「死ぬのと耳削がれるのどっちがいい?」 仔と仲良く手を繋いで狭い路地から出てきた実装石に前屈みで問いかける。 『デェッ!ギャクタイ派デスゥ!!』 明らかに怯えた表情で俺を見上げた親実装が叫ぶ。 そして仔の手を引き逃げようとするが、すかさず足を引っ掛けてやる。 『デッ』 『ヂッ』 親子仲良くすっ転ぶ。 親実装はすぐに立ち上がろうとするが、 仔の方はアスファルトの地面で顔を摩り下ろされたようで膝立ちで泣き出す。 盛大に糞を漏らしたようで、パンパンになったパンツから糞が溢れていた。 『ヂィィィ!顔がイダイデヂィィィィィィ!!』 親実装は繋いだままの手をグイと引き仔を急かす。 『早く立つデスゥ、殺されちゃうデスゥ!』 俺は親実装の後頭部を鷲掴みにしうつ伏せの状態で地面に押し付ける。 「まあ待てよ」 「俺は単にお前らの耳が欲しいんだ」 『どういうことデスゥ…?』 地面に顔を押し付けられたままの親実装がこもった声で問う。 「だから俺は耳が欲しいんだ、集めてるんだよ、好きだから」 『デエェ…』 「で、どうするんだ?もし嫌だと言うのなら仔共々踏み潰すが」 数秒の沈黙の後に親実装が再度問う。 『耳は…ワタシのだけデスゥ・・・?』 「仔のは要らん」 「ああ、あと片方だけでいいぞ」 更に沈黙、その間も隣で仔は泣き続けている。 『じゃあ…ワタシの耳をニンゲンさんにあげるデス…』 親実装は決断した。 この状況から脱する方法を他に思いつかなかったのであろう。 「よしきた」 返答の直後親実装の頭巾に手をかけ剥くと、 野良にしては綺麗な肌と髪が露わになる。 「右でいいよな?」 『どっちでも…いいデスゥ…』 「じゃあ削ぐからな、我慢しろよ」 『………デェ』 親実装の体が強張るのがわかった、痛みに耐えるためだろう。 剥いた頭部を左手で押さえつけ右足を上げ狙いを定める。 「いくぞ」 勢い良く下ろされたシューズのカカトがゴリュという感触と共に親実装の耳を一瞬で削ぎ取る。 親実装がビクビクと痙攣するのが押さえつけている左手の感覚でわかった。 削ぎたてで血の滴る耳を右手で摘み上げる、切断面が滑らかでなかなか上手く削げたようだ。 『デ…デッエ…デ……』 成果に感心していると、押さえつけたままの親実装が小さな声で呻いていた。 『これで…ワタシたちは助かるデスゥ…?』 耳の根元から血を流しながらも、安堵の言葉を漏らす。 「ああ、お疲れさん」 剥いた頭巾を戻してやるが、耳の無くなった部分の頭巾が前に倒れる。 「数日もすれば元に戻るだろ?」 そう言いながら横で泣きじゃくる仔を摘み上げ、立ち上がった親実装の両手に乗せてやる。 「もう行っていいぞ」 『酷い目にあったデスゥ』 仔を抱いたままトボトボと去っていく実装石、その背中に向かって— 「治ったらまた削ぐからヨロシクな!」