タイトル:【愛】 【躾】流行り廃りのその跡に、改めて実装石を飼ってみよう④ ~待てが出来ない~
ファイル:【躾】流行り廃りのその跡に4.txt
作者:ジャケットの男 総投稿数:27 総ダウンロード数:981 レス数:12
初投稿日時:2016/11/02-09:42:51修正日時:2016/11/02-09:42:51
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『 流行り廃りのその跡に、改めて実装石を飼ってみよう④ 〜待てが出来ない〜 』





コロコロコローッ
ポテポテポテっ!


テッチ、テっち!
テッチぃ〜♪
テッチゅ〜〜♪



段ボールの輪っかを男と転がし続けた仔実装は、汗だくになった自分の額を前脚で拭い
満足気な鳴き声を上げた。

時計の針は12時を少し回った処だ、軽く1時間以上の往復運動をしていた事になる。
仔実装の運動量としては十分過ぎるだろう。


「はは、ポチ、楽しかったか?」


男は横に倒れた輪っかにもたれ掛かって満ち足りた笑顔で休憩している仔に語り掛ける。



テッチュ〜〜ン♪



男の呼びかけに、仔は前脚を右頬に当てて首を傾げて鳴き声を上げながら反応する。


(また、このポーズか…。
 撫でた時、飯を前にした時、褒めた時に出た反応だよな…、たぶん嬉しいって感情表現?
 行動強化の反応で、これが出たら成功と思っていい…のか?
 まあ警戒しているって反応じゃなさそうだし、そのまま流していいか。)


「しかし、汗だくだな。よし飯の前に風呂にするかぁ。」



テチぃ!?
チュワ〜〜ンっ!!!



男の言葉に異様な反応を示して、仔は万歳をしながら男にすり寄る。


「ん?飯に反応したのかな?風呂か?
 風呂って何なのか理解できるのか?」


テッチュ〜ん、テチャぁっ!!


男の呟きはもはや耳に入っていないのか、仔は男を急かすように人差し指に抱き着いて丹念に毛づくろいを始めている。


「まあいいか、んじゃ風呂にいきますかね」


人差し指にしがみついている仔を抱えながら、男は風呂場に向かった。





脱衣室に着いた男は、指にしがみついている仔を何とか引きはがして風呂桶に入れ、
桶ごと風呂ふたの上に乗せた後、仔の服を洗濯するために脱がそうとした。


「ほら、お前の服を洗濯するから、脱ぎなさい。」


テチゅー??
テ、テテっ!?
テッチャァァーー!!


男が、仔の頭巾や前掛けを脱がそうと指をかけると、
どうした訳か仔は涙を流しながら嫌がって風呂桶の中をポテポテと逃げ回る。


「なんだろ、必死に逃げ回ってるが…。
 服を取られると思って怖がってるのか?
 綺麗にしたいだけなんだが…。そうだなぁ…。」


男は、桶の中を逃げ回る仔が疲れて一呼吸おいて座り込むまで待機する。


テッ…テッ…
テッチぃー…


桶の中でへたりと座り込んだ仔が、男を見上げるタイミングを見計らって
再度語り掛ける。


「ほら、服盗らないよ、服、綺麗にするよ。」


男は自分の服を脱ぐと、そのままシャワーノズルから湯を出して
服を湯に浸しながら、もみ洗いを実演してみせた。


テッ!

テチ…?
テチュぅ…??

テ、テチぃー…


男の行動を見て意図を理解したのか、
仔は、おずおずと自身の頭巾と前掛けを脱いで男に差し出した。


「はいはい、洗濯するからな。」


男は、仔から預かった頭巾と前掛け、そして自身の衣類を洗濯機に放り込んだ。


テチュー…


仔はボロ切れを胸元にたくし上げながら、
男の挙動をおどおどと不安げに見守る。


「それも綺麗にする?」


男は仔が抱きしめているボロ切れを指さす。



テッチャァァァ!!!
テチャー!テチーっ!!ヂィィィっ!!!



仔は必死に顔を横に振りながら、ボロ切れをぎゅうっと抱きしめてイヤイヤをしている。


「あー、じゃあいいよ、後で手もみ洗いしてやるから。」


男は、仔の必死さから、無理にボロ切れを手放させるのは辞めた方がいいと判断し、
仔を入れた桶をシャワーの跳ね返りが入らないように、風呂ふたの一番奥側に移動させた。


(さて…、名前は簡単に覚えてくれた訳だし。
 もしかしたら、待ても簡単にできるようになるかもしれん、試してみるか)


男は独り言ちした後、仔の前に掌を突き出して短く言い放つ。


「 待 て 」


テ、テっ…?


自身の眼前いっぱいに近づけられた男の掌に目を白黒させながら、
仔はどういう指示を出されたのか意図をつかめずにキョロキョロとあたりを見渡す。


男は、戸惑っている仔の反応に一切関心を示さないとアピールするように
横目で仔の様子を観察しながら自身の洗髪・洗体を始めた。


テェっ!
テち〜♪
テチュテチュっ!

テ?

テッチュー!!
テッチュン!!!


男が仔に一切向き合わず、黙々と自分の洗体をしている姿を見せつけられ
仔は自分も早く洗ってくれと言わんばかりに、男に向かって鳴いた。

しかし、男がその反応を無視しながら洗体を続けていると、
仔は桶の底に大の字に転がり、手足をばたつかせながら泣き始める。


テチー…
テェェェェンッ!!!
テェェェーーーンッ!!!


それでも男は無視をする。
すでに洗髪も洗体も終わっているが、仔が泣き止むまでは行動切り替えができない。
自身が茹だってしまわないよう、男はこっそりと蛇口の水をひねり、シャワーの温度を温めに調整して
横目で仔の様子を観察し続けた。


テー…
テチュン、テチュン…
チュぅー、ちゅん、ちゅん…


泣きつかれた仔が、外気にさらけ出したままの裸体を庇うように
丸まってスンスンと泣き止み始めたタイミングで男はシャワーを止めて、仔の頭を撫でる。


「よぉぉぉしよしよしよし!」


テッチューン!!
チュアーン!

ぺろぺろぺろっ


自分の頭を撫でている男の手を抱きしめた仔は、うれし涙を流しながら頬擦りをし始めた。
やはり無視される状況が一番堪えるのだろうか。


「よく待てたなぁ、次はポチの番だぞ。
 ほら、しゃわしゃわー、気持ちいいだろ?」


男は空いている手の方でシャワーノズルを持ち、水圧を弱めながら仔の体にゆっくりとお湯をかける。


テ〜〜♪
テッチュ〜〜〜ン♪


自分に降り注ぐ、温かい雨に仔は嬌声を上げる。


「お湯が怖くないかー、よしよし、いい子だ。
 きれいにするぞ。ほら、万歳。」


仔の前脚を上にあげるように、下からすくい上げる。
男の意図を察したのか、仔も笑顔で応じた。


テッチャ〜〜!


男は仔の体にこびりついていた垢を、ゆっくりとシャワーをかけながら指で擦り落とす。


テチュテチュ〜〜テチゅ〜〜♪
テチュテチュ〜テッチュ〜ン♪


仔は何やら音程の外した囀りを始める。
どうやら歌っているようだ。


「ほう、実装石って、小鳥みたいに囀りもするんだな。
 ふ〜ふふ〜ふ〜ふん♪」


仔の髪をシャンプーで丁寧に洗いながら、男もお気に入りのメロディを鼻歌で流す。


テ〜テチゅ〜チュ〜ちゅん♪


男の鼻歌に合わせて、仔も音程を合わせようとしているようだ。
洗髪の振動で、小さな頭を右に左にと揺らしながら、楽しそうに囀る。


「はは、うまいうまい。ポチは歌もうまいなぁ。」


テッチュ〜ン♪


仔が自分の鼻歌に合わせてきた事をこそばゆく思いながらも
男も気分良く洗髪・洗体を終わらせる事ができた。
男の褒め言葉を理解したのか、仔も鳴き声を返しながら両頬を前脚で押さえ顔を真っ赤にして頭をフルフルと振っている。


「さて、ポチも綺麗になったし、次は、その服を綺麗にするぞー。
 ほら、大切な物なら自分でやってみなさい。」


男は仔を丹念に洗い上げた後、石鹸の欠片を仔が持っているボロ切れに押し付けて
仔自身に洗濯するようジェスチャーをする。


テー…?


最初は何のことか?とでも言うように、小首を傾げて鳴くだけだった仔も
何度か男が手もみ洗いのジェスチャーをする事で、自発的に布を自分の手でこすり始めた。


「よぉぉしよしよし!」


男は仔の模倣を手放しで喜び、手もみ洗いをしている仔の頭を優しく撫でまわす。


チュワ〜ン♪


仔も布を綺麗にする事と、男に褒められている事を直結して把握できたのか、
布を手もみ洗いしつつも、涎を垂らし、恍惚の表情で頬を染めながら男に撫でまわさている。


しばらく、そんなやりとりを続けていると、すっかり仔の垢は落ち、髪にまとわりついていた皮脂も綺麗に洗い流せたようだ。


男は仔を桶においたまま風呂から上がり、手早く自身の体の水分をふき取り新しい服に袖を通すと、
洗濯機から脱水の終わった頭巾と前掛けを取り出す。

その後、洗濯機の上にタオルを敷いて桶から仔を取り出してタオルの上に乗せる。
ついでに、頭巾・前掛けと仔自身が洗ったボロ切れも並べてドライヤーで軽く乾かし始めた。



ブォォォォー…


てっちゅー!
テチャー!


ドライヤーの暖かな風に当てられながら、仔は大はしゃぎでタオルの上を飛んだり跳ねたり、転がりまわっている。



「こらこら、じっとしてなさい。しっかり乾かさないと風邪ひいちまうぞ。」


男は仔の脇を片手で優しく固定しながらドライヤーで一気に乾かす。


テチャチャチャチャー!


仔はドライヤーの風がくすぐったいのか
男の手の中でジタバタともがいている。


テッチューン!


ほどなくして仔の髪も服も、しっかりと乾き切り、仔は大喜びで乾いた服を身に着けた。


「よーし、飯の準備をするから、遊んで待っていなさい。」


男は身綺麗になった仔を、囲いの中に置いて
昼食の用意のために台所へ向かった。







間幕








仔は囲いの中に置かれた後、近くに段ボールの輪っかを置いてもらっていたが、
少し前脚でつついた後は、輪にもたれ掛かりながら男の消えた方をじっと見つめていた。


テチュ〜……


男がいるである方角を心配そうに見上げながら、仔は忙しなく動き回る。
しばらくすると、仔は食べ物の匂いが部屋に充満してきた事に気付いた。


テッチュ〜!

テッチュンテッチュン!
テッチュンテッチュン!


まだ男も、食事すらも視界に見えてもいないというのに、
仔は自身が食べれるであろう食事に胸をときめかせて前脚を上下に振り腰を左右に振るダンスを始める。

仔がダンスをひとしきり踊りきった頃、男が湯気が立ち上るプレートを抱えて仔の前に現れた。


「さあ、飯ができたぞ!」


テッチュ〜〜ンっ♪


男が食事の準備が整った事を述べるのと同時に、仔から嬌声が漏れる。
早くご飯を食べさせてくれ、とでもいうように、仔の身長の5倍はある段ボールの壁を
登れもしないのに必死に這い上がろうとイゴイゴと動き回っている。


(よし、やっぱり段ボールで囲い作っておいて正解だったな。行動範囲をいい感じに限定させる事ができてる。
 さっそく食事の待てを練習してみるか。まあ、この調子だと、すぐに待ても覚えそうだけどなー。)


「 待 て 」


男が囲いを跨がないように手前で歩みを止め、
仔に食事を見せびらかすように持ちながら、掌を仔の目の前にかざして、そう声を発した。

仔は越えられない段ボールを這い上がろうと蠢いていたが、
その言葉を聴くと急に押し黙り、しばらくの間、硬直する。



どのくらい経ったであろうか、仔の肩が震えだす。



テッ…テッ…
テッッチャアァァァァ!!!!!!!



興奮した仔は、足を踏み鳴らしながら、ぎりぎりと歯を噛み締め始めた。




「え!?なんだ、どうした!?」



男は仔がすんなりと待てができるだろうという目論見が外れ、
仔の突然の憤慨に理解が追いつかなかった。


そんな男の狼狽えた様子が見て取れたのだろう、
仔は、徐に腰に巻き付けたボロ切れを脱ぎ捨てると、
股前から排泄口に向けて手を伸ばし始めたではないか。


テチ!テチテチぃっ!
テッヂィィィィっ!!

ぶりゅりゅ!


そうこうしているうちに、仔は、排泄音と共にひり出された少量の糞を前脚で器用に掬い取る。
そして、アンダースローのようなポーズで、前脚を大きく後ろに引き始めた。


「あれ、俺…こういうポーズ、どっかで見たことあるわ…どこだったっけ…」



…そう。
男の脳裏には、幼少時に行った動物園で衝撃の出会いを果たした“奴”の姿が鮮明に蘇り、仔の姿と重なって見えた…。







つづく








{後書き}
前回も作品に多くの方からコメントを頂き、ありがとうございますm(__)m
予想以上にコメントがついて、作者に対する上げ落としなのではないかとビクついております(汗)

しかし、さすが、実装スク愛読者の皆様。
それぞれの方向はきっと別々なのでしょうが、皆様の変わらぬ熱意が伝わりました。
皆様の実装に対する熱意が続く限り、まだまだ、実装石は作中のように404notの向こう側には行かないだろうな、と安心した次第です。

というわけで、この世界にはリンガルなんて便利ツールも現存していないので、
仔の言葉や反応を正しく理解する事ができない男は、己の躾の成否が分かりません。

はたして男の躾は、功を奏すか、凶と出るのか…。
今しばらく、この男の地雷原でのタップダンスを堪能頂ければ幸いです。


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1 Re: Name:匿名石 2016/11/02-18:19:48 No:00002680[申告]
この男の実装石に対する無知による隔靴掻痒感、もはや快感。
可愛い子犬の様な描写の節々から漏れ出す実装石の本性がたまらん。
焦らしプレイの後を一虐待派の一人として期待しちゃうしかない!
2 Re: Name:匿名石 2016/11/02-21:01:20 No:00002681[申告]
この仔実装より、待てが出来ないのは
あ~だこ~だ好き勝手言う
これを読んでる奴らだけどね
3 Re: Name:匿名石 2016/11/02-21:39:34 No:00002682[申告]
>「よぉぉぉしよしよしよし!」
ああ、完全に褒めるタイミング間違えてるな
これじゃ「泣いたら褒められる」としか思わん
こりゃ犬の躾も失敗しますわ
飴と鞭、そしてそれを行うタイミングこそが
言葉の通じない相手に躾をするとき一番大切なことなのに…
4 Re: Name:匿名石 2016/11/02-21:42:46 No:00002683[申告]
うわあ、続き待ってましたよ!
前の作品のコメント欄が荒れたせいで嫌になってたらどうしようと不安でしたが、
相変わらず高クオリティの作品で嬉しいです!
そして平和一辺倒だった話がいよいよ動き始めるか……?

読者は(私も含めて)いろいろな期待をもって読んでいますが、
どうか作者様はご自身の本当に書きたい展開を描いてくださいね
5 Re: Name:匿名石 2016/11/02-22:22:46 No:00002685[申告]
せっかく続きが投下されたのにこっちでまで前回のコメを蒸し返す人が1番の糞蟲なんだよなあ…
まさに愛誤派!とでも言わせて荒れさせたいんでちゅか
6 Re: Name:匿名石 2016/11/02-22:29:05 No:00002686[申告]
糞投げか
糞投げなのか
お名前には大喜びだったのに他のことは覚えやしないってあたりで雲行き怪しかったけど
小さい仔だから、保護されたばかりで不安だからで済む域を踏み外し始めたかな
7 Re: Name:匿名石 2016/11/02-22:46:23 No:00002687[申告]
動物園のあいつ連想で気づいたけど実装って犬猫よりは猿類に近いのかもね
形にしろ余計な悪知恵にしろ
男も犬じゃなくて猿をペットにするつもりで教育するのがいいのかも
8 Re: Name:匿名石 2016/11/03-01:46:08 No:00002689[申告]
飼い犬であり野良猫であり食用鶏でありゴキブリであり
そして人間そのものでもあるのが実装石
9 Re: Name:匿名石 2016/11/03-01:48:53 No:00002690[申告]
飼い実装が常識の世界なら『その行為』一発で改善不可能とみられて終了だったかもしれないが
この飼い主ならショックは受けつつも改善させる努力をしてくれると信じてるよ
10 Re: Name:匿名石 2016/11/03-02:44:43 No:00002691[申告]
なまじ犬のようなもの、もしかしたら猿かもぐらいで悪意、敵意なく育てているからこそ
仔実装には実装の(そして実装知識がある世界の人間の)常識的にアリエナイ扱いで負担がかかって最後はパキン
そういうストレス死が先か、男がいい加減キレてぶち殺すのが先か
11 Re: Name:匿名石 2023/07/23-07:44:39 No:00007613[申告]
本当に可愛いもんですなあこの…糞蟲ちゃんはッッ!!
12 Re: Name:匿名石 2024/04/26-16:51:32 No:00009052[申告]
思い付きだけで躾を始める糞人間テチ…
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