タイトル:【観】 +【自爆】お庭で外飼い6 <完>
ファイル:庭実装6.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:5384 レス数:1
初投稿日時:2007/09/19-23:45:03修正日時:2007/09/19-23:45:03
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あるときから仔実装(+中実装)の集団を飼うことになった。
飼い方、構成匹数等は次の通り。

中実装一歩手前の仔 1匹 (失踪?)
やや大き目の仔 6匹。
典型的な大きさの仔 2匹。
親指よりちょっと大きめの仔 2匹(1匹トイレ行き、1匹ガス中毒死)

・外飼いであり、家には一切入れない。木箱の家を用意する
・庭の手入れを手伝うこと。雑草取り、落ち葉拾い、ゴミ取りなど
・トイレは所定の穴を使うこと。違反した奴はトイレ穴に埋める
・お歌と踊りを練習し、後日俺にその成果を披露すること。成果がよければ室内飼いにする

7:00ごろ   朝飯(前夜の残り物の処分担当)
午前中      庭掃除
昼ごろ      昼飯(実装フード、パンくずなど、ケースに入れて置いておく)
午後       庭掃除、掃除が足りていれば自由時間、入浴
18:00ごろ  夕飯(人間様のおこぼれあり)
以降       自由時間 (歌の練習等、音を立てるのは禁止)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

携帯が鳴る
発信者を見ると・・・おお、隣人の敏明さんだ。

「はい、○○です」

「こんにちわ、敏明です。今ちょっといいですかね?」

「ええ、かまいませんよ。なんでしょう?」

「いや〜、さっきお宅に伺ったんですよ。回覧板持ってったんですがね。それで、ちょうどお話のあった
 実装石が見れましてね」

「お、ひょっとして車庫にいましたか?」

「そうなんですよ。やけに楽しそうに歌って踊ってと、いい仕上がりでした」

「まあ、見苦しかったと思いますが・・・」

「ははっ・・・、いや、それでね、実はもう一つあるんですがね。中実装もいるんじゃ無かったですか?」

「あ、そいつは実は今朝から姿が見えんのですよ。昨夜ちょっと悪戯をかまして・・・」

「ほう、そうすると家に来ているのがそうかもしれない」

「へ?そちらにいるんですか?」

「家のネコが引きずってきましてね。やたらと舐めたり擦りついしたりして離れんのですが」

「・・・多分そうです、マタタビとキャットニプの臭いが染み付いてるはずなんですよ
 生きてるんですか?」

「また変わったことをやりましたな。ボロボロですが、元気ですよ。
 話を聞いたら「イモウトちゃんが待っている」とか盛んに言ってるのでもしかしてと思ったんですよ」

「どうしましょう、引き取りにいきましょうか?」

「それもいいですが、ちょっと予定を変更してみませんか。夕方に今後の相談をしたいと思うんですが」

「いいですよ。では、仕事が引けたら伺いますので」

「それでは、よろしく」


いままで、ある程度敏明さんと共謀して事を進めていたのだ。
実装石に関しては、敏明さんは俺の大先輩だ。
合計15匹もの仔実装(+即処分の糞虫1匹)が迷い込んできたことを話すと、面白そうだと乗ってきた。

15匹の仔実装の遍歴を聞くと大変興味深い個体のようだがが、いささか多すぎる。
玉石混合の仔実装集団をある程度自活させ、自滅と最低限の間引きで能力の低い仔を消す。
適度に数が減ったころには、適度におバカで賢い、素質のいい仔実装がそろうだろう。
そういう仔なら、きちんと楽しめるというものだ。
今まで敏明さんにはアドバイスだけをもらい、お披露目はしていない。

中実装は賢くてやさしい、素晴らしい個体ではあるが、性格が良すぎて面白みに欠ける。
ある程度仔実装が育った所でお引取りを願ったらどうか、ということになった。
しかし明確な理由も無く殺したり追い出すのは、今回の趣旨に反する
あくまで自滅を演出するため、手の込んだ事をしたのだがどうも失敗したようだ。

中実装との再会を楽しみに、午後の仕事に励んだ。

帰り、自宅より先に敏明さん家へ向かう。
車を敷地に入れると、敏明さんが出迎えてくれた。

「や、いらっしゃい。いま中実装をつれてくるから」

そう言って、なぜか60センチの定規を渡してきた。よく分かってらっしゃる。
庭では2匹の成体実装が雑草取りをしている。
こちらにお辞儀をしてから作業を続ける。さすがに躾がいい。
縁側に黒猫が1匹。これが中実装を連れて来てくれた奴だろうか。

数分待つと、玄関に中実装が現れた。

「テスッ、テッスウー!」

俺の姿を見るや、トテトテと一目散に駆け寄ってくる。
間違いなくあの賢い中実装だ。約束破りの。
ちょうどいい間合いに入ったところで、一発定規を大振りする

「テジッ」

ほっぺたを押さえて立ち止まる。
すかさず定規の往復ビンタを、30秒ほど食らわせ続ける。
ビンタをやめて、中実装に話しかける。

「よう、オネエちゃん。無断外出は楽しかったか?」
「二、ニンゲンさん、許してくださいテス」
「許すわけ無いだろ?約束破りが」

再び定規ビンタを5秒ほど。

「おまえ、いいご身分だな?妹たちは、お前が居なくなったと大泣きしてたぞ
 ・・・実はうれし泣きだったりしてな?」
「そ、そんなこと無いテスゥ。お願いテス、妹に会いたいんテス!」
「逆らったら水フーセン。前にも妹たちに何回かやったよな? 
 所詮お前ら実装石は馬鹿だから、言われても約束を守れないんだろ?死んでもらうしかないよ」
「ゆるしテ!許してくださいテスゥ!」

「○○さん、ちょっとこちらへ」

敏明さんが家の中へ呼ぶ。

「○○さん、ここは押さえて仔実装たちに会わせてやってはどうですか」

「しかし・・・」

「会わせてやって、中実装を必要とする仔が居ればそれもまとめて私が引き取ります。
 中実装の保護がいらないという仔は、あなたの所に残す。
 配分がどうなるかは分かりませんが、あとはアドリブで対応して仔実装を振り回しましょう」

「とすると、大幅に計画変更ですか?」

「あの中実装としばらく話してみたんですが、なかなか頭がいいようですからね。
 うちの成体も片割れが結構老化してますから、跡継ぎが欲しいし」

そういえば、さっき庭にいた実装石、しわが見えたような気がした。
敏明さんは結構年だが独り者で、あの実装石と猫が家族の代わりなのだ。
ただし、役に立たない実装石に関しては、馬鹿な姿を楽しむ使い捨てオモチャになっているのだが。

「お馬鹿な仔実装も欲しいですが、賢い実装も小間使いとして役に立つ。どうでしょう?」

「敏明さんが欲しいのでしたらかまいませんよ・・・そうだ、今から一緒にうちに行きましょう。
 仔実装もじっくり見てもらいたいし、今日はあいつらだけしか居ないから、何か面白いことになったかもしれない
 カメラをつけて、行動を録画してあるんですよ」

「いいシーンが見れるかもしれませんな。いいですよ、伺いましょう」

玄関を出ると、中実装が泣きながら立ち尽くしている。
近づくとビクビクしだしたが、家に帰ることを告げて車に押し込む。
途中、例の猫の姿を見て、体を振るわせ始めた。
服は何箇所も破れているが、汚れは無い。聞けば敏明さんが洗ってくれたらしい。

敏明さんにも車に乗ってもらい、数十メートルのドライブに出る。
信じられないスピードで流れる背景に、中実装は目を見張っていた。


車を車庫に入れるとき、まずは床にボトルが散らばっているのに気付いた。
降りてみると、実装浴場の周りは散らかり放題。
変色した痕もあるし、何かやってくれたに違いない。
あわてて片付けようとする中実装を制し、リンガルを切って敏明さんと軽く打ち合わせ。

仔実装たちの家がある裏庭へ向かう。
家の横を通り、角を曲がって庭が目に入る。ボーリング球が片隅にあった。
すぐに倒れた仔実装が2匹、目に入った。
体格が大きめだった仔だ。妙に平べったく、潰されたような感じ。
舌が飛び出ていて、すでに事切れているようだ。

「テスー!テスー!」

中実装が走りより、俺と敏明さんも歩み寄る。
と同時に、横の茂みからも仔実装の叫びと姿が飛び出してきた。
1、2、3・・・ 6匹。大きい仔4匹、普通の仔1匹、小さい仔1匹しかいない。
朝のトイレ処分後に11匹居たはずだから、そこに転がる2匹の他にあと3匹。
テチャテチャ騒ぐ仔実装。リンガルを切っていたのだった。

スイッチを入れて状況を聞きだそうとするが、一斉に喋るのでよく分からん。
中実装にこの場を収めるように伝えた時、妙なことに気付いた。
小さい方の仔実装二匹は中実装にすがり付いて大泣きだが、大きい仔4匹はちょっと離れて騒いでいる。
それから実装の家である木箱の方から変なにおい、要するに悪臭が漂ってきている。
それからそれから、実装たちの服が変である。脱色しているらしい。

最後の疑問は簡単に想像が付いた。「ハイター」が原因だろう
どの仔も服ががまだら模様の状態だ。
もし不満があるなら染めてやればすぐ元通りだ。

木箱のほうは鼻をつまんで見に行って見た。
実装の糞と何かの液体が乾きかけている。これに内部がほぼ覆われている。
中に実装石らしき塊があった。これでもう1匹の行方が分かった。
病気か?事故か?あいつらに話を聞けば分かる。

中実装のおかげで落ち着いてきた仔実装の尋問を始める。
まず最初に、現在姿の見えない仔実装はそれぞれ死んだか、行方知れずなことが分かった。
朝からの行動を話させる。

まず洗濯をしたこと。
俺の言ったとおり、色々試してみたこと。
いきなりのどが痛くなり、涙が出たこと。
お服が変になったこと。イモウトが1匹変になったこと。
みんなでお風呂に入り、そこにいるニンゲンさんにお歌を褒められたこと。
お風呂から帰ってきたら、「イモウトのせいで」なにもかも無茶苦茶になったこと。

ここまで聞いたところで、全匹「あいつが悪いんテチャァ!」と怒りをあらわにする。
俺は一発足踏みをかまし、一喝して静かにさせる。

「そのイモウトが、おうちを臭くしたのか?」
「そんなの知るかテチュ!とにかくアイツが全部わるいんテチ!」

敏明さんは黙々とメモを取っているようだ。

続きを話させる。なかなか苦労したが、何とか時間順に話を並べる。

おうちが臭くて近づけず、ゴハンが食べられなかった。
だからお庭にあるものを食べようということになった。
1:大4匹 2:大1匹、普通2匹 3:大1匹、小2匹 の3手に分かれて探索に出た。
みんなそれぞれ、木の実や葉っぱ、根っこなどを集め、木の下で集まって食べた。

「おいチかったんテチュ♪」

このあたりは平和な話だ。
このときのグループ分けは、同じ親をもつ血族同士で分かれている。

おなかが膨れて、みんなで話し合った。
アクマのようなイモウトがいなくなって平和になった。
お歌も踊りも、ニンゲンさんに認めてもらえた。
お庭には美味しいものがたくさんある。
大オネエちゃんが居なくなった。今後は・・・

ここで意見が分かれだす。
4匹の大きい仔は、もはや自分達だけで充分だと。
他の仔達は中実装がいないと不安だと。

次第に言い争いになり、対立構造となる。
物理的なパワーバランス的には、大きい仔4匹のグループが圧倒的である。
普通の仔と小さい仔の4匹が束になっても、大きい仔1匹に到底適わない。
精神的な面でも、人間にたとえれば高校生と幼稚園児くらいの開きといえるだろう。

言い争っているうちに、いつの間にか妙な提案が出てくる。
かつて中実装のみが転がすことが出来たボーリングの球。
あれを転がした「グループ」がリーダーになるんだと。
バカが何匹も集まって話し合っているせいで、話がおかしくなってしまったのだろうか。
非常に不公平な提案だが、体格と数の圧力で大きな仔のグループが押し切ってしまった。
他の仔実装たちは不満が一杯だが、逆らえなかった。

さっそくボーリング球のところへ向かう仔実装たち。
小さなボール類は木箱の中に入れてあるので使用不能だが、大物は庭に転がされたままだ。
力の弱いグループから挑戦するが、動くはずも無い。
「テッチュギィィィ!」と掛け声だけはすごいものの、完全に力不足だった。
僅かに揺らした程度で、2グループは挫折した。
小さな仔たちは、体力を使い果たして倒れこむ。
大きな仔二匹は、圧倒的な力を持つ次のグループを睨み付けていた。

4匹がボーリング球に取り掛かる。
この4匹は、庭掃除で重いチリ取りを使うことが多かった。
力の入れ方、使い方についてそれなりに経験を積んでいる。
他の2匹の大きい仔よりも、わずかながら運動能力が優れているのだ。

「テジュウゥゥゥゥ」
「・・・・・・・」
「テジジジィー!」
「テェェェェ・・・」

4匹が一気に力を掛けると、ボーリング球が揺れ出す。
2匹が弾みをつけるように力を変化させ、動き出しのきっかけを作ろうと頑張る。
伊達に今まで重作業をやってきたわけではなく、コツと工夫を身につけていた。

「テジュウ!」

最後の一押し、ついにボーリング球が転がり始める。
一度動き出せばあとは大したことが無い。大体、少しでも転がした時点で勝利条件を満たしている。
勝利の喜びをかみしめ、あとは敗者に見せ付けるように楽しく転がしていくだけだ

「テッチ、テッチ、テッチ、テッチ」

まだまだ仔実装らしいお馴染みの掛け声で、快調に転がす。どんどん加速する。
この場所は、向こう側に向かって僅かに下り勾配となっていた。

悔しさに震えながらそれを見つめていた2匹の大きな仔。
突然、ボーリングの球を止めようと飛び出した。

「テッチャァー!」
「テッチャァー!」

左右前方から、それぞれボーリング球の進路に飛び出す。
こういうところは、今までのチームワークの賜物だろうか。
だが、迫り来るボーリング球の迫力に我に帰る。     ・・・こんな物止められるわけ無いテチ!
あわてて引き返そうとした所で、1匹が転ぶ。もう一匹も転ぶ。
転がしていた4匹もあわてるが、止められるわけが無い。結局全員すっころんだ。

チーーーーーーーー!
テチィーーーーーーー!
チーーーーーー!

小さな仔たちもか細く泣く中、ボーリング球は見事に仔実装2匹の真上を転がりぬけた。

「ヂィッ!!!!!!」
「チヂィッ!!!!!」

断末魔まで良く似た声。血のつながりが無くてもこの2匹は大変相性が良かったのだろう。

「駄目テチュゥ、死んでるテチュ。アタマぺったんこテチュ」
「どうするテチ?」
「ともかくワタチらが勝ったんテチュ、イモウトたちは従ってもらうテチ」
「テェェン、テェェン」

この時、普通の仔と小さい仔が1匹づつ、大泣きしながらすごい速さで走り去ってしまった。
追いかけようとしたが、とりあえず目の前の2匹を説得するため、4匹組みは踏みとどまったという。
ぐずる仔をなだめ、これからはワタチたちが大オネエちゃんテチ!と言っていた。
そこへ俺達が帰ってきた、というわけである。


話によれば、まだ2匹が行方不明。
この庭のどこかに潜んでいるのだろうか。何か反応があっても良さそうなものだが。
日が落ちかけた庭を、懐中電灯を使って探索する。
敏明さんも手伝ってくれた。「面白い、面白いねぇ」と言いながら。

薄暗い中、庭木の中に居るかもしれない緑色の生き物を探すのは簡単ではない。
顔や前掛けをこちらに向けていてくれれば、まだ分かりやすいが、うずくまってでも居られたら困難だ。
手にした鉄の細い棒で植物を掻き分けてしらみつぶしに見てゆく。
プロ用に、偽石サーチャーなんて物があったな、などと考えつつ調べ続ける。
ふと、視界の隅に白い塊が見えた。
この庭に白い物があるとすれば、ゴミの類だろう。
ここには花も結構あるのだが、白い花は嫌いだから植えていないのだ。
鉄棒で手繰り寄せるため、突付いてみた。

グニュ

たいへん身に覚えのある感触が伝わる。
これは・・・間違いないだろう。実装石の感触だ。
敏明さんを呼んで、二人で検分する。
やはり真っ白の服を着た仔実装だった。首と手が分離してしまっているが。
手には木の枝がしっかり握られている。

もう一度近くを念入りにライトで照らすと、鈍い反射光があった。
濁りかけた眼球が光を反射していた。
今度も仔実装。この仔実装の服には脱色の痕が無い。うちのとは別の仔か?
こちらも首と手が1本分離し、頭には齧られたような痕跡がある。

敏明さんと話し合った結果、恐らく大きなカマキリに襲われたのだろうということになった。
成体カマキリなら、こういう小さい仔実装の首を切り取ることも何とか可能だ。
実例を何回か見てきているし、切り口の感じが良く似ている。
ノコギリでざくざくと切り込んだような感じ、といえば良いのだろうか。
先日、何かをバラバラにしたと得意そうに話す仔実装が居たが、立場が逆になったな。

二匹の死体をもって、仔実装たちのところへ戻る。
真っ白の服の方は間違いなかろうが、脱色無しの服の方はどうだろうか。
チィーーーーーーーーー!
連中から悲鳴が上がる。
両方とも、間違いなくイモウトちゃんだと言う。
服の色の事を聞くと、一匹だけ洗わない奴がいた。ずるいと思ったが何も言わずにいた、だそうだ。

仔実装たちの死体を集め、ゴミ袋に放り込む。
木箱の中を覗き、死体だけを取り出した。鼻が曲がりそうな臭いだ。
実装便所を探り、今朝の死体も回収する。
埋葬などという対応は取らない。ちゃんと実装ゴミの回収日があるのだから。


これで安否は確認できた。
中実装 1
大きめ 4 (礫死 2)
普 通 1 (切断 1)
小さめ 1 (溺死 1 中毒 1 切断 1)

合計7匹、ほぼ半減した結果になる。
リーダー争いの経緯からすると、大きめ4匹はかなり自信過剰で、もはや中実装は邪魔なのだろう。
普通と小さい仔の2匹は、すでに中実装にべったりしがみ付いて離れない。
上手い具合に、勝手に2派に分かれてくれている。
しかも中実装は、家から追い出さねばならない理由がしっかりとある。
再び敏明さんと相談する。

「どうでしょう、3匹と4匹に上手く分かれそうですから、ここで分割ということにしては」

「いいですな。自然の流れに任せて、上手い具合に収まったんですから、大成功でしょう」

「では、敏明さんに中実装と小さいの2匹、うちにあの4匹ですね」

「はいはい、そうしましょうか」

まず中実装の所へ行き、無断外出をとがめて、うちでは飼えないから追い出す旨を伝える。
その代わりに敏明さんの家で暮らすことを提案し、無理やり了解させた。
続いて縋りつく2匹に、オネエちゃんに付いていくかを聞くと「ハイテチ!」と即答してきた。
決まったからには話は早い。敏明さんはレジ袋に3匹を入れると、

「それじゃ、また後日・・・」

と言ってさっさと帰ってしまった。まったく飄々としている。
3匹は別れ際まで俺に手を振っていた。

さらに大きい仔4匹組み。
いまの様子を見て分かっていたのだろうが、俺が中実装を追い出したことを伝えると歓喜の声を上げた。

「ま、これからも頑張れよ。歌と踊りもな」

「まかせるテチ!極上のげーじゅつさくひんを見せるテチ!」
「ワタチのチリ取りさばきを見るがいいテチュ!」
「クモの巣なんか、ぜんぶぶっとばすんテチュ!」
「いつでもお歌の発表は出来るテチ!」

「それからな、お前らの家は、お前らが掃除しろよ」

「テ、テチュ?」

「とりあえず、昼飯のケースを返してくれ。家の中にあるんだろ?」

「チュ?チュ?」
「臭いんテチュ・・・」

「ケースがなければ、明日の昼飯は抜きだ、頑張って取って来い」
「後で夕飯を持ってくるからな。それまでに何とかしろ」

「テチ・・・テ・・・」

カラカラカラ・・・ぴしゃり
俺は雨戸とサッシを閉めた。

あいつらの棲家は、あくまであの木箱の中。
最初の取り決めどおり、一切ルールは変えるつもりは無い。
これから雑草の伸びも少なくなるから、4匹でも仕事は回るだろう。
今はまだ夜でも暖かい。野宿でも何とかなるってもんだ。

俺は敏明さんからもらった、仔実装たちの歌詞のログを読みながらあきれ返る。
大爆笑しちまいそうだ。
こりゃ全面改訂しなけりゃ、俺を納得させることなんて出来ないぞ?
加えてあいつら「冬」というものを知らないはずだ。
この辺は冬場、非常に風が強い所でな・・・

夕食、仕掛けビデオの鑑賞、敏明さんと今後の相談、今夜は忙しいな。

テチー テチャァー チュウーン テチー

庭から聞こえる仔実装の泣き声をかすかに聞きながら、台所に向かった。

<完>















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1 Re: Name:匿名石 2024/08/02-22:58:17 No:00009277[申告]
うーん…
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