タイトル:【愛】 【躾】ポチと幸せの虹の橋 第1戒
ファイル:【躾】ポチと幸せの虹の橋1.txt
作者:ジャケットの男 総投稿数:27 総ダウンロード数:1326 レス数:34
初投稿日時:2016/12/15-06:18:53修正日時:2016/12/15-06:18:53
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『 ポチと幸せの虹の橋 第1戒 』







テー…ちー…




俺はベッドに寝そべりつつ、ハウスの中で寝付かせたポチの小さな寝息を聞きながら、
女性店員さんから貰った初期型リンガルと飼育日誌を隅々まで調べていた。


「日誌については、良い情報源になったが…。
 さて、リンガルはどうしようか。無駄に多機能なようだが…何々…。
 翻訳・録音・言語パターン解析・登録された言語が出た際に自動で特定の音を再生する機能?
 これ、躾用に最適化されすぎだろ…。このメーカー、なんで倒産してんだ?
 こんな良い物があって、誰も躾に使おうとしなかったのか…?」



※注意:男は初期型リンガルの法外な値段と、愛護用に改修された没落の変遷を知りません。



俺は、そもそも犬猫用に発売されているリンガルすら、あまり良い商品とは思えずにいる。
ペットと会話ができたとして、それが躾の何に役立つというんだろうか?
ペットを躾けるというのは、人間社会に動物を最適化させるという、ハッキリ言えば人のエゴの塊のようなものだ。

俺はペットの躾を学ぶ時、その意味を知った。
“人間にとって”都合が良い事・悪い事を、ペットに快・不快を合わせて与える事で教え込む行為だと学んだ。
人間社会に所属する限り、人間だけがリーダーとして機能しなければならないのだ。

もちろん、その中で、ペット自身が飼い主を愛し、寄り添おうとしてくれるならば、
躾は、飼い主とペットが人間社会に属するための生き方を学ぶに等しく、愛の成せる技となる。

だが、ペットとして迎え入れたモノが、飼い主を愛していなければ?
こちらが愛していたとして、相手が愛してくれなければ、一方通行の躾は、ただの虐待に等しい。
俺が愛しているのだから、お前も愛してくれるだろう? そんなわけがない。


ペットからしてみれば、自身の損得の範疇外で、勝手に身の置き場を流転させられただけなのだ。
愛せば愛してくれる、などとは思ってはいけない。


…だからといって、すでに飼い始めた動物に愛されないからと、飼育を放棄するのは自分勝手すぎるだろう。
だが、愛されていないと確実に分かった相手に、人は無償の愛を注ぎ続けることができるか?


さすがに聖人君子でもなければ、そんな事できるはずがない。
…結局は、ペットを飼うという行為自体が自己満足でしかないんだ。

自分の満足のいく答えが返ってこなければ、人は容易に悪意に染まる。

その黒い感情も、俺は実際に体験したはずだ。
…そして、その感情の行きつく先の虚しさも。



「…そうだな。
 どうしても実装石の言葉を知る必要がある時だけ使う事にしよう。」



俺は、リンガルを棚の中へ仕舞い込むと、
明日に備えて早めに寝る事にした。









間幕







ジリリリリリ!
ピッ!


「ふぁ……、はー、よく寝た…。今日は休みだし、躾に専念できるぞっと…。さて、準備するかね。」


俺はスマホのアラームを解除して、体を起こして伸びをする。



テちゅ〜…てちゅぱちゅぱ…
テちゃぁ…〜…♪ ちゅ〜…ん…♪



ハウスの中では、まだまだポチは夢見心地に寝息と寝言を立てている。
昨日の脚のケガなんて、まるでなかったかのように、ツヤツヤの四肢を投げ出して、涎を垂らしていた。


いい気なもんだ。でも、今日はちょっと辛い思いするぞー?


さあて、今日からは“待て”の訓練だ。
正の条件付けを学び終えた今のポチならば、もしかしたら餌を前に待機ができるかもしれない。


まあ…。
出来ない可能性と、最悪の反応の方を想定して準備をしておくに越したことはないが。


男は購入しておいた水槽を、ポチハウスの傍に設置すると、
鼻歌交じりに台所へ向かい、朝食の用意に取り掛かった。





……
………




テチュ〜ん♪
チュア〜〜ン♪


俺が朝食の用意を終えて居間に戻ると、
匂いを嗅ぎつけたのか、すでにポチは甘い声をあげて、ハウス内でテチテチと鳴いている。

俺はさっそく、天窓からポチを引き上げて、ハウスの外装を取り外す。


「 ポチ ごはんの時間だ 」



テッチャア〜ん♪



そう声をかけつつ、俺は手に擦り寄るポチを水槽の中へ入れる。



テェ?
テー…テチュ…??



ポチは、ガラスで張り巡らされた壁を不思議そうに、ぽふぽふと触っていた。
向こう側が見えるのに、進むことができないのが、よほど不思議なのだろう。




「 待 て 」




俺はポチに待ての指示を与えた後、ポチに見えるように水槽の目の前にプレートを置き、
ゆっくりと食事をする。



テチュ〜ん♪
チャァア〜ン♪
チュワ〜ン♪



ポチはプレートに山のように盛られた食事に涎を垂らして、甘い声をあげながらガラス壁に張り付いていた。
プレート上の食事は急速に目減りしていくが、それでも反応は変わらない。

自分にも必ず食事が与えられる、そう安心しているのだろう。

いつも通りのポチの食事量分まで残し、俺は満腹のジェスチャーをする。



「ふぅ、食った食った…。」



俺は、ポチが張り付いているガラス壁のすぐ傍にプレートをずり動かす。
そこで、やっとポチの反応が変わった。



テチュ〜♪


ゴンッ!
ころんっ


チュあ!?
ちゅ〜…テェェェンテェェェン!

…テー?
テチュン…チュワーン…



ポチはガラス壁がある事も忘れて、プレートに突進しようとした。
当然、盛大に壁にぶつかり、盛大に転倒する。

ポチは、したたかに打ち付けた顔を泣きながらさすり、
目の前にあるのに手が届かない食事を見つめて切ない声をあげている。



(ふむ、今の所は投糞も威嚇もないか、よしよし。上出来だ。)




俺は、内心で呟きつつ、投糞動作に移ったら即座に破裂音を出せるよう
ICレコーダーのボタンに指を当てつつ様子を見守った。




テー…?
テチュ〜ん、チュワ〜ン…
チュ〜ン…ちゅ〜ん…テチュンチュン…




ポチは切なげな声をあげつつ、ガラス壁とプレートの周りをうろうろしたり、ぽふぽふと叩いていたが、
どうあっても自力では壁の向こうにいけないと気付いたのか、
ガラス壁がない場所を探そうと水槽の中をぐるぐると駆け回り出す。

30分以上、彷徨っていただろうか?

ポチは、プレートが目の前に見えるガラス壁に張り付いて、
まるでトランペットを眺める少年のような恍惚とした表情で涎を垂らしつつ、血涙を流した。



(さすがに可哀そうだが、まだだな。俺を見上げるまではやらん。)



テチュ〜……?
チュワ〜ん、ちゅ〜ん……?


俺が満腹のジェスチャーをしてから、1時間経過した所で、
やっと、ポチは俺を見上げた。

血涙も流し切り、透明な涙を目に溜めつつ、
どうすればいいの? とでも言うように見上げた!


クリュックリュッ!
「よぉぉぉしよしよし!ポチ待てができたなぁ!」


俺はすかさずクリッカーを鳴らして、ポチを水槽から引き揚げ撫でつつ褒める。
だが、今日は擦りつかせない。
サッと、地面に降ろして、食事に集中するように後ろから手を添えて、体の向きを整えた。



テっちゅ〜ん♪
チャ〜♪ちゅ?
ちゅ〜ん…チュア…?
チュゥ……テチュ〜ん♪



俺に擦りつきたかったのか、ポチは嬌声をあげてイゴイゴと前脚を動かしていたが、
体をプレートに向くように固定されて疑問の声をあげつつ、切なげに鳴いた。
…が、目の前の食事に手が届く事に気付くと、今度はそちらに集中しだす。

相変わらず現金な奴め。




(ふぅ、まあ取り敢えず、分からない事があれば、自分で考えずに飼い主に助けを求める。
 これはできそうで一安心だ。後は、俺を見つめつつ、どのくらい辛抱できるか、だな。)




ポチが食事を終えた後は、お決まりの輪投げ遊びだ。
水槽は片付けずに、そのまま置いてある。



テチュ〜♪
チュワ〜♪

テッチ!テッチ!

チュ〜♪
テチャア〜♪



しばらくは、通常通りに輪投げ遊びに興じた。
ポチが満ち足りた笑顔で俺に輪を持ってきた所で、俺は水槽の中に輪を投げ込む。

もちろん、ポチは素直にガラス壁に突進していく。



テチャ〜♪

ゴン!
ぽてっ

テチャァァァン、テェェェェェンテェェェェェン!



何も考えず、ガラス壁に衝突して盛大に仰向けに転倒する。
ポチは起き上がる事も忘れて、仰向けのままジタバタと大泣きしていた。

うん、これはこれで可愛い。
ちょっと自分の中にサディスティックな感情が渦巻いたが、気のせいという事にしておこう。



チュ〜ン、チゅ〜ん…
テチュ〜ん…

チュ〜?
テチゅ〜?



しばらく泣き続けたが、俺からの助けがないと気づいたのか、
ポチは一人で起き上がり、ぶつけた顔面をさすりながら、水槽の周囲を手を添えながら、ぐるぐると歩き回る。
中に入った輪っかを取り出せる場所がどこかにあるのではないか、と考えているようだ。



チュワっ!?テチャァァ…
ちゅ〜ん、ちゅ〜ん!
テェェェエンテェェエエン!



3周ほど徘徊して、ガラス壁に隙間がない事に気付いたのか、ポチは驚きの声をあげて泣き出す。
だが、放置だ。

困った時は、俺を見ろ。



チュゥ〜…チュンチュン…
テェ〜?



透明な涙が血涙に変わり、そして、再び透明な涙を目じりに溜めた処で、やっとポチは俺を見上げる。



クリュックリュッ!

テチャ!
テチュ〜ん♪ちゅわ〜ん♪



俺はすかさずクリッカーを鳴らす…が撫でない。
だが、ポチはクリック音を聞くだけで、夢心地の表情で嬌声をあげながら涎を垂らしている。

ポチが惚けている間に、水槽の中から輪っかを取り出して、ポチの前に置いてやると、
ポチは待ち侘びたように、輪っかに飛びついて嬉しそうに輪を抱えると、俺の所へ持ってきた。



テチュ〜♪



ポチは、輪を抱えたまま、俺の方を目をキラキラとさせながら見上げている。
なるほど、褒めてもらいたいのか。難しい所に入ったけど、自分で取ったよ、とでもいいたいのか。

うん、それはダメだな。

俺は無言で、ポチから輪っかを受け取り、再度、水槽の中に投げた。



テェェェ!?
チュワ〜ん!テェェェェン!

ゴンッ!
ぽてっ



ポチは泣きながら輪を追いかけて、またガラス壁にぶつかった。
まあ、投糞してこないのは進歩かな?


その後も、度々、水槽の中に投げ込んだが、ポチは取れない事を悟ると、自発的に俺を見上げて待機するようになった。
クリッカーを鳴らすと涎を垂らして喜ぶが、俺が水槽内から輪を取り出してポチに差し出すと、
テチテチと俺の手に擦り寄って毛づくろいをしてくれるようになる。ポチなりの感謝の印なのだろうか。
悪い反応ではないので、そのまま受け取る事にしよう。


そうやって、時計の針が12時を指すまで輪投げ遊びに興じた。












間幕










昼食の際にも、朝同様、水槽の中にポチを入れて食事を摂った。
自分の食事を終えた後、ポチに“待て”の指示を聞かせてから、プレートを目の前に移動させてみる。
この流れでやった時だったか、一番はじめに待ての指示を与えて投糞しかけたのは。

投糞覚悟でやってみたが、存外にもポチはガラス壁に張り付いて食事を見つめては、うろうろと徘徊するだけだ。
そこから俺を見上げるようになるまで、30分もかからなかった。


(ん…?これは、もう待てを覚えたか?
 …いやいや、待て待て、俺こそ待て。ここからが粘りどころだろ。)


ポチが俺を見上げているのを確認すると、クリッカーを鳴らす。
だが褒める事も、撫でる事もせず、再度、指示を出す。


「 待 て 」



テッチュ〜♪…ンッ!?
テェ!?
テェェェ……



ポチは、クリッカーの音を聞き、嬌声の声をあげようとしたところで、
待ての指示が出た事に気付いたのか、肺から空気をしぼり出すような悲嘆の声に変わる。

だが、威嚇や投糞は見られない。
涙を溜めつつ、目の前の食事が盛られたプレートではなく、男を見上げて待機している。



(ほう?一発目から大丈夫なのか。
 どうせ20回くらい繰り返すんじゃないかなと想像してたんだが…。
 どこまで持つか…試してみるか…?)




--5分経過--

テェェェ…?

--10分経過--

テチュゥ……

--15分経過--

チュ〜……
…グゥー(腹の音、そろそろ限界かな?)

--20分経過--

テヒィ…テフゥ…
テッチュ〜ン♪

(ばか!そこでお願いするなよ!そろそろやろうと思ってたのに!!!
 それじゃお願いしたらなんでもくれるって解釈になっちまうじゃないか!)

--30分経過--

テチャ…
チュゥ…チュンチュン…(うずくまって血涙流して泣いている)

--40分経過--

(目じりに透明の涙を溜めつつも無言で俺を見つめている…、よし褒めるか)



クリュックリュッ!
「よぉぉぉしよしよし!ポチ、待てできたなぁ!えらいぞぉぉ!!!」



テッチャ〜ん♪
てちてち〜♪ちゅぅぅ〜ん♪



俺はクリッカーを鳴らして水槽からポチを引き上げると、
それだけでポチは透明の涙を流しつつ嬌声をあげて涎を垂らす。

抱き上げた俺にすり寄ろうとしてきたので、サッとプレート前にポチを置いて様子を見守った。



テチュぅ…?
チュワー…?



ポチは目の前の食事と俺を不安げに交互に見つめている。
俺は、ポチの背中に手を添えて、ズズッと前に軽く押してやる。

ポチは、ようやく待てが解除されたと思い至ったのか、
俺の手に飛びついて、指を丹念に舐め上げて毛づくろいしてくれた後、
テチューン♪と嬌声をあげながら食事を開始した。







間幕







昼食後の輪投げ遊びから夕食にかけて、午前中同様に待ての強化を行う。

困った時は主人を見つめるという流れはきちんと入っているようで、
水槽以外にも、ベッドの上や、居間に張り巡らせた段ボールのバリケードの向こう側に輪が投げ込まれると、
何とか自分で取ろうと必死に探すが、無理と分かると、男を見上げて待つ事ができた。

クリッカーを鳴らせば、涎を垂らして喜ぶのに変わりないが、輪を俺が取ってポチに差し出すと、
テチテチと俺の手に擦り寄って毛づくろいをしてくれる。良い傾向が続いている。

食事も待ての指示が出れば、目の前に食事があっても、きちんと俺を見上げて20分以上、同じ姿勢を保つ事ができつつある。
このまま徐々に馴らしていけば、いずれは水槽がなくても待ての指示だけで待機ができるようになるかもしれない。



……
………




ザバァッ!

テッチュ〜ん♪
ちゃぁ〜ん♪


食後の運動の後、ポチと風呂に入る。
無論、俺が全てにおいて優先なのは変わらないが、ポチも素直に自分の番が来るのを待ってくれていた。
今日は湯に浸かる事にしたのだが、俺が湯船に浸かり、
その後、ポチの入っている桶に湯を張って、湯船の中に浮かべてやったところで、何やらポチが今までにない行動を始めた。




テちぃ〜♪
テちゅ〜♪ てちゃ〜ん、てちゅて〜チュ〜♪
テッテロて〜♪ テッテロちゅ〜♪
テッテロち〜♪ テッテロちゃ〜♪
テッテロちぃ〜♪ テッテロて〜♪

テチュン!
…
…テェ?



どうやら歌を歌っているようだが、今まで聞いた事のない調子の外れたメロディと妙な鳴き声だ。
俺はどう返すべきか迷った。

謳い終わり、俺を見上げながら小首を傾げているポチの様子から、恐らく歌を褒めてほしいのは予測できるが、
今までにないメロディや鳴き声というのが気になる。

取り敢えず、今回は風呂に浸かる事を優先として、俺の行動を模倣させる事にした。

わざとらしく肩まで湯に浸かり、深く息を吐き出すと、
ポチも俺の動作を真似して、テフゥ〜♪と深く息を吐き出した。

何度か模倣遊びをさせた処で、妙な歌について記憶から吹き飛んだのか、
ポチも風呂での遊びに集中しだした。






……
………






テちぃ〜♪
テちゅ〜♪ てちゃ〜ん、てちゅて〜チュ〜♪
テッテロて〜♪ テッテロちゅ〜♪
テッテロち〜♪ テッテロちゃ〜♪
テッテロちぃ〜♪ テッテロて〜♪
テチュン!



入浴後、寝る前の遊びとハウスを命じてひと段落した所で、
再び、あの調子外れたメロディと鳴き声でポチが歌いだした。


これは、恐らく実装石特有の意思伝達なのではないか?
ポチは俺に何かを伝えようとしているんだ。

…だが分からない。
実装石の言葉なんて、わからない。


………。


……リンガルを、使うべきか?


だが、もし、これが罵詈雑言だったとしたら…。
俺は、ポチを飼い続けることができるだろうか?



テちぃ〜♪
テちゅ〜♪ てちゃ〜ん、てちゅて〜チュ〜♪
テッテロて〜♪ テッテロちゅ〜♪
テッテロち〜♪ テッテロちゃ〜♪
テッテロちぃ〜♪ テッテロて〜♪
テチュン!



だが、ポチが同じフレーズの歌を、涙目になりながらも2度、3度と繰り返している姿を見て、
俺は……、迷いを振り払いリンガルを起動する事にした。

ペットが何かを伝えたいならば、
それが良かれ悪しかれ、飼い主である俺には、それを受け取らなければいけない義務がある。


リンガルを起動すると、ポチの歌を読み込んだリンガルが
さっそく歌の翻訳を画面に表示した。



テちぃ〜♪(大好きな、おおきなママへ♪)
テちゅ〜♪ てちゃ〜ん、てちゅて〜チュ〜♪(ハウスは寝るとこに戻るテチュ♪ おいでは おおきなママのところに行っていいんテチュ♪)
テッテロて〜♪ テッテロちゅ〜♪(おおきなママは何でも作れてすごいテチ♪ 痛いときも困ったときもおおきなママが助けてくれるんテチ♪)
テッテロち〜♪ テッテロちゃ〜♪(待ては おおきなママを見て待つんテチ♪ ごはんも遊びもママはちゃ〜んとくれるテチあわてなくていいんテチ♪)
テッテロちぃ〜♪ テッテロて〜♪(おおきなママの言う通りにしたら楽しいことがあるんテチ♪ 言うこときいたら褒めてくれて嬉しいんテチ♪)
テチュン!(おおきなママ、わたち覚えたよ!)





…俺は気付いたらボロボロと哭いて、リンガルをベッドの上に放り出していた。
そのまま、ハウスの中で立ちすくんで歌い続けていたポチに駆け寄って、愛しげに抱きあげてから頬擦りをした。



テチュ〜ん♪



リンガルを手放したので、ポチが何と鳴いたのかは分からない。
だが、ポチも涙を流しつつ俺に頬擦りを返してくれているのだ。

色の悪い返事ではないだろう。

俺は、ポチを甘やかしたい衝動に駆られるが、それで、ポチの生涯を台無しにしたくはない。
せっかく覚えたと言ってくれたのだ、俺はポチに答えなくてはいけない。

俺は、いつも通りに、ポチを褒めながら丁寧に撫で上げた後、ポチを床にそっと降ろしてハウスを命じる。



テチ!
テッチテッチ♪

ぽてぽて
ガサゴソ
ころんっ!


テチュ〜ん♪


ポチも、俺にそれ以上を要求する事なく、ハウスの指示を聞いた瞬間にテチと一鳴きすると、
素直に、ポテポテてちてちと箱の中へ駆け戻った。

俺は、ポチを撫でながら横になるように指を添える。



てちゅ〜ん♪
ちゅ〜…て〜…ち〜…



ポチは満ち足りた表情で甘えた声をあげて、静かに寝息を立て始めた。
そんなポチを見つめつつ、俺はハウスの外装を取り付けてベッドに戻り布団をかぶった。



「うぐぅ…うぉっ……ふぅぅぅ……!!!」



俺は、ベッドに潜りながら声を押し殺して哭いた。
俺の気持ちを誰かに分かってもらえるだろうか?



…いや、誰にも分ってもらえなくていい。



言葉を交わさず、激しい体罰など用いずとも、俺はポチに正と負の条件付けを通してルールを覚えさせることができた。
それが嬉しい。

リンガルを使わなければ、俺は、ポチが必死に歌にしてまで伝えたかった俺への感謝を汲み取ることができなかったのだ。
それが悔しい。



嬉しさと悔しさのせめぎ合いの中、俺は複雑な思いから溢れ出す涙で枕を濡らしながら眠りについた。







つ づ く












{後書き}
試験的に虐待作品を書いてみましたが、私にはどうやら虐待は無理だったようで(;´・ω・)
おとなしく愛に満ち足りた作品を書いていきたいと思います。
…と思わせておいて、所々に落とし穴も作っていきたいなと思っている自分がいます。

あ、女性店員さんへの愛にブレーキをかけて頂き、ありがとうございますm(__)m
レス頂けた読者の皆様へ感謝と愛を込めて。


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1 Re: Name:匿名石 2016/12/15-07:36:47 No:00003134[申告]
待ってました!!!
今回もすごくイイ!!!
毎度のことながら、引きがうまい
2 Re: Name:匿名石 2016/12/15-08:40:49 No:00003135[申告]
女性店員さんへの愛は止めなくていいのではないでしょうか
正直、根が糞蟲なのが垣間見られるポチより魅力的なのは分かるし
3 Re: Name:匿名石 2016/12/15-11:23:46 No:00003139[申告]
俺ははっきり虐待派だし、リンガルや翻訳がきっかけの愛護破綻、虐待転びを草生やしながらバカにするようなのは大嫌いだが
それでも思う
今回はいいように作用したがリンガルの悪影響が始まったんじゃないか
ポチに動物愛護じゃなくて人間的感情をみてないか
男が店員さんのように気を病むことにならなければいいが
4 Re: Name:匿名石 2016/12/15-11:59:35 No:00003140[申告]
リンガル否定派じゃないけどリンガル使っちゃったのは残念かな
実装便利道具の絶えた世界での飼い主の創意工夫や試行錯誤、ポチとのズレが魅力だったから
今後、ポチが何考えてんのかわからんってなるたびに最後はリンガル頼みになるならつまんなくなりそうだ
5 Re: Name:匿名石 2016/12/15-12:31:30 No:00003141[申告]
ノートである程度は実装石の生態が知れてるなら歌うのは何かしら気分のいいときか媚びで最低限、不満からではないってわかりそうだけどなあ
それにスルー前後で態度が反転して威嚇や投糞に走ることもなく何度も繰り返したのが加われば何か男や扱いを讃えるような内容かって推察できそうな気もした
ちょっと男を超人視しすぎてたか
6 Re: Name:匿名石 2016/12/15-13:19:59 No:00003142[申告]
ノートに記載されてるのが店員の回想そのままだとしたら歌についての言及はないな
あと女性だったから発情についても情報はないだろうし
リンガル使用が吉とでるか凶とでるか
7 Re: Name:匿名石 2016/12/15-13:25:32 No:00003143[申告]
どちらにせよ今後が楽しみ
ポチかわいすぎだろチクショウ
8 Re: Name:匿名石 2016/12/15-14:40:09 No:00003145[申告]
うーむ、この後どうなるのか?!
気になるが予測するよか今は作者さんの作品をただ待つべきかな
9 Re: Name:匿名石 2016/12/15-14:53:08 No:00003146[申告]
※6が男に見えて仕方ない
もしかしてポチという名前のペット飼ってない?
10 Re: Name:匿名石 2016/12/15-14:55:55 No:00003147[申告]
今回から切り替わった2期タイトルの虹の橋っていうのが意味深だな
虹はアーチのように見えるが実体がない光の現象
虹の根元に行こうとしても辿り着けず、まして歩けやしない

他の創作でも例えばマリオカートのレインボーロードなんか外壁がなくてちょっと操作ミスると落っこちる、レースやアクションみたいな操作系ゲーム苦手な子泣かせの転落ステージだしな

男は既にニンゲン側ができることはほぼ完璧にやってるし
これからはポチがペットとして成長できるかの物語になるんだろうか
メルヘンだと素晴らしい虹の橋だが実体はない
自分が橋を作れるのかと
11 Re: Name:匿名石 2016/12/15-17:07:09 No:00003148[申告]
今回も面白く読ませて頂きました!
躾が報われた時の喜びは、同じく動物飼ってる身として共感します

ところで虹の橋ってペット用語のアレって解釈していいのかな…
12 Re: Name:匿名石 2016/12/15-18:32:55 No:00003149[申告]
虹の橋ってペット用語というかペット賛美な詩があるのなあ
愛し合ったペットと人間、愛す相手がいなかったペットと人間同士しか出てこないけど
片方が愛情を裏切るようなやつだった場合はどうなるんだろうなあ
ポチがそうというわけじゃないが
13 Re: Name:匿名石 2016/12/15-22:31:42 No:00003151[申告]
なんつーか、この男というか
作者さんもかなりの甘ちゃんだよな(言い方悪いけど)
動物をペットとして飼うこと自体が人間のエゴなんて分かりきったことなんだから
開き直ってあくまで人間のオモチャとして扱えばいいのに
家族だとか愛だとか、下手に感情移入して悩むような人間こそペット飼うべきじゃない気がするわ
まあ俺が涼しい顔して家畜を絞めるババァを見て育ったせいかもしれんけど
14 Re: Name:匿名石 2016/12/16-07:41:58 No:00003153[申告]
そもそものポチを飼い始めた理由が躾損なった旧ポチの代用ってある意味で愛誤や虐待よりエゴの塊な理由だしね
それが「本物の愛情」に変わること自体は悪いとも言えないけど
何か違う気がする
15 Re: Name:匿名石 2016/12/16-12:07:53 No:00003156[申告]
家畜は食糧としての役割を持ってんだから絞め殺すのに感情は邪魔だろ
オモチャにするのとは意味が違う

たぶん作者さんは実装の愛虐どちらもまとめて良コンテンツとして広めて対立を無くしたいとみたが・・・
実際には愛虐で対立してるんじゃなくて虐待派の皮を被った原作汚すな派が煽って実装コンテンツを潰そうとしてるからな
そりゃ対立が無くなる訳ねーよ
16 Re: Name:匿名石 2016/12/16-12:19:40 No:00003157[申告]
鏡理論を振りかざして自分と意見や価値観が合わないだけの相手をくさす人こそが最低最悪に心が醜い糞蟲なんだよな
17 Re: Name:匿名石 2016/12/16-12:50:12 No:00003158[申告]
金持ちおばちゃは流行に飛び乗って甘やかしと駄目な飼い主ではあったけど悪意はなかった
まして、女性店員は動物愛護の精神で頑張ったのに1仔はあんな最期になった
実装石が純粋に人の心を映す鏡なら善意の人のもとにそんな悲劇は訪れないんですけど?
良くも悪くも実装石自身に飼い主の愛憎を超えた欲や願いがあるからそうなるんでしょ
少なくとも、この作者さんの、このポチの世界は人の心を映す鏡なんておためごかしではできてないと思いますね

※17
そういう自分が虐待派の一部はとか言って対立要素つけ加えてるんじゃ世話ないですわ
仮に本当にそうだったにせよ、広範な独自設定、世界観を持つとはいえ
元が二次創作なのに原作や元キャラについて特定の考えを持つやつらは敵だとか言ってもしょうがないでしょ
そんなこと決める権利は誰にもない
18 Re: Name:匿名石 2016/12/16-12:58:44 No:00003159[申告]
この作者さんのスレはいつも荒れるな
個人的に気に入ってる作品だからあんまり荒れてほしくないんだが
それだけ人気があると思うことにした
お前らも作者さんのきげんそこねてエタらせないていどにしてくれよ?
こっちは続きがみたくて仕方ないんだから
19 Re: Name:匿名石 2016/12/16-16:05:45 No:00003161[申告]
何で荒れるかって
他人の感想にケチつけるやつ
感想にかこつけて自分と違う考えの層を貶すやつ
これが悪い
特に後者は自覚ないことがあるからタチ悪い
20 Re: Name:匿名石 2016/12/16-18:21:29 No:00003162[申告]
>No:00003160
このレス自体がそれになってしまいますが、掲示板、少なくともこの作品のスレでは他人の感想への御意見はアウトですよ
前に荒れたときに何人もそう言う方がいて作者さんからも言われています
21 Re: Name:匿名石 2016/12/16-18:50:32 No:00003163[申告]
そんなこと言っても無駄だよ
虐待派が何か言うのは駄目だけど自分が言うのはまともな提案だからセーフってダブスタ僕ちゃん実装ちゃんの愛誤派には

屑蟲の愛誤野郎こそ愛護保管庫の再興でもして愛護書く作者さんを招聘して愛護以外のレス禁止ぐらいやる気概が持てないもんかね
22 Re: Name:匿名石 2016/12/16-20:41:43 No:00003164[申告]
※10
※6ですがポチどころかペットを飼ったこともないです
純粋に飼い主の男を凄いやつと思い過ぎて過度な期待をしてたなという話です
23 Re: Name:匿名石 2016/12/16-21:42:35 No:00003167[申告]
No:00003165
愛護派?のレス消して虐待派っぽい言い返してるやつだけ残るようなこすい真似しても
反論レスでどんな馬鹿レスだったか想像つくし、そもそも何か書いてた跡は残るんだから
片方だけ言われてる!って嘘ついても無駄っすよ
24 Re: Name:匿名石 2016/12/16-22:05:59 No:00003168[申告]
No:00003165
他の作品のところにはそういうこともあるかもしれないけど、このポチ関連に限っては全然そんなことないと思う
過去の回でも荒れて伸びてる回って双方が叩き返して無限ループになっていたようにしか見えない

大体、あなたは括弧内のことを特に恨みがましく思ってるみたいだけど
愛護ならかわいかった、虐待なら糞蟲ざまぁだけ書いていればいいものを反対派の非難や貶しになるようなこと書いたら反感買うに決まってんだろうが
そういうやつはむかつくだろうが互いに抑えましょうならまだしも
それで自分の悪くないと思う側が叩かれるのが納得いかんと恨み言吐く、おまけに片側の被害だけ主張
かなり偏った目線だと思う
25 Re: Name:匿名石 2016/12/16-22:15:05 No:00003170[申告]
粛々とポチかわいいとだけ書いてる人たちは愛護派
いちいち揉めたがるやつらは愛誤派
それだけのことだな
26 Re: Name:匿名石 2016/12/17-00:35:46 No:00003172[申告]
ポチがそろそろ中実装になってきたみたいだし
もっと身体的な変化や成体に近づくにつれての問題に進んでほしいな
今回はお歌いい歌詞だねニンゲンさんも感動するね以上のものはなかったし
27 Re: Name:匿名石 2016/12/17-13:38:06 No:00003178[申告]
実装石を人間に当てはめたがること自体どうでもいいわ
人間が考え出した架空の存在なんだから人間の精神を多少なりとも写してて当然だろうに
自分だけが綺麗で高尚な善人でございとか馬鹿じゃねえの
「臭い者身知らず」(臭いやつほど自分の臭さに気付かない)って言葉知ってる?
28 Re: Name:匿名石 2016/12/17-14:01:36 No:00003179[申告]
こうやって当初は悪いところもある敵への批判で無関係の人からも好意的にとられていた活動が気違いにみられて少数の馬鹿が喚くだけになっていくんだなあ
29 Re: Name:匿名石 2016/12/17-15:19:46 No:00003181[申告]
ポチかわいい
言い争うお前らもかわいい
30 Re: Name:匿名石 2016/12/17-16:44:26 No:00003188[申告]
※11-13のタイトル考察いいね
1期ラストみたいにタイトル回収するなら男とポチ両方死亡エンドもあるかもしれんのか
ハッピーエンドになるとばかり思ったがちょっと怖いな
31 Re: Name:匿名石 2016/12/17-18:44:34 No:00003190[申告]
また消してる
No:00003176もレスがついたから消すんだろうな
32 Re: Name:匿名石 2023/07/23-15:25:34 No:00007616[申告]
ガキ産みたいの歌かと思ったら…泣ける
33 Re: Name:匿名石 2024/02/03-21:03:27 No:00008679[申告]
あーーーーーーうぜええ!!
ポチマジでうっぜええ!!!
クソみてえな歌を歌ってるところを首根っこ掴んで床に叩きつけてぶっ殺してえわ!
やっぱ愛護スクってクソだな!(誉めてる)
34 Re: Name:匿名石 2024/02/29-18:20:29 No:00008823[申告]
愛護寄りの感想が多いけど敢えて言う
ポチをブッ殺したい
そしてたかが実装にマジになってる飼い主キモい
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