タイトル:【観察】 ウジちゃんはウンチちゃん
ファイル:うじちゃんのこえ.txt
作者:レマン湖 総投稿数:17 総ダウンロード数:2185 レス数:2
初投稿日時:2015/06/14-03:25:52修正日時:2015/06/14-03:36:29
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「テッテレー!」
「テッテレー!」
「テッテレー!」
「テッテレー!」
 
 生命の歓びの声、次々と生まれてくる仔達。
親実装はウミガメの産卵のように涙を流してよろこぶ。
やさしく、次々と仔達の顔の粘膜を舐めとってゆく。

 長女は言った。
「ママ!はじめましてテチ!会いたかったテチ!」
 親実装は粘膜を丁寧に舐めとる。
みるみる成長する手足。グングン伸びるヨゴレを知らぬ美しい巻き毛。
「ママありがとうテチ。あとは自分でナメナメできるテチ。
 はやくイモウトチャをナメナメちてあげてテチ。」

 次女は言った。
「くるちぃテチ!はやくナメナメするテチ!」
 親実装はさっと表情を曇らせた。
次女はすぐにハッとした。
「ナマイキ言って、ごめんなさいテチ!ナメナメしてほしいテチ」
 そう言って透明な涙を流した。
 親実装は少しだけ悩んで、粘膜すべてを舐めとった。

 三女は言った。
「うチュくちくてカチこいワタチをナメナメできるテチ!こーえいテチ?」
 親実装は粘膜を舐め取らず放置した。
「ひどいテチひどいテチ!ワタチがうちゅくちぃからテチ?レチレチ?レフ-レフッ!」
 みるみる三女の粘膜は固着し、三女は蛆実装になってしまった。
三女はさっきとはうってかわって、天使のようにニコニコと笑っていた。
「レッフーン。ママ好き好きレフー。」


 四女はニコニコと笑って言った。
「レフ?レッフレッフ!レッフーン!プニプニフー」
 親実装は悲しそうな顔で粘膜すべてを舐めとった。
手足は伸びなかった。蛆実装のままであった。
親実装はなるべく苦しませないように、頭から一気にかじりついた。
「ペロペロプニプニレフ?プニプニフー!プニフー、プ…レピッ?」
 四女は死の瞬間でさえ、ニコニコと笑っていた。


「今日は誕生日パーティーデス。」
 親実装はとっておきのコンペイトウを一粒づつ長女と次女に与えた。
飼い実装であれば、いつかはニンゲンさんがコンペイトウを食べさせてくれる日も来るだろう。
だが野良に明日の保証はない。今日は多くの実装石にとって「最初で最後お誕生日」になる。
たった一粒のコンペイトウの味。コンペイトウの味を知っているのだという誇り。
そのあこがれを、プライドを、この先の過酷な実装生をおくる気力に変えていくのだ。

 これが最初で最後になるかもしれないコンペイトウだ。


 長女は言った
「ゆめみたいテチ!ママありがとうテチ。でもママの分はあるテチ?ママと半分こするテチ?」
 次女は言った
「テチャー!アッマアマテチ!もっとほちいテチ!
 オネチャの分を半分よこすテチ!なんなら全部たべてあげるテチ?」
 親実装は長女の頭をナデナデし、次女の頭にポカリとゲンコツをくらわした。

 次女はまた透明な涙をながして
「ごめんなさいテチ」
 と反省しているふりをした。

 長女が賢く愛情深いので、次女が糞虫にみえるが、
実は次女は実装石としてはごくごく平均的なタイプである。
むしろ反省しているふりができる知能がある分、平均よりもすぐれていると言える。

 イイ仔である必要はないが、イイ仔にみせる必要はあるのだ。

 だが三女は性格も悪く、なおかつ頭も悪かった。取り繕うだけの知恵もなかった。

 でも蛆実装になればそれも大丈夫だ。
ただニコニコと笑い、ウンチをモリモリ食べて、美味しい非常食となってくれる。



   蛆実装になれば、みんなみんな「イイ仔」になるのだ。



 だが四女はダメだ。生まれつきの蛆実装は身体が弱い。必ずすぐに死ぬ。
ウンチで太らせようとしても、いつの間にかパキンしてすぐに腐ってしまう。
「生まれなおし」させてあげるのがせめてもの親の愛情というものだ。


 三女、いや、もはやその名前は失われた。


 リボン、エプロン、靴、巻き毛、手足、名前、そして未来。
それらすべてを持たざる実装石、それが《ウジちゃん》とよばれる存在。


《ウジちゃん》は尻尾をピコピコとふりながら
「ウジちゃんもコンペイトウペロペロしたいレフ!」
 と目をかがやかせた。

 親実装はウンチをこねると器用にコンペイトウのような大きさにした。

「さぁ食べるデス。ウジちゃんのスペシャルコンペイトウデス」

「レッフーン!ウジちゃんしあわせレフ!とくべつなコンペイトウレフ!ままありがとうレフ!」
 ウジちゃんはうれしそうにウンチにかぶりついた。
「うれちいレフ!うれちいレフ!ウマウマレフ!アマアマレフ!」

「まだまだいっぱいあるデス。ウジちゃんはコンペイトウ食べ放題デス。よかったデス?」


『ママは嘘つきレフ。こんなのコンペイトウじゃないレフ。
 まるでウンチレフ。ウンチそのものレフ。クサイレフにがいレフまずいレフ。』

 どこかで声が聞こえたような気がする。
「レフ?ウジちゃんむつかしいことわからないレフ?」
 ウジちゃんは小首をかしげて、すぐにそんな事は忘れた。

 次女はニコニコとウンチを食べるウジちゃんを蹴飛ばした。
「クッサイテチ、垂れ流しテチ。ウジちゃんはウンチちゃんテチ。あっちいけテチ!」

 ウジちゃんはニコニコと笑いながら、ダンボールの端にたまっているウンチのうえを転がった。

「レッフーン、ウンチコロコロレフ、ウジちゃんうれちぃレフ!」

『痛いレフ、くさいレフ、ウジちゃんみじめレフ、かなしいレフ、泣いちゃいそうレフ。
 でも泣いたらうるさがられるレフ、泣いてもやさしくしてもらえないレフ。ポイされるレフ。
 ウジちゃんはひとりじゃ生きていけないレフ。ニコニコするレフ。ニコニコするレフ。』

 またどこかで声が聞こえたような気がする。
「レフ?」
 だがやはりウジちゃんは小首をかしげて、またすぐにそんな事は忘れた。


 蹴飛ばされ、尻尾が変な方向に曲がり満身創痍のウジちゃん。
だがウジちゃんはニコニコと笑った。笑ってお腹をみせて言った。
「オネチャだいすきレフ!プニプニしてくださいレフ!」
 またあの声がした。
『くるちぃレフくるちぃレフ、ポンポン痛いレフ。ウンチダラダラしか出ないレフ。
 つまっているレフ、ウンチしたいのに出ないレフ。出したいレフ。出ないレフ。』


「ウジちゃんはウジちゃんだからちかたないテチ。垂れ流しなのはあたりまえテチ」

 長女はそんなウジちゃんをみかねて、ウジちゃんのお腹をプニプニしてくれた。
やさしく、そしてウジちゃんのインナーマッスルでは不可能な力強さで。
プニプニ、プニプニ、プニプニ、プニプニ、プニプニと。

 ひと押しで喉元を焼く、逆流する消化物がストンと腹部に落ちてゆく。
 ふた押しで痛みと吐き気が消えた、下腹部がポカポカとする。
 さん押しで不愉快な膨腹感は消えた。全身の凍えるような悪寒が消える。
 よん押しで全身がポカポカになった。滞っていた血の巡りまでが良くなってゆく。

 プニプニされるたびに全身を駆け巡る高揚感と幸福感、そして恍惚。

 生きていていい。生きていていい。おまえはまだ生きていていい。

 プニプニする手がそう祝福してくれているかのようだった。

 そしてその時はきた。

 総排泄孔をつらぬく激しい快感。
体内に凝り固まった悪いものが、毒素が、苦しみが、一気に解放される。

「レヒャ!レヒャ!レッフーン!でるレフ、でるレフ、ウンチブリブリでるレフ!!!」

 自力ではとても排出できない固めのウンチ。それがミチミチ、ムリムリと押し出される。

 それはウジちゃんの全存在すべて、永遠ともいえる一瞬であった。

「レッフーン、ウジちゃんうれちぃレフ。オネチャスキスキレフ!」
『スキスキレフ。スキスキレフ。ウジちゃんのコト、スキスキになってほしいレフ』
 また聞こえるあの声。

「うじちゃんかわいかったテチ。いっぱい出たテチ。よかったテチ。」
 長女は髪にまで飛んだウジちゃんのウンチを、嫌な顔ひとつせずに葉っぱで拭った。
そしてウジちゃんのベタベタの総排泄孔を揉んだ柔らかい葉っぱで拭った。

 そんな長女をみて、母親は嬉しそうに長女の頭をなでた。


「デプププ、髪にウンチつけられているテチ!オネチャはドレイだったテチ!」
 次女はそんな事を言いながらオネチャの髪に自らのウンチをなすりつけようとした。
 母親はそんな次女をダンボール端のウンチだまりめがけ蹴りつけた。
「あとはもうないデス。次にやったらハゲ裸にひんむいてウンチたべさせるデス。」

「ママ、ごめんなさいテチ!オニクになるのはイヤテチ!」
 次女は泣いてあやまった。今度は透明な涙ではない。正真正銘の色のついた血涙であった。


『ウジちゃんはもうウンチモグモグレフ。ウジちゃんはきっとオニクになるレフ。』
 またあの声が聞こえた。
『でもしかたないレフ。ウジちゃんはこんなレフ。オニクになるくらいしかないレフ。』
 ウジちゃんは再び、すべてを忘れてウンチをモリモリと頬張りはじめた。





      ニコニコ、ニコニコ、ニコニコ、ニコニコと。

 

 







 ここ、リンガル研究所では、とある研究発表がおこなわれていた。


「リンガルは偽石同調システムという仕様上、実装石のうわべの言葉、表層言語だけでなく、その思考も反映することがわかっており…」



 発表者は28歳、女性研究員だ。見事にくびれたウエスト、柔らかく豊かな乳、そして匂い立つようなでっぷりとした臀部。
すべてがみごとに熟れきっていた。まさに食べごろである。こんな美しい彼女だが彼氏いない歴はイコール年齢であった。
その理由は彼女の匂い立つような豊満な双丘、いや、実際にそばによると臭うであろう、そのオシリにあった。


「通常実装石においては表層言語とその思考は近似値をしめす事が確認されております。
 ですが蛆実装においては、この高精度リンガルを使用すると表層言語と思考との激しい乖離が起こるケースが…」


 衆人環視の中、その羞恥、その背徳感、それが彼女のA感覚を刺激する。


「つまりこれは通常実装が偽石を強い自我で乗りこなしているのに対し、
 蛆実装は希薄な自我が偽石によって支配されている事を意味しています。
 群れが襲撃されている際、敵に笑面で腹部を差し出す蛆実装を観測した結果、
『カラスさんレフ!真っ黒でかっこいいレフ、プニプニして下さいレ・・・レピャ!!レッピャアアアアアア!』
 という表層言語と共に
『こわいレフ、こわいレフ、チヌのイヤレフ、でもどうせチヌレフ、逃げられないレフ、いっそひとおもいに殺してレフ
 でもコワイレフ、コワイレフ、チヌのやっぱりイヤレフ!イヤレフ、イヤレフ、どうちてプニプニのポーズになるレフ?
 イヤレフ、ころされるレフ、イヤレフ、チにたくないレ・・・レピャ!!レッピャアアアアアア!』
 という思考が観測されています。
 これは蛆実装が、敵をひきつけて群れを逃がす、いわゆる先天性ミオトニーをもつ"Fainting Goat"、
つまり気絶ヤギのような役目を背負っているためと思われます。
 家族以外の存在に危害を加えられた場合に、悲鳴と血涙という感情表現がより顕著におこるのは、
群れにその危険をしらせ、敵をひきつける役目を偽石に指示されているためだと思われます。」




 長いスカートのしたに装着された彼女の下着、それはまぎれもなく成人用おむつであった。




「…人類に擬態した生態をもちながら、幼生であるはずの蛆実装が人類の乳幼児のようにムダ泣きをしない理由。
 それは従来、実装石が他実装の涙に対して共感性をみせる事は著しく少なく、むしろそれは嗜虐心を増長させるため
 と考えられてきました。が、それがなぜ低知能な蛆実装に理解できるのか、長年の謎とされてきました。
 泣く、怒る、といった嫌悪コントロールは、むしろより知的であるはずの仔実装において顕著であったからです。
 それが今回の観察結果により、蛆実装が偽石によるコントロール下にあるためでもあると判明されたのです。
 蛆実装が常時笑面で、素直、純粋、イイ仔で利他的であると評価されるのも、偽石の支配下にあるためなのです。」


 
 おむつに密かに解き放たれたモノ。それは彼女の…



「…ですが利他的で個体よりも群れを優先させる偽石コントロールは、蛆実装の心身、そして偽石に負担をかけるものであり、
 それが蛆実装の偽石が崩壊、つまりパキンしやすい理由でもあると仮定されるのです。」

  

 研究発表を終えた彼女の顔はひどく汗ばみ、紅潮していた。
「すみません、ちょっと体調がすぐれないもので、失礼します。」
 そう言ってあわてて部屋をあとにした。

 彼女の言葉を疑うものは誰一人いなかった。

 トイレの個室でおむつの着替えをする彼女。
すると彼女のポケットに忍ばせた小箱にいる、ちいさな蛆実装が涙を流しながら訴えた

「ニンゲンさんレフ、ニンゲンさんレフ。プニプニしてください。ウジちゃん泣いちゃうレフ!」

 同時に高精度リンガルはもうひとつの言葉もあらわしていた。
『ニンゲンばかりブリブリレフ。ずるいレフ。ウジちゃんもブリブリしたいレフ。
 ニンゲンは涙をみたらやさしくしてくれるはずレフ。』


「あら、そんなことまで偽石はわかっているのね。」
 そしてナマイキな蛆実装の本音にも怒ることなく、やさしくプニプニをした。


「イイ仔に秘密はつきものよね。私、よくわかるわ。」

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1 Re: Name:匿名石 2023/10/26-23:17:00 No:00008164[申告]
プニプニされるウジちゃんの描写が秀逸
蛆になると馬鹿になるんじゃなく偽石に乗っ取られるって設定も面白い
2 Re: Name:匿名石 2024/03/29-03:51:08 No:00008959[申告]
途中まで面白かったのに
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