『 あるペットショップ店員の飼育日誌 』 私は今日も出勤してから直ぐに、日課である販売動物たちの世話を事務的に行う。 ノミやダニが寄生しやすい上、すえた体臭が漂う糞みたいな胎生生物達の世話は苦痛でしかないが、 残念ながら当店の売れ筋の商品達なので、せめて、さっさと売れて視界から消えてもらえるようにと、 仕方なく定例業務として、愛情は込めず、ただ淡々と、だが丹念に世話をする。 売れ筋商品は、見た目と健康状態に特に細心の注意を払って接している。こんな私だが、トリミング技術はちょっとしたものだ。 店長から店舗内に独自のトリミングルームを作りたいから、ちょっとトリマーの資格取ってこない?と持ち掛けられたりもした。 糞みたいな胎生生物の相手は最小限にしておきたいので丁重に断ったのだが、店長も売り上げ向上のために粘ってくる。 しつこかったので、それを取るなら、ついでに動物取扱責任者も取ってきますよ?といえば慌てて話を引っ込めてくれた。 卵生生物達の世話は、売れている種も、そろそろ取り扱いを終了しようかという種も関係なく、 丹念に、愛情深く、真心を込めて行っている。温度・湿度管理に始まり、こまめな清掃。 彼らは、清潔なのだ。本来は、自浄作用のないこんな狭い不自然な空間に置いておくべきではない。 だからこそ、弱らないよう飼育者が責任を持って丹念に丹精に保清に努めてあげなければいけない。 私は、定例業務である動物の世話がひと段落つくと、 相談窓口の受付に腰を据え、帳簿をつけながらコーヒーを飲んで一息ついた。 ふと、先日ここに訪ねてきた生真面目な男を思い出す。 普通のペットなら胎生だろうが卵生だろうが、1級愛玩動物飼養管理士として キッチリ躾の仕方をレクチャーしてあげて顧客獲得に努めるところだったのだが…。 よりにもよって実装石なんて…。 野良もほとんど見なくなり、やっと世の中から根絶されたと思ってたのに、 またも、あの生ゴミ生産機と関わる事になるとは予想もしなかった。 ガラッ… 「あ、これ…」 帳簿を仕舞おうと引き出しを開けると、 棚の底からボロボロの大学ノートと、埃をかぶったリンガルが顔を覗かせている事に気付く。 ノートを取り出し、ペラペラと中身をめくり私はフッと微笑んで独り言ちした。 「私も若かったなぁ…。これじゃ日誌というよりポエムね、ふふ。 …もし、もう一度、あの人がここに訪ねてきたら、これを渡すのも楽しいかも?」 私はノートを机の端に置いて、仕事に戻る事にした。 机に置かれたノートの表紙には、マジックペンで大きく 【はじめての飼育日誌】 と書かれ、表紙全体に可愛らしいハートが描かれている。 女性店員が席から離れた時の風に煽られたからなのか、ひとりでにパラパラと表紙がめくられる。 最初のページには、こう書かれていた…。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 私は動物が好きだ 小さい動物も大きい動物も、ただ“生きる”という事に対して懸命な彼らを愛している。 だが自宅の都合から、私はペットを飼う事ができなかった。 だからこそ、私は幼い頃から動物に携わる仕事をしたいと考えていた。 高校3年の時、近所のペットショップのバイトの片手間に2級愛玩動物飼養管理士を取得した。 将来は獣医や動物看護師になりたいと思った時期もあったが、 進路希望の際、獣医師になるには相当お金がかかる事を知り、あまり裕福ではない実家の兼ね合いもあり諦めてしまった。 ペットショップ店員なら特別な資格は必要ないようなので、その方面で就職する事に決める。 大手ペットショップの内定をもらい、高校卒業後、現在のショップに配属された。 実家からは少し遠く、今まで仲良くしていた友達とも進路が別々になってしまい少し寂しい。 初めての一人暮らしで緊張もしているが、これからは可愛いペットに囲まれて仕事ができるのだから、 一生懸命に頑張って働きたいと思う。 研修期間が終わる頃、1級愛玩動物飼養管理士も取得した。 配属先の店長や同僚達に、資格に受かった事を伝えると、とても褒めてもらえた。 認めてもらえて、すごく嬉しかった。 この手記は、私がペットショップ店員として動物たちを飼育していく中で、 気付いた事や、勉強しようと思った事を記していくためのものである。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------- このノートを書くに至った経緯は、10年以上前に遡る。 「最近、実装石という小動物がブームになっているらしいんだ。 知り合いの伝手でブリーダーさんから6匹ほど卸してもらえる事になったから、君、飼育担当してみない?」 店長は屈託のない笑顔で、私に話しかけてきた。 「え!? 私みたいな新人が、そんな直ぐに飼育担当してもいいんですか!?」 私は驚きの声をあげた。 「いやいや、君は飼養管理士もってるじゃない! 実装石は項目に入ってないだろうけど、愛玩動物なら、どれもそこまで大差ないだろうし。 試験的に取り扱ってみたいだけだから、飼育に失敗しても売れなくても全然オッケー。なぜか1匹あたりの単価が安いから。 どう扱えば成功するのか失敗するのかのデータ取りと思って気楽にやってほしい。 というか、初めて扱う品種だから、誰がやっても同じだろうし、うちの中では、たぶん君が一番向いているのかなと思って。 …で、どうだろう?やってみる?」 「はい!私なんかでよければ是非!」 店長の提案に私は二つ返事で答えた。 「そうか、よかった! じゃあ、よろしく頼むよ!」 「あ、店長! その卸してくれるブリーダーさんとお話ってできますか? 私も実装石は取り扱った事ないので、取り扱いの勉強しておきたいんですが。」 「オッケーオッケー。 明日、直接納品に来てくれるから、そのまま受け取りお願いしちゃってもいいかな?」 「はい、もちろんです!」 …もしも。 もしもの話だけど。 この時に断っておけば、今でも私は哺乳類を愛せていたのだろうか。 間幕 「あー、こちら、依頼された仔実装6匹っす。どぞ。ここにサインしてもらっていいすか?」 実装石の納品に訪れたのは、あまり覇気の感じられない青年だった。 「はい!ありがとうございます! 確かに受け取り致しました、ここで一緒に検品してもいいですか?」 私は、こんな青年がブリーダーとして勤まるのかな、と少し不安に感じる。 「はいはーい。」 男はそういうと、荷台に乗せていた段ボールを床に置き、蓋を開けた。 段ボールの底には薄く綿が敷き詰められており、その上で6匹の小さな小人のような動物がちょこまかと動き回っていた。 「わあ、これが実装石なんですね、初めて見ました。ちいさくて可愛いです。 これってペットモンキーっぽい外見ですけど、やっぱり哺乳綱サル目なんです? 何科の生き物なんだろ?」 私は可愛らしく動き回る仔実装石を見ると、ワクワクとした気持ちになって、男に投げかける。 「…あー…おねーさん、それ考えない方がいいすよ。学者も研究始めたばっからしいす。取り敢えず胎生で乳吸ってるから哺乳綱って分類みたいだけど、 それ以外は正直わからんす。なにせこいつら、単性生殖するし、再生力が異常だし、かと思えば割と簡単に潰れるわぺキぺキ折れるわで生き物として脆すぎるし、 綱目の分類すら学者の中でも論争の真っ最中なんですわ。 つうか、どこで誰に最初に発見されたかも分からんす。気づいたら双葉敏明つう学者の名義で実装石として日本固有種として承認されてたって感じっす。 でも不思議な事に、どこにもそんな名前の学者はいないんすよ。怪談話みたいっすよねw 今ブリーダーが育ててるのは山奥にコロニー作ってた奴らの子孫なんだけど、それ以前の発生起源とか生息地はなーんもわからんす。」 「…え!? なにそれ都市伝説みたい。…あの、人が飼っても大丈夫な生き物なんですか?」 「まあ見た目は賛否両論だけど、毒はないし、力もないし、ちょこまか動き回るから、 観賞ペット向きってことでブリーダーが繁殖させて広めてるんすよ。最近人気が出てきたから、俺もバイトの片手間に繁殖させてるんす。」 私は早速、それらの事をノートに書き留める。 「あの、繁殖は単性生殖って言いましたが、妊娠周期とか生殖可能な時期とかってどんな感じなんですか? 単性生殖ならたくさん増えそうなのに、今まであんまり知られてなかったってことは、繁殖時期とか方法が限られてて個体数少ないとかでよね?」 疑問がつきない私は、ズカズカと質問を続けていく。 「やー、それが…。これ、ほんとはブリーダーの中だけの秘密すよ。おねーさん美人だから特別サービスっす。 こいつらね、1年くらいで成体になるんすが、成体になったら年中繁殖できるんすわ。 妊娠周期も1月もない、繁殖モデルとしちゃハツカネズミみたいなもんす。ただ繁殖させて増やすだけなら、たぶん誰でもできるすね。」 詰め寄った私を見下ろすと、男は鼻の下を伸ばしながら、こそこそと私に耳打ちする。 「えっ!? て、そんな事教えて大丈夫なんですか?!」 私は男の開けっ広げな発言にびっくりして声をあげる。 「へへへ、実はね、こいつらすっげぇ躾しにくいんすよ。言う事を聞かせるにはちょいとコツがいるんす。 うひひ、おねーさんだから出血大サービスっすよ…ごにょごにょ。」 男は鼻の下を伸ばしながら、私の胸元を覗くように背後から鼻息荒く耳打ちしてきた。 …正直気持ち悪いが、こちらも商売だし、聞く立場なので、直接触れられない限りは、流すこととしよう。 …… ……… 「店長! あの人はパピーミルです!手を切った方がいいですよ!?」 男が帰り、仔実装石達をタオルケットで作った即席ベッドと共に、倉庫内のショーケース内へ移動させた後、 私は興奮してがなり立てながら店長に詰め寄った。 「ちょ、ちょっと落ち着きなさい! なにがあったんだね?」 店長は困惑した表情で私に問い返す。 「これ!これみてください!」 私はノートにメモ書きした事を包み隠さず店長に報告した。 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ 【 実装石 】 ドメイン:(おそらく?)真核生物 界:(おそらく?)動物界 門:脊椎動物亜門(これもおそらく、調教中に背骨を折ったりしたとか言っていたので…気分が悪い) 綱:哺乳綱(登録上は、とのこと。乳児期は、母乳栄養で育つ?) 目:不明 科:不明(科目はたぶんサルとネズミの中間なのではないか?私の推測だけど) 属:不明 種:Jiso-stones(気になってさっきネットで調べた、研究論文にはこれで登録されてる) (というかstoneて…石なの?もしかして鉱物界?よくわかんない、なにこの生き物。) 【 生態 】 成体までの成長期間は約1年。明確な雌雄はなく、 本来は男性生殖器を持たないメスのみだが、突然変異種として陰茎をもったオスが生まれる。 ただし、精液には精子が含まれておらず、精漿のみである。 成体になれば年中繁殖期、妊娠期間は20日前後。 単性生殖が可能だが、 総排泄口(構造としては鳥類と同様?)から胎内に異物が侵入する事が妊娠のトリガーになる。 妊娠期は両目が緑色に染まる。出産期に移ると両目が赤色に染まる。 出産が終了すると、赤緑のオッドアイに戻る。 (…なにそれ?そんな生き物聞いたことない。) 身体構造は、ほぼ哺乳類と同等で脳神経とそれを守るための骨格、筋肉と皮膚がある。 体毛はほぼなく、全体的につるつるとしている。 前頭部に1か所、後頭部に2か所だけ頭髪と思われる物がついているが、 毛根ごと抜け落ちると再生不能になる。 服を着ているように見えるが、あれはタンパク質由来の物質。 生まれた直後の幼体は裸で、出産期が終了した親が、 糸を吐き出し(蚕?目の変色と関係あるのかな?)、 これを器用に生まれた仔に巻き付けて服のように固める。 固まった糸は、仔の成長と共に皮膚表面から分泌される皮脂を吸って成長していく。 糸は出産期終了後の親からごく少量しか採取できないため、一度でも服を失うと替えがない。 そのためか、仔は常に服を手放そうとしない。服を失う事は、仔にとって大きなストレスとなる。 糸で生成された布切れさえあれば、完全再生とはいかないが、大きい布に育てる事は可能。 体の組成が非常に脆い。 自重×2以上の負荷がかかると潰れる、 自身の身長の半分程度の段差から落ちた衝撃だけで簡単に骨が折れる。 最も堅牢であるべき頭蓋骨と脊椎すら、40kg以上の負荷で砕ける。 そのためか非常に再生能力が高い、十分な栄養を取っていれば、 手足の欠損すら3〜4日で元の状態に回復する。 特に糖分摂取により再生力が爆発的に向上する。 糖分、水分については経口摂取以外でも皮下吸収により栄養素として直接体内に取り込むことができる。 生命を脅かすほどの重傷を負っても、砂糖水に漬けておけば一晩で治る。 骨折等は整復しておかないと、歪んだまま癒着するので注意。 ただし、毛根に関しては、どうあっても回復不能。 そのため、実装石は、抜毛を何よりも恐れる。 体内に“偽石”と呼ばれる謎の鉱物が生成されており(胆石とか尿道結石とは違うの?)、 これを物理的に摘出するとショック死する。 食性は雑食。ただし、飼い猫のように餌のグレードが上がると、質を落としたら食べなくなる。 食糧難になると、率先して共食いをする。 排泄する場所を決めると、その周囲を縄張りとして行動する。 糞が付いたものを自分の所有物として認識し、執拗になる(熊みたいなもの?)。 【 躾について 】 人間の言葉をある程度は認識する事ができる。ジェスチャーを混ぜると効果大。 だが、基本的に人間の言う事は聞かない。 痛みに対して非常に敏感。嗅覚・聴覚とも敏感なため、 刺激臭や大きな音でも苦痛を与える事ができる。 躾の際に、苦痛を与えると指示の通りがよくなり効果大。 特に毛髪を1本でも抜いたり、服を奪って細切れにしていけば、 替えが効かない事を認識しているので従順になる。 【ブリーダーが行ったトレーニング】 生まれてすぐに、毛髪を1本抜く。 親が糸を吐き出して服が完成した個体から順番に、一度脱衣させて、服の端っこを切る。 そのあと、指示通りに動くようになった個体だけ、躾を始める。 言う事を聞かなかった個体は、躾ても無駄なので廃棄する。 トイレ:覚えさせたい場所で糞をさせる。それ以外の場所で糞をしたら、すかさず針を刺す。 縫い針程度の刺傷なら、半日もかからず治る。 食事:授乳期が終わったら野菜くずを与えている。食べ始めさせるのは葉物から。 順調に成長していけば、顎の力だけは割とつくので、生の根野菜でもかみ砕ける。 一か所に正座させて食事をさせる。座らない個体や散らかす個体には即座に針を刺す。 挨拶:人間を見たら、首を垂れるようになるまで延々と動作を続けさせる。 形を覚えない個体は、壁に立たせた後、前屈させて肩からまっすぐに針を突き通して固定。 2〜3日放置しておけば、人間を見たら、自然にそのポーズを取り始める。 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ ノートにびっしりと書き留められた情報を見て、店長は目を白黒とさせるが、 ブリーダーの行ったトレーニングについて目を通す段になると、表情が険しくなる。 「なるほど、これは確かにひどいね。 うーん…。ちょっと僕のほうでも、知り合いにどういう事なのか確認しておくよ。 というか、これ本当なの? こんなびっくり生物、売っても大丈夫なのかなぁ?」 「私もちょっと不安なんです、店長…どうしましょう?」 「うーん……、もう代金は払っちゃったからなぁ。 ブリーダーに突き返すのも、こんな人間だと、もめそうだし…。 よし、ちょっと販売は見送って、しばらくお試しで倉庫内だけで飼ってみるか。 世話は引き続き、君に任せるよ。」 「…はいっ!」 この日から、私の忙しい日々がはじまった…。 「みんな、おはよー! ごはんの時間だよ〜!」 テッチゅ〜ん♪ テッチュ〜! テチュて〜! テっチテちゃ〜! テチュテちゅー! ……テチャチャ それからの私は、朝早くから出勤しては、一番はじめに仔実装達を入れているショーケースに訪れるようになった。 私の挨拶に、6匹それぞれの方法で挨拶を返してくれる。引き取ってから1週間が過ぎた頃、 1匹だけなんとなく不機嫌そうな感じで鳴いて挨拶をするようになったのだが、 あのパピーミルの男(長いので以後、パピ男と呼称することにしよう)が躾けたせいか、 全員、同じように首を垂れている姿を見ると、胸が締め付けられた。 痛みで躾をするなんて、私は嫌いだ。 負の条件付けは、確かに物事を覚えさせるには一番手っ取り早い。 体罰を与えた人間に対しては、確かに従順になるだろう。 でも、恐怖で縛るやり方は、メッキのようなものだ。直ぐに剥がれ落ちる。 これをすると楽しいことがある! そう感じられるようにするのが躾の基本だと思う。 不機嫌そうにしている仔から順番に、6匹の仔たち1匹ずつ、丁寧に丁寧に撫でまわし、髪の毛をブラッシングしてあげる。 ブラッシングが終わる頃には、全員テチャテチャとご機嫌に鳴く。 やはり丁寧に接していれば、相手に気持ちは伝わるんだ。 全員のブラッシングが終わったら、ごはんを配る。 それぞれに専用の餌皿を用意したのだが、それぞれ自分の皿を覚えていて、こちらが指示する前から、皿の前に座ってくれる。 今日のごはんは、八百屋さんでもらってきたキャベツの切れ端と、知り合いの豆腐屋さんからもらったおから。 「「「「「「テッちゅ〜ん♪」」」」」」 ごはんのときばかりは、6匹全員が声をそろえて嬌声をあげる。 朝から不機嫌だった仔は、急いで自分の分を食べ散らかすと、他の仔の食べているものに手を出そうとしていた。 「あ、もう、ちゃんとおかわりあるから! 他の仔のを食べちゃメっ!だよ♪」 テププ、テっチャ〜♪ テッチー、テチュチュっ! テチちゃ、てちちゅー 他の仔の餌に手を出す前に手のひらで視界を遮り、体を仔用の餌皿に向き直させてから、おかわりをあげると、 その仔は嬉しそうに笑って餌を貪る。他の仔も、餌を食べ終えたら、おかわりを欲しそうにテチテチと呼びはじめるので 私は全員に満足いくまで餌を与え続けた。 一番機嫌よく挨拶の鳴き声を上げてくれた仔は、マイペースなのか、ゆっくりゆっくりと最初に与えた餌だけを食べる。 おかわりをジェスチャーで示してあげても、首を横に振り、丁寧にお辞儀を返してくれる。 行儀の良い仔だな、きっとパピ男に一番厳しく躾られたのだな、かわいそうに…と思った。 はて、そういえば今、今まで出した事のない鳴き声をしている仔がいなかったか? ……気のせいかな? 仔たちが、ごはんを終える頃になれば、 私の方も、ショーケース内の掃除を終えて一息つける時間がくる。 最近、トイレ以外の場所にも糞をしている事があるが、まあ動物なんだし仕方ないだろう。 ケース内を自分の縄張りと認識しているのなら、それはそれで良い傾向だ。 …気になるのは、明らかにガラスケースの壁に意図的に糞を塗り付けている箇所がある事なのだが。 一息ついた後は、仔たちと遊ぶ時間だ。 スポンジボールを取り出すと、仔たちの前に放り込む。 「「「「「「テッちゅ〜〜〜♪」」」」」」 この時も、6匹全員が同じタイミングで嬌声をあげるので、おかしくって仕方ない。 この日は、始業時間になるまで、3on3の玉転がしを行った。 仔たちも白熱した攻防に満足したのか、運動が終わった後は、6匹とも即席ベッドに戻って テチュテチュと寝息を立てはじめた。 「あ〜ん、もうっ! みんな、かわいいなぁ♪」 私は、胸がほっこりと温まるのを感じる。 名残惜しいが、そろそろ始業時間だ。 私は、後ろ髪を引かれつつ、店内業務に勤しんだ。 間幕 「いやー、やっぱり君に任せてよかったよ。あの仔たちすっごいかわいいねぇ。 パピーミルから引き取ったとは思えないくらいの素直さだよ。 特に君がブラッシングしてあげてる時さ、すっごい気持ちよさそうにだらけてるんだよ、ふふ。」 店長が笑顔で私に話しかけてくる。 「てへへ、いえいえ、トリミングも勉強してたんで、ちょうど試せて良かったです。」 「…、あ、そういえばさ、今日のお客さんの中にな、実装石は取り扱っていないのか?って 訪ねてきた人がいたんだ。悪質なブリーダーから保護してあげたばかりで、 ケア中だから、まだお客さんに引き渡せる状態じゃないと答えたら、引き渡せるようになったら連絡くれって言うんだ。 どうだろう、何匹か売ってみるかい?」 「うーん、名残惜しいですけど、商売ですもんね。 そうですねー、みんな玉転がしが大好きなので、売るなら対の数になるようにした方が寂しがらないかもしれません。 餌を十分に用意できて、かつ多頭飼いできる方なら、オッケーなんじゃないでしょうか。」 「じゃあ、早速電話してみるか。」 間幕 「まぁまぁまぁ! これが実装石! かわいらしいザマスねぇ!」 派手な衣装に身を包み、両手にはこれ見よがしに宝石類で装飾を固めた中年女性が嬌声をあげて ショーケースの仔たちを舐めるように見つめる。 仔たちも最初は派手な人間が突然現れた事に驚いていたが、 しばらくすると中年女性の装飾品に目を奪われるかのように2匹の仔がテチテチと嬌声を上げ始めている。 装飾品が好きなのだろうか? そういえば、私は飾り気のない女なので、そんなもの付けてなかったが…。 ノートに追加しておこうかしら? △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ 【追記】 宝石などの装飾品が好き? 鳥みたいに光るものを集める習慣でもあるのかな? △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ 「どの仔も傷ついている仔ばかりですので、 めいっぱい優しくしてあげれば、心を開いてくれると思いますよ。 お友達との玉転がしが好きなので、よろしければ対で飼って頂いた方が寂しがらないかもしれません。 あとブラッシングが好きなので、お手数でなければ私がやり方をレクチャーさせて頂きますよ。」 私は営業スマイルで中年女性に説明する。 「えぇ!えぇ!ぜひおねがいしますザマス! どうしようかしら、どの仔にしようかしら!迷うザマスねぇ! まぁまぁ、この仔はどうしてこんなに大人しいのかしら!この仔にするザマスかねぇ?」 最近、不機嫌な挨拶をしていた仔も目の色を変えて手前に出てきて元気よくテチテチと鳴いているが、 いつもは一番にテッチゅ〜ん♪と挨拶を返してくれて、餌もねだらない仔は、 突然の訪問者に怯えているのか、ケースの隅に座っていた。 そんな仔を見とがめた中年女性は、その仔を選ぼうと手を伸ばすが、 仔はスッと手から逃れる。 テチ テチュテチュ、テッチュー と鳴きながら、首を横に振ると、 自分はいいから、他の仔を選んでほしいとでも言うように鳴くと、前脚で他の仔たちを指差した。 「あらまぁ! 他の仔に譲ってあげるのね、えらいザマスねぇ! そうね、取り敢えず今日は私に懐いてくれてる、この2人の仔にするザマス!」 「お買い上げありがとうございます! あ、実装石は飼いにくい生物なんです。なので、先ほどの件以外にも、飼う上で、 2〜3必要な知識がございますので、ご説明させて頂きたいのですが、少しお時間よろしいでしょうか?」 私は、手前で騒いでいた2匹を綿を厚く敷き詰めた販売用ケースに移し替えながら、中年女性に尋ねる。 「よろしくってザマスよ、おほほほ、あなたも行儀の良い娘さんザマスねぇ! 彼氏はいるザマス? よければお見合いのお世話しても良いザマスよぉ!」 「あ、あはは、お気持ちだけ頂いておきます、ご配慮ありがとうございます」 私は中年女性の言葉をやんわりと断り、パピ男から教わった実装石の特性をかいつまんで説明した。 中年女性は機嫌よく帰宅された後、4匹になった仔たちは、若干寂しそうにしていたが スポンジボールの遊びをさせてやれば、すぐに元気よくテチテチと鳴き始めた。 間幕 売られた2匹がいなくなってから、ケース内の掃除が楽になった。 どうやら、糞をガラスケースの壁に塗っていたのは、売られた2匹の仕業だったらしい。 全員、餌をゆっくりと食べるようになってきた。焦らなくても十分に餌がもらえると理解しているようだ。 ただ、最近は、全員が足を崩して食事を食べ始めている。 あの行儀の良い仔だけは今日も正座のまま、食べこぼしなく丁寧に食事をしていたが。 私が店舗内で商品の補充や清掃をしていると、3日前に仔を買っていった中年女性が店舗に訪れていたようで 気軽に話しかけてきた。 「あら、あなた! うちの仔たち、毎日元気にやってるザマスよ!仔どもたち用に一室こしらえたザマス! もう嬉しそうにはしゃぎまわるのなんの! それに教えてもらったブラッシングしてあげたら、もうびっくりするくらい甘えてくるザマス! わたくしと一緒に食事をしていたら、わたくしが食べているものを欲しがるので、ついついあげてしまうザマス。 わたくしったら甘いザマスねぇ! …そうそう、そういえば最近、リンガルっていう物が発売されたザマス、それを買ってみたらびっくりザマス。 実装石と会話ができるっていう素敵なアイテムザマスが、お値段がなかなか庶民には手を出せないのでかわいそうザマス。 それで、びっくりしたのが、仔どもたちは虐待を受けてたって聞いてたザマスが、壮絶なことをされていたザマスね、 あの仔たちが必死に私に訴えかけてきたザマスよ。そうそう、あなたの事は良く言っていたザマスよ。 綺麗なわたちのために尽くしてくれる役立つ人間テチですって、ふふふ愛されてたザマスねぇ。 しかし悪質ブリーダー、本当に腹が立つザマス。 わたくし、保健局に知り合いがいるザマスので、ちょっと注意してもらおうかと思うザマス。」 「ありがとうございます、元気にすごせているようで何よりです。 お客様の愛情が届いたのですね、ふふふ。」 中年女性は、いかに自分が買い取った仔が可愛いかの世間話をした後、 最近発売されたリンガルというものについて喜々として語り出した。 私は適当に受け流しつつも、顧客獲得のために丁寧な対応を心がける。 「あー、もう!あなたも可愛いザマスね! もし今の職場に不満があったら私のとこにきなさいザマス!面倒見るザマス!」 中年女性は、ペット用の遊び道具を何個か箱買いされた後、 上機嫌に帰って行かれた。 間幕 2匹が買い取られて1週間後、 中年女性が浮かない顔をして店舗を再び訪れた。 「あら!こんにちは! いつもいつもご来店ありがとうございます! …すこし、やつれてるようですが、大丈夫ですか? 奥に休憩スペースがありますので、休まれていきます? お茶くらいでしたら出せますので。 あの、あまり、ご無理はなされないでくださいね?」 私は上客の訪れを察すると、率先してこちらから満面の笑みで挨拶をして、 中年女性の疲労を気遣うように語り掛ける。 「……あなただけが癒しザマス。 ちょっと相談よろしいザマスか?」 …… ……… どうやら、買い取られた2匹が共食いをしたとの事だ。 2日前、中年女性が朝から別の用事で時間を取られて、ブラッシングできなかった日があったそうだ。 帰宅後に、仔の様子を見ようと部屋に訪れると、中年女性を見とがめた2匹がシャアア!と威嚇をしてきたとの事。 リンガルを起動させて、何を言っているか翻訳すると、見るのも堪えがたい罵詈雑言が並んでいたそうだ。 気分を害した中年女性は、2匹を構うことなく、 取り敢えず、この時点では神戸牛のステーキをそれぞれに5kgずつ、餌として補充して退室したそうだ。 翌日、部屋を覗いてみたら、入れて置いた餌はどちらも少し齧られただけだった。 部屋中が糞まみれになっていて、室内はどれだけ探しても仔1匹しかおらず、残っていた仔が部屋の中央に陣取りながら もう1匹の仔の体の一部と思われる肉片を、中年女性に見せつけるようにボリボリとかみ砕きながら、チププププと笑いかけてきたそうだ。 おぞましくて、リンガルで翻訳しようとも思わなかったそうだ。 「わたくしが悪いザマス!かまってやれなかったザマス!きっと餌が合わなかったんザマス! あなたに言われていた事を守れなかった私が悪いザマス! でも!でも!わたくしには、もうあの仔を愛してやれる自信がないザマス!!」 中年女性は、ほろほろと泣きながら語る。 私は無言のまま中年女性の肩にそっと手を置いて一息つくのを待った。 「ひっくひっく、あの、非常に申し訳ないザマスが、あの仔を返してもいいザマスか? お金はいらないザマス、というか、引き取り料を支払うザマス……。」 「…はい、仕方のない事だと思います。 もちろん、引き取らせて頂きますよ。ご心配なさらないでください。 お客様のせいではないですよ、お客様の愛が少しすれ違っただけでしょうから、気に病まないでください。ね?」 「もうあなたを娘にしたいくらいザマスぅぅ!うわーん!」 中年女性は私にしがみ付いて泣き始めた。 「実装石以外にも、飼いやすくて可愛い生き物はいっぱいいますから。 お客様も、これに懲りずに、ぜひ良い機会と思って、今後も色々な生き物を見ていってくださいね。」 私は、流れで仔を引き取る事を承諾してしまったが、 これも上客を手離さないためと思いつつ、次への布石を張っておいた。 「そうザマスね…気持ちの整理がついたら、またここに来るザマス。 その時は、ぜひあなたに、わたくしに合うペットを見繕ってほしいザマス…。」 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ 【追記】 餌が豊富にあっても、共食いをする? 理由は不明。 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ …… ……… 一応、事の顛末を店長に説明して了承を得られたので、仔を引き取りにいった。 中年女性の自宅は、正直引くくらいの豪邸だったのだが、 同時に、この客は絶対に私の固定客として手放せないとも思った。 (グッジョブ、私!) まあ、そこまでは、こんな事になっても比較的に機嫌はよかったのだが、 仔の荒れようを見てからは、気持ちは沈みっぱなしになってしまった。 豪奢な部屋の中は、見る影もないほどに弄便で汚されていた。 仔は、部屋に設置された高そうなクッションの上で横に寝そべっていたが、 自身のテリトリーに侵入してきた私を見つけると、チププと笑いながら投糞してきた。 私は突然の事に対処できず、諸に顔面に糞を浴びてしまった。 …… ……… しまった、非常にまずい事になった。 持ってきたケージに仔を入れる事は成功したし、躾の役に立つかもと中年女性がリンガルを譲ってくれたのは上々なのだが。 投糞を諸に受けた私に対して、中年女性が申し訳なさそうに大慌てで風呂と着替えを用意してくれた。 (風呂は全面が大理石で出来てた、初めてみた、おしっこちびりそうになった。 着替えは、ちょっとゴスロリ趣味が激しくて、なんか全部特注品で、カシミヤと純シルクしか使ってない物らしい。 ごめんなさい、私のマイブランドであるユニク〇が肌に馴染んでいる身からすると、ちょっとコレは着心地悪い。 まあせっかくなのでもらいますけど。) パピ男が糞をつけられたら、所有物と認識して執拗になると言っていた事を思い出す。 店舗に帰った後、私は、気が進まなかったがパピ男に店の電話から連絡する事にした。 「うーっす、誰すかー?」 「あ、パピ男さん。ちょっと聞きたいことがあるんですけど。」 「なんすかwパピ男ってwwwまあいいすけどwww あーおねーさんすか、ごめんっす。新しい仔は卸せないっすよ。 何か知らないけど、いきなり保健所の人が来てブリーダー業廃止するように勧告されたんすわ。 仕方ないんで飼ってたやつは公園に放逐して普通にバイトに専念してまーっす。デートのお誘いなら、10秒で支度していきまっす。」 相変わらず軽いノリである。 というか公園に放逐とかこいつクズ過ぎるでしょ。 「ごめんなさい、ホモサピエンスのオスに興味ないんです。 …あのですね、一度売れた仔が2匹いたんですが、餌も十分だったのに、共食いしたそうなんです。 それと、その…、私、引き取りに行ったときに糞をつけられちゃって……、どうしたらいいでしょうか?」 「あー、そりゃ糞蟲っすね、すんません、それ俺の責任っすわー。 他のブリーダー仲間とも飲み会で話題に出てたんですが、たまーに、うまく躾をかいくぐる糞蟲がいるんすよ。 んで、ブリーダーから離れた後、本性をさらけ出すんす。 そいつ生かしてても他の仔に悪影響しか与えないんで、サクッと潰しちゃってくださいっす。 それと、他の仔に会う前に、香水か何かで匂い消ししておいた方がいいっすよ。 あいつら、糞を塗り付けた奴は、自分らの言う事を聞くだけの奴隷って思うみたいっすから。 なんだっけ、前に飲み会で聞いたんすけど、発売されたばっかりのむっちゃ高いリンガルってあるじゃないすか。 糞を塗り付けられた金持ちの飼い主が、なんで糞塗りしたのか気になって、実装石の話を聞いてみたら、そんな事いってたらしいっす。 その飼い主、憤慨しちゃって、ブリーダーにその仔をリンガルごと送り返してきたって話っす。 バカ高いリンガルただでもらえるとかうらやましいっすねー。あ、おねーさんも今度一緒に飲み会いかないっすか?」 「あ、はいはい、ありがとうございました。」 「えもう終わりっす?wwwちょwwまwwww」 ガチャン 私は必要な情報だけ聞き取ると、男の会話なぞ長々と聞く気もなかったので電話を置く。 さて、取り敢えず、ファブリー〇でも振りかけておけば大丈夫だろうか。 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ 【追記】 糞蟲という個体について トレーニング中は、従順に従っているように見えるが、ブリーダーから離れると指示に従わない。 それは、犬とかもそうだけど、負の条件付けで躾たのが原因じゃないの? 私が躾に再チャレンジする必要があるかも。 糞をつけられたら奴隷と思われる? 香水などの匂い消しでごまかせる、かも? △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ それからの飼育は、悪戦苦闘の日々だった。 他の仔への影響や共食いの危険性も考えて、 返品された1匹だけは他の仔たちの横に新しく設置した別のショーケースで飼育した。 1匹だけ大事に特別扱いされていると勘違いしたのか、 チププと笑いながら、他の仔たちを嗤う。 正の条件付けをしようと思っても、仔にとっての快楽が提供できない。 何をしてあげても威嚇か嘲笑しか返ってこなかった。 これでは、そもそも正の条件付けができないじゃないか。 なるほど、だからブリーダー達も負の条件付けがメインになっていたのだろう。 あれだけ気に入っていたブラッシングも 他の仔たちのブラッシングが終わった後、最後に一番丁寧にやってあげても とにかく文句をつけたいのか、テチテチと私の指を叩いてくるばかりだった。 最初にやったらやったで、他の仔に見せつけるようにチププテププと挑発するので他の仔たちへの悪影響しかない。 その上、私が与えた餌をまったく食べずに投げつけてくる。 テチャァァシャアぁぁぁぁッ!!!! 「…威嚇しても、エサはそれしかないよ」 一度、贅沢の限りを尽くした仔にとって、野菜くずやペレットは餌として認識しないらしい。 何を言っているのか気になり、リンガルを起動してみれば、そこに並んでいるのは、 ただの罵詈雑言と、スシステーキコンペイトウという単語ばかり。 たぶん中年女性の家で食べて気に入ったものを思い出しているのだろう。 本当に実装石は人語を理解しているのか疑いたくなるほど、意味を成している言葉は見られなかった。 ストレス発散になるだろうと他の仔たちのボール遊びに混ぜてやってみたが、 一緒のケースの中に入れた途端に、他の仔たちにテチテチと何かしゃべりはじめ 突然殴りかかったり噛みついたりしはじめた。 すぐに引き離して隔離をし、ケガをした仔たちを丁寧に手当するが、 仔たちは、かみついた仔にではなく、私に対して威嚇をするようになった。 テッしゃぁぁぁぁ!!! シャアアアア!!!! テチテチャァァァァ!!!! チャァァァヂィィィ!!!! テッチシャァァァァ!!!! 私に対して威嚇をしないのは、あの元気に挨拶を返してくれる仔1匹だけになった。 威嚇する仔たちの後ろに隠れて、必死になって私に頭を下げていた。 出社する度に、鬱々とした気分になる私にとって、あの仔だけが癒しとなっていた。 最近は、挨拶を返してくれる仔以外、私の制止を一切聞かなくなった。 ブラッシングも待つことができず我先にと互いを押しのけ合い、殴り合いの喧嘩になる。 タオルケットでそれぞれを包んで拘束してからでないと、落ち着いてブラッシングする事すらできなくなっていた。 「なあ、少し実装石と距離を取って休んだ方がいいんじゃないか? 最近、思いつめた顔ばっかりしてるよ? その…、パピ男の言う事に従うわけじゃないが、こいつらもうダメだと思う。 ペットとして致命的すぎる、もう見限って良い頃合いだと思うんだが。 ……あー、君だと愛着もあるだろうし、その、僕が責任もって片付ける。」 「店長…。私、パピ男が言っていた事を、本当は守るつもりなかったんです。 パピーミルの言う事なんて聞くものかって。 正の条件付けだけで、この仔たちを躾けられる、そう思ってました…。 でも…、この生き物は、それじゃダメなんだというのなら。潰すくらいなら。 ……私に負の条件付けを使う事も、許可してくれませんか? …それでだめなら諦めます。」 「君は…、本当に責任感が強いね…。わかった。その仔らは、君に払い下げるという形にするよ。 もちろん、飼育費用は僕が出そう。無理と思ったらすぐに放棄していい。処理は僕がする。」 「…ありがとうございます。」 私は、仔たちをケージにいれて自宅に持ち帰った。 この日、私は心を鬼にして、 飼養管理士としての自分を一度だけ封印した。 …… ……… ふう、やっと仕事がひと段落つきました。 て、あれ? そちらのお客さん(画面前のあなた)、私のノートをみてどうされました? うふふふ、もしかしてペットの躾相談の方ですか? うふふふふふ、お待たせして申し訳なかったですねっ★ どうぞ気軽におかけになってください、親身になって相談に乗りますよ? え?なにも買っていかれない? 冷やかしに来ただけ? ノートの内容が気になっただけ? ついでだから話を聞いていきたい? (小声で)…ちっ。客でもない哺乳類と会話する価値なんてないのに、無駄な時間使わせてもらいたくないですねぇ。 (艶やかな声で)はやく相談終わって、フクロウをもふもふしながら、ヒョウモントカゲモドキを体中に這わせて、青大将の旦那に頬擦りしたry (満面の笑みで)あ、哺乳類なのに、私のノートを勝手に覗いているんですから、多少の罵倒くらいは覚悟してくださいねっ♪ …ああ、そのノートの負の条件付けについて本当か嘘か疑ってらっしゃるんですね? え、女性にそんな握力はないだろうって? …うーん、さて、お客さんは、ペットショップに限らず、雑貨店とかでバイトとかした事ありますか? 割とハードですよね、特に液体系やこんにゃく類とかの半固形系の商品陳列や補填なんて、 持ちにくさも相俟って、見かけ以上の重さを感じます。重労働なんてもんじゃないです。 ペットショップでは、それにさらに輪をかけて、生き物を取り扱ってるので慎重さを強いられます。 頻繁な移し替えができないような繊細な品種だと、ケースごと移動させなければならないので、 ストレスを与えないように、ケースを揺らさずに上下に移動させる握力が求められたりもします。 特にピンチ力とホールド力が重点的に必要になってきます。 まあ、何が言いたいのかと申しますと。 手が鍛えられます、普通に、満遍なく。 当時の私は、駆け出しでしたが、学生時代からペットショップでアルバイトを続けていたので、 今ほどではありませんが、それでも割と鍛えられていましたよ。 うーん、体力測定とかでは、確か男性の平均握力である50kgw程度の握力は出せていましたよー、ふふふ。 そんな握力があるので、40kg程度の負荷で砕ける実装石の頭蓋や脊椎なんて ピーナッツの殻を割るより簡単です。 (ゴキゴキッと、片手だけで把握運動を繰り返して、関節を鳴らす。) え、やっぱりもう帰る? それは残念です(笑) ではでは、私は仕事に戻りますので、私がいなくなった後、お気軽にノートの続きを見ていかれてもかまいませんよっ★ …ふ。…当時を思い出すと、鳥葬されたい気分になってきます。 ね え 、 あ な た も 一 緒 に 鳥 葬 さ れ ま せ ん か ? う ふ ふ ふ …… ……… 自宅に帰った私は、さっそく負の条件付けを開始した。 テッヂャァァァァァ!!!!??? テェテェ……テチテヂュゥゥゥッ!!!!! テヘッテフゥッテハァッ!!!!!???? テシャァァァ!…テ…テチュチュ……テチュン♪……ヂュッ!!!?? 最初は、パピ男がやっていたという針を通して姿勢を覚え込ませたという方法を実践しよう。 私は仔実装の巣として、水槽の底と側面にコルクボードを設置した物を用意した。 野菜くずを食事として与え、仔を呼ぶ。 仔が自分の皿の前に行かなければ即座にひっ捕まえて、 皿の前に膝を折り曲げるように正座させた後、肩口からまっすぐ下に、たたみ針を突き通して 足もろとも体を正座の状態で床に固定した。 この状態で食事を摂らせるため、食事の度に血の海となるが、 繰り返していれば特に気にならなくなった。 野菜くずを全て食べ終えた順に、 負傷状態を回復させるための砂糖水を正の条件付けとして与える。 だが、この方法では、針を見せている間は従順になるが、 私が針を持っていないと指示には従わない。これでは意味がない。 そこで私は、仔の回復力を利用する事にした。 ペキペキペキッ!!!!!!!! ボキッッ!!!!!!!!!!! テヂュッ!!! チュベッ!?? テヂャッ!!! ヂュウッ!!! 一匹ずつ、公開処刑するように、 仔を正座させた状態で足全体を指で摘み、徐々に指先に力を入れて時間をかけて骨を粉砕させる。 骨を砕いた後、肩口からたたみ針を通して、足もろとも正座の姿勢を保つように串刺しに固定して、 砂糖水の風呂に漬けて回復させる。 骨が再生する頃には、正座の状態で骨が癒着して、 針を抜いた後も、自由に立ち歩く事ができなくなる。 シャアァァァァァ!!!! テッヂャッァァァァッ!!!! ぶりゅりゅりゅ! チプププ…ブベッ!? ギリ、ギリギリッ! ブッヂィィッ!!! テ……ヂィィィィィッ!!!!??? 反発して、なんとか投糞しようと総排泄口に手を伸ばす仔がいれば、 糞を掴んでいる手を付け根からまるごと指先で摘み、一気に捻り潰す。 手に付着した血と糞は、その仔の髪を使って丁寧に拭う。 指先で髪をいじられる仔は、抜毛されるのではないかと、赤緑の涙を流して泣き叫ぶ。 だが髪の毛は抜かない、ブラッシングで正の条件付けに使いたいから。ただ汚すだけ。 フッシャァァァァ!!! ガボッ! グギギギギッ テガッ!? テハァッ テヒィッ !? ゴリッ… ボキッ! テッフェェェエ!? 私に咬みつこうとする仔もいた。 もちろん、負の条件付けだ。 私は指先だけを使って、仔の口を開口させる。 実装石とはいえ、さすがは動物。顎の力は40kg程度はあるだろう。 だが私のピンチ力をもってすれば、この程度の顎力なら、開口させるなんて造作もない。 私は開口させた仔の口から、歯を1本ずつ丹念に指先を用いて抜歯する。 負の条件付けを与える時は、徹底して指先だけに努めた。 これで、いかに人間の指先が仔にとって脅威となるか理解できるだろう。 私は、この指先ひとつで、あなたたちを傷つけることができるにもかかわらず、 あなたを傷つけないと決めていたのです。 まずは、その事を理解できるようになってほしい。 強制正座の状態で、従順に与えられた食事を指示通りに食べられるようになった仔から順に骨の整復を行う。 整復には痛みが伴うが、自由に動き回ることができるようになるので、これも正の条件付けとなるだろう。 正座状態の他仔を嘲笑う仔は、即座に骨を砕いて強制正座の姿勢に戻した。 これらを延々と繰り返すうちに、4匹とも強制正座にさせる事なく 餌を皿に置いた段階で自主的に皿前に正座で座り始めた。 威嚇や投糞をせず、従順に指示通りに動く仔から丁寧にブラッシングをしてあげる。 散々私に手をねじ切られて、私の指を怖がるようになった仔ですら、 ブラッシングが終わる頃には、テッチゅ〜ん♪と擦りより始めるようになった。 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ 【追記】 実装石は普通の涙も流すのだが、感情が昂ると結膜が損傷して赤緑の涙を流す。 再生力が高いので、破れた結膜は直ぐに再生するから、感情の昂りが収まれば結膜には傷一つ残らない。 負の条件付けは有効。 ただし、道具を使うと、その道具だけに恐怖を感じて、それを使う人間への恐怖は薄れる様子。 殴る蹴るは、実装石が模倣するので即時効果は高いが、持続性が薄く、同じ動作で仕返ししようとする。 身体構造上、つまむという動作ができないので、仔が模倣できない動作に重点を置いて負の条件付けを行う。 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ 1匹だけ、あの挨拶が元気な仔だけは、最初から最後まで私に従順だった。 他の仲間たちが私を嘲る間も、申し訳なさそうに俯き、今、私がしている躾を見ても 怯える事もなく、むしろ、丁寧に丁寧にお辞儀をしているのだ。 他の仔が寝静まった後も、その仔だけは、私が寝床に着くまで起きて私をじっと見ているのだ。 そんな仔だったので、ついつい甘やかすようになり、 他の仔が寝た後、私が飼育日誌をつけている間は、水槽から出して部屋の中で放し飼いをしてみた。 だが、その仔は、興味が引かれるであろう部屋の中を物色する事もなく 静々と私の横に寄り添っては、私の作業が終わるのを待っている。 そんな事が続いたある日、その仔と話をしてみたい衝動に駆られた私は、 使うつもりのなくなっていたリンガルを起動してしまった。 「ねえ、せっかく外に出てるんだから遊んで来たら? 自由にしていいんだよ?」 「テェ!? ママ、わたちとお話できるんテチ? うれしいテチ!うれしいテチ!」 仔は、私をママと呼び、一瞬だけ興奮した様子ではしゃいだが、すぐに姿勢を正して言葉を続ける。 「ママ、ありがとうテチ。でも、わたちはママのソバにいるのが一番たのしいテチ。」 私は仔の言葉に涙が出そうになる。 私がペットに求めていた事がそれなんです。 たとえ貧しくても、たとえ何があっても、 ただ飼い主と一緒にいるだけで楽しいって思ってくれる。 だからこそ、聞きたくなってきた。 会話ができる、意思が疎通できる。 私はもっと、この仔の気持ちを知りたくなった。 「ねえ、あなただけ、最初から私の言う事を聞いてくれたけど、どうしてなの? あなたの話を聴きたい。あなたが感じてた事、いっぱいお話してほしい。」 「テェ…、わたちは、生んでくれたママに言われたんテチ。 わたちたちのお世話をしてくれるニンゲンサンが、わたちたちのママになるんテチ。 お世話してくれるママといるのはたのしいテチ、お手てやわらかいテチ、髪の毛キレイキレイしてくれてうれしいテチ。 ボール遊びたのしいテチ、おトイレいつもキレイにしてくれてうれしいテチ。 お話できなかったけど、やさしい声をかけてくれてうれしかったテチ。 キラキラのおばちゃがきたときはびっくりしたテチ、ママのところから連れ去られるんじゃないかとこわかったテチ。 …でも、次女ちゃと三女ちゃは、ママをママって思ってなかったみたいで悲しかったテチ。 おばちゃがわたちたちの本当のママだっていって連れていけ連れていけと叫んでたテチ。 次女ちゃと三女ちゃがいなくなった後、寂しかったけど、みんな落ち着いて過ごせてたテチ。 次女ちゃはいつも、外に出せ外に出せ、糞をつけたのだから、そこは次女ちゃの物だって言ってたテチ。 …次女ちゃが帰ってきて、また、こわかったテチ。次女ちゃは、自分はラクエンにいたと言ってたテチ。 なんでも思い通りのものが手に入るテチ、おばちゃがママになって、サイコーだと言いふらしてたテチ。 おばちゃママを独り占めするために、三女ちゃをいないいないしちゃっテチ、わたちたちもいないいないちて 一石だけになったら、最後の一石になったら、またおばちゃママがきてラクエンに連れていってくれるテチて。 ママにイタイイタイされてからは、ママに一番気に入られた仔がラクエンいきになるって言いだしたテチ。 ……ほんとテチ? ママ、ママじゃなくなるテチ? またおばちゃがわたちたちを連れ去りにくるテチ?」 仔は私を見上げながらポロポロと涙を零す。 私も泣きながら、仔を優しく抱き上げて頬擦りをした。 「ちがうよ…全然ちがうよ! 私があなたたちのママだよ!もうどこにも連れて行かせないから! みんなが仲良くなれるように私も頑張るからっ! 今は、他の仔がイタイイタイされるのみて、辛いだろうけど! きっと皆、あなたみたいな良い仔になるから! だから…、ママを信じてっ!」 「 うれしいテチ!うれしいテチ! ママぁ!ママぁ! ずっと一緒テッチュ〜ん♪」 仔は私に頬擦りを返しながら、甘い声をあげた。 その日、私達は互いに泣きながらいつの間にか抱きしめ合って眠りについていた。 翌日、私は目を覚ますと、その仔を他の仔たちの寝ている水槽内に戻し、 慌てて仕事に行く準備を始めていた。 「それじゃあ、私は仕事に行ってくるからね。 あ、えと、おいしいものを食べれるように頑張って探してくるからね。」 「…わかったテチ、ママもがんばってくれてるテチ。わたちも何か手伝いたいテチ。 …そうテチ! わたちもがんばって次女ちゃたちを説得してみるテチ!」 「うふふ、ありがとう。 がんばってくれてるあなたのためにも、帰ってきたらみんなに素敵な名前をつけてあげるからね!」 「テェ!テェ! お名前テチ!? お名前テチっ!! たのしみテチぃ〜♪」 時間が押していたので、私は仔とのやりとりもそこそこに家を飛び出す。 リンガルのスイッチをオフにするのも忘れて…。 …… ……… 私は、久々に晴れ晴れとした気分で仕事に向かい、 待ち遠しさを抑えきれず足早に帰宅した。 だが、私を出迎えてくれたのは、かわいらしい仔の姿ではなかった…。 あの仔が、あの仔が… 素敵な名前をつけてあげようと、話したばかりなのに… ああああああああ なにこれ なんでそんな手足がバラバラなの なんでそんな干物みたいになって痙攣してるの なんでそんな蛆虫みたいなものを排泄してるの なんでそんなに体中が食い破られて喰い散らかされているの なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで あの仔を囲むようにチププと笑っていた4匹の仔が 私が帰宅した事に気付くと、さらにチプププと笑い声を高めたあと まるで何事もなかったかのように テッチュ〜〜ン♪ と頬に手を当てて小首を傾げていた。 私は頭が真っ白になるのを必死に堪える。 まずは、あの仔を助けなければ 私は急いで水槽に駆け寄る。 その仔は私が視界に入ったのが、よほど嬉しかったのか テっ……チゅ〜……〜ん…… と、せいいっぱいの笑顔を私に向けたあと、 赤色に染まっていた目を白く濁らせた…。 何が起こったの!? り……リンガル……リンガルで……この仔たちに何があったのか聞かないと…… 私は震える手を抑えつつ、机に置かれていたリンガルを手に取った。 そこで、スイッチが入ったままだった事に気付く。 「テッチューン♪ おかえりなさいませご主人様♪ こいつ、ご主人様の悪口を言っていたので、罰を与えたんテッチュン♪」 「チププ、とんでもない糞蟲だったテチ♪せーばいした私達に褒美をあたえるテチ♪」 「ちょっとしかってやっただけテチ、そしたら勝手に自分をかじり始めたテチ、ごめんなさいテチ〜」 「チィープップッ、だらしなくうじちゃんをぷりぷり産みながら死んじゃっテチ♪ママ、わたちうじちゃお掃除したテチほめテチ!」 残っていた仔の証言がリンガルに表示される。 本当なの? じゃあなんなの、その含み笑い? 私は、怒りに震える手を抑えながら、履歴を遡る。 リンガルの記録には、それぞれに番号が自動で振り分けられて詳細な記録が残っていた…。 1「次女ちゃ!四女ちゃ!五女ちゃ!六女ちゃ! ママはやっぱりママだったんテチ! みんなが良い仔にしてたら、ママが帰ってきたら名前をつけてくれるっテチ! おばちゃママなんてこないテチ! 前みたいに、みんなで仲良くママと一緒にボール遊びしようテチ!」 2「テッチャァァ!!! 嘘つくんじゃないテチ! おばちゃママがわたちをラクエンに連れ戻してくれるテチ! あの糞つけた奴隷がママ? はっ!笑わせるなテチ! わたちには、おばちゃママがつけてくれた、ハイエ〇ファント=グリーンという名前があるテチ! しみったれた奴隷が高貴なわたちに名前をつけるなんて、おへそで茶が湧くテチ!」 4「テシャァァ! そうテチそうテチ! あ、ちがうテチ!なんてらグリーンはわたちの名前テチ! わたちがラクエンにいくんテチ!スシステーキコンペイトウ!」 5「テェ…わたち、どっちを信じればいいテチ? ママはママてち? おばちゃママがママてち? どっちのおねちゃが正しいテチ?」 6「そんなもん、次女ねえちゃに決まってるテチ! わたち見てたテチ! こいつは、ママの手先テチ! ちがうちがう奴隷ママてち。 昨日こいつだけ奴隷ママと寝てたテチ! うらやましいテチ! あ、ちがうテチ! わたち達をだますなんて許せないテチ!」 1「テェ!?」 2456「「「「 こいつに制裁を加えなければいけないテチ 」」」」 …… 1「テッヂィィィ!!!わたちのあんよが!あんよが!やめてち!おてて、たべないでテチ!! やめテチ!やめテチ!みんな仲良くしないとママが怒るテチ!」 2「チーププ、もちろん仲良くするテチ。 あいつをだまさないとラクエンにいけないんテチ」 1「じゃあ、やめテチ! いまなら、わたちが自分でおてて傷つけたっていうテチ!」 6「うそつくんじゃねぇテチ!どうせわたちたちを悪者にして、ママに甘えるつもりテチ!」 2「こいつ、わたちたちを売って自分だけ助かろうと嘘ついてるテチ! これはもう許せないから食い殺すしかないテチね! チププ、殺しちまえば、あのバカな奴隷ママには分からないテチ。」 5「そうテチ? そうなんテチ!? それはゆるせないテチ! お前が自分でおてて傷つけたっていうのはわたちが奴隷ママに報告しておいてあげるテチ!」 4「クッチャクッチャ、てっちゅーん!お肉うまいテチ! チププっ、良い事おもいついたテチ。こいつにうじちゃ産ませてお肉食い放題テチ!」 2「テチャチャチャ! それ、いい案テチ! さっそく、こいつの血で目を染めるテチ! テッ、まだあばれるテチか、みんなこいつを押さえるテチ!」 ……… 1「も……やめ……テ…チ…… わたちの…仔…たべな……テチ……」 2「テプププ、サーロインステーキには劣るテチが、これはこれでやんわらかくてデーりしゃすテチ」 6「テチャー!ぶざまテチ! ママをひとり占めしようとした報いテチ! あ、ちがう、奴隷ママに取り入ろうとした報いテチ!」 ………… 1「テェ…ママ……てち……。ママのにおいがするテチ……おかえりなさいテッチュン…。」 ……………… 1「ママ……素敵なおなまえ…ありが……みんなで…仲良く……あそ…たの…し……テ……チュ…ん……」 …………………… 以上が、私がいない間に起きた顛末のようだ。 私は、水槽の中でボロ切れのように干からびて死んだ仔を 優しくすくい上げて泣いた。 ははは、なにこれ、こいつら、ひどいね。 ……ちがう、私のせいだ。 私が話しかけたから、この仔は私に褒めてもらおうと無理をしたんだ。 子どもに子どもが説得できるわけがない。感情論でしか語らないのだから。 私がこの仔と話して、特別扱いしたから、他の仔の嫉妬を招いた。 それが、この悲惨な現状につながったんだ。 ……この仔は私が殺してしまったんだ。 私が迂闊だったんだ、私が話したいと思わなければ、きっとこの仔たちは幸せでいられたんだ。 私に従っていれば、いつかは楽園に行けると、 それは妄想だし、事実ではないけど、でもそういう希望をもって生涯を過ごせただろう。 それを私が壊した…。 私が、この仔に思いを伝えてしまった、この仔の思いを知ってしまった。 だから、壊れた……。 あはははははははははははははは もう、どうでもいい… まあ、どうせなら…… 飼育日誌に追加できる項目を探そうか、こいつらを使って…… …… ベキボキバキッ ゴリッゴキッ ブヂッ 2「テッジャァァアァ!!!? わたちの、わたちのからだが、わたちのうつくしいからだがぁぁぁ!ない!ない!ない!!? テ……テヒ……テ…し、しんじゃ……ひぃぃ……」 私は、2の体を左右から圧壊させて真っ二つに千切り取る。 ちょうど上手い事に、心臓、肺、消化器官といった主だった内臓と、きらきらと輝く偽石と呼ばれる物体が 無傷に済んだのか、2は奇声をあげながらも生きていた。 せっかくなので砂糖水に漬けて置いて、この状態だとどのくらい生きられるのか、試しておく事にしよう。 グリュッ ブシュッ ビチュッ ポタポタ… ボコ! ぶりゅりゅりゅりゅ! 4「テぢゃぁぁぁぁ!!!? やめテチ!!!ひいいいいいい!!!!ぎゃああ!!!!!! お腹がぁぁぁ!!!!ひいいいいやぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」 4の両手を指先で毟り取る。毟り取った肉塊を絞って、4の緑色の目に垂らしてみた。 驚いた事に、目が赤く染まった瞬間、腹が膨れて大量の蛆虫が排泄されだしたではないか。 よく見たら、これ、蛆虫ではなく、小さな実装石のようだ。 未熟児だろうか。 まあ気持ち悪いので、総排泄口ごと圧壊させてみよう。 4「てひってへっ!あかちゃん、わたちのあかちゃんぅぅ!!!テッ!?」 ミシミシミシッ… ビキッ……パキンッ!! 4「テ……ハッ……」 どうやら運悪く、下半身ごと偽石を砕いてしまったようだ。 石が砕けると同時に、目の色が白く濁り、舌を出して死んでしまった。 チリィね、主要器官無事なのに石を砕かれただけで死ぬとか生物としてどうなの。 5「てちゅ〜ん!マ…ママっ! ご主人様っ! わたちはとってもいい仔なんてち! わたちは何もしてないてっちゅ……テッヂュゥゥウゥ!!!!???」 ブチッ ブチッ ブチッ 私は、5を抱きかかえると、末梢から中心に向かって、 手・足・体の順番に、小さく、小さく、つまんで千切ってやる。 「ふふふ、小さくなろうねー、小さいねーかわいいねー。 でもねー、嘘ついた仔は舌ぬいちゃおうねー。」 ブチリ 5「テベフェ!!!!」(パキン!) 頭部と胸郭部位のみを残して全身を小さく毟り取られた5は、最後に無理やり開口され舌を抜き取られたところで 胸郭の奥から破砕音が聞こえて息絶えた。 ベリッ 「あれ、偽石が砕けちゃってる。なんで?」 胸郭を指先で広げて確認すると、傷つけないように気をつけていた偽石が、 なぜか粉々に砕けていた。 6「わ、わたち!わたちはママが大好きなんてち! でもママは長女おねちゃを大事にしてたから、かなしかったんテチ!わたちもみてほしかったんテチ!!! おけけキレイキレイうれしかったテチ、なでなでうれしかったテチ!わたち、おねちゃのおにく食べてないテチ!!! イタイイタイしないテチぃぃぃ!!!」 必死になって血涙を流す6を見ると、さすがに哀れに思えてきた。 私は、6を抱きかかえて撫でてやろうと手を伸ばした。 6「て!?テェェェェェェェ!!!!!!!????」(パキンッ) 6の内部から破砕音が響く。 一瞬、感情がぐらついたが、気を取り直してデータ取りと考える事にした。 6を引き裂くと、やはり内部の偽石が砕けていた。 私は血まみれの手を洗浄し、そこらに散らばっている汚物を綺麗に片付ける。 2の生首は、せっかくなのでどこまで持つか、空きビンに移し替えてヒヤシンスのように机の上に飾る事にした。 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ 【追記】 一度でも共食いをはじめた個体は、 食事があっても躾を受けても、別個体を襲って食べる事を止めない、家族すら率先して共食いに誘導する。 共食いは感染する。そもそも多頭飼いに向いてない、危険。 一度でも糞を塗り付けた相手は、どれだけ躾で負の条件付けをしたとしても 自分より格下と認識するので糞を塗り付けられないように注意すること。 やっぱりカゾク食ってるようなのはダメだな、次! 口元を隠してチププと鳴き始めたら糞蟲だ、躾による修正がきかなくなるので処理しなければいけない。 目を赤色に染めると、なぜか強制的に赤子が出産される。 未熟児なのか、蛆虫みたいな形の実装石が生まれるようだ。 こいつらは嘘をつく。こいつらの話なんて聞く価値もない。 どうやら内臓と偽石さえ傷つけなければ、即死はない。生首だけでも砂糖水に漬けておけば長持ちする。 偽石を体内から摘出しなくても、心的ストレスを与えるだけで、偽石は砕ける。偽石が砕けると死ぬ。 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ 私は、翌日、どんよりとした面持ちで職場へ出かけた。 店長も同僚も心配そうに声をかけてくれたが、その言葉は右から左に流れてしまった。 私は自分のデスクの引き出しに、ノートとリンガルを仕舞い込み、しばらくの間、突っ伏して泣いた。 1週間ほど、そんな状態が続き、さすがに見かねた店長が、何も考えずに働けるようにと配慮してくれた。 しばらくの間、私は、鳥や爬虫類を中心に飼育を担当する事になる。 鳥の囀りは心を癒す。 近場に鳥がいないと、メスでも私に発情して求愛してきたり卵を産み始めるのにはびっくりしたけど、 同じ姿の鳥を近場においておけば、それも収まる。 そういえば昔、鏡に映る自分に恋して巣作りを始めた鳥の実話もあった。 店長に鳥の笑い話100選を聞いて、声をあげて笑った。 爬虫類は餌を与える人間の匂いを覚えているのか、餌付けをしばらく繰り返すと、私が近寄るだけで巣から顔を出してくる。 が、別にそれだけで餌がないとわかると普通に巣に引っ込む。 どれだけ丹念に世話しても、それ以上を望む事はしないのだ。触っても別に嫌がりも懐きもしない。ただじっとしている。 鳴かないのもいい。もし、たとえ仮に何か変な事を考えていたとしても。 声にださなきゃ、聞こえも伝わりもしないのだから。 ぶっちゃけ、喰う寝るヤル以外に難しい事を考えていないだろう彼らを見ていてると、 色々考えている自分が馬鹿らしくなってきた。 自宅に帰った後、未だに生きてテチテチ泣いていた2の頭をピーナッツの殻を割るように淡々と割り砕いて捨てる。 さあ、心機一転だ! 以降、私は気を取り直して、卵生生物を調べていくうちに、彼らがどんどん好きになる。 だからだろうか、売れ筋の哺乳類に比べて、すみっこのコーナーに追いやられている彼らを見る度に、 私は、あの仔の健気な姿を、彼らに重ねるようになったのかもしれない…。 --- 当時の流行語大賞 --- パ ピ 男 -------------------------- ------------ 特集! 昨今の実装ブームの隆盛と没落について (週刊〇〇より抜粋) ----------------------------- 富裕層に広まったリンガルにより、購入した実装石から発覚した実装ブリーダーの躾の体制が社会問題として提起される。 苦情を受けた保健所は、ブリーダー達に対して、軒並み業務停止・廃業勧告の指示が出された。 良識あるブリーダーが、泣く泣く実装石を殺処分して廃業する様を録画し、悲劇として放送する番組があったかと思うと、 非常識なパピ男系ブリーダーが公園や近場の森に、飼育していた実装石を放逐する無責任な場面を盗撮した特番や、 ペットショップ店員にパピ男系ブリーダーについての意見調査をした突撃インタビュー番組も出回っている。 実装石の保護を謳う一部の市民団体が、連日のようにデモを繰り返し、 公園に不法投棄されていた実装石たちへの餌付けを行いはじめた。 これにより公園の実装石は爆発的に増加する。 増加した実装石の糞害や、公園を利用していた子どもが咬みつかれて大怪我をした事件を受けて、 市民団体の活動は自粛ムードに移って行った。 一方、富裕層ではリンガル普及と共に、増長した実装石が飼い主に不快な言動を浴びせる事案が増加、メーカーへ苦情が殺到した。 事態を重く見たメーカーは、初期型のリンガルを全て生産中止・回収して、愛護用リンガルとして再調整した物を販売する。 だが、時すでに遅く、多くの富裕層での実装石ブームは、既に下火となっていた。 山積みの愛護用リンガルの在庫を抱えたメーカーは倒産。 メーカーの倒産後に、実装石の虐待が一時期流行するも、 ただ泣き叫んで逃げ回るだけの小動物を虐待する姿がテレビで報道されると、再び一部の市民団体が動き始める。 虐待が社会問題となり、中傷の的となったが、逆にそれらへの反骨心からか、 虐待派は、秘密裡に実装石の虐待を続けていった。しかし、安価で手に入る愛護用リンガルでは実装石の反応が萎えると 徐々に虐待ブームすら下火になっていった。 虐待派のブームが下火になれば、連日のように声をあげていた一部の市民団体すら実装石に関心が薄くなっていく。 相互に反発しあっていたからこそ、互いに油を注いで燃え上がっていたのだろう。 糞害や傷害事件を受けて、公園自体が封鎖されるケースも多く出てきたが、特集として組まれるほどではなかった。 次第に人々の関心は実装石から離れていき、日々の出来事や、事件、災害、より多くの話題性に富む題材に移って行ったのだ。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------- お し ま い {後書き} 前回もたくさんのコメントありがとうございましたm(__)m 女性店員さんが愛されすぎてて、作者冥利に尽きます。 今回の話は、少し長すぎたかなとも思いましたが、女性店員の話を何話も繰り返す訳にもいかず、 かといって短くまとめると、彼女の心情変化に共感を得られないのではないかと、苦肉の策で長編スクになってしまいました。 ……すみません、嘘です、私も女性店員さんを愛しています、ごめんなさい親バカです。 男とポチ編のストーリーの都合上、彼女はトリックスターとして描かざるをえなかったのですが、 彼女は真剣に実装石と向き合い、ひたむきに努力を重ねていました。 悲しい最後となってしまいましたが、彼女とあの仔の悲しみは、きっと次につながるんです。 悪役として描いたのは、パピ男と愛誤派の中年女性かな? まあ、彼や彼女にも、そこに至るまでの考えや自分の生活があるのですから、完全悪ではないのですけど…。 ちなみに、おばちゃママさんは、現在、女性店員さんのお勧めで爬虫類コレクターになってます。 糞だらけになった部屋は綺麗に改修して、ケヅメリクガメのお部屋になっているとの事。 女性店員さんとの会話が盛り上がって、最近では新しくアルダブラゾウガメを飼おうかという話になっているそうです(笑) …おばさんも今では幸せな毎日を送っておられるようで何よりです。 え、パピ男? 女性店員さん、哺乳類には興味ないので知らないそうです。 さて、作中の実装服の設定についてですが、 現在は皮脂と体毛が絡まったものとか、胎生期の保護膜の残りという設定で定着していますが、 初期のスクや絵とかだと、仔は裸で生まれたり、成体になるといつの間にか服を着ていてるとかの不思議設定がありました。 そのネタを発想元として、蛆が糸吐くなら、成体だって糸吐く器官あるんじゃね?とオリジナルの設定を追加させて頂きました。 瞳の色が変わるのも、妊娠期のホルモンバランスが影響して、糸を出す器官に血液が巡っていくから、とかそういう設定で(; ・`д・´) 瞳の色を変えた場合の強制出産の場合は十分な血液が巡ってないので糸が生成されないとかどうでしょうか(;´・ω・) もし、この世界でも、実装石が産業として定着していたなら、養蚕と同じくらい利用価値の高い畜産物になっていたのに残念です(;^ω^) そういえば昔、グレムリンって映画を見たんですが、驚くほど実装石ですよね、あれ。 かわいくって、醜くて、優しくって、邪悪です。 実装石誕生の最初期から参戦していたわけではないので、確実なことは言えませんが、 たぶん、設定の何割かは、グレムリンから取ってきたんじゃないですかね。単体でポコポコ増えるわ、良個体から変なの生まれるわ。 ※私個人の見解です(;´・ω・) 今回のスクを書き起こすにあたり、以下の内容の資格や名称について、ザクッとですが勉強してみました。 ●愛玩動物飼養管理士(1〜2級) ●家庭動物販売士 ●動物取扱責任者(保健局への第一種動物取扱業の登録申請に必要な要件) ●パピーミル ●ブリーダー 実装石のブリーダーって、ブリーダーじゃなくてパピーミルだったんだ!!! ん?虐待を魅力として実装を普及させるために良糞関係なく育成してるなら、そっちがブリーダー? 愛護派に高く売るために無理やり大量生産と躾をして、糞は潰して出来がいいのだけチョイスして売る方がパピーミル?? ヒャッハー!ゲシュタルト崩壊だーッ! いいんです、どっちでも。 実装石と関わって楽しみが見いだせるなら、愛虐関係なく、実装石が大好物って事なんだと思いますから。 ではでは、次回は男とポチ編に戻ります。それでは、また次回ノシ 追記:12/5 誤字・脱字の修正
1 Re: Name:匿名石 2016/12/03-09:06:44 No:00003022[申告] |
今回は毛色が違った作品でしたがとても面白かったです!
スクのために難しそうな本を勉強する作者さんすごい 店員さん、実装石と関わって狂ったのかと思ってたら意外と最初から変な人で笑いました しかしこの話も実装石は本能に従って行動しただけ、 店員さんも中年オバサンも普通に愛そうとしただけなのに、こうなったのは悲しいすれ違いか実装石の宿命か…… 単なる糞蟲化・虐待スクにならず読後に奇妙な切なさが残る良スクでした しかし覚醒した後に淡々と実装石の生態調査を行うお姉さんは実に怖い……(笑) 愛護な作者さんだからこそできる恐ろしさか…… せめて本編のポチは幸せな結末が訪れるよう願っています |
2 Re: Name:匿名石 2016/12/03-14:49:11 No:00003023[申告] |
虐タグはついてるけど
どっちかというと作者さんらしいショップ系悲哀スクだね 面白かった |
3 Re: Name:匿名石 2016/12/04-00:12:19 No:00003024[申告] |
実装石をよく知らない人間の素行や対応は観察や躾の分類でしょうね
結果が虐待にせよ愛護や愛誤にせよ結構好きです、この店員お姉さんも面白かったです |
4 Re: Name:匿名石 2016/12/04-06:28:06 No:00003025[申告] |
これ、いいな
店員さん主人公のシリーズも作って欲しい |
5 Re: Name:匿名石 2016/12/04-07:43:34 No:00003026[申告] |
女性店員はただ生真面目だっただけなのになんでこんなことに…
いい仔とあとはギリギリでどっちが正しいか混乱してた仔以外は糞蟲だな こんなもんリンガルがあってもなくても糞だ… おばちゃんのせいで増長したっていうけど選ばれた2匹は最初から糞蟲だったようにしか見えないし |
6 Re: Name:匿名石 2016/12/04-09:29:27 No:00003029[申告] |
糞蟲のせいでそりゃそうなるという目に遭ってる女性店員さんは別としてもこの世界、すごく冷静だな
実装出始め・獣害報告初期でブリーダー規制、その後は年表END的なヒャッハー的虐待派とプロ市民愛誤派の対立はあるものの社会全体は実装無視して絶滅寸前って 作者さんが落ち着いた方だと世界全体も知シブになるんだなあ |
7 Re: Name:匿名石 2016/12/04-09:43:21 No:00003030[申告] |
女性店員も実装だけじゃなくて哺乳類全体(そもそも哺乳類に分類するのは他の哺乳類に失礼だろ、このやろうばかやろう)嫌いになってるのはともかく卵生動物に幸せを見出してるし
実装石が誰も幸せにも不幸にもしていない ある意味でとてつもなく実装石に冷徹、冷酷な世界ですよ、ここ |
8 Re: Name:匿名石 2016/12/04-09:47:52 No:00003031[申告] |
女性定員も中年おばさんも最初期の一時期だけは幸せになってるんだけどね
リンガルとか糞蟲性とか以前に人間に近い知性を持つ人間以外の存在ってやっぱり本質的に人類の敵なんだろうか |
9 Re: Name:匿名石 2016/12/04-13:49:02 No:00003032[申告] |
従順な子も優しく世話してくれる女性店員こそニンゲンママと思い込んでおばちゃ拒絶してただけで正しくペットという概念を理解してなかったバカという可能性はあるし、運良く長じていれば成体、出産あたりで娘の私にさらに娘が生まれていけば子孫繁栄でママももっと幸せデスゥとゴネてた可能性もあるから本当に賢い良蟲なんていたのかどうか
それでも最期まで女性店員に従うべきと思ってただけ他の糞蟲どもの1億倍はいいペットだったけどね まともにリンガル使ったのが糞蟲の片割れの事情聴取とラスト2日ぐらいでこれだけの惨劇になるんだからリンガルとか関係なく糞蟲は糞蟲ですわ どうしようもねえ |
10 Re: Name:匿名石 2016/12/04-18:19:35 No:00003040[申告] |
いや、翻訳しなくたってうんこ投げや飢餓等の特殊状態でもないときの同族食いなんて度を越してクソ生物じゃないですかねえ |
11 Re: Name:匿名石 2016/12/04-18:33:31 No:00003041[申告] |
少なくともこの女性店員の過去に限ればリンガルによる人語訳が有効に働いた描写があるのは1惨殺事件前夜・当日ぐらいで
金持ちおばちゃ事件のときの無駄なコンペイトウスシステーキ除けばリンガルを使ったという描写さえほぼないんだがね 従順だった子の善意を拾ったことも含めて翻訳なんかするから酷いことになるんだっていうならその通りだし 描写はされてなくてもリンガルが存在した以上は日常的に使っていてそれでどんどん反実装・反胎生動物で精神崩壊していったのだって仮定まで出されようもんならオッシャルトオリデスゥだが |
12 Re: Name:匿名石 2016/12/04-18:58:09 No:00003042[申告] |
いつものことながら実装石含めて動物愛護の精神を基調にしつつ愛「誤」にありがちな動物チャンはただ本能で生きてるだけだから何しようが悪くない
何もかんも人間が悪い、飼い主が人間基準で解釈するせいみたいな動物無謬論、人間攻撃に走らず糞蟲はきっちり処刑するバランス感覚が素晴らしいです 女性店員がもっと早い段階で悪いことは悪いと叩きつけていればもっとマシな末路になってたんだろうってところも含めて硬軟あわせた対応をせんと駄目なんですね |
13 Re: Name:匿名石 2016/12/04-18:59:37 No:00003043[申告] |
ニンゲンさん同士ですら主義主張の違いやいろいろで文章解釈に揉めるのにニンゲンさんに都合いい翻訳がされるように鳴き声を出せなんて無理デスゥ
|
14 Re: Name:匿名石 2016/12/04-19:19:01 No:00003046[申告] |
※14
実装の言う通りだよ…と思ったがちょっと待て! リンガルの翻訳性能やニンゲンの解釈以前に悪いこと(と解釈される鳴き声)口にしなきゃ済むだろ それでも誤訳されるのやニンゲン側の都合で悪く捉えられるのはすまんが諦めてくれ |
15 Re: Name:匿名石 2016/12/04-20:30:41 No:00003047[申告] |
完璧糞蟲の仔実装2以外には嫉妬で仔実装1リンチに参加した仔もいるみたいだけどそいつも女性店員をドレイ呼ばわりだしな
サンプルがこれしかないけど仔実装の6匹中5匹が糞蟲ってちょっと飼育動物にするのは無理だろうなあ 翻訳抜きでも6分の2も明白な糞蟲がいるのはちときつい |
16 Re: Name:匿名石 2016/12/04-20:49:12 No:00003048[申告] |
犬の調教なんかは知らないが本気できついブリーダーさんの基準だと駄犬認定率はもっと高いんじゃないのかな
でも、室内飼いが前提の実装だともっと厳しいのかな まあ、ブリーダーにかなり早く禁令が出たからだろうけど業界がそれでもどうにかと必死に改善策を探しはしなかったっていうのがこの作品世界の答えなのかな |
17 Re: Name:匿名石 2016/12/04-20:58:29 No:00003049[申告] |
ペット系や食材系なんかの名作スクを読むと
現実の動物の扱われ方を実装石を通して擬人化しているようにも見える ついこの間も55万匹の鳥が殺処分されたし |
18 Re: Name:匿名石 2016/12/04-21:01:34 No:00003050[申告] |
自分の地域はまだ大丈夫でも隣国がやらかすと予防でやらなきゃならないんだよなあ、クソァ!っていうのも
愛誤地域のとばっちりでまともな地域の実装も…って展開でよく見る気がする |
19 Re: Name:匿名石 2016/12/04-21:03:05 No:00003051[申告] |
234は間違いなく糞蟲
5は流されやすいバカ仔なだけかな糞蟲を隔離しておけば店員さんに懐いたはず 6は一匹だけで飼ってれば甘えん坊なりに店員さんの言うことを聞いてただろうな この話がポチと男にどうからんでくるのか今から次回が待ち遠しい |
20 Re: Name:匿名石 2016/12/04-21:27:39 No:00003052[申告] |
ポチは今回の仔の中でいうと5か6ぐらいかな
教育が効くから絶対的糞蟲でもないんだろうけど所々に糞蟲行動が見られるから1のような善蟲ということもまずなさそう 自前の服をやられたから?にしても新しい服だ素敵なドレスだ言い出さない(言ってもわからないけど)で親の服の切れ端を腰蓑にしてるあたり家族愛は深いみたいだけど それゆえに成体になった暁には仔を欲しがるだろうことが想像に難くなくてどんな喜劇になるやら楽しみだ |
21 Re: Name:匿名石 2016/12/04-21:46:02 No:00003053[申告] |
>もし、この世界でも、実装石が産業として定着していたなら、養蚕と同じくらい利用価値の高い畜産物になっていたのに残念です(;^ω^)
作者様も入れて他人様の意見を否定するのはよくないけど、俺は厳しいと思います それこそ女性店員さんの大好きな爬虫類以上にお蚕様はあれこれ余計なことしませんし 餌と環境を整えてあげさえすれば生育して出すものを出してくれる、それだけ それに絹というのは希少性を別にしても古来から認められ続けた手触りと光沢という確かな満足がありますからなあ これに対して実装服は人間の虐待どころか実装同士の争いでもわりと簡単に破けるわちぎれるわ そんなのは虐待設定でこのスクの世界だとかなり丈夫だとしても人間が満足できるだけの質感なのかどうか 木綿ぐらいには丈夫で人肌が触れて大丈夫な素材だったとしてあの実装石に満足に食わせてストレス解消の遊びも与えて それで1頭から取れるのが生育速度にもよるものの半年につき子供服1個分程度 もし実装服が人間や同族に服を奪われた日には即効で、魔法みたいに即時にというのは無理にしても体内の養分を消費することで1晩も寝れば回復するものだったとしても 服を奪われるストレスを考えると5回10回連続で奪って廃棄するか回復期間を置いて3ヶ月に1度とかにしてそれでも寿命までに採取できる回数は限られる ブロイラー方式でガンガン詰め込んで育てても実装服の繊維さえとれれば全てよしと考えるにしてもそこまでいい産業には育たないかなあと |
22 Re: Name:匿名石 2016/12/05-00:02:41 No:00003055[申告] |
米6
前にそれで初期型実装石を撃退するってスク読んだことあるけど 結局のところ実装石って放っておかれるのが一番堪えるんだよね 人間に認知してもらわないと存在することすらできない |
23 Re: Name:匿名石 2016/12/05-01:23:19 No:00003056[申告] |
今回も読み応えあったわ
また続きを待たせて貰うぜ |
24 Re: Name:匿名石 2016/12/06-00:27:02 No:00003067[申告] |
※21
あとは実装石の着ていたものへの抵抗感か 実装石のお下がりなんて着たい、家族に着せたいなんてキチガイは愛誤派しかおらんだろう 極論を言えば天然素材なんて全部が動植物のお下がりではあるんだがそれがG、蠅、蚊、ドブネズミに並ぶ害虫害獣キングの実装石じゃなあ 単に名前にムシって付いてるだけの微生物のミドリムシだって食材として導入しようとしても引かれてユーグレナって別名でもまだ引かれてあんまり受け入れられてないみたいだしな だが、実食がある世界なら山のや牧場、生産工場のは野良とは別っていうのと同じ理論で実装服も受け入れられるか |
25 Re: Name:匿名石 2016/12/06-00:52:29 No:00003069[申告] |
愛誤派の富豪や研究開発できればなんでもいいバカ科学者が実装繊維産業を興すが普通の人には受け入れられずに愛誤派家庭だけでブームに
愛好者が少ないからこそ意地になってかえって過激化して子供にそのまま実装服を着せるような過激派も それがやがて実装石のくせに人間とお手々繋いでお散歩とは生意気だと過激派ヒャッハーに誤認襲撃される事件に繋がり… 痛ましい結果にここぞとばかりに虐待派排斥を進めようという愛誤系マスコミの意図も加わり大々的に報道されるが そもそも紛らわしいことをしなければそんな事件も起きないのでは?しょせん動物に過ぎないものを人間と同等以上に扱ったり人間に動物の格好をさせたりするから起きた事件との反論もあり 結局、実装繊維産業は混乱の果てに衰退するのであった |
26 Re: Name:匿名石 2016/12/06-12:26:26 No:00003072[申告] |
うわ、ありそう
誤認以前に実装でも飼いなら器物損壊でアカンやつなんだが それ以上の人的被害についてはキチ愛誤が何も知らない子供を趣味に巻き込んだからやろボケがって愛誤派が期待した虐待派攻撃以上の非難が飛びそう |
27 Re: Name:匿名石 2016/12/11-17:51:59 No:00003113[申告] |
虐待描写が甘い
糞蟲潰すならもっと無慈悲にやらないと |
28 Re: Name:匿名石 2022/12/14-21:27:43 No:00006632[申告] |
だとしても実装石の習性そのものがクソって絶対値は変わらないので…
人間の期待云々抜きにしても習性そのものがクソなものはクソ |
29 Re: Name:匿名石 2023/01/09-09:19:29 No:00006690[申告] |
力作だと思った
良かったです 氏のほかの作品も読んでみます |
30 Re: Name:匿名石 2023/07/23-11:09:49 No:00007615[申告] |
長女はいい仔だったのに実装石どころか哺乳類にも絶望しちゃったかー |
31 Re: Name:匿名石 2025/02/22-19:34:53 No:00009528[申告] |
結局パピ男は実装石の躾に関しては正しかったってオチ好き |