タイトル:【観察】 実装石の日常 実装潰し
ファイル:実装石の日常 16.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:24670 レス数:2
初投稿日時:2007/12/28-18:13:02修正日時:2007/12/28-18:13:02
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 実装石の日常 実装潰し



普通の人なら野良実装を見かけても別に気にしないだろう。
汚いし騒々しい存在だ、できれば相手をしたくない。
我が家に入ろうとするならともかく、触りたくないし見たくもない。

と、言うのは一般常識のある成人の話。

子供となると大違いだ。
特にやんちゃ盛りの小学生の男の子となると、多少汚れることなどお構いなし。
野良実装を見かけるとまっしぐらに走っていき踏み潰す。

いわゆる「実装潰し」である。
ルールは色々あるのだが、主に仔実装を踏み潰したり蹴飛ばしたりする数や早さを競うのだ。

まったく意味の無いことであるが、子供の遊びとはそういうものだ。





*************************************





さっそく、少年2人が公園に入ってきた。
ざっと見渡して、親子連れを発見すると無言のまま背後に回る。


一家は総出で冬支度のため枯れ葉を運んでいた。
ダンボールの中を枯れ葉で敷き詰めれば保温機能が大変高い。
仔実装が運べる量など高が知れているが、巣立ちしたときのため、学ばせているのだ。

枯れ葉を集めるとき、親実装が仔実装に言う。

「きれいな乾いた枯れ葉だけ集めるデス、濡れていると腐って困るデス。
枯れ葉が足りないときは、濡れたものをダンボールの周りで乾かしてから入れるデスー」

テチテチ、と仔たちがうなづく。

7匹もの仔実装が枯れ葉の塊を抱えて歩き出すと、親実装も枯れ葉を詰め込んだコンビニ袋をもって先頭を歩きだす。

「楽なことじゃないデス、でもこうすれば冬を暖かく越えられるデスー」

親としては仔を遊ばせておきたい。
だが親としては仔が成長して巣立ちし冬を迎えるときを考えれば、少しでも知識を分け与えておきたかった。


親仔の行進に背後からそっと近づく少年たちは小声を交わした。

「1匹ずつだぞ、親に見つかったほうが負けね」

「おっけ」

一気に距離をつめると少年の1人が最後尾の仔実装を踏みつける。




                      「チュバッ」




短い悲鳴は擦れる枯れ葉にまぎれて聞こえなかったらしい、野良実装の行進に変化は無い。
潰された仔実装は家族のすぐ後ろで、靴底の形を刻まれたシミと化しているのに。

よし、と得意げな少年。

もう1人の少年もすばやく1匹の頭上へ足を出し、踏み潰す。




                      「ヂッ」




踏み潰した瞬間、血と共に悲鳴も飛び出したが、行進する一家はまたしても気づかなかった。

ニヤリと笑いあう少年たち。

少年の1人が二回目に挑戦する、そっと仔実装の頭の上に足を出し、不注意にも影をかけてしまう。

「何テチ?」

振り返った5女、迫り来る少年の靴の裏を見た。
それが生涯最後に見た光景だった、あとはもう一瞬のことである。

頭から踏みつけられ頚骨を折られ頭蓋骨が陥没し、耳から脳しょうが噴き出す。
両足が砕け背骨が折れ、内臓が破裂していく。
その頃には身長が以前の半分未満だ。

凄まじい激痛に「ママァ!」と叫ぼうとしたが口からは内臓がせり出して声が出ない。



「ヂェ」



意味も無い悲鳴が上がっただけだ、厚さ数mmのシミとなって5女は生涯を終えた。

しかし、飛び散った血と肉片が、少しだけ前を歩く4女に降りかかった。

「何か飛んできたテチィ」

無邪気な顔で振り返ると、さっきまで一緒だった妹が踏み潰されており、
人間があげている靴にはその残骸がこびり付いていた。

ばさばさ、と抱えていた枯れ葉を落とす4女。

しまった、と踏みつけた少年は思うが、4女の悲鳴は無かった。

「・・・・・・テ・・・・・・テ・・・・・・・・・」

突然の惨劇と恐怖に、口をパクパクさせるだけで声が出ないのだ。
パンコンし、全身を震わせている。
元気だった妹3匹がシミになっては無理も無いだろう。

安堵した少年、友人を見て苦笑する。
今度は友人のほうがピンチだ、4女を踏み潰せば悲鳴を上げ親実装に見つかるかもしれない。

声を出させてはいけない、と少年は仔実装が立ち直る前に踏み潰そうと動く。

迫る危険に4女は涙を流しながら、かろうじて小さな声を絞り出す。


「ママー!ニンゲチボッ」


言い終える前に、靴の下でシミになった。
まったく無意味な死を遂げる。

だが、いくらか声を出したので少年が残りの家族を見ると、ちょうど3匹の仔実装が順番に振り返った瞬間だった。

3匹はシミになった妹たちと、踏み潰した少年を交互に見ると、カタカタ震えだす。
やはり恐怖で声が出ないらしく、立ち止まって動けない。

親実装に一番近い長女が、枯れ葉を落としながら親実装の服を引っ張る。

「マ、ママ、ママ・・・・・・」

しかし親は振り返りもしない。

「うるさいデス、さっさとお家に急がないと危ないデスー」

もしリンガルがあれば少年たちも爆笑だったろう。
さいわい、リンガルが無かったので少年たちは遊びに集中できた。

動けない3女を踏み潰す。
3女、思わず両手で支えようとする。
が、一瞬後その腕がもげる。
激痛と恐怖で叫ぼうとするが、そのときには頭部が潰れかかっている。


「テバッ!」


3女も潰れて生涯を閉じた。
短い断末魔だけを残して。

目の前で妹が潰され、さすがに次女は声を上げた。

「ママ————! ニンゲン! ニンゲン来たテチャア—————!」

しかし少しだけ遅かった、その直後、次の少年が次女の頭に足を乗せる。



「助けてテチィッ!」



いい終えるときにはベチャリと広がるシミとなった次女。

ようやく、親実装が背後に振り返る。

「少しうるさいデス、あまり騒ぐと怖いニンゲンが・・・・・・」

親実装の目に自分の仔6匹分のシミが映る。
ばさ、とコンビニ袋を落とす。

踏み潰した少年たちは照れて笑う。

「あと1匹だったのになぁ」

「惜しかったよな、でも俺の勝ち、ね」

言いながら二人は靴底を地面に擦りつけ、汚れを落とす。
汚れと言っても親実装にしてみれば、わが仔だった一部だ。
わが仔の血肉と服と髪がぼろぼろになって地面にこびり付く。

「デズァァァァアアア!!!!!」

血涙を流して、地面のシミの前に這いつくばる。

「次女! 3女! 4女! 5女! 6女! 7女! デズアアアアァァァ!!!
返事するデス——————————————!!!!!」

「やべ、今頃騒いでるよ」

「やっぱ実装てアホだよなぁ、アハハハ」

微塵も良心の呵責を感じない少年たち。
虫を殺しても、もう少し感じるものがあるだろうに。

「ア゛! ア゛————————————————————ア゛ア゛ア゛!!!!」

滝のように血涙を流しながら親実装が少年たちをにらみつけた。
長女も血涙を流しながら親実装にしがみ付いている。

「何で私の仔を殺したデスゥ!!!
お前たちに何かしたかデス!?
いい仔ばかりだったデス!!!
いいママになれる仔ばかりだったデス!!」

怒りで全身が震える。

「許さないデス————!
お前たちを殺してやるデス、この仔たちのように踏み潰してやるデス!!!」

「ほい」

「ヂ」

と、1人の少年が生き残っていた長女を軽く踏み潰す。

シミになった長女に気づいて、親実装が目を剥きそのまま固まる。

その前で少年は悠然と靴の汚れを地面に擦りつけ、友人の肩を叩いて笑みを見せる。

「じゃあな糞蟲」

「バイバーイ」

「長女ぉぉおお!! アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

最後の希望だった長女のシミに顔を近づけて絶叫する親実装を残し、笑いながら少年たちは走っていった。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」



親実装の流す血涙がシミに落ちて混じっていく・・・・・・。





*************************************




次に少年たちは公園の茂みに隠されたダンボールを見つけた。

それはかなり大きな部類のものだ。
遠目にも覗き穴らしいものが低い位置にあるのが分かる。
愛護派が加工して与えたものだろう。

ダンボールの主は賢いらしく、横倒ししたダンボールに枝を立てかけて目立たないよう偽装を施してある。

フタも閉じられ、中は静かだ。耳を澄まさないと、仔実装の会話も聞こえないほどである。

「ママ帰って来ないテチィ」

「そろそろだと思うテチ、ママが帰ってきたら思いっきり遊ぶテチ」

「早く遊びたいテチ」

テチテチ、と小声で5匹の仔実装が話す。

ここの親実装は賢く、自分が留守中はダンボールの中から我が仔を出さない。
仔も賢く、トイレは小さなダンボールで済ませ、なるべく寝て過ごす。
もし親実装がいなければ、他の野良実装やネコに襲われる可能性が極めて高くなる。

親の言う事を聞き、不自由さを堪えることで生存できると理解していたのだ。

もっとも、少年たちに見つかった今となっては意味のないことだが。

「テチ!何か来るテチ、みんな静かにしてテチ」

少年たちの足音に、長女が気づき姉妹に静かにするよう伝えた。

ピタリと静まり返る姉妹。こうして2度、野良実装をやり過ごしたことがある。

2人の少年は完全に静まり返ったダンボールを見下ろしながら笑みを交わした。
獲物がかなり賢い部類だと分かったので嬉しいのだ。
賢い部類は珍しいし、何より清潔だ。
いくら子供でも、糞まみれの個体は遠慮したいらしい。

数分間、沈黙を守った仔実装たちであるがもう忍耐の限界である。
特に臆病な4女がタオルの下でカタカタ震えが止まらない。

「長女姉ちゃん、もう大丈夫テチ?」

小声で不安げに言う5女、長女はうなづいて小さな覗き穴から外をうかがうと。

「おら!」

「「「「「テヒヤアア!!!!」」」」」

すかさず少年がダンボールを蹴飛ばし、中から悲鳴があがる。
思わず2人は笑う。
覗き穴を確認していた2人は、そこへ仔実装が見に来るのをじっと待っていたのだ。
案の定やってきたのでさっそく蹴り上げてやる。

ひっくり返る寸前のダンボールの中で混乱する姉妹。

「ニンゲンが来たテチャア————! もうお終いテチ!」

「殺されるテチ? 殺されるテチィー!」

「ママ! マ———マ———————!!」

「だ、大丈夫テチ!」

パンコンしながら長女が妹たちを励ます。

「フタは絶対開かないテチ! ママが来るまで大丈夫テチ! ママが来れば大丈夫テチ!」


このダンボールはいわゆる愛護派がばら撒いた代物だ、ご丁寧に内側から簡単な施錠が出来るよう細工されている。
止め具はダンボールの板を差し込むだけの簡易なものだが、実装石には扱いやすいし猫や他の野良実装相手なら十分である。


一度野良実装がやってきたものの、開けられずとうとう諦めた代物である。

「あの時も大丈夫だったテチ! 今日も大丈夫テチ!」

ぶち!

「テェ?」

パカッ

もちろんあっさりとフタは開かれた。

「「「「「テチャア—————————————————————!!」」」」」

指が無い実装石と人間では訳が違うし、力も段違いだ。

「長女ねえちゃあああん!」

「奥に、奥に逃げるテチィ!」

5匹は大慌てでダンボールの奥へ逃げ込む。
とは言え少年たちから丸見えの場所だ、見られながらガチガチ震え上がっている。

恐怖で気が狂いそうな姉妹の願いは一つ。

・・・・・・早く帰って来て、ママ!

人間の恐ろしさは日ごろから教え込まれている。
圧倒的な腕力で実装石を引き裂き踏み潰したたき殺す。
しかも、ささいなことで、だ。
時にはささいな理由さえなく、実装石を殺しにやって来る。

恐怖そのものの人間を前にして、幼い姉妹は互いを抱きしめあう。

「大丈夫テチ、大丈夫テチィー! ママが帰ってくるテチ、悪いニンゲンはすぐやっつけてくれるテチィ!」

長女は必死に妹たちを励ます。
そうしないと恐怖で死ぬ姉妹がいそうだった。

「それまでみんなで・・・・・・」

言いかけている間に彼女の世界が傾く。
壁や床にしがみ付くが、悲鳴をあげながら姉妹はダンボールから滑り落ちた。

「出てきた、出てきた」

「結構きれいだなー」

ワンカップの空ビン、タオル、トイレ代わりの箱といった家財道具と共に、
持ち上げて傾けたダンボールから姉妹がこぼれてくる。

打撲の痛みを訴えながら、少年と目が合うと姉妹は悲鳴をあげて抱きしめあう。

「テヒャアアア————————————!」

「来るなテチ、来るなテチ!」

「ママ! ママ———————!」

悲鳴をあげるだけの姉妹の中から、1匹がよろよろと出てくる。
四つんばいになったかと思うと、歯をむき出しにした。

「テヂィ———————!」

威嚇だ。

「来るなテチ! 来たら噛み付いてやるテチ! テヂィ———————! 」

長女は妹たちを守る覚悟を決めたのだ、凄まじい恐怖に震えながら。

「テジャアアアアアアアアアアアアア! 近寄ると許さないテチャア! 」

プ

思わず少年たちがふきだす。

自分たちの手程度しか背丈のない仔実装が、威嚇しているのが滑稽なのだ。
どれだけの恐怖に耐えながら妹たちを守ろうとしているのか、少年たちには分からない。
ただひたすら滑稽に感じるだけだ。

「それ以上来たら殺してやる、殺してやるテチャア!」

「あー、はいはい、怖い怖い」

そう言って1人が手を出す。

「テジャアアアアアアアア! ア?」

頭巾をつままれた長女、あっさりと持ち上げられる。

「お前うるさいから、少し罰をやるよ」

長女をワンカップのビンの上に持ってくると、ぐい、と押し込む。
空瓶の口は仔実装の胴体より狭いのに、少年は強引だ。

「む、無理テギャアアアアア!」

じたばたあがく長女だが、力の差はどうしようもない。
空瓶の口で両腕が切断され、押し込まれた足が押しつぶれる。
胴体はゆがみ、

「テベ」

と長女は血を吐いた。

「よし、お前はそこで見学してろ」

「テ・・・・・・テ・・・」

見学も何もあったものではない、頭以外を小さな空瓶に押し込まれて長女は息をするのがやっとだ。
その光景に、残された姉妹はただ涙を流して震えるだけであった。

「さ—て、あと4匹か」

「前からやりたい方法があったんだ見てて」

1人は姉妹から適当に1匹つまみ出す。

「テヒャアア! 次女姉ちゃん助けてぇぇぇえテチ———————!」

4女がとらわれて行くが、姉妹は震えて見ているだけだ。
引っ張り出された4女が地面に立たせられた。

「もう嫌テチャア———!」

当然逃げ出すがすかさず上から踏みつける。

「テベッ!」

とはいえ、完全ではない、辛うじて4女の頭部が靴を支えている。

「いきなり潰すのも芸が無いだろ? 時間をかけてみようと思って」

と少年は少しずつ力をこめる。

当然仔実装の力で抗せられるものでない、ミシミシと音を立てて体が軋む。

「テチャアアアアア! た、助けてテチ! 助けてテチ! 」

直立して支えながら悲鳴をあげる。

「ニンゲンさん、たあすけてぇてテチィィイ!」

だらだら血涙を流し始める。

「何でもするテチ! 何でもするテチ! 殺さないでテチャアア—————!」

もう前かがみにまでなっている。
下を向いた4女、ぐい、と姉妹のほうを見る。

「支えられないテチ! もう支えられないテチ! 助けに来てテチィ!」

靴底がいっそう4女を圧迫してきている。
そんな光景も踏みつける少年からは見えない。
ただ靴底から痒いような刺激と、テチテチ聞こえてくる悲鳴だけだ。

「もう死ぬテチ、死ぬテチ! なんで助けに来ないテチ!? 見殺しにする気テチィッ!?」

次女が前に出ようとすると、5女がしがみ付く。
そして言う。

「行っても無理テチ、一緒に次女姉ちゃんまで死んじゃうテチ!!」

「で、でもテチ」

「聞こえたテチ! 今の5女テチィ————! テチャアアア! お前は私を殺す気かテチ!」

目を剥いて4女は5女を睨んだ、深い憎悪を込めて。

「で、でも今行ったら次女姉ちゃんまで・・・」

「このままじゃ私が死ぬテチ! 死んじゃうテチ! お前は姉を見殺しにしたテチャア!」

4女は盛大にパンコンしていた。
両膝を地面につき、全身を前かがみにしている。

「許さないテチ! お前は絶対、絶対許さないテチ! ・・・絶対っ」

汗と血涙と糞尿で汚れながら4女はわめき散らす。

「最後の最後で妹に裏切られるとは思わなかったテチャアアアア!」

全開の目で睨みつけながら、靴の陰に消えていく4女。

「テジャアアアアアアアアアア! ア!」

ぐちゃ、と靴底で4女は圧死した。

がくり、とうなだれる次女。
その姉を5女がなだめる。

「しょうがなかったテチ、しょうがなかったテチ!」

3女は腰を抜かし、ぐりぐりと靴を地面に押し付ける光景を眺めている。

「あれだな、面白いけど勝負としちゃ分かりにくいな。どうやって勝ち負けを決めるんだよ・・・」

「勝負するときは声の大きさを競えばいいんだよ。こんな感じで」

と、擦りつけた靴底を姉妹に見せ付ける。

「「「テヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」」

訳の分からないシミになっている4女の姿に、姉妹は悲鳴をあげた。
靴や血肉や土が交じり合っているが、睨みつけていた眼球は無傷で輝いている。

そんな光景に少年たちは大笑い。

長女は相変わらず上を向いて悲鳴をあげている。

「テヒャアア! 殺されるテチ! 殺されるテチィ!」

3女が立ち上がると少年たちと反対方向の茂みへ疾走していく。

「動くと危ないテチ! 3女ちゃあああん!」

次女が声をかけるが、3女は一目散だ。
少年たちはニヤニヤながめているが、す、と動く。

「テヒャ!」

3女も頭巾をつままれ、あっさりと捕まった。
いくら仔実装が走っても、人間から見れば亀の歩みだ。
まして、テッチテッチと声を上げているのだから気づかないはずが無い。

「あーひどいなこいつは。自分だけ逃げたぞ」

「こういうのってあれだな、死刑かな」

少年が死刑死刑といいながらタオルを持つ。

家族みんなで包まって寝るタオル。
暖かいタオル。
ママやみんなの匂いがするタオル。

それで首を絞められる。

「テ、テヒ!」

「絞首刑だな」

「文明的だねー」

端で首を絞めながら、もう一方を枝に結びつける。

「テ、テヒャ、テ! ・・・・・・テ!」

じたばたと空中で3女があえぐ。

にやにやと少年らが見ていたが、数分経っても苦しいだけで死にそうにもない。

「あれ、なかなか死なないな」

「体重軽いからね」

ああ、そうかと1人が小石を持つと、3女の髪でその体に縛り付ける。

「これでいいか?」

「OKOK」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!」

真っ青な顔で糞尿と血涙を垂れ流す3女は、空中でもがき続ける。

・・・・・・苦しい、ママ助けて! ママ、ママ! ・・・・・・ママ

しばらくすると、動かなくなる。

「悪は滅びた!」

「んじゃ次ね」

2人が姉妹を見ると、次女が狂ったような声を上げてダンボールの中へ駆け込んだ。

「もう嫌テチ! 嫌テチ! ママ! 助けてテチママァ!」

そのダンボールを蹴飛ばす少年。

ざざっとすべる先に回りこんだもう一人が蹴飛ばす。

戻ってきたダンボールを蹴飛ばす。

また蹴る。
蹴り返す。

「テベ! テヒ! テヒャ! テチ!」

ダンボールごと振り回される次女。
捕まる場所も無く全身を打ち、あざだらけ。

「テボ!」

拍子でダンボールからはじき出される。
受身も取れず、顔面から地面にぶつかった。

頭への衝撃でふらふらしながら立ち上がる。
鼻血が出るが、感じないらしく垂れ流しだ。

「ママ! 早く帰って来てテチャアアアアアアアアアアアアアア!」

少しでも逃げよう、としたところへ少年の蹴りが迫った。

「ここでシュート!」

「テベッ」

大の字をしながら、次女は飛ばされた。
飛ばされる先には、3女がぶら下がる樹木があった。

空中を飛ぶ瞬間、次女は切に願う。

・・・・・・助けてママ!

「ヂッ」

願いは届かず、次女はそのまま幹に激突して汚い赤と緑のシミになった。

「ナイスシュート!」

「次のゲームもこれくらい決めるぜ」

飽きたのか、少年たちは一家の巣を立ち去った。
5女がまだ生きている。
しかし

「テチ、テチ」

と呟くだけだ。
目の前で家族を惨殺され発狂したらしい。
長女は相変わらず悲鳴をあげている。


長女は空瓶に押し込められ
次女は木にこびり付くシミと化し
3女は吊るされ
4女は地面に広がるシミになり
5女は狂っている。

家財道具も散乱しダンボールはめちゃくちゃだ。
かき集めたであろうエサも飛び散っている。

10分前まであった暖かい家族の風景は消え去っていた。



と、そこへ急ぐ親実装の姿があった。
運よく生ゴミが詰まったゴミ袋を丸々一つ拾えたのでご機嫌だ。
笑顔でデスデス口ずさみ、家路を急ぐ。

かけてくる少年2人の姿におどろいたが、幸運に何もされず走り去っていった。

一瞬緊張した親実装は、大きく息を吐き、そして笑う。




「今日は運がいい日デスゥ」





END





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1 Re: Name:匿名石 2023/02/01-19:31:32 No:00006742[申告]
このスクの前半部分がまさか15年後に漫画として書かれるとはね
2 Re: Name:匿名石 2023/02/04-19:41:34 No:00006750[申告]
子供の無邪気さは、時に何よりも怖くなる…のかもしれない。
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