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【 これまでの“ただの一般人としあき”は 】
弐羽としあきは、ある夜偶然出会った“初期実装”に因縁をつけられ、彼女の子供を捜すため
強引に異世界を旅行する羽目になった。
としあきが8番目に辿り付いたのは、「実装人」と呼ばれる実装生物から進化した新人類が
支配する世界。
外観の違いから警戒され、さらには「魔道師ギルド」と呼ばれる謎の組織により拘束監禁されて
しまったとしあき達は、ビドゥという魔道師の依頼を受けて“グランマイスの聖者”と呼ばれる存在
への接触を図ることになった。
これにより、かつて地上に君臨した「旧人類」の消失理由が、わかるかもしれないのだ。
だが一方で、不穏な空気も漂っていた。
としあき達に憑いていたとされる「魔」とは何か?
ビドゥの意志により拉致されたぷちとミドリの運命は?
そして、としあきの携帯を手にしたヒスイとルリが助けた、謎の男の素性は……?
※ ※ ※
ここは、ランファース寺院。
「魔道師ギルド」「水道局」そして「鉄工ギルド」に並ぶ四大中枢ギルドの一つだ。
魔法結界に保護されている都市モータル内において、魔道師ギルド同様「魔法の使用が特別に許されている」特殊な場
であり、現代世界で言うところの病院と研究所を兼ねている施設。
その地下深くに存在する特殊な治療室に、ぷちとミドリは寝かされていた。
二人が寝かされているベッドの脇には、無数の刃物や錐状の道具が置かれている。
衣服を脱がされ、深い眠りからいまだ目覚めていないぷちは、白衣をまとう二人の男達によってその肢体を撫で回されて
いた。
丹念に表面をなぞり、触診し、慎重に検査されている。
そのうちの一人が、突如目をカッと見開き、マスクごしに声を放った。
「驚きましたな。この女は、実翠人ではありませぬぞ!」
もう一人の白衣の男が相槌を打つ。
「体内に偽石の反応がある。しかもこの大きさは、実装石の幼少態と全く同じものだ」
「ありえない話だ。見た目は完璧な実翠人なのに」
「いや待たれよ。
この者の偽石、随分と破損しているようだ」
そう言うと、白衣の一人はぷちに向かって怪しい身振り手振りを行い始める。
もう一人が、ぷちの身体の上に白い棒のようなものを何本も置き、同じような動作をとり始める。
すると、ぷちの体内から、半透明の石のような映像がヌルリとせり出してきた。
それはとても大きく、どう見てもぷちの身体に収まるようには思えないものだったが、白衣の男達はそれをじっくりと見つめ、
眉をひそめた。
「細かいひび割れが実に多いな、よくこれで今まで生きていたものだ」
「これでは、デバイスを用いても負荷に耐えられないぞ」
「それではいかん。
やむを得ない、偽石を補修するか」
「それにしても不思議だ。
偽石がこんな状態なら、一週間も持たずに死んでしまうだろうに」
「それ以前に、なぜ実装石がここまで完璧に人の身体を手に入れられたのか?
今までそのような例は、聞いた事がないわい」
「——ひょっとしたら、こやつが“魔”そのものかもしれぬな」
「なれば、益々偽石から情報を探らねば」
白衣の男達が更なる動作を行うと、巨大な偽石の映像は空中にかき消えた。
続けて、ミドリの身体にも同様の処置を行っていく。
男達の顔が、再び歪む。
「なんと! こやつは偽石を持っておらんとな?!」
「偽石なしで生きているだと!! ありえないことだ」
「あの女ではなく、こやつが“魔”なのではないか?」
「いやいや、ううむ……結局、どっちだ?」
白衣の男達は、しばし何か相談事をしていたが、結論が出せず一旦部屋を退出する事にした。
青白い石で組まれた冷たい空気の部屋の中、全裸のぷちとミドリは、白い台の上で尚も眠り続ける。
かなりの低温であるにも関わらず、二人が目覚める様子はなかった。
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じゃに☆じそ!〜実装世界あばれ旅〜 第8話 ACT-2 【 の道 】
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二日目朝。
この世界にやって来てから、だいたい19時間が経過した。
残り滞在時間はあと100時間強程度。
大きな客室のソファの上で目覚めたとしあきは、カーペットの上で横たわっている栗毛色の髪のメイドを見てぎょっとした。
嫌な予感に駆られ、部屋中をくまなく捜すが、ぷちもミドリも姿が見えない。
客室を飛び出そうするが、ドアが全く開かない。
「くそ、やっぱり監禁かよ! あのオカマ野郎ふざけやがって!」
やる事がなくなったとしあきは、ベッドルームを発見し寝そべった。
天蓋つきの高級ベッドは、どこかオリエンタルな雰囲気があり、他の家具類と比較すると調和性に乏しく、かなりバランスが
悪く思える。
としあきは、実装人は「旧人類」文化を無差別に取り入れているだけなのでは、と疑問を抱き始めた。
ふと、どこからか良い風が吹いてくる。
見てみると、寝室とリビングを繋ぐ短い通路の脇に窓が設置されており、そこからバルコニーに出られるようになっていた。
外の空気が吸いたくなったとしあきは、バルコニーに出て、眼下に広がる町並みを見た。
「うわ……」
その光景は、以前何かの雑誌で見た中世ヨーロッパの風景画に良く似ていた。
ビルやコンクリート建造物はどこにも見られず、石造りの建物やモルタル風の木造建築がひしめき合っている。
としあきの居る建物はこの街中でもかなりの高層建造物のようで、そこを中心にして段々に街が構築されていた。
端に行けば行くほど低く、この建物に近ければ近いほど高くなっている構図だ。
それぞれの段差は階段で結ばれており、大勢の人々が行き来している様子が見えた。
三階か四階程度の幅広の建物はアパートメントのようで、壁の面積に対して妙に小さな窓からは住人が顔を出し、隣の
建物と繋げられているロープに洗濯物を干している。
環状に広がる石の回廊は白い光を放ち、駆け回る子供達がそれを遮るため、キラキラと輝いて見える。
空気はとても清々しく、青空はどこまでも突き抜けるように透き通り、頬を撫でる風には優しさすら感じられる。
かなり高い塔の上にも関わらず、ここまで人々の歓声がはっきりと伝わってくる。
たとえるならそれは、生活観に溢れた幻想的な風景。
としあきには全く異質な光景の筈だが、どこか懐かしさを覚えさせる不思議な味わいがある。
「なんだ、いい文化しっかり取り入れてるじゃないの」
先ほどの評価を訂正し、としあきはしばしバルコニーからの景色に見入っていた。
『人口約十五万八千人。
実翠人比率約40パーセント、実蒼人約30パーセント、実金人・実紅人各10パーセント、実雛人約8パーセント、実燈人
約2パーセント……』
突然、背後から誰かが話しかけてくる。
『それが、この街モータルだ。
四大中枢ギルドを中心に配し、その地下から、八区画に設置されている塔を経由する形で不可視の魔法結界が張られて
いる』
「魔法結界?」
『その通り。
この国の文化は、無数の魔法によって制御されている。
だがそのためには、厳しい戒律や規則が必要だ。
人々を安全に生活させるためには、魔法結界を設けて不必要な魔法の行使を制限しなければならない』
魔法、と言われた時点で「まさか」と思わされたが、確かにビドゥは、夕べ魔法らしきものを使い会話が成立するようにした。
なまじ信じられないことだったが、今も会話が成立している以上、信じざるを得ない。
「よくわかんねーけど、無差別に使われると危険だから、ある程度は絞らないとだめってことか」
『そうだ。
“魔”は、そんな大事な結界を、一時的とはいえ消してしまった』
「なるほど、そりゃ確かにとんでもないな」
『おはよう、としあき君』
背後に立つ魔道師ビドゥが、ニヤニヤ笑いながら挨拶をする。
その背後には、昨日の兵士が二人ほど待機していた。
昨日はヘルメットでよくわからなかったが、兵士達はどちらも女性のように見える。
しかし、ビドゥも顔だけ見る限りだと女そのもので、としあきは何がなんだかよくわからなくなってきた。
『朝から申し訳ないが、君に残念な報告をしなければならない。
あの実装石と少女のことなんだが』
としあきが質問を切り出すよりも早く、ビドゥは先手を打ってきた。
「ぷちとミドリが、どうかしたのか?」
『念の為、あの二人の身体検査を行わせてもらった。
そうしたら、どちらにも大きな異常が発見された』
「えっ?!」
ビドゥは、ぷちには偽石があり、しかも破損しているため寿命がそう長くない事、そしてミドリの体内に偽石が存在していない
事を伝えた。
だが後者はともかく、前者は既に知っている事だ。
としあきは、ぷちが元々別世界の実装石で、ある事情から人間化を果たした特殊な存在だと教える。
それを聞いたビドゥは、目を大きく見開いて驚愕した。
『なんと!! 自力で人間化した実装石?
にわかには信じられないが……』
「そういう実装石がいる世界から連れて来た奴なんだよ。
だけど、偽石の破損ばかりはどうしようもなくてなあ」
『ふむ』
ビドゥは、しばし考えると顔を上げ、としあきの肩に手をかけた。
『わかった、ならばあの少女の偽石は、こちらで治療しよう』
「マジで?! そんな事できるのかよ!!」
もしぷちの偽石が治るなら、今後二度と彼女の自壊を危惧する必要はない。
ビドゥはウインクしながらフフン♪ と鼻を鳴らし、『まかせたまえ』と呟いた。
『ただし、処置にはそれなりの時間がかかる。
彼女はこの街の寺院に預け、君には昨日話した依頼を果たしてもらいたい』
「あー、ナントカの聖者の件だっけ?
お安い御用だ」
『その通りだ。
それで、もう一方の実装石はどうする?』
としあきは、夕べ糞を顔面に投げつけられた事を思い出し、途端にムカッ腹が立ってきた。
「死なない程度に放置しといてくれ。
もし死んだら、その辺に適当に埋めていいよ」
『わ、わかった』
交渉は成立した。
ビドゥの話術に翻弄され、としあきは自分が監禁されていた事をすっかり頭から飛ばしてしまっている。
別室に招かれたとしあきは、三人の年老いた男達と面会させられ、あらためて“グランマイスの聖者”との接触を約束
させられた。
なんだか話がどんどん大袈裟になっていく気がして、としあきは無駄に緊張してしまう。
セルティウスと名乗るやせ細った老人が、顎鬚を弄びながらとしあきに話しかけてくる。
『グランマイスの聖者の許へは、ここにいるビドゥと共に向かっていただけますかな?
護衛のために兵士を十名、装甲を施した寝台つきの大型馬車も用意しましょう』
「な、なんかえらく大袈裟じゃないっスか?」
うろたえるとしあきに、別な老人が話しかける。
『いやいや、道中どのような事が起こるかわからぬからな。
お主はこの世界ただ一人の旧人類。
傷一つ無く現地にたどり着けるよう、万全を期すまでじゃよ』
「は、はぁ」
『既に準備は整いつつある。
としあき、よろしく頼むよ』
ビドゥに握手を求められ、もはや拒否出来ないところまで持ち上げられてしまう。
出発は三時間後となり、それまで客室で休んでいてくれと頼まれる。
特にやる事のないとしあきは、またバルコニーから景色を眺めようと考えた。
※ ※ ※
同じ頃、ここは八百屋メルティス。
夕べヒスイとルリに助けられた行き倒れの男は、ミーティングルームに仮設した簡易ベッドに寝かされ、モモに看護されて
いた。
特に怪我はなかったが、相当疲労・衰弱している。
パンを牛乳でふやかした柔らかい食事を与えながら、実雛人の少女モモは、心配そうに男を見つめた。
「ねぇヒスイさん、大丈夫かなあ、この人?」
「うーん、多分大丈夫です。
万が一くたばったら、やっすい葬式でも出してやれば成仏するです」
「ひ、酷い! それは酷すぎなの!」
「冗談です冗談!
それより、ルリとクレナイ遅いです」
ルリとクレナイは、早朝から調査のため街に出ていた。
「王立食糧庁」と呼ばれる機関の詳細を調べるためである。
もうすぐ昼時という頃になって、ようやくルリが戻ってきた。
「ただいま、あの人はどうだい?」
「おー、おかえりです。
相変わらずですー」
「少し落ち着いたみたいなの。うなされなくなったの」
店まで運んだ手前、ルリもそれなりに男の様態が気になっていた。
としあきとよく似た外観で、ムダに筋張った身体とぼさぼさで不潔感の漂う黒髪、薄汚れた服。
それは、実装人である彼らから見ると、とても異端な外観である。
「こいつもとしあきみたいに、いきなりこの世界にやってきたです?」
「さあ、どうだろうね」
ゆっくりと寝息を立てている事を確認し安心すると、ルリはヒスイとモモに向き直り、報告を行う。
「結論から言うと、食糧庁は確かに存在したよ」
「おっおっ? で、どんな所だったです?」
「お惣菜屋さん」
「「 え? 」」
モモとヒスイが、目をまん丸にして驚く。
ルリは「だよね…」と呟き、更に説明を続けた。
「老舗だけど、とても地味なお店で、知る人ぞ知るって感じかな。
従業員も十人くらいしかいなくて、すごく牧歌的なところだよ。
言うまでもないけど、ナイトトランスって名前の人は、今も、これまでも在籍していたことはない」
「あらら!」
「ちょっと待てです、どうしてお惣菜屋が王立機関なんです?」
ルリによると、ある程度以上長い期間営業を続け業績も高い店舗は、申請により「王立」という名義を名乗ることが許されて
いるという。
いわば「元祖○○」みたいなもので、多少箔がつくというサービスのようなものだ。
当然、実際には王立機関である筈もなく、またある程度年配の人なら誰でも知ってる事のようだ。
最近はもう行われていないようだが、このサービスのため王立機関と名のつく事業は大変多く、混乱が生じることも少なく
ないらしい。
「どちらにしろ、あのナイトトランスさんが何処の何者なのかはわからなくなった。
振り出しに戻ったどころか、手がかりがなくなってマイナスだよ」
「でもよかったです。
本物の食糧庁が、あんな毒飯作ってバラ撒いているなんて噂が流れたら、可哀想だったです」
ヒスイはそう言いながら、実装人荘で見た恐ろしい状況を思い返し、一人でブルブル震えた。
「クレナイは、僕とは別口で調査を続けているんだけど——」
そこまで話したところで、ルリの声が止まる。
ふと見ると、行き倒れていた男が目を覚ましたようだ。
“ここは何処だ?”
男は、よくわからない言語で話している。
かける言葉が見つからず動揺していると、男は突然目をカッと開き、ルリに飛び掛った!
“おおお、アクア、アクアあぁぁ!!
やっと見つけた、僕のアクアァァァ!!”
「ち、ちょっ……!! な、何だこいつ?!」
「こらあっ! ルリに汚いツラを近づけるんじゃねーですっ!」
「ダメなのー! 離れなさいなのーっ!」
二人がかりで引き剥がそうとするが、男はべったりとルリに抱きつき、執拗に頬ずりを繰り返す。
涙と涎をだらだら垂らしながら、男は意味不明な叫び声を上げて泣いた。
“アクアァァァ、アクアァァァ! 愛してるよおぉぉぉぉぉ!!”
「この……いい加減にしろっっ!!」
ドムッ!!
“ぐ……!”
ルリのボディブローが炸裂し、男がもんどり打って倒れる。
汚れの付着した頬をハンカチで拭いながら、ルリは冷酷な視線で男を見下ろした。
「ルリ、お前のパンチはさすがにやばいと思うです」
「だって、しょうがないじゃないか!」
「あーあ、失神してますよ? せっかく意識戻ったのに」
「そんな事言ったって」
「減るもんじゃなし、好きなだけ触らせてやりゃいいです!
んで、後で代金請求してやりゃあいいんです」
ニタニタしながら、ヒスイがからかう。
だがルリは、なぜか険しい表情で彼女を睨みつけた。
「そういうこと、冗談でも言わないでくれないか?」
「う…あ、ご、ごめん……です」
倒れた男を担ぎ上げもう一度ベッドに横たわらせると、ルリは何も言わず部屋を出て行こうとする。
だが、ちょうどその時、クレナイが戻ってきた。
「坊や、大変なことがわかったわよ」
「どうしたんだい?」
「魔道師ギルドの中で、あの女を見たのよ。
あのバカデカい実装石も一緒だったから、間違いないわ」
珍しくやや興奮気味な口調で、クレナイがまくし立てる。
ルリは再び室内に戻り、ヒスイやモモも静かに聞き入った。
「あの女、魔道師ギルドのメンバーよ」
「「「 魔道師ギルド? 」」」
クレナイは一度深呼吸をしてから、大口を開けて驚く三人を見つめ直す。
「魔道師といっても、要人警護の関係者らしいわ。
食糧庁なんて、よく言ったものだわ。
カドデッキィの——」
「カドデッキィ?! 僕の出身地だ」
クレナイの言葉を遮るように、ルリは思わず声を上げる。
ナイトトランスは、少なくとも身分が不明瞭という存在ではなかったようだ。
現在モータルの魔道師ギルドでは、カドデッキィからやって来た高魔師(魔道師ギルドの最上位階級)が滞在しており、
彼女は恐らくその関連で駆り出されたように思われた。
クレナイは、なぜか急に落ち着きがなくなったルリの態度が気にかかった。
「さっき、魔道師ギルドの前に大型の装甲馬車が用意されていたわ。
これから……坊や、どうしたの?」
「あの、ごめん——!」
突然、ルリが立ち上がり出口に向かっていく。
「ちょっと、まだ話は終わってなくてよ?」
「急用を思い出したんだ! ちょっと出てくる!」
「んな? あいつどうしたです?」
「カドデッキィって聞いた途端に、露骨に態度が変わったのー」
「……」
クレナイは無言で立ち上がると、ルリが開け放ったドアを静かに見つめた。
——どさっ
“いてっ!”
とその時、ベッドから、男が落下した。
※ ※ ※
“僕の名前はひろあき、海藤ひろあきだ。
助けてくれたことには感謝するよ。
それで、ここは何の世界なんだい?”
男は、鼻をフフン♪ と鳴らすと、妙に気取った態度で話し出す。
だが、彼の言葉は誰にも理解出来ない。
小首を傾げるヒスイ達三人に向かって、ひろあきはちょっとキショイ流し目を向けた。
“ところで君達、僕は今とてもお腹が空いているんだ。
何か食べるものはないのかい?”
「ねークレナイー。
こいつなんて言ってるです?」
「わかるわけないわ、私が知ってるどの言語とも違うもの」
「ひょってして、お腹ペコペコなの?」
モモが、ひろあきのジェスチャーを見て、同じような動作をしてみせる。
ひろあきは、ニッコリ笑って大きく頷いた。
“さすがだね、君。
そう、それそれ”
「なんだか正解みたいなのー。
どうすればいいかな、ヒスイさん?」
意図は理解しても、人種が違うひろあきに何を与えれば良いのか、モモには全くわからない。
だがヒスイは、即座に頭の上に電球を浮かべ、パリンと割った。
「こいつ、としあきと同じ旧人類です?
だったらうってつけのところがあるです!」
「なるほど、あそこね、あそこに行くのね」
「ですー!」
ヒスイとクレナイが、不気味なおどろおどろ線を背負ってうっひっひと笑う。
妙な不安を覚えたモモは、思わず肩をすぼめてひろあきを見た。
“それにしても不思議だな。
君達は人化実装なのかい?
その割には、実装リンガルが作動しないが……”
黒い機械を取り出しながら首を傾げるひろあきと、それに釣られて思わず同じ動作を取るモモ。
だが二人の腕は、横から伸びてきたヒスイの手にがっしりと掴まれた。
「よっし、ちと早いけど飯食いに行くです!
なんと驚き、今回はクレナイの超おごりでっすん♪」
「な、何を言い出すのヒスイ?!」
「モモも行くですー」
「えー!」
“興味深い、ぞくぞくするねぇ”
ヒスイは、同意すら求める事なく全員を無理矢理部屋から追い出すと、まるで子供のようにはしゃぎながら通りを
突っ走って行った。
「まったく、いつまで経っても子供ね、あの子は」
「そういえば、ヒスイさんっていくつなんだろ?」
「さあ、聞いたことないわね」
“さあ君たち、早く食事に連れて行ってくれたまえ”
馴れ馴れしく肩に手を置くひろあきに、クレナイは強烈なツインテールビンタを食らわした。
※ ※ ※
装甲馬車や複数の兵士が、入り口前の広場で旅の準備を整えている。
忙しそうな雰囲気の魔道師ギルドだったが、不思議なことに、ビドゥとの面会依頼は断られることはなく、逆にスムーズに
認められた。
ルリが通されたのは、魔道師ギルドの建物内でもかなり階層の高い、一般人や低階級魔道師などは絶対立ち入れない
エリア。
案内人が立ち去り、大きな待合室のような所で一人で待機させられる。
なんとも表現し難い緊張感を覚えたルリは、胸を手で押さえて数回深呼吸をした。
(本当に、ビドゥ様がいらしてるんだ……夢じゃないんだ!)
頬を真っ赤に染め、無意識に身体をもじもじさせながら、ルリは激しい鼓動を落ち着かせようと深呼吸を繰り返す。。
しばらくすると、ドアがノックされ、背の高い実翠人男性が入り込んできた。
明るい亜麻色の髪が、ふわりと宙に漂う。
ルリの身体が、硬直する。
「やあ、ルリ。久しぶりだね」
「あ……!」
魔道師ギルドの幹部がまとう白いローブとマントを身に着けたビドゥは、優しい笑顔を向けながら話しかける。
その態度は、まるで十年来の知人に語りかけるように、とても気さくだ。
「三年ぶりくらいかな? 元気そうで何よりだ」
「あ、ああ……ビドゥ様……」
ルリの脚ががくがくと震え、頬が紅潮し始める。
今までぐっと握り締めていた手は緩み、無意識に前にかざされる。
だが咄嗟に我に返り、手を引いた。
静かに立ち上がると、ルリは姿勢を正し、丁寧に礼を行った。
「中魔師ビドゥ様、お久しぶりでございます。
お目にかかれて大変光栄に存じます」
きりりとした態度に男は軽く頷くと、ルリの頭にそっと手を置く。
その途端、ルリの身体の奥で、何かが激しく疼いた。
「今は高魔師だ。
カドデッキィ魔道師ギルド所属高魔師ビドゥが、今の私の肩書きだよ」
「失礼しました。遅ればせながら、ご出世おめでとうございます」
「うむ」
冷静な態度を装うも、ルリの身体は火照り、背中に大量の汗がほとばしる。
膝から力が抜けていくような感覚は、彼がとうの昔に捨て去り、二度と思い出す筈のないものだった。
ビドゥは、ルリの全身を舐めるように見つめ、ふっとほくそ笑む。
その態度が、ルリの身体の芯を更に熱くさせる。
「私の姿を見ただけで発情するとは、相変わらずだね」
「い、いえ、これは……!」
「ふふ、まぁそうなるように躾けたのは、他でもない私だが」
「……」
ビドゥの手がルリの顎に触れ、その途端全身に電気が走る。
いつしかルリは、何かを懇願するように、潤んだ瞳でビドゥを見つめていた。
「君の活躍は聞いているよ、随分頑張っているそうじゃないか。
実翠人の女の子と共に行動しているようだが、あれは新しい恋人かい?」
そう言いながら、クスクスといたずらっぽく微笑む。
その仕草に、ルリは反射的に「そんな事はありません!」と応えてしまった。
「彼女は、仕事の同僚です! 恋人だなんて、そんな」
「そうかい? とても仲が良さそうだったから、つい悔しくなったよ」
ビドゥの言葉に、ルリの頬が緩む。
親しげに肩を抱かれ、部屋の奥に案内されると、ビドゥは仕切り戸を固く閉じた。
薄暗い部屋の真ん中には、場にそぐわない豪華な造りの天蓋付きベッドが置かれている。
ハッとして顔を上げるより先に、ルリは軽く突き飛ばされ、ベッドに倒れこんだ。
※ ※ ※
気がつくと、ルリは一糸まとわぬ姿で、ベッドの上に横たわっていた。
身体の芯がズキズキと疼き、四肢に僅かな痺れが残っている。
眠気とは異なる朦朧とした意識の中、必死で現状を思い返す。
下半身に感じる冷たい湿り気を感じ、その意味を即座に理解する。
ようやく起き上がったルリは、シーツで身体を覆い隠し、キョロキョロと周囲を見回した。
「ぼ、僕は……いったい、何を?!」
体中に点在する赤く小さなシミを見て、ルリはようやく、先ほどの熱い記憶と冷静さを取り戻した。
室内に誰もいない事を確認すると、ルリは素早くベッドから降り立ち、衣服を探す。
幸いにも、服は丁寧に折り畳まれ、部屋の端のソファに置かれていた。
失われた持ち物はなく、すぐにでも出られるように一箇所にまとめられている。
あの人らしいな、と軽く微笑むと、ルリは急いで部屋を退出する。
だが、ドアを閉める瞬間、その視線は天蓋付きのベッドに再び向けられた。
「本当に、幸運が訪れたんだ……」
携帯を握り締め、頬をほんのりと赤らめる。
ルリは慌ててドアを閉めると、急いで玄関を目指した。
※ ※ ※
ここは、装甲馬車の中。
ビドゥと共に馬車に乗り込んでいたとしあきは、小さな窓から外の景色を見つめ、ぼんやりとしていた。
魔道師ギルドを出るとビドゥの唱えた翻訳呪文は無効化してしまうため、街を出るまで誰とも会話が成立せず、退屈なのだ。
十数分後、馬車は大きな石造りの門を抜け、平野へと進んでいく。
そこで、ビドゥがようやく呪文を唱え始めた。
『やあとしあき、馬車の中は狭いが、必要なものが一通り揃っている。
何かあったらメイド達に、なんでも命じてくれたまえ』
「なんかお前って、俺の知り合いに話し方が似てて妙にムカつく」
『それは失礼。だが、どうしようもないな』
「ところで、その焉道って所には、どれくらいでたどり着くんだ?」
『ふむ……』
としあきの質問に、ビドゥはわざとらしい咳払いで誤魔化した。
『この馬車は、通常の約二倍の運行速度を誇っている。
心配することはない』
「そうじゃなくて、俺はあと四日後にはここに戻ってなきゃならないんだっつーの。
それには間に合うんだろ?」
『君が速やかに必要な情報を引き出してくれれば、ね』
ビドゥは巧みに曖昧な返答だけをする。
聞くだけムダかと解釈したとしあきは、舌打ちをして再び窓の外に見入った。
街を出た途端、急に単調な景色が続くようになった。
地平線が見えてもおかしくないような緑の平原、遠くに見えるなだらかな丘、点在する林や森。
そのいずれも、としあきの巡ってきた世界では見られなかったもので、本来なら新鮮味もあるだろうが、先に進んでいる
感覚すら乏しくつまらなさが先に立つ。
やがてビドゥは隣室へ移動し、メイドが一人だけ室内に残された。
「なぁあんた、聞いていいか?」
退屈しのぎにメイドに話しかけてみる。
緑色の髪のメイドは「実金人」という種族だそうで、今まで逢って来たどの実装人とも特徴が異なっている。
メイドは、綺麗にカールされた後ろ髪を払うと、どこかうざったそうな態度で返答した。
『はい』
「あんたは、焉道ってとこに行ったことはあるのか?」
『ありません』
「あ、そ……」
会話が続かない。
としあきは、ひょっとしてこの旅は凄まじく退屈で時間の無駄になるのではないか、と真剣に心配し始めた。
(あーあ、せめてぷちやミドリがいれば、退屈もしないんだがなぁ)
としあきは、ふと、ポケットの中でハンカチにくるまれている石のことを思い出す。
取り出して窓からの光に晒してみると、それは前に見たときより若干くすんでいるように思えた。
※ ※ ※
メルティスに戻ったルリは、魔道師ギルドで見たことをヒスイやクレナイ達に説明した。
だが、ヒスイを除いた三人はテーブルに突っ伏しており、まともに話を聞いているかも怪しい。
「どうしたんだよみんな?!」
「よくぞ聞いてくれたですルリ!!
ヒスイ達は、あれからヅィーロに行ってきたで……うぇっぷ」
嬉しそうに、そして同じくらい苦しそうなヒスイだけが、かろうじてルリと会話できる。
それ以外は、ひろあきも含めて死屍累々だ。
「ヒスイは、初挑戦の大アブラ野菜マシマシニンニクカラメ豚ダブルの完食に成功したです!
これでもう、クレナイより上なのは確て……げっぷ」
「ま、まさかみんなそんなもの食べて来たの?!」
「うう…も、もう二度と行きたくない…のぉぉ〜…」
ゾンビのような声でモモが呻き、その横では、同じく顔を伏せたひろあきが唸っている。
「あいつが言ってた通り、早速幸運が訪れたですー♪
ルリ、やっぱり依頼を受けてやろうです……っぷ」
「あ〜もう」
「ねえ、依頼って何のこと?」
ルリは、としあきの携帯を取り出し、夕べの出来事を説明した。
メルティスに莫大な富を授ける、という話にはクレナイもモモもさすがに疑ったが、実装石が約束した通り、ヒスイとルリには
それぞれ幸運が確かに訪れたという話を聞くと、目を剥いて驚いた。
「ルリは、どんな良いことがあったです?」
「え? ぼ、僕は……その、ちょっとね」
「ん〜? 何真っ赤になってるです?」
「な、なんでもないよ、それよりどうしようか?」
テーブルの上に置かれたとしあきの携帯と、それを見て腕組みをするメルティスのメンバー。
だが、今までずっと静かにしていたひろあきが突然起き上がり、携帯を鷲掴みにした。
「あっ?! こ、こら!! 何するです?」
“——おお、声が聞こえる!”
突然、ルリ達の脳内にテレパシーのようなものが伝わった。
“弐羽くんの携帯が、まさかこんなところにあるなんてね、助かったよ。
——うぷっ”
「お前……お前が話してるです?!」
ヒスイの声に、ひろあきは大きく頷いた。
“そうとも。僕は海藤ひろあき。
助けてくれた君達には、感謝しているよ。
ところでここは、何の世界なんだい?”
フフン♪ と鼻を鳴らし、何故か気取った態度を取るひろあきに、三人は怪訝な表情を浮かべる。
誰がどう見ても、ひろあきの様子は怪しい人物以外の何者でもない。
四人は顔を見合わせ、しばしコショコショと密談を交わすと、ひとまず話くらいはしてみることにした。
ようやく会話が成立した事から、ルリ達は携帯の役割をようやく理解することが出来た。
ルリは、としあきと知り合ったことや現在の状況を説明し、ひろあきの知恵をも借りようと試みる。
ひろあきは、としあき達が一定時間以内に元の場所に戻らなければならない事情を説明する。
そして、としあきの仲間のミドリとぷちについても、知っている限りの情報を伝えた。
「まいったな、まさか彼らにそんな複雑な事情があったなんて」
「としあきもぷちちゃんもミドリも、魔道師ギルドに連れて行かれたです。
早く助け出さないと、この世界に取り残されるです!」
“そうすると、あのメイド君は間違いなく死んでしまう。
世界移動を繰り返さないと、彼女の偽石はいつか自壊してしまうんだ”
「た、大変なの! すぐに助けに行くの!」
「でも、どうやって?」
ルリの言葉に、全員が沈黙する。
魔道師ギルドは、この街中で最も大きな組織であり、食糧庁などとは比べるべくもないほど重要な四大中枢機関だ。
そんな組織に連行されてしまった者達を奪回するなど、どんな手段を講じても不可能としか思えない。
メルティスの面々は、謎の実装石の依頼のみならず、人道的な理由でも彼等を助け出すべきだと、意志を一つにまとめて
いた。
「やむを得ないわね——アレを使うしかない、か」
突然、クレナイがため息交じりに呟く。
「何をするつもりです?」
「乱暴な手段だけど、古代魔法を使うわ」
そう言うと、クレナイは大きな魔道書を取り出した。
以前エキスペルスに向かう途中に読みふけっていたもので、その際はここから得た二つの新呪文のおかげで窮地を脱出
している。
今回も、これを頼りにしようという趣向だ。
「ただし、大きな問題が二つあるわ。
一つは、私がまだこの呪文を完全に習得していないこと。
魔道書を見ながらの詠唱になるから、本来のような完全な効果は期待出来ないわ。
もう一つ、呪文は一方通行だから潜入は出来ても帰還は自力脱出よ。
脱出まで魔法を維持する事は出来ないから諦めてちょうだい」
“なかなかハードな条件だね”
「ちょっと待ってクレナイ。
完全に習得してないって、もし失敗したらどうするのさ?」
「さあね、最悪魔道師ギルドの壁の中に実体化するか、空の上に出て落下死か、地面の中に出て窒息するかってところね」
“そりゃまるで、マラーやマロールだね”
「そ、それはいくらなんでも、リスクが高すぎなの!」
クレナイの説明に、全員が青ざめる。
だが本人だけは顔色一つ変えず、ルリをじっと見つめた。
「坊や、あなたはさっき魔道師ギルドにいたのよね?
中の様子は記憶してる?」
「もちろんだよ」
ルリは、一度通った道なら絶対に迷わないというほど完璧な土地勘と記憶力を持っており、メンバーはその能力に幾度も
救われている。
クレナイは、ニヤリと微笑むと彼の肩をポンと叩いた。
「じゃあ、あなたの記憶をトレースしてゲートを開けばいいだけの話だわ」
不敵に微笑んだ後、クレナイは、再び「うっぷ」と呻いた。
※ ※ ※
take go into the root of Ancient-Magical spell program.
set “ES-PSY” Ready.
connect the ruri's imagination.
数時間後、ここは「特殊造成地」エリア。
実装人荘が建てられている、旧人類の生活環境を再現した仮想の町だ。
「コンビニ」と呼ばれる商店の広場(駐車場)に集まったヒスイ、ルリ、クレナイ、モモ、そしてひろあきの五人は、周囲に誰も
いない事を確認の上で、作戦を開始した。
クレナイは、ルリに向かって呪文を唱え、彼が思い浮かべた「魔道師ギルド」の室内の様子を脳裏に写す。
これはテレパシーではなく、ルリ自身が許可する範囲で記憶をトレスさせる古代魔法だという。
「随分豪華な寝室ね。
あなた、なんでこんなところに行ったの?」
「そ、それはどうでもいいじゃないか!
で、行けそう?」
「さすがは坊やね。
部屋の様子だけじゃなく、カーペットや壁の模様までくっきり見えるわ。
これなら余裕よ。——じゃあ、続けて行くわ。
ヒスイ、本をしっかり支えていなさい」
「で、でぇぇぇ! これ結構重いです!」
クレナイは、続けて別な呪文を唱え始めた。
ただし今度はヒスイ持たせた魔道書を参照しながらの詠唱のため、とてもぎこちない。
ヒスイは、両手で分厚い本を支えるきつさに耐えながら、肩越しにモモに話しかけた。
「じゃあモモ、もうすぐ行ってくるです。
お前は、ここに誰も入り込まないように見張ってるです。
巻き込まれたら大変だから、気をつけるです」
「うん、わかってる。
気をつけてね、ヒスイさん、ルリさん!」
「ありがとう」
“僕のことは、誰も心配してくれないのか…”
クレナイが唱えている呪文「Dimention Warp」は、前方の空間を歪めて魔道師ギルドの中と直接連結し、一気に移動する
という大技だ。
ただし術者自身は移動出来ず、また効果範疇だと無関係の者まで巻き込まれる危険がある。
魔法封じの結界のない、街の外からの潜入……目的は、としあきとぷち、ミドリの奪回。
携帯の中から現れた謎の実装石の依頼を遂行し、極貧のメルティスが巨万の富を得るためである。
take go into the root of Ancient-Magical spell program.
set “Dimention-Warp” Ready.
初めて耳にする、クレナイのたどたどしい呪文詠唱。
ヒスイはとても不安を覚えたが、彼女を信じてひたすら本を掲げ続ける。
refer to important information……that sleeps in……a deep memory.
reach the place that……I want at last, the road is opened.
腕が本格的に痺れ始めた頃、少しずつ変化が発生する。
クレナイのかざす手の先の空間が輝き、まるで縦に裂けるように変化し始めた。
「す、すご……」
“これが、空間移動の魔法か! 夢みたいだ”
「クレナイ、がんばって!」
I who is……ashamed of ungentlemanly……conduct.
I in contradiction to……the……natural law beg permission……
空間の裂け目が肥大化し、虹色のような、ラメ色のような、不思議な色彩のトンネルが開く。
と同時に、見えない力によりヒスイとルリの身体が引き寄せられ始めた。
「でぇ?! う、うわわわわわ?!?!」
「か、身体が勝手に!!」
効果範囲から離れているモモを除けば、その場で動かずにいるのはクレナイだけだ。
ヒスイの支えていた魔道書をひったくるように受け取ると、クレナイは二人に告げた。
「肝心なことを伝え忘れてたわ!」
「で、でぇ?! な、な、何です?!」
「あの女と実装石だけ連れて来なさい! としあきは捜さなくていいわ」
「ど、ど、どういう事です?!」
「いいから、とっとと行きなさい!
メルティス発展のための、尊い礎となるのよ」
それだけ言うと、クレナイは冷たい視線を向けながらヒスイを軽く突き飛ばす。
ヒスイの身体はまるで無重力空間のようにふわりと浮き上がり、次の瞬間、物凄い速度で空間の裂け目に吸い込まれた。
悲鳴すら、上げる暇もなく。
「ヒスイ!」
踏ん張っていたルリも、その様子を見て慌てて飛び込む。
その間、約10秒程度。
少しずつ裂け目はまり始め、吸引力も弱まっていく。
完全に効果が失われたのと同時に、クレナイはその場でふらふらと跪いてしまった。
「クレナイさん! 大丈夫なの?!」
心配そうに寄ってくるモモに肩を借り立ち上がると、クレナイは酷く疲労した様子で呟く。
「とんでもない魔法だわ……
ルミナス粒子を根こそぎ奪われたみたいよ」
「え、じゃあクレナイさんは…」
「しばらく、魔法は使えそうにないわね」
「えええ〜?!」
「それより、実装人荘に行くわよ。
あの女の正体、管理人に伝えるんでしょ?」
「あ、そうだった!」
よろよろと力ない足取りで、二人はコンビニ前の広場を出て実装人荘へ向かう。
空はもう、夜の帳が下りていた。
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