね」

私は即、許可を出した。
おあずけしたら聞ける知能が仔実装にあったかは分からない。
それを診断する気は私にはない。
すぐ食べて。そもそも糞抜きの薬だし。
甘いし、基本苦痛もないやつだから。私、「あちら側」じゃないし。

「コンペイトウテスゥ……!!」

金平糖を見たこともないだろう仔実装は呻き、薬を前に跪いた。
舌を伸ばして、手も使わずに一気に舐め取る。



「テチャアアアアアア……!!」

甘いのだろう。
歓喜に震えている。

空腹も限界だったろうし、そもそも極度の疲労の中での甘味は人間の場合だって格別だ。
仔実装が今、どれだけ多幸感に包まれているだろうかは、
実装石に詳しくない私でも想像がついた。

よかったね。

これは糞抜きだから、粗相してもそれを理由に虐めたりはしないよ。

いつ効果が出るのかな?



■



「テチャア!?」

仔実装が叫んで跳ねた。
リンガルには「ウンチ」と出ている。
効果はすぐに出た。
仔実装が金平糖に似た薬を舐め尽くし、シアワセの余韻に浸り始めてから3分後くらい。

あわあわでキレイにするためのお洗濯をしていたはずなのに。
キレイにしなきゃいけないのに。
仔実装はウンチの欲求に浴槽の床をグルグル走り回った。

「食べたら出るよ」

私は優しく声をかける。

「あの穴のとこ(排水口)でしたら?」

「テチャア!」



仔実装は言うことを聞き、浴槽の排水口の上でこれでもかってたくさんの糞をした。
実装専門商品の効果なので、さすがにこれで糞は全部だろう。

「流すからいいよー。じゃあお洗濯の続きね」

私はそう声をかけて、仔実装の糞と排水口の処理にかかる。

「テチャ…」

怒られないことに驚いているのか、仔実装はしばらく固まっていたけど服の洗濯に戻った。



「どうしてこんなに出るかなー」

仔実装の糞抜きの跡を見て、つい、私は呟いてしまう。
でももう今朝までの私とは違うのだ。
ていうか、実装専門の商品がこれだけあることを知らなかった。プロ仕様実装商品。
脱臭系といい、一般のファブリーズや消臭力とはまるで違う!

餅は餅屋。
専門商品の効果は看板に偽りなくちゃんとしていて、私はとても満足していた。



実装糞を分解する粉末剤を糞にかけていく。
ちょっと見ている間にも糞はカラカラに乾いていきバラバラの粉みたいになる。

すごい。
あんな臭いものが、汚いものが、悪臭を封じ込めたまま分解されていく!
プロの仕事すごい!
専門家さんありがとう!

それに、実装被害が社会に浸透しているせいか、無茶に高価というわけでもなかった。
消臭系だってせいぜい、ドラッグストアで人間用の倍くらいの値段。

今まで全然知らなかったけど、こういう商品があってくれてありがとうーー!!



これは、あれだよね。

例えるなら。
Gに困るからホイホイ、じゃなくて分かってる人はコンバット買うもんね。
本当に一月でいなくなるから。巣から根絶するから。Gを。コンバットすごいよね。
専門家すごい!! ありがとう!! リスペクト!!



「できた、と思うテチ」

仔実装が服の洗濯を終えたらしい。
見ると、洗面器から上げた実装服は素材の色そのもので、自然な深緑色だ。
さすが専門の洗剤!
きれいになってるように感じる! 汗も垢も糞の染みもない気がする!

「えらいねー。きれいになってるねー」

テンションの上がった私はビニール手袋越しに仔実装を撫でて褒めた。
直接触るなんておぞましい!
そう思ってた私を変えるくらいのプロ仕様商品の力!



「テッ?テチュウーー♪テッチューン♪」

仔実装が初めて? 撫でられながら穏やかに鳴く。
不思議と、不快じゃなかった。



■



「服は乾かさないとね。裸んぼだけど浴室あったかくしてるから我慢できるよね」

私は仔実装を抱き上げて笑って言った。

「テェ」

仔実装も笑ってるように見えた。

プロ仕様実装グッズのせいか、今は浴室が全然臭くない。
服は洗えてるけど、髪はまだなのに、嫌な感じがしない。仔実装が気持ち悪くない。
嬉しかった。
明日が休みなこともあるけれど、私は「実装石を相手に」楽しくなっている。
信じられない!



「髪は私が洗ってあげる」

仔実装の頭を撫でた。
額にわずかな前髪、後頭部に長くばさばさな汚い髪。
実装石の生態は本当に理解できない。理解したくもない。

けど、ここまできれいになったから、臭いも限りなく減ったから。
私はものすごい達成感に充実していた。

あとは髪だけだねー。



「きれいにできたから。ご褒美はあげる」

私は仔実装を初めて浴槽から引きあげ、ユニットバスの洗面台に置いた。
私が毎朝顔を洗ったりお化粧をしたりする所。

「テチャア…」

ずっと高い彼方から見下ろされてきた仔実装が、
ちょっと上から見られる程度の高さに来てる。
それはそれなりに待遇の改善にも感じられたのか、
仔実装にとっても嬉しいことのようだった。

「実装フード。ご飯あげるよ。ご褒美だしね」

小皿に実装フードをばらばら入れる。

「テッチュウン!!」

糞抜き餌だけしか貰っていない仔実装は食事の魅力に鳴いて媚びた。

「でも私、実装石は嫌いなのね」

「テッ!?」

「その赤緑の瞳がキモい。全然慣れない。見ていたくない」

「テヒャア!?」

「ううん、餌はあげるよ。裸んぼで可哀想だしね。でも目が怖い。目隠ししていい?」

「テチュ…」

リンガルはもうずっと見てない。
それでもずっと伝わってることに奇妙な興奮を覚えた。
後から振り返ったら、歪な快楽と言い換えてもいいかも。
私は「そちら側」じゃないのに。



そうして。

私は仔実装の目隠しをして。
実装フードを与えた。

金平糖様のものとは満足感が違うだろうけども、明らかに生きるためのカロリー。
それを目隠しされながら犬食いで貪る仔実装は再び歓喜に身を震わせていた。
リンガルのログでわかる。
面白くて、初めての経験として永久保存しようと思ったくらいだ。



「おいしいテチュこんなもの今まで食べたことないテチュ生き返るテチュ幸せテチュ。
 コンペイトウも最高だけど実装フードは命の味がするテチュワタチは今生きてるテチュ!!」

「そう?いっぱいあるから沢山食べてね」



私は、今や余裕の面持ちで血涙を流して歓喜に咽ぶ仔実装を前に、
専門プロ仕様の商品を使っていた。

仔実装の総排泄口をプロ仕様専用アロンアルファで塞ぐ。
二度と臭い糞の排泄はできない。

プロ仕様の専用剃刀で仔実装の前髪を一瞬で剃り落した。
返す刀で、というかそういう程度の自分的にはそんな感触で。
仔実装の長い汚い後ろ髪もつるりと切除した。



「おいしいテチュ!生きてるテチュ!ニンゲンさんはワタチのゴシュジンサマだったテチュ…!!」

目隠しをされたままの仔実装が泣きながら初めての実装フードに喘いでいる。



目の前にいるのは、検索して出てきた虐待派の画像、「禿裸」そのものだった。



胸の奥がざわついた。
可愛かった。もっと見ていたかった。

けれど、私は「あちら側」ではないのだ。



■



「お前はすごい賢い実装かもだね。言いつけを全部守れた。
 私、ずっと実装は嫌いだったけどお前のことは可愛いと思い始めてる」

「テ!?テッフーン…!!」

フードを食べ終えた仔実装が跳ねて私を見た。見てない。目隠ししてる。

だから、彼女が今、みっともない禿裸なことには気付けない。
自分で触れば分かるかもだけど、実装石は神に見放された哀れで愚かな生き物なのだ。

「飼ってあげてもいいかも」

「テッチュウン!?」

私は嘘をついた。

私の気持ちは決まっていた。



ゴシュジンサマとして私を慕うしかない汚物の気持ちもそれなりに理解できたし、
調教?が成功して忠誠?を勝ち取った達成感もちゃんとある。

だけど、私は「そちら側」ではない。

実装石なんて、もう二度と関わりたくないのだ。



「眠くなっちゃった。今日も疲れたから。お前の寝床をつくるね」

わざとらしく欠伸をして、目隠しをしたままの禿裸仔実装の前にふわふわなタオルを置く。

「フードも置いておくから好きに食べて。トイレは、用意する暇なかったな。
 隅っこでしてくれたらいいよ。あんまり汚さないで。怒らないから」

「ゴシュジンサマ…!」

仔実装は劇的な待遇の改善に歓喜に極まり、私をそう呼んだ。
私は眠すぎるふりを続けて、今すぐにも立ち去る体を装った。

「ご主人様ね。そうかもね。私がお前を飼うなら、私はお前のゴシュジンサマだね……」

「テェ!ゴシュジンサマ…!ワタチ、いい子にするテチ!ワタチ、ゴシュジンサマのお役に立つテチ!!」



「あはは。それ、飼い実装だね。だよね。嬉しいかな。ふわぁ…」

欠伸の演技を繰り返し、私は仔実装とお別れをした。



■



「テチュウ…♪ニンゲンはやっぱりいい人だったテチュ。結局はワタチのミリョクにメロメロになったテチ♪」



私は目隠しをされたままの禿裸仔実装に向け、タブレットを録画つけっぱなしにしていた。

目が覚めた時、見たかったのだ。

目隠しはそこまできつくはしていない。
自分がどこで禿裸だと気付くのか。

フードの一番奥底に入れた「ものすごく苦痛を味わう毒」をいつ食べるのか。

もう二度と排便できないように総排泄口が接着されていることをどこで気付くのか。



そしてこれは、
明日朝一番に教えてあげたいと思ってるんだけども。

仔実装のために用意したタオルもフードも、市の指定実装ゴミ袋の中に敷いている。



朝いちばんで袋の口を縛って実装ゴミ行きなのだ。それは確定。

死刑宣告をしようかな?

それとも飼い実装の希望の夢見心地のままお別れかな?

毛布の中でくっくっと私の肩が震えた。



ばいばい実装石。

私は実装石なんて大嫌い。
臭くて、汚くて。
専門店のグッズはとても良かったな。今後のためにもとっておこう。



でも、深入りする気は全然ないから。
仔実装を思い通りに従わせられたのは確かに楽しかったけど、これは結果論。
偶然かも知れないんだから。

明日はこの達成感のまま、仔実装とお別れしよう。

実装ゴミは基本殺してなきゃいけないんだけども、私にできるかな?
どうやってしよう。
考えるほどに楽しくなってきたな。



でも私は絶対、「そっち側」じゃないんだから。







おわり






■

そんなわけで13年越しの初スクです
託児は大好きな習性ですが、観察系が大好きで、
恐らくこれをかいていた過去では二作目は観察系を!と思っていました

ライブドアねとらじで実装スクを朗読するネットラジオをよくしていました(12年前
今でも実装は大好きです

@ijuksystem






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1 Re: Name:匿名石 2022/10/11-00:22:12 No:00006549[申告]
読み応え抜群
2 Re: Name:匿名石 2022/10/11-05:08:16 No:00006550[申告]
そちら側ではないと言いながら堕ちそうになってるのが怖い
3 Re: Name:作者 2022/10/11-23:06:59 No:00006552[申告]
即レス貰えてマジ泣きしました!またかきます!!

次はきっと観測系です!!
4 Re: Name:匿名石 2022/10/13-22:40:41 No:00006553[申告]
感動した。ありがとう。
5 Re: Name:匿名石 2022/11/14-05:27:50 No:00006594[申告]
改行がとても読みやすい
あぶねーやつほど自分は違うって言うんだよなぁ!?いやしらんけど笑
6 Re: Name:匿名石 2023/05/18-06:09:04 No:00007179[申告]
この女性の、仕事で疲れた所に追い打ちでイライラする、汚い臭いから触りたくない、
道具が予想外に効果が高くて楽しくなってくる、大興奮で喜んでる禿裸を見て可愛く思えてくる…とか
いちいち感情移入してしまうというか、すごくわかる気がする
あと上の方も書いてるけど細かい改行でとても読みやすくて良かったです
面白かった!
7 Re: Name:匿名石 2023/05/18-18:38:55 No:00007191[申告]
疲れてる潔癖症女性と実装石の託児の相性の悪さが渾然一体となってて何かいいんだよねこのスク
あっち側じゃないって言いながら薬局で専用実装用品買って来たり何か楽しくなりかけてたり
この方の作品は全体的にシュチュエーションやディテールが面白い
8 Re: Name:匿名石 2023/05/31-00:09:05 No:00007256[申告]
結局賢い糞蟲とかいう一番タチの悪いタイプの仔実装だったのが笑える
9 Re: Name:匿名石 2023/07/09-20:42:20 No:00007483[申告]
素晴らしいスク
勝手にアラサー管理職一歩手前のストレスフルなバリキャリ女性を想像してハァハァしてます
10 Re: Name:匿名石 2025/02/22-18:52:59 No:00009527[申告]
この仔実装の末路を最後まで見たかった
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