タイトル:【愛】 仔実装との生活2
ファイル:仔実装との生活2.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:5367 レス数:1
初投稿日時:2006/08/03-03:06:21修正日時:2006/08/03-03:06:21
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三日目


目覚ましの音がなる前に起きることが出来た。
昨日ミドリにつられて、かなり早くに寝たおかげだろう。
ミドリはまだ寝ているようだ。
俺は朝の支度をやり終えた後、ミドリを起こした。

「おいミドリ。起きろ。朝だぞ。」
「テェ〜?…。何か用テチ?」
「おはようミドリ。」
「御飯テチ?早く欲しいテチ。もうお腹ペコペコテチ♪」
ベキッ!
「テチャ!?何するテチ!」
ベキッ!
「テチャ!やめろテチ。」
ベキッ!
「テチャ!ワタチが何したテチ!」
ベキッ!
「テチャァァァ!やめてテチ。もう痛い事しないいでテチ。」
ベキッ!
「テチャァァァ、テチャァァァ!」

俺はデコピンをやめて、ため息をつきながらミドリに話す。

「お前には学習機能ってモノがないのか?起きたらまずする事があるだろ。」
「テ?ウンチテチ?」
ベキッ!
「テチュ!もう痛い事は嫌テチ。許して欲しいテチ。」
「仕方ない。思い出すまで御飯はやらんからな。」
「テチャァァァァ!やめてテチ。昨日からお腹ペコペコで死にそうテチ。」
「思い出せば良いだけだ。そうすれば朝御飯を作ってやる。」
「テェ!わかったテチ!朝ごは(ベキッ」
「はぁ、本当に物覚えの悪い奴だな。お前に付きっ切りというわけにもいかないから
 わかったら教えてくれ。その時、間違っていたらまたデコピンな。」
「テェェ!待ってテチ。ヒントを欲しいテチ。」
「ヒント?そんなものは無い。あえて言うなら今朝、俺がお前になんて言ったかを思い出せ。」
「テチ?」

俺は自分の分だけ朝御飯を用意し食べた。
それにしても目の前で御飯を食べているからか、ミドリがまじめに考えている様子がない。
ジッと俺の朝御飯を見て涎を垂らしている。
このままだと今日一日も飯抜きになるかな?
それにしても、俺が今日言った言葉ってほんの少しだけなんだけどな。
実装石の記憶ってトコロテン方式に新しい事を覚えると、古い事を忘れていくのか?
そんな疑問を抱きつつも、俺は今日のための準備をする。

ミドリは70回目位でようやく正解することが出来た。
そのときにはミドリの頭は、ボコボコのヤカンのようになっていた。
しかも今度は「いただきます」をしなかったため、再び飯抜きを宣告する。
するとミドリは怒り狂って俺に突進してきた。
もちろんそんなものは簡単にかわせるが、もはや交わす必要も無かった。
水槽の壁に激突したのである。
そして、そのまま気絶した。
それを見て可笑しいというよりも、むしろ哀れと思って俺はミドリをベッドに運んでやった。
ミドリが気がついた時は、すでにお昼になろうとしていた。
俺はミドリにもう一度だけ教えてやった。

「もう一度だけ言うぞ。よく覚えとけよ。」
「テチィ」
「朝起きたら『おはよう』、御飯を食べるときは『いただきます』、食べ終わったら『ご馳走様』、
 寝るときは『おやすみ』わかったか?」
「わかったテチ。だから御飯頂戴テチ。もう限界テチ。」
「じゃあ、起きたら俺に言う言葉は?」
「おはようテチ。」
「じゃあ御飯を食べるときは?」
「いただきますテチ」
「じゃあ御飯にするか。」
「テチ〜♪」

そういって俺はミドリの前に実装フードを置いてやる。
ミドリはものすごい勢いで、実装フードに飛び込んだ。
飛び込んだ瞬間、俺はすぐさま実装フードを引っ込めた。
ミドリは水槽の底に思いっきり頭をぶつけたため、頭が凹んでいる。

「テチャァァァアアア!!何で意地悪するテチ!食べてもいいって言ったテチ! 
 嘘つきはこの家から出て行くはずテチ。出て行けテチ!」

ミドリはものすごい形相で威嚇しながら抗議してきた。
俺はそんなミドリを見ながら軽い目眩を覚えた。
こいつの記憶容量は、いったいどのくらいなんだ?
まさか数バイトというんじゃないだろうな?
さっき教えたことを忘れるんじゃどうしようもないぞ。

「あのな、俺は嘘は言っていない。むしろルールに従っている。」
「何言ってるテチ!御飯を食べさせてくれるって言ったテチ。さっさとよこすテチ!」
「お前、御飯に飛び込むとき『いただきます』って言ったか?言ってないだろ。」
「テェ…、言っ…た様な気がするテチ。」
「言ってないんだよ。だから俺は御飯を引っ込めた。わかるか?」
「テェェ〜。これからはちゃんと言うテチ。だから食べさせて欲しいテチ。お願いしますテチ。」
「そら、ちゃんとやれよ。」

俺は再びミドリの前に餌を置いた。
ミドリは今度はちゃんと「いただきます」をして食べだした。
が、ミドリよ。本当にお前は俺の期待を裏切ってくれる。いや、予想通りの行動をしてくれる。
俺は爪楊枝を持ってきてミドリの頭にさした。
が、何のリアクションもない。
どうやら、食べるのに夢中で痛みが気にならないようだ。
俺は仕方なくデコピンを喰らわせた。

ベキッ!
「テチャ!何するテチ。御飯の邪魔はするなテチ。」
ベキッ!
「だから、溢すなって言ってるだろ。それとなんだ?さっきからの口の利き方は?
 そんな口の聴き方をする奴はさっさと禿裸の達磨にして公園に捨てるぞ。」
「テェェェ。ごめんなさいテチ。御飯のことで頭がいっぱいでどうかしてたテチ。
 許して欲しいテチ。捨てないで欲しいテチ。」
ベキッ!
「とりあえず罰は与える。あとデコピン9発な。」
「テチャアアアア!!」
ベキッ!ベキッ!ベキッ!ベキッ!ベキッ!ベキッ!ベキッ!ベキッ!ベキッ!

今思ったんだが、もしかしてデコピンしたら記憶が飛んでるんじゃないだろうな?
だとしたら、昔のファミコンのソフト並みの記憶の飛び方だな。
ミドリは何とか御飯を食べ終え、『ご馳走様』も言えた。
どうやら久しぶりに御飯をお腹いっぱい食べたので、とても満足しているようだ。
俺は満足して寝ころんでいるミドリを持ち上げると、ミドリは不安な表情そしていた。
そんなミドリの不安を取り除くため、俺は昨日言ったことをミドリに話す。

「昨日言ったろ?服を買いに行くって。」

それを聞いたミドリは顔を輝かせて泣きながら喜んだ。
よほど嬉しいらしい。「ご主人様に一生ついていきますテチ」なんて言う位だ。
俺はミドリを車に乗せて、この付近で一番大きな実装ショップに行く。
実装ショップに入ったとたんミドリは目を輝かせて「テチー!」と大きな声で鳴いた。
どうやら入ってすぐ右にある、実装石の服や玩具の多さに感激したらしい。
そんなミドリに店員が近づき

「お客様、店内ではなるべく大きな声を足さないようにお願いします。
 あ、トシアキ様でしたか。今日はどういったモノをご要望でしょうか?」
「いや、今日は実装石の服を1着と首輪を買いに来ただけなんだ。」

店員は俺の連れているミドリをジッと見た後

「なるほど、ではこれなんかどうでしょう?」
「ご主人様、ご主人様。アレを着てみたいテチ。」

いったい何を納得したのだろ?

(ミドリ。ちょっと五月蝿いぞ。黙っとけよ。)

ミドリに小声で注意する。

「う〜ん、別にブランド物じゃなくてもいいんだけど。なるべく手ごろな値段のものは無いかな?」
「左様でございますか。では、これなんかどうでしょう?」
「ご主人様、ご主人さま!あっちの服も可愛いテチ!」
(だから五月蝿いって!)

そう言って店員が持っているのは、色と形は実装石の服と同じだが前掛けに花の刺繍駕してあるモノで、
頭のズキンには赤色のリボンが付いている奴だ。
値段も1000円と高くは無い。
実装石には100円でも過ぎたものだが。

「よし、それを貰おうか。」
「ありがとうございます。ではいつものように宅配でよろしいでしょうか?」
「いや、今日はこのまま貰っていくよ。」
「かしこまりました。それでは少々お待ちください。」
「ご主人様、ご主人様!あの玩具が欲しいテチ!」

そういって店員はレジ向かっていった。
俺も清算を済ませるために店員の後を追う。
『ミドリ帰ったらお仕置きな。』
ミドリはその間も色々な服を見てはウットリとしていた。
俺は清算を終わらせると、店員と少し話をしてから家に帰った。
家に帰る途中、昼御飯を買うためスーパーによった。
ミドリは車の中にいて粗相をされると嫌なので、実装ショップの袋の中に入れて店に入った。
今日は暑いので素麺にすることにする。
ミドリは早く家に帰って服を着たいのか、どうも落ち着きが無い。
俺が食品を品定めをしている最中も『早く帰ろう』と急かす。
少しウザイので後で先程の罰と一緒にもう一つ罰を与えようと思った時、あるものが目に付く。

「なあ、ミドリ。チョコレートって食べたことあるか?」
「無いテチ。でもとても甘くて美味しいものってママが言ってたテチ。」
「食ってみたい?」
「食べたいテチ!ご主人様、買ってくれるテチ?」
「ああ、このチョコレートを買ってやろう。けどお前にはちょっと多いかな?」
「そんなこと無いテチ!大丈夫テチ。甘いものは別腹テチ!」
「ちゃんと全部食べれるのか?お前の体よりも大きいぞ?」
「大丈夫テチ。ちゃんと全部食べるテチ!」
「そこまで言うなら買ってやるよ。絶対全部食べろよ。」
「テチィ〜♪ご主人様、ありがとうテチ。」

俺はそのチョコレートを二つと、別のチョコレートを一つをカゴに入れてレジに向かった。
スーパーを出たミドリは、なにやら歌を歌って上機嫌になっている。
『俺からすれば音痴が上機嫌で歌っているだけにしか見えないんだが
 愛護派には、これが癒しの歌に聞こえるんだろうな。』
なんてことを考えながら、開かずの踏切を15分ほど待っていた。

家についた俺は早速ミドリに服を与えてやる。
ミドリは上機嫌で服を着た後、クルクルと回って俺に服を見せ付けてジッと俺の顔を見ている。
何かを待っているようだ。餌の時間じゃないよな?

「ご主人様ありがとうテチ。ミドリは可愛いテチ?」

なるほど、そういうことか。ようは褒めて欲しいだけか。

「あぁ、そうだな。」

テレビを見ながら適当に相槌をうっただけなのだが、ミドリは顔を赤らめて喜んでいた。
『順調だな』
俺はそう思った。

昼飯も食べ終えた後、ミドリはずっと鏡の前から動こうとはしなかった。
自分の姿を見てはウットリとしている。
俺はミドリに提案した。

「なあミドリ。公園に散歩に行ってみないか?」
「テチ?公園テチ?」
「ああ、毎日家の中じゃ健康に悪いだろう?だから散歩するんだよ。」
「散歩テチ。嬉しいテチ。ご主人様とデートテチ(ポッ)。」

ミドリに首輪をつけて、おやつに先程買ったチョコレートを持って公園へ向かった。
公園に着いた俺達を待っていたのは野良実装。
当然、無視をしてベンチに座る。
そんな俺の手にミドリがいるのを見つけた野良実装が

「そんな不細工より私を飼うデス。」
「お前、さっさとそこをどきやがれデス。」
「金平糖を寄越すなら飼われてやっても良いデス。」
「そのバカの服はワタチのほうが似合うテチ。だからさっさと寄越すテチ。」
「レフレフ〜♪ニンゲンさんお腹プニプニしてレフ〜♪」

等と言って俺に近づいてくる。
ミドリは捨てられた時のトラウマが蘇ったようで
そんな光景を見て脅えているのか、俺の背中に隠れて震えている。。
とりあえずミドリの涙とパンコンで服が汚れるのが嫌だったので
俺はおやつ用のチョコレートを使ってミドリを宥めることにした。
当然野良達は

「デス!それを寄越すデス!」
「それとこの蛆と交換してやるデス!」「レフ〜?」
「今ならそれを食べてやらないことも無いデス。」
「可愛いワタチが特別食べてやるテチ。感謝するテチ!」
「バカニンゲン、さっさと貢ぎやがれデス!」

などと言いながら、俺のズボンを引っ張って来る。
俺はズボンを汚されてさすがにムカついたので、リンガルを使って警告する。

「ミドリ、こんな糞蟲は俺が追い払うから安心しろ。
 おい、お前ら。俺に触るな。次、触ればお前ら全員を駆除するぞ。」
「デプププ♪お前ごときになにがで(グシャ!」

俺はその実装石を踏み潰した。
そのおかげでさっきまで媚びていた実装石の6割は、危険を感じて蜘蛛の子を散らすように散っていった。
残りの4割のうち3割は腰を抜かして動けないようだ。
そして最後の1割は

「デプププ♪不細工のくせに調子に乗るからデス。自業自得デスゥ♪」
「お前のような馬鹿は初めて見たデス。さっさと死ねデス!」
「お前ごときが選ばれるわけが無いテチ。選ばれるのはワタチだけテチ♪」

と言って未だに、俺の持っているチョコレートを要求してきている。
『そんなに食いたいなら食わせてやろう。』
俺は持ってきたチョコレート農地の一つを砕いて、ばら撒くように遠くに投げた。
それを見た野良達は、一斉にチョコの欠片を目指して集まってきた。
仔実装は成体よりも足が遅いため、他の野良に拾われて食べ損ねているが気にしない。
むしろ、もうすぐ食べれなかったことを幸運に思うだろう。
拾ったチョコレートを急いで口に入れて咀嚼した後、思いっきり咳き込んで吐き出した。
吐き出したチョコを食べることの出来なかった野良が拾って食べて、そして吐き出す。
それを何度か繰り返している。
本当に馬鹿としか言いようが無い。
吐き出した野良達は全員が皆同じ表情、同じリアクションをしていた。
『これは結構使えるな』なんて思いながらミドリを見る。
ミドリはどんなリアクションを見せてくれるだろうか?
俺はミドリに

「もう大丈夫だぞ。野良は追っ払った。」

と言うと、ミドリは恐る恐る顔を広場のほうに向けた。
ミドリは周りに野良がいないので安心した様子だ。
そこであのチョコレートを取り出し、一欠片だけミドリに与える。

「テチ〜♪ご主人様ありがとうテチ。ご主人様は最強テチ。ご主人様がいれば何も怖く無いテチ♪」
「そうだな。ミドリ一人で公園にいたら野良に食い殺されているだろうな。
 それよりも、チョコレート食べないのか?」
「食べるテチ♪これがチョコレートテチ?美味しそうテチ。」

そういって口にして一気に飲み込もうとした瞬間、ミドリはチョコレートを吐き出した。
ミドリが食べたチョコレートは『カカオ99%』という、非常に苦いチョコレートである。
どれだけ苦いかと言うと、普通のビターチョコが激甘に感じる程である。
なんというか、舌を抉るような苦味が飲み込んだ後にも残るのである。
これを食べるのは、はっきり言って罰ゲームだ。
以前俺も毎日一欠けらずつ食べたけど、5日でギブアップした。
いったい何を考えて、こんなものを出したのだろう?
開発した奴に言いたい!
「『過ぎたるは及ばざるが如し』ってことわざを知っているか」と。

そんなチョコレートを食べてミドリはとても醜い顔をしている。
自分の知識の中では「甘い」と聞いていたチョコレートの味が
こんな味だとは思っても見なかったようだ。

「どうした?食べないのか?」
「不味いテチ。とても苦いテチ。これなら実装フードのほうがマシテチ。」
「でもお前俺に言ったよな?『必ず全部食べる』って。ほら、後これだけあるぞ。
 遠慮せず腹いっぱい食べろ。」
「いやテチ!こんなの食べれ無いテチ。」

そういって食べかけのチョコレートを地面に捨てた。
俺はそのチョコレートを拾いながら

「そうか、なら罰を与えるしかないな。」

と言うとミドリの表情が一変した。

「テチャ!?痛いのは嫌テチ!お腹ペコペコになるのも嫌テチ。」
「ミドリ、それは我侭すぎるぞ。ミドリを飼う時言ったろ。『躾は必ずする』って。
 罰が嫌ならそれを全部食べればいいだけだろ。」
「でもソレは不味いテチ。」
「仕方ない。それじゃあこのままここに置いていくか。」
「テエエエ!?嫌テチ。置いていかないでテチ。殺されるテチ。」
「なら食べろ。」
「嫌テチ。ご主人様は意地悪テチ。」

俺は笑顔で出来るだけ優しく、諭すような口調でミドリに言った。

「いいか?俺はミドリを虐めたくてこんな事をしているんじゃないんだぞ。
 ミドリには『自分の言ったことに責任を持つ事』を覚えてもらうために
 心を鬼にしてやっているんだ。わかってくれるよな?」
「そんなの分からないテチ。もう嫌テチ。こんなの食べたく無いテチ。」
「ミドリはそこらへんにいる糞蟲と同じなのか?それなら糞蟲に用は無い。ここに置いていく。」
「違うテチ。そんな野良と一緒にしないで欲しいテチ!」
「なら食べろ。」

最後に冷たくそう言い放つとミドリは泣きながら食べた。
途中で水を要求してきたが「そんなものは無い」と言ってやると
自分の涙を舐めだした。
そんなものでどうにかなるわけ無いのに。

ミドリは夕方になっても食べきることが出来なかった。
全体の三分の一を食べたのだから、がんばった方だ。
俺は晩御飯のこともあるので帰ることにした。

「さて、帰るか。」
「テェ♪もう食べなくてもいいテチ?」
「もうすぐ晩御飯を食べるからな。」
「嬉しいテチ。もうこんなもの食べたく無いテチ。チョコレートなんてもうコリゴリテ。」

何でそんな甘い考えが出来るんだろう?
とりあえずそこのところは突っ込まないで、家に帰ることにした。

家に帰って晩御飯のときミドリは泣いていた。
実装フードが入っている小皿に、あのチョコレートが入っているのだ。
泣きたくなる気持ちはわからなくも無いが、実装石が食べ物を粗末にしたらだめだよな?
泣きながらミドリは

「食べたく無いテチ。実装フードのほうがいいテチ。
 実装フードを食べさせて欲しいテチ!」

と抗議している。
このまま食べさせないと言うのも面白そうだが
ここはあえて妥協して、実装フードを食べさせてやることにする。

「わかった。実装フードも食べたいんだな?」
「そうテチ。これはもう嫌テチ。食べられ無いテチ。」
「じゃあちょっと待ってろ。」

そう言って俺はチョコレートの小皿に実装フードを1粒だけ入れて、元の場所に置いた。
ミドリは目を丸くして、小皿と俺を交互に見ている。

「テェ?ご主人様?テェ?」
「何してるんだ?早く食べなさい。それを食べきらないと次の御飯はないからね。」
「テテ?そんなの無いテチ。飢え死にしちゃうテチ。ご主人様は意地悪テチ。
 ワタチに死ねと言っている様なものテチ。テチェェェン!」

そろそろいいかな?
俺は小皿を取り出し、普通の実装フードが入った小皿と交換する。

「テチェェェン!テチェェェン!テチェェ・・・テチ?」
「仕方ないな、今回だけ許してやろう。次は無いからな。
 調子に乗ってこれ以上我侭を言えば、公園に捨ててくるからね。」
「テチ〜♪ありがとうテチ。やっぱりご主人様はとても優しいテチ。
 いつもは厳しいけど、最後はやさしいご主人様が大好きテチ♪
 ワタチ知ってるテチ。こういうのをツンデレって言うテチ。」

ミドリは本当に嬉しそうに食べている。

食事が終わった後、俺は再びミドリを水槽から出してやることにした。
条件は前回と同じだ。
ミドリは喜んで色々な所を見て回っては、俺に「コレは何?アレは何?」と質問してくる。
そして、とある部屋の前でジッと扉を見ている。

「ご主人様、ご主人様。この部屋は何の部屋テチ?」
「そこは俺の趣味の部屋だ。さっきも言ったけど勝手に入るなよ。
 隠れて入ってもすぐ分かるようになっているからな。」
「分かったテチ。入らないテチ。ところでご主人様の趣味って何テチ?」
「知りたい?」
「知りたいテチ。ご主人様のことを、もっともっと知りたいテチ♪」
「もうちょっとしたら教えてやるよ。」
「テチ〜。残念テチ。」

ミドリは残念そうな顔をしたが、すぐに別のものに興味を持ち忘れてしまった。

ミドリがあらかた家の中を散策し終わった頃、時計はすでに10時を回っていた。
俺はミドリに風呂に入って寝るように言った。
ミドリは喜んで風呂場にいき、服を脱いで俺が来るのを待っていた。
俺は桶にお湯を張って、ボディーソープを少しだけ入れた。
そして、かき混ぜて泡風呂状にしてやると、ミドリは眼を輝かせて言った。

「テチ〜!綺麗テチ。おいしそうテチ。いただきますテチ♪」
ゴクッ ゴクッ・・・ブハァッ!
「変な味がするテチ。とても食べれないていテチ!」
「お前は本当に・・・。」
「ミドリ、それは食べ物じゃない。お前は何のために此処にいるんだ?
 体を洗うためだろ。」
「そうだったテチ。ゲプッ。」

恥ずかしがりながらゲップをしているミドリ。
口からはしゃべるごとにシャボン玉を噴出している。
『お前はどこぞのコミックキャラか!』
と心の中でツッコんだ。

ミドリの風呂が終わると水槽の洗浄を始める。
基本的に糞の躾は出来ているようなので、ほとんど汚れていないのだが
匂いだけはどうしても付いてしまう。
ファブリーズでも構わないのだが、なんとなく匂いが残っている気がしてならない。
そこで、出来る限りファブリーズに頼らず、自分で洗うことにしている。
シャワーでさっと水洗いした後、ミドリに自分でとどく範囲でいいから雑巾で拭かしている。
水槽の掃除が終わったあと俺も風呂に入り、今日一日の疲れを落とす。

週末の風呂上りには決まってすることがる。
それはビールを飲むことである。
風呂上りの後のビールは格別にうまい。
そんな俺を見たミドリは、ビールに興味を持ったのか

「ご主人様、それ飲ませて欲しいていテチ。」
「お前が飲んでも味なんか分からないって。」
「そんなこと無いテチ!ご主人様は美味しそうに飲んでいたテチ。
 きっと美味しいものに違いないテチ!」
「どういう理屈だ。まったく、じゃあちょっとだけ飲ましてやる。」
「テチ〜♪嬉しいテチ。」

小皿にビールを少しだけ入れて、水槽の中においてやる。
ミドリはその液体を舐め取るようにして飲んだ。
すると、一気に顔が赤くなり、千鳥足になった。

「おい、だいじょうぶか?だから言っただろ。美味しくないって。」
「ひょんなことなひレフ。美味しくなひレフ。レフ?ごひゅひんひゃまがいっはいいるレフ。」

呂律まで回っていない。完全に泥酔状態になっている。

「ひゃんかきふんがいいレフ〜。レヒャヒャヒャヒャ。」
「おい、水を飲んでもう寝ろ。」
「レヒャヒャヒャヒャ・・・ウッ、ゲロゲロゲロゲロ。」
「あ!お前、吐きやがったな!」
「ウェェ、なんかすっきりしたレフ。もっとすっきりするレフ。」
ジョロ〜〜〜。
「な!こいつ小便まで・・・!勘弁してくれよ。
 さっき掃除したばっかりなのに。」
「ひゃんはあったひゃいレフ〜♪」

俺は軽く凹みながら、そのまま寝てしまったミドリを睨みつけた。
俺は今この、惨状を処理するだけの意欲がわかなかったので
水槽に蓋をして、そのまま寝ることにした。
『明日、覚えてろよ!』

続く

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