実装石は目の色を変えるだけで体調が変わる。 両目を緑にすると妊娠、両目を赤くすると出産、白く塗ると死ぬ。両目の色を逆にする と、実蒼石と同じようにボクゥと鳴き、それをやった人間は実蒼石に襲われるという。両 目を青くするとダワダワと鳴き、紫色に塗るとルトーと鳴く。 そこでひとつ閃いた。 というわけで、日曜日の午前中。 俺は自宅から少し離れた公園へとやってきた。 一時期あちこちの公園や空き地を占拠していた実装石も、最近はめっきり数を減らして いる。実装石が普通にいる公園も貴重なものとなっていた。駆除とか進んだしな。 ここも近所の虐待派、実験派、観察派その他が地道に管理している公園だ。 俺は広場の真ん中にスーパーで買ってきた金平糖をばら撒き、近くのベンチに座って自 動販売機で買ったジュースを飲んでいた。 ほどなく集まってきた実装石たち。 「コンペイトウデッス〜」 「あまあまデス〜」 数は二十匹ほど。ばらまいた金平糖をそれぞれ勝手に食っている。一ヶ所に集めてない ので、乱闘にはなっていない。乱闘になると後片付けが大変なんで、奪い合いにならない ように撒いたんだからな。 「ニンゲン、ニンゲン」 一匹の実装石が俺に近づいていた。両手を広げて俺にアピールしている。 「もっとコンペイトウ寄越すデス。あれだけじゃ全然食べたりないデス。お前がコンペイ トウ撒いたのは知ってるデス! その袋にもっと入ってるはずデス!」 俺の隣に置いた手提げ袋を、丸い手で示している。 実装リンガルに表示される言葉。画面の大きな電卓みたいな機械なのに、よくここまで きれいに実装石の言葉翻訳できるよなぁ。人間同士の音声翻訳機よりも多分高性能で安い 理由が知りたい。相手が実装生物って単純なナマモノだからか? さておき、調度近づいてきたことだし、こいつでいいか。 俺は右手を手提げ袋に入れながら、 「お前にはもっといいものをくれてやろう」 「いいものデスッ!」 あからさまな反応を見せる実装石。いいもの、という単語に反応して、目をきらきらさ せている。何を想像しているかは分からないし、そこは興味もない。 「まず、あっち向いてみろ」 俺はリンガルを持った左手の人差し指を南の方へと向けた。 白い積雲の浮かぶ晴れた空。温かな日差しと、微かなそよ風。公園に生えている若葉と 花の香りが微かに感じられる。絵に描いたような春の風景だ。 「デス?」 言われた通り素直にそちらに目を向ける実装石。 俺は手提げから取り出した三角プリズムを、実装石の目の前にかざした。押入の掃除を していたら出てきた三角プリズム。小学生の頃に親から買って貰ったものである。一面に は切れ込みを入れた黒い紙を貼り付けてある。 黒い紙の隙間からプリズムを通った光が、実装石の目を虹色に染めた。 さて、目に虹色の光を入れたら何が起こるかな? 「デ、デ、デェェェェ!」 目が虹色に染まり、実装石が痙攣する。 と同時に、全身が虹色に輝きだした。目だけではなく全身、肌や髪の毛、実装服までも 虹色に変化している。きらきらと光の粒子が身体から放たれていた。 こいつは、予想外……。 何を予想してたかと訊かれても答えようがないけど。 「漲ってきたァデェッスゥゥ!」 両手を振り上げ、大声で咆える実装石。 とりあえず。 俺は金平糖を拾い食いしている実装石の方を勢いよく指差した。 「レインボー実装ッ、突撃ィィィィ!」 「デッスウウゥゥゥゥ!」 両手を横に広げたまま、虹色実装石が勢いよく走り出す。その速度は、成人男性の小走 りくらいの速さだ。普通の実装石がどんなに速く走っても、大人の徒歩くらいの速さにし かならないのに。これは虹色化の効果なんだろう。 走る実装石の後ろを虹色の残像が追いかけている。 「デ? なんデス?」 金平糖を拾っていた実装石が顔を上げた。 そこへ、虹色実装石が突撃する。 「デギャッ!」 ポキュン。 真上へと吹っ飛ばされた実装石が、気の抜けた音を立てて砕け散った。地面に落ちたの は肉片ではなく、十個ほどの金平糖。原理は謎だが、実装石が金平糖に変化している。 ……すげー。 「デギャッ!」 ポキュン。 「デスッ!」 ポキュン。 「デ——!」 ポキュン。 「デヒョッ!」 ポキュン。 軽快な音とともに、実装石が金平糖になって地面に落ちる。虹色実装石は金平糖を食べ ていた実装石たちを次々と吹っ飛ばし、金平糖に変えていった。 「お前ら全員金平糖になるデスゥゥゥッ!」 「こっち来るなデスゥゥ!」 金平糖に夢中になってた実装石たちも、虹色実装石の危険に気づいたらしく、慌てて逃 げ始める。俺がばら撒いた金平糖もほとんど無くなっているというのも理由だろう。 「逃がさんデスゥゥ!」 虹色実装石が跳び上がる。大人の背丈ほどの高さまで。 実装石では到底無理な高さであるが、虹色実装石はあっさりとジャンプしていた。丸ま りながら空中を舞い、逃げていた実装石の頭上へと落下する。 「デハッ!」 ポキュン。 吹っ飛ばされた実装石が砕け、金平糖になって地面に散らばった。 「何なんデスゥゥ!」 「コンペイトウは大好きデスけど、コンペイトウになるのは嫌デスゥゥゥ!」 ちりぢりに逃げる実装石たち。その数は最初の半分くらいに減っていた。残りの半分は 虹色実装石の体当たりを受けて金平糖になってしまっている。 「デーププププー! ワタシから逃げられるわけがないデスゥゥ!」 両腕を広げて疾走しながら、虹色実装石が得意げに高笑いをしていた。走るうちに速度 は増し、既に大人の全力疾走並まで加速している。実装石がそんな走り方したらすっ転ぶ だろうけど、虹色実装石は安定したまま走っていた。 「デギャッ!」 ポキュン。 「デスッ!」 ポキュン。 二匹の実装石が吹っ飛ばされて、金平糖になる。 「次はどいつデッシャァァアァ!」 だが、そこまでだった。 虹色に輝いていた実装石が、突然元に戻る。全身を包んでいた虹色の輝きが消え、普通 の目と肌、実装服へと戻った。時間切れのようである。 「デッ!」 元虹色実装石が、地面に落ちていた金平糖で足を滑らせた。虹色状態の実装石離れした バランス感覚も残っていないようである。だが、走る速度はほとんど落ちていなかった。 結果、そのまま前のめりに顔面から転倒。 「デギャガデゴギャギュッ」 悲鳴を上げながら五メートルほど地面を転がった。 これは、痛そー……。 仰向けに倒れた元虹色実装石。 「デッ……デェ……。痛いデス……」 右手と左足は根元から千切れかけ、右目が潰れ、頭も陥没している。背骨にもダメージ があるようで、起き上がることも動くこともできない。満身創痍だけど、この程度じゃ死 なないし、数日寝ていれば治るのも実装石である。 大人しく養生できたらの話だけど。 三分ほどして。 周囲の物陰に隠れていた実装石たちが、元虹色実装石の元へと集まってきた。もう危険 はないと判断したようである。 「よくもやってくれたデスね?」 「覚悟はできてるデスゥ?」 元虹色実装石を取り囲む六匹の実装石。 「に、ニンゲン……! ワタシを助けるデス!」 咄嗟に俺に助けを求めてくるが、 「諦めろ」 俺は笑顔で親指を真下に向けた。面白いものを見させてもらったけど、助けてやる義理 はない。周りの実装石を吹っ飛ばしたのは、お前自身なんだからな。 それを合図に速やかなリンチが開始される。 「何でこうなるデスゥゥゥゥゥ!」 元虹色実装石の悲鳴が晴れた空に響き渡った。 END マリオギャラクシーの動画見てたら思いつきました。 過去スク 2081.【観察】 Narcotic Addict − 麻薬中毒者 − 疑似実装麻薬投与実験.txt 2077.【馬・虐】〈紫〉マラカノン砲 マラマラ団襲撃.txt 2071.【馬鹿】〈紫〉虐待してはいけない… 友人の仔実装石姉妹.txt 2066.【虐・実験】 ジッソウタケ 野菜泥棒石後日談.txt 2057.【虐・他】 中途半端な賢さは… 野菜泥棒実装石.txt 2038.【虐・愛?】 ダイヤモンドは砕けない 真性愛護派(誤字修正).txt 2031.【馬鹿】 雪華実装は鍋派? 実装石料理.txt 1994.【虐・観】 時間の狭間に落ちる 不変不動の世界.txt 1988.【虐】 クリスタルアロー 実装石射撃練習.txt 1983.【馬鹿・薔薇】 リベンジ! 完全版 突発的発想その2改.txt 1980.【馬鹿・薔薇】 リベンジ! 突発的発想その2.txt 1977.【虐・観】 懲役五年執行猶予無し 神社公園元幹部実装石.txt 1970.【実験・観察】 素朴な疑問 神社公園実装石実験.txt 1958.【虐・実験】 虐待&リリース 託児実装石虐待.txt 1954.【獣・蒼・人間】 騎獣実蒼の長い一日 金曜九時半作戦決行.txt 1952.【軽虐】 既知との遭遇 双葉山実装探索記.txt 1944.【馬鹿・薔薇】 水晶ハワタシノ魂ダ! 突発的発想.txt 1941.【色々】 実装社交界の危機 神社裏色々実装物語.txt 1939.【駆除】 ススキ原の実装石駆除 実装虐待用薬品処分.txt