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Journey Through The Jissouseki Act-8
【 これまでの“ただの一般人としあき”は 】
弐羽としあきは、ある夜偶然出会った“初期実装”に因縁をつけられ、彼女の子供を捜すため
強引に異世界を旅行する羽目になった。
「実装石」と呼ばれる人型生命体の存在する世界を巡るとしあきは、それぞれ5日間という
タイムリミットの中で、“頭巾に模様のある”初期実装の子供を見つけ出さなくてはならない。
既に7つもの実装世界を巡ったとしあきは、いまだに初期実装の子供を捕まえていない。
実装石のミドリと、人化仔実装のぷちをお供に、としあきの果てしない旅は尚も続く。
次に彼らが辿り付くのは、どんな実装世界なのか——
【 Character 】
・弐羽としあき:人間
「実装石のいない世界」出身の主人公。
専門学校生で、今のところは実装石に友好的。
実装石と会話が出来る不思議な携帯を持っている。
・ミドリ:野良実装
「公園実装の世界」出身の同行者。
フルネームは「ハゲハダカミドリジッソー」。
成体実装で糞蟲的性格だが、としあきやぷちとトリオを組みよくも悪くも活躍。
・ぷち:人化(仔)実装
「人化実装の世界」からの同行者。
見た目は巨乳ネコミミメイドだが、実は人間の姿を得てしまった稀少な仔実装。
人間の言葉は話せないが、現在はひろあきから貰ったチョーカー型の実装リンガルで会話可能。
・海藤ひろあき
「実装愛護の世界」でとしあき達と知り合い、その後他の世界で何度も再会する“もう一人の旅人”。
「他実装の世界」までは実蒼石アクアを相棒に活躍していたが、彼女と死に別れてからの消息は不明。
実装生物を自在に操る銃「デスゥタンガン」を持っていたが、現在は初期実装に奪われている。
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じゃに☆じそ!〜実装世界あばれ旅〜 第8話 ACT-1 【 報告:としあき捕縛中 】
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長い眠りから目覚めたような、鈍い感覚に戸惑いを覚える。
額の上に何か冷たいものが乗っている感触に気付き、ようやく意識が戻った。
「うぅ……」
額に手をやると、何か小さな硬いものが指にあたる。
窓から差し込む光に照らしてみると、それはとても美しい半透明の鉱石だった。
「すげぇ、こんな綺麗な石、見たことねぇ」
一切の曇りなく、太陽の光ににじむエメラルドの輝きは、まだぼんやりしているとしあきの意識を瞬時に魅了する。
ポケットからハンカチを取り出すと、それを丁寧に包み込みしまいこんだ。
「ん? ここは……おっ、おっ、移動成功かよ! やたー!」
そこは、ごく普通のアパートの一室のようだ。
振り返ると、部屋の中心には薄汚れた服を着た成体実装と、大きく胸が露出したメイド服をまとう実装人少女が
眠っている。
実装石の鼻ちょうちんがピスピス蠢いているのを見て、心の底から安堵した。
「ふい〜〜、なんとかなったかぁ——
それにしても、とんでもねぇ世界だったなぁ」
頭がようやく冴え始め、「他実装の世界」での身も凍るような恐怖体験が脳裏に蘇る。
としあきは、まだすっきりしない頭をシャッキリさせようと、流し台で顔を洗うことにした。
冷たい水を頭にたっぷり浴び、本格的に目覚め始める。
水道の蛇口を締め、としあきは、現在時刻を確認するため携帯電話を取り出そうとした。
「——お前、誰です?」
と突然、背後から誰かの声が聞こえる。
「へ?」
振り返るよりも早く、側頭部に鈍い衝撃を受け、としあきは……再び深い眠りへと誘われた。
テェェェン、テェェェン!
デギャアァァッ! デギャァァァッ!!
遠くでぷちとミドリの泣き声が聞こえ、少しずつ意識が戻る。
としあきは、ズキズキ痛む側頭部を押さえようとして——両腕が動かせない事に気付いた。
「んな?!」
「テェェェン! クソドレイサァァン!!」
“クソドレイ! これはいったいどういう事デス?!
状況を説明しやがれデズァ!”
見ると、ぷちとミドリも同じように拘束されている。
自分は手首と足首をそれぞれぐるぐる巻きにされ、ミドリは腕ごと胴体を縄で巻かれているのだが、何故かぷちだけは、
胸が強調されるようなえっちな縛り方をされている。
結び目でより強調されたぷちの巨乳に、思わずグビリと喉が鳴るが、自分達を冷たく見下ろす視線に気付き、としあきは
エヘンとわざとらしい咳をした。
“今、思いっきり、この娘の胸見たよね?”
“すっごく解りやすい反応だったです”
“ところでヒスイ、なんであの娘だけあんな縛り方なの?”
“うーん、お約束というか、天の意志というか、こうしなければならないような気がして……
って、そんな事はどーでもいいです!
おい、そこのお前っ!”
緑色の服をまとい、長い髪をなびかせた少女が、荒っぽい口調で呼びかける。
よく見ると、股間ギリギリのミニスカートを履いている上に、ぷちに勝るとも劣らないほどの巨乳。
としあきは本能的に鼻の下を伸ばしたが、ぷちの鋭い視線を感じ、すぐ元に戻した。
「な、なんだ」
“お前ら、いったい何処から忍び込みやがったです?!
ここがどこか、わかってるです?”
「知らねぇよ、俺達だって何がなんだか」
“すっとぼけやがって、身の程を知らない奴です!
まぁいいです、とぼけるなら、この娘がどうなるか……”
「て、テチャアッ!!」
緑色の服の少女は、なぜかぷちの背後に回りこむと、大きなバストを揉みしだき始めた。
「テェェェン! えっちな事しちゃだめテチィィ!」
“ほーれほれ、キリキリ白状しないと、この娘の乳が大変なことになるでーす♪”
「是非とも大変なことにしていただきたいと、切に願う次第であります!」
“テチャアッ?!”
“なんつー事を言うデスこのドスケベクソドレイ!
おいそこのデカチチ!”
今度はミドリが反応し、ゴロゴロ転がりながら緑服の少女につっかかる。
少女は、不思議そうな顔でミドリを見つめると、ゆっくり抱き上げた。
“何です? 聞いてやるから話してみろです”
“デ? お前、ワタシの言葉がわかるデス?”
緑色の少女は、ごく自然にミドリと会話を成立させている。
だが、他の二人はそうではないらしく、何の反応も示さずとしあき達を見下ろしている。
この部屋に居るのは、としあき達の他には、緑色の服の少女、青いベストとショートパンツを履いた細身の少女、そして
やや場違いな赤いドレスをまとった、長身の金髪女性の三人だ。
しばらくすると、青いベストの少女が屈み、見つめてくる。
としあきは、彼女の瞳が実蒼石のように色違いになっていることに気付いた。
“君は、いったい何者?
何を企んでいるんだい?”
「? 何のことだよ」
“見た感じ人間とは思えないけど、オークの変種なのかい?”
「はぁ?! 俺のどこが人間に見えねぇってんだよ?!」
“人間というのは、僕達みたいな外観の者のことだよ。
悪いけど、君は人間としての特徴がほとんど見られない”
「へ?!」
“僕達以外、アパートの住人が近づかないのがその証拠だよ。
みんな、君を気味悪がってる”
青いベストの少女の発言は全く意味が理解出来なかったが、本人の態度を見る限り侮蔑や嘲りとは思えない。
どうやら、本気でとしあきを非人間と信じ込んでいるようだ。
別にナルシストではないし、自分のスタイルに自信があるわけではないが、そこまで言われるほど酷いとは思って
いなかったため、としあきはかなりのショックを受けた。
「悪かったな、俺は生まれつきこういう姿なんだよ!」
“それは申し訳ない。
じゃあ、君達がどうしてこんな所にいるのかを、教えてくれないか?”
青いベストの少女は一瞬申し訳なさそうな表情を浮かべ、頭を下げた。
幾分口調が穏やかになった気がしたが、それでもとしあきを人間と認知していない件は改めない。
悲しい気持ちになったが、それより身の潔白を証明するのが先だと感じた。
としあきは、自分達が異世界の者でたまたまにここに来たのだと説明した。
“異世界だって?
——ねぇクレナイ、どう思う?”
青いベストの少女は、赤いドレスの女に呼びかける。
“クレナイ”と呼ばれた女は、相変わらず無表情のまま、真っ直ぐに睨みつけて来た。
“——さっきの波動は、もう感じないわね”
“じゃあ、「魔」ではない?”
“まだわからないわ。
今は波動を隠しているのかもしれないし。
こいつの言うことが本当なら、このままギルドに引き渡す方がいいわ”
“そうだね”
「お、おいおい、ちょっと待ってくれよ。
せめて、この状況の説明くらいしてくれてもいいだろ?」
そう懇願したところで、としあきははたと気付いた。
この世界に来てから、まだ時間を確認していない。
ここに辿り付いた時間からキッカリ120時間後に戻ってこないと、としあき達はこの世界に取り残されてしまうのだ。
そのためにも、現在時刻は絶対に確認しておく必要がある。
「おい、そこの可愛いおねーちゃん」
“え? 僕?”
“何かしら?”
としあきの呼びかけに、青いベストの少女と赤いドレスの女が同時に反応する。
三人はしばし無言で見つめあったが、途端に空気がピリピリし始めた。
「あ、あのさ、頼みがあるんだ。
そこに落ちてる、俺の携帯取ってくれないか」
“ケータイ?”
「あんたのすぐ横に落ちてる黒い奴だよ。
……ああ、そうそう、それそれ」
青いベストの少女は、としあきの示す携帯を取ろうとするが、赤いドレスの女がそれを制する。
“待ちなさい坊や、それが何かわからない限り、手を出すのは危険よ”
“そうか、そうだよね。
危ない危ない”
「って、おいおい。
俺は今の時間が知りたいだけなんだよ」
“こんな小さなもので時間がわかるわけがないわね。
あなた……何をしようとしたの?”
赤いドレスの女は、そう言いながら携帯に手を伸ばし、何かをぶつぶつ唱え始める。
“特に問題はないようね。
ん? これ、開くわ”
“ちょっと見せてよ”
赤いドレスの女が携帯を開き、青いベストの少女が横から覗き込む。
液晶画面を見て、二人は軽く驚きの声を立てた。
“何か動いてる! こんな小さいのに、どうやって?”
“君、これは一体なんなんだい?”
青いベストの少女が、顔を近づけて尋ねてくる。
「だからー、ただの携帯だよ。
お前持ってないのか?」
“こんな機械、今まで見たことないよ。
驚いた……本当に、異世界から来たのかい?”
「最初からそういってるじゃねぇか」
“見て坊や!
見たこともない文字が次々に出てくるわ!”
赤いドレスの女の反応から、恐らくは翻訳された言語表示を見ているだろうことがわかる。
と、ここでとしあきはようやく異変に気付いた。
この場に居る者達の言葉は、リンガルを持っているぷち以外すべて翻訳されて頭に届いている。
一見普通の人間に見える、三人の女達の声すらも……
“まさかとは思うけど、これは「旧人類」の文明の物じゃないかしら?”
赤いドレスの女が、そう言いながら携帯をいじくりまわす。
と、何を押したのか携帯が突然鳴り出した。
着メロに設定している、「仮○ライダーW」の番宣テロップのBGMだ。
携帯を取り落とし、赤いドレスの女と青いベストの女は大層驚愕する。
“旧人類が、こんな醜い姿をしていたことが、なんだかショックだわ”
赤いドレスの女が、胸を押さえながら惨いことを呟く。
いい加減イライラし始めたとしあきは、二人を真っ向から睨みつけた。
「どーでもいいからお前ら、携帯見たなら時間教えてくれよ。
それがわかんねーと、俺達やばいんだって!」
“時間? これって時計なの?”
「あーうぜぇ! じゃあ画面だけこっちに向けてくれよ。
それならいいだろ?」
としあきの申し出を受け入れ、青いベストの少女は恐る恐る携帯を持ち、液晶画面を向けてくる。
ディスプレイ上のデジタルは、PM5:31を示していた。
尋ねてみると、としあきはそんなに長い時間気絶していたわけではないらしい。
という事は、午後五時辺りがスタートタイムと見ていいだろう。
しばらくすると、ドアがノックされ、もう一人金髪の女性が入ってきた。
こちらは、赤いドレスの女よりも質素な格好だが、とても穏やかで優しそうだ。
“皆さん、ドロボウはどうされるんですか?”
「ドロボウじゃねーっつの!」
新たに現れた女性の声も、翻訳されて届く。
ふと見ると、緑服の女がミドリやぷちと話しこんでいる。
新しくやって来た金髪女性を「カンリニンサン」と呼ぶと、緑服の少女は何か報告し始めた。
“カクカクシカジカで、こいつはあの子達に飼われているドレイらしいです。
口は悪いけど悪人じゃないから、好きなだけ痛めつけてもいいけど、殺さないでやってくれだそうです”
「てめーら! そんな事話してたのかっっ!!」
「テェェェン!! 私はそんな事言ってないテチィ!」
“覚えがないデッス〜ン♪”
三角口でどうやっているのか、起用に口笛を吹いてごまかすミドリ。
管理人と呼ばれた女性は、しばし女達と話し合い、やはり“ギルド”と呼ばれるものに通報する事で結論付けたようだ。
※ ※ ※
としあき達三人は、縛られたまま部屋に閉じ込められ、青いベストの少女と緑服の少女が後退で見張ることになった。
緑服の娘は「ヒスイ」という名前で、こちらは言葉遣いこそ荒いものの割と親切で、縄を緩める以外のことならたいてい
願いを聞いてくれる。
もう一人の青いベストの少女はルリと言い、こちらは堅物という印象が強い。
クレナイという赤いドレスの女は部屋を退出しており、戻ってくる様子がない。
今夜はこのまま、ルリかミドリと顔を突き合わせ続けるしかなさそうだった。
彼女達の話から、この世界の概要がだんだん見えてきた。
ここは「実装人」と呼ばれる者達が住む世界で、としあき達がこれまで巡ってきたどの世界とも異なる常識感に支配されて
いるらしい。
ここでは、としあきのような“ごく普通のニンゲン”は一人もおらず、実装生物から進化した様々な種族の実装人が地上を
支配していた。
かつてニンゲンがこの地上に住んでいた事だけはわかっているらしく、現在の文明は「アーティリクス」と呼ばれる遺跡
から発掘された様々な情報によって形作られているという。
すなわち、既に滅び去った人類の遺産を工夫しながら、生活に活かしているわけだ。
このアパートも、アーティリクスから発掘された情報により再現されたもののようだ。
話を聞いた上であらためてアパートの室内を見回すと、その再現性の高さに驚かされる。
と突然、部屋のドアが荒々しく開かれた。
入り口には、妙に仰々しい装備を施した兵士のような格好の女性が二人立っている。
その向こうには、眼鏡をかけた銀髪の長身女性がいる。
マイクロミニのタイトスカートから覗く、白く長い足が魅惑的だ。
一瞬鼻の下を伸ばしそうになったとしあきだったが、顎下に硬いものを突きつけられ、硬直する。
それは、槍の矛先だ。
“ナイトトランスさん?! これはいったい?”
ルリが立ち上がり、銀髪の女性に抗議する。
ナイトトランスと呼ばれた女性は、薄い微笑みを浮かべて静かに話し始めた。
“これはこれは、ルリさんにヒスイさん。
この度は、ギガンテスが本当にお世話になりました。
先ほど、実紅人のお仲間さんに後金をお支払いいたしましたので——”
“こいつらは何者です?”
もう一人の兵士に槍を向けられたぷち達をかばうように、ヒスイが立ち塞がる。
“この方達は、魔道師ギルドの命で駆けつけた警備兵さんです。
その二人と一匹を連行するためにいらしたのですよ”
“魔道師ギルドって……その話をしたのは、ほんのついさっきですよ?!
いくらなんでも、来るのが早すぎませんか?”
「な、なんだなんだ、何がどうなってんだ?!」
「テチャァァッ!!」
“こらクソドレイ! この変な連中を追っ払えデス!”
「無茶いうなっ!」
動揺する5人をよそに、ナイトトランスは、まるで兵士達の上官であるかのように無言で指示を出し、としあき達を立ち
上がらせた。
“いずれ事情はお話します。
お騒がせいたしました”
それだけ言い放ち、ナイトトランスは立ち去ろうとする。
咄嗟にヒスイが追いかけるが、廊下では、他の住人達も顔を出して物々しいやりとりを見つめていた。
「ちょ、ちょっと待てーっ! 俺達が何したってんだーっ!」
「テェェェン! テェェェン!!」
デギャーッ!!
木造アパートの廊下に、三人の叫びが木霊する。
しばらくすると、実紅人の管理人が、少しだけうろたえながら声をかけてきた。
「ナイトトランスさん、なんか様子がおかしいのよ」
「どうしたんですか?」
「あの後、クレナイさんが魔道師ギルドに向かったんですけど、それと入れ違いに帰ってきたんです。
しかも、いきなり兵隊さんを連れてですよ」
「なんですって?」
「ねえ、前にお願いした依頼の話、もう一度ご検討していただけないかしら?
このままじゃ、アパートの住人さん達も不安でたまらないと思うのよ」
管理人は、手を握りながら懇願してくる。
顔を見合わせたルリとヒスイは、軽く頷くと「わかりました」とはっきり返答した。
話が決まれば、二人の行動は早い。
他住人達への挨拶もそこそこに、早急にメルティスに戻る事にした。
※ ※ ※
としあきは、複数の馬に引かれる巨大な馬車の中に押し込められた。
それは鋼鉄の壁で組まれた箱で、窓一つなく外の景色を窺うことすら出来ない。
手足を縛られているため、振動がもろに伝わり乗り心地は最悪だ。
ぷちとミドリに「横になっていろ」と指示すると、馬車が停車するのをひたすら待った。
デスー? デスデスデスデス、デスー?
(おいクソドレイ、これは一体どういう事デス?
あいつらはワタシ達をどうするつもりデス?)
「ん? え?」
デズデス、デギャッ!
(質問に答えろデス、クソドレイ!)
「あれ? おかしいな…」
「どうしたテチ?」
「ミドリの声が、翻訳されないんだ」
デデェッ?!
(な、なんデスとぉ?!)
としあきは、携帯をアパート内に置き去りにしてきた事を思い出し、背筋がぞっとした。
実装人達の会話も、あの携帯を通じて翻訳され、ようやく成立していたのだ。
このままでは、としあきが何を言っても、何を聞かされても意志の疎通が行えない!
だが、幸いぷちのチョーカー型実装リンガルだけは問題なく機能するようだ。
「おいぷち、お前はあいつらの言葉わかるのか?」
「うんテチ。実装語によく似ているから、なんとなくわかるテチ」
「そうか、すまんが通訳を頼んでもいいか?」
「わかったテチ」
デスデス、デスー
「ミドリは、なんて言ってる?」
「え、え〜とその……いざという時に、勃たない?」
「なんの話だよそれ」
デギャーッ! デスデスデス、デスデスーッ!!
(デギャー! 「いざという時に役に立たん奴デス」と言ったデスーッ!!)
馬車が停車したのは、それから30分後くらいだった。
後方のドアが開かれ、兵士達によって乱暴に引っ張り出される。
まるで罪人のように引っ立てられるとしあき達は、恨めしそうにナイトトランスの背中を睨んだ。
そこは、とても背が高そうな石造りの建物の中で、薄暗いせいか天井が全く見えない。
小さな明かり取りの窓から、既に外は暗くなっているのがわかる。
ルトルトルトルト、ルト
大きな石造りのドアを兵士達に開かせ、ナイトトランスが何かを呟いている。
「ぷち、なんて言ってる?」
「ビドゥ様をお呼びしろ、と言ってるテチ」
「おいおい、まだなんか出てくるのかよ。
なんか、怖いなあ……」
デスゥ
やがて、ドアの向こうからさらに兵士がやってきて、としあき達を取り囲む。
少しでも動いたら串刺しにするぞといわんがばかりの態度で睨まれ、三人はただ萎縮するしかない。
しばらくすると、取り囲む輪の一角が開き、派手なコスチュームをまとった若い男が姿を現す。
否、男というのはその体格で判断したのであって、顔は男性というよりはかなり女性に近い。
としあきの脳裏に「オカマ」という単語が横切る。
デスデスデスデス、デースン
男は、不敵な笑みを浮かべながら妙に明るい口調で……鳴いている。
否、彼らの言語は、ぷちの言うとおり「人間が実装語を真似て話している」かのようにしか聞こえない。
ぷちに耳打ちすると、
『ようこそ旧人類の諸君、私は魔道師ギルドのビドゥと言う者だ』
と翻訳結果を教えてくれた。
としあきは、次の言葉が出るより先に、ビドゥと名乗る男に呼びかけた。
「すまないが、俺にはあんたらの言語が理解出来ないんだ。
この子に翻訳してもらいながら聞くから、ゆっくり話してやってくれないか」
だが、としあきの言葉も向こうには上手く伝わらないようで、眉を歪めている。
しばらく悩んだ後、ビドゥは突然大仰な身振り手振りを行い、何かを呟き始めた。
take go into the root of Ancient-Magical spell program.
set “translation” Ready.
なんと、彼が発しているのは流暢な「英語」だった。
驚くとしあきの前で、ビドゥは一回咳払いをすると、改めて話しかけてきた。
『やあ、旧人類君。
これで通じるかね?』
「えっ? えっ?」
なんと、ビドゥの言葉が普通の日本語に変換される。
いつものように脳内にテレパシーで伝わるのではなく、はっきりと耳で捉えられる音声だ。
『ふむ、通じたようだね。
話をスムーズにするため、魔法を使わせてもらった。
では、少し話を聞かせて欲しいのだが』
「魔法……うさんくせぇ」
『だが、実際に効果はあるだろう?』
ものすごく怪しい感じだが、ビドゥの言う通り確かに効果は出ている。
どのみち意志の疎通が出来るならそれに越したことはないと、としあきは無理矢理割り切ることにした。
「そりゃいいけどさ、先にこの縄解いてくれないかな?
逃げたりしねーからさ」
『ふむ、そうだな……おい』
ビドゥの合図で、兵士の一人がとしあき達のロープを切る。
『これでいいだろう』
いちいちキザな言い回しと立ち振る舞いをするビドゥに、としあきは少しイラッとさせられる。
何か言いたげなぷちとミドリを目線で諌めると、としあきは再度ビドゥに向き直った。
「俺達は別に怪しいものじゃない。
知ってる事なら素直に話すから、罪人扱いみたいなのはやめてくれよ」
『安心したまえ。
既に君に何もないことはわかっている』
「へ?」
『それより、旧人類君』
「としあき、だ」
『ではとしあき君、こちらに来たまえ』
ビドゥは、白いマントをぶわっと翻すと、奥に続く石造りの通路へと三人を導いた。
と言っても、ミドリだけは実装服の背中側に槍を通され、宙吊りにされた状態で運ばれる。
脱げた頭巾と後頭部の槍軸がうっとおしいのか、ミドリは怒りの表情で叫んだ。
“ちょっと待てー! なんでワタシだけいつもこんな扱いなんデスーッ!!”
デスーッ
デスーッ
テスー
冷たい空気が充満する通路、ミドリの声がエコー付きで反響した。。
※ ※ ※
ここは、都市モータルの中にある八百屋「メルティス」。
実はアドベンチャーギルド・メルティスの本拠地であり、奥では数少ない所属メンバーが集まるためのミーティングルーム
(溜まり場)がある。
実装人荘から戻って来たヒスイとルリは、先に戻っていたクレナイと顔を付き合わせた。
その後の事情を聞くと、クレナイは眉をひそめる。
「——そうよ、確かにあの女から後金は預かったわ。
でもその時に『後は私達にお任せください』なんて言われたのよ。
念の為に、その後魔道師ギルドにも報告に行ったんだけど、“もうわかっているから”って門前払いだったわ」
「何なんです? ギルドの連中、まるであいつらが来るのを事前に知ってたみたいです!」
「そうだね、こっそり待ち構えていたって感じだった。
でも、どうして食糧庁のナイトトランスさんが、あんな立ち回りをするんだろう?」
そこまで言った時、突然、二人は異様な気配を感じ硬直する。
それは、実装人荘でとしあき達と出会う直前に感じたものと同じだった。
携帯が激しい光を放ち始め、勝手にコンパクトが展開し、液晶画面からは目もくらむような輝きが発せられる。
驚いたヒスイは携帯を放り捨てるが、それは不自然な軌道を描いてテーブルの上にフワリと軟着地した。
「な、なんですこれ?!」
「ひ、ヒスイ! 閉じて、早くっ!!」
怪しい気配が益々強まり、鳥肌が立ち始める。
携帯が閉じられるより早く、光の中から何かが姿を現した。
それは緑色の服をまとい、亜麻色の髪の毛を伸ばした小人——実装石だ。
だが、細身な上に目が異常に血走っており、頭巾に「6」に似た模様があるという変わった特徴を持っている。
「な、な、なんです、これは?!」
「結界の中なのに、バケモノ?!」
謎の実装石は、ゆっくり舞うようにテーブルの上に降り立つと、ヒスイとルリの顔を順番に見回した。
二人の脳内に、何者かの話し声が聞こえてくる。
“お前達に、依頼したいことがあるデスゥ”
「え? 依頼?!」
“そうデスゥ。この携帯の持ち主・弐羽としあきを、魔道師ギルドから「奪回」して欲しいデスゥ”
「だ……ぎ、ギルドから!? なんでです!」
“報酬は、きちんと支払ってやるデスゥ。
4日半後に、あの男を実装人荘に戻すデスゥ。
それが出来たら——”
「で、出来たら……?」
ごくり、と喉を鳴らし、ルリとヒスイは次の言葉を待つ。
“もし依頼を果たしたら、このメルティスに、莫大な富を授けてやるデスゥ。
かつての繁盛期よりも、もっともっと発展させてやるデスゥ”
「そんな胡散臭い話、信用出来ると思うの?」
ルリの言葉に、ヒスイも頷く。
“ワタシにとっては、簡単過ぎてアクビが出る事デスゥ。
信じる信じないは、お前ら次第デスゥ”
「だったら、証拠を見せやがれですっ!」
“わかったデスゥ、明日、お前らに少しだけ幸運を授けてやるデスゥ。
お前達にハッキリわかるような形でデスゥ”
それだけ言うと、実装石は空気に溶け込むように姿を消してしまった。
と同時に、異様な気配も嘘のように消え失せる。
テーブルの上の携帯は、何事もなかったかのように光が消え失せている。
「今の——夢じゃないよね?」
「夢じゃないです。
今のは間違いなくあの時の——ルリ、どうするです?」
「ものすごく怪しくて胡散臭い話だけど、でも……」
「幸運って、何が起きるです?」
ルリは恐る恐る携帯を手に取り、そっとモニタを閉じた。
パタン、という小気味良い音が響く。
「あの変な実装石、なんでメルティスの事を知ってるんだろう?」
「さ、さぁ……?」
その後、携帯は万が一の事を考え、ルリが預かることになった。
とても気味悪かったが、このまま室内に放置するよりは安全と考えたのだ。
※ ※ ※
長い通路を通り抜けると、突然明るいホールに出る。
そこも、先ほどの建物同様天井の高い大きなものだったが、豪華な装飾や立派で巨大な窓、ステンドグラスなどが
備わっている。
ホールを取り囲むアイボリーの壁はどこか温かみを感じさせ、先ほどとは正反対と言っても良いほどの差がある。
としあきばかりでなく、ぷちも、ミドリすらも、その豪華さに呆気に取られた。
それは例えるなら、ヨーロッパのどこかにありそうな大教会の礼拝堂のようだ。
ビドゥは、きょろきょろと周囲を見回す三人を見て嘲笑すると、赤いカーペットがかけられた階段を上り、付いて来いと指示
した。
あれだけ高かった天井より更に上の階へ辿り付くと、そこはまるで古い高級ホテルを思わせる上品な造りのフロアになって
いる。
その最深部にある、大きな観音開きの扉を開くと、ビドゥは執事のような真似をして三人を通させる。
だが、今まで付き添ってきた兵士達は、室内に一歩も踏み込まない。
柔らかすぎていまいまち歩きづらいカーペットを踏みながら、としあきはビドゥに勧められたソファへと進んだ。
『すまなかったね、ご足労をかけた』
自身も向かいのソファに腰掛け、高く足を組む。
ビドゥは、切れ長の目を真っ直ぐに向け、としあき達を静かに見つめてきた。
改めて良く見ると、ビドゥという男は、ぷちやヒスイと良く似た特徴を持っている。
頭の横から飛び出した大きな耳、赤い右目と緑の左目。
豊富に伸びている髪の色は同じで、肌の色や質感もよく似ている。
それに、身に着けている衣服にも濃い緑のポイントが各所にあしらわれている。
じろじろ見つめる視線を意識したのか、ビドゥはとてもわざとらしいリアクションで、髪をファサァッとかき上げた。
『私の美しさに見とれるのは解るが、照れくさいよ』
「そーじゃねーよ。
面白い耳だなーって」
『……実翠人だからね』
「その割に、デスとかテチとか言わないんだな」
『祖先が実装石だからって、実翠人まで同じだと思われても困る。
そこにいるメイド娘だけが、特殊なんじゃないかね?』
「あ、いやこいつは……」
反射的にぷちの説明をしようとして、思いとどまる。
対応こそソフトだが、この男にはどこか気を許してはならない予感がしてならない。
「罪人扱い、ってわけじゃないらしいね」
『そんな事は思っていない。
ただ、最初に君達の報告を聞いた時点では、多少疑っていた』
「どういう意味だ?」
としあきの問いに、ビドゥは微笑を返す。
「それと、なんでこんなに早く俺達のことがわかったんだ?
俺達がここに来て一時間かそこらだぜ?
まるで待ち構えてたみたいじゃないか」
『その通り、待ち構えていたんだよ』
間髪入れずに、返答する。
としあきと、その横に寄り添うように座ったぷちとミドリは、思わず揃って目を剥いた。
そしてビドゥは、それを見越していたかのように、説明を始める。
『不思議そうな顔つきだな。いいさ、説明しよう。
この国エセテルピージでは、数年前にも同じような事態があってね。
異世界からの来訪者の影響で、モータルの街に甚大な被害が生じた』
「それと俺達と、どういう関係が?」
『数年前に現れたのは、異世界に住む実蒼石だった。
彼女自身は何も被害を及ぼさなかったが、問題は、彼女が連れて来た“魔”だった』
「魔?」
「魔って何テチ?」
デ、デスゥ…
『強大な力を持った悪意ある存在、とでも解釈したまえ』
尚も首を傾げるとしあき達に、ビドゥはため息をついて更に説明を加える。
モータルの街に実蒼石が降り立った際、魔道師ギルドは強烈な反魔法的反応を感知し、その発信源である実蒼石を
捕らえる事に成功した。
しかし、その実蒼石自身からは魔の反応は見られず、その直後に魔道師ギルド内にある“街を害悪から保護するための
”結界が機能しなくなる事故が発生した。
その被害により、モータルの街の中には多くの「禍々しい者達」が侵入してしまい、それらが二次的被害を発生させて
しまった。
しかして、それだけの事態に発展しながらも、その原因と思われる謎の反応の正体は、ついに突き止められなかった。
この事件は厳重な緘口令が敷かれ、一般には知られていないが、魔道師ギルドは再発を懸念し厳重な警戒態勢を維持
していた。
『君達が実装人荘で捕縛された時、この時と同じ反応を感知したのだ』
いつしか真剣な表情に切り替わったビドゥは、鋭い眼差しで三人を見据えた。
「なるほど、だからずっと警戒していたんテチね?」
『君は物分りがいいね、その通りだ』
「テッチュン♪」
「おいおいちょっと待てよ、じゃあ俺達がその街を破壊した“魔”って奴に関わっているとでもいうのか?」
『そう疑っていたのは事実だ。
いや、正直に言えば、疑いはいまだに晴れてはいないがね。
しかし——』
「し、しかし?!」
少しもったいぶるような態度を取りながら、ビドゥはとしあきの身体をまるで舐め上げるように見つめてきた。
『今の君には、“魔”が付いていない。
だから私は、君達をここに招いたのだ。
そんな事より私は、君が実装人でないという点に強く興味を惹かれている』
「ん? ん? ど、どういうことだ?!」
『君に頼みたいことがある。
話に応じてくれるのであれば、身柄の解放だけでなく、我々に出来る限りの報酬を与えよう』
ビドゥがそう言うが早いか、突如ミドリが激しく興奮し、デスデスと鳴き始める。
「お、オネーチャ、そんなの無理テチ! 遠慮しないとダメテチィッ!!」
「おいおい、ミドリはなんて言ってるんだ?」
としあきの質問に答えたのは、意外にもぷちではなかった。
『ステーキ食べ放題? ギュウドンも?
ギュウドンというのは知らないが……なんだ、そんな程度で良いのかね?
もちろん、お安い御用だとも。
一生食べ続けられるようにしてあげよう』
デ、デ、デ、デスーッ!!
ビドゥの返答に、ミドリは鼻血を噴出して失神した。
「テチャアッ!! オネーチャァ!!」
『それどころか、君達が生涯遊んで暮らせるほどの大金を与えても構わない。
——どうだね?』
「あんた、ミドリの言葉もわかるの?」
『言語翻訳魔法の効果は、君達全員が対象だ。
さあ、どうするかね?』
「すっごく魅力的ではあるが、怪しすぎる提案でもあるな」
ビドゥの言葉は、どこか相手を煙に巻くような独特の含みがあり、それが鼻に突いて仕方ない。
だが、おかしな疑いをかけ続けられるよりはマシである。
このままでは、初期実装の子供を捜すどころの話ではない。
としあきは、話の内容次第ではあえて依頼を受けようと身構えた。
再びソファに腰掛けたビドゥは、頬杖をつきながら尋ねてきた。
『としあき。
遥かなる昔、君達のような旧人類が、この地球上で生きていたという話は聞いているかね?』
「ああ、ルリって子から聞かされたよ。
まるでSFだな」
『ルリ? ——ほぉ、あの子を知っているのか』
「ん? 知り合い?」
『ああ、ちょっとね』
ふっと微笑む目を閉じると、ビドゥは更に話を続ける。
『我々実装人は、いわば旧人類という“会ったこともない大先輩”のお下がりを利用して、ここまで文明を発展させてきた
わけだ。
だが、どうしてもわからないことがある』
「わからないこと?」
『そうだ。
旧人類達が、いつ、どういう理由でこの地上から姿を消したのか』
「えっ? 単に絶滅したんじゃないのか?」
『そうではない——』
ビドゥによると、かつてこの地上に君臨していた旧人類は、何かの問題を見出し地球を捨てる事にしたのだという。
何かの手段で地球を遠く脱出し、実装生物だけが地上に取り残された。
それが、今の実装人の祖先である。
そのような定説が、人々の間に広まっているそうだ。
『ところが、だ。
近年発見されたあるアーティリクスにより、この定説は覆されようとしている』
「へー、なんか考古学っぽくて面白いな。
それでそれで?」
『アーティリクスの中で発見された“ある者”が、断片情報を我々に示したのだ。
しかし、肝心の部分の情報がどうしても引き出せない。
どうも、我々実装人ではこれ以上の検索は無理のようだ』
「その人は、いじわるして教えてくれないテチ?」
ぷちの質問に、ビドゥは首を振る。
『そこから先の情報は、旧人類でなければ、得ることは出来ないとも示されている』
「あー、なるほど。それで俺なのか」
ポンと手を打ち、としあきは深く頷く。
ビドゥも、その態度に笑顔を浮かべる。
『理解してくれたようだね。
そう、君に情報を引き出す手伝いをしてもらいたいのだ。
——“グランマイスの聖者”から、ね』
“グランマイスの聖者”
モータルの街から北西に遥か遠く、都市ベーシス近郊ダイスズ山という丘状地帯で、四年前不思議な遺跡が発掘された。
それは縦に長く伸びる人工の「穴」であり、とてつもなく巨大な円筒状の構造をしている。
最下部に降り立つと、そこから更に奥に続く地下建造物へと続いており、性質の違う遺跡に触れることが出来るが、その
最深部にある広間に設置されているのが“グランマイスの聖者”と命名された特殊な物体だ。
これは、探求者の問いかけに応答し、旧人類文明の精密な情報を提供してくれる。
食事のレシピや裁縫の指導方法、果ては超高層建造物の建築方法及びそれに必要な建築機器の設計図、大空を飛び
交う移動機器の作成にまで及び、全貌は計り知れない。
そこで得られた情報のいくつかは、既にいくつか一般に提供されており、生活を豊かにする役に立っている。
実装人荘の建造もその一つであり、旧人類の住居地帯を再現する目的で作られた施設の一つだった。
唯一の難点は、グランマイスの聖者から新たな情報を得るためには、実際にその場に行かなければならないという事だ。
その場所は大変特殊な構造で構造上危険度も高いため、一般人の立ち入りは禁止されている。
としあきがビドゥの依頼を受理する場合、護衛をつけた上でこのアーティリクスに挑まなければならない。
そのアーティリクスは、まるで奈落の底へ通じているような形状から、「焉道」と呼ばれていた。
おおまかな地図を渡され、概要を説明され、としあきはしばらく悩んだが、しっかりした護衛がつくという事で納得することにした。
また彼自身、そのグランマイスの聖者に強い関心を覚えたことも大きかった。
「いいよ、やるさ」
『そうか、それは実にありがたい』
「代わりに、二つ頼みがある」
『なんだね、言ってみたまえ』
「一つは、俺の携帯を返して欲しい。
多分、アパートに忘れてきたと思う。
それともう一つ。
4日後の夜までに、俺達をアパートの部屋に戻して欲しい」
「テチテチ、お願いしますテチ」
デスーデスー!
ぷちとミドリも、共に懇願する。
ヒドゥは、としあきの言葉に一瞬眉をしかめたが、すぐに満面の笑みを湛えた。
『わかったよ、了解した。
早速、君達をVIP待遇として扱おうではないか』
ビドゥが指を鳴らすと、入り口のドアが静かに開き、二名のメイドが姿を現した。
深々と頭を下げてやってくる彼女達は、ビドゥの指示を受け、ぷちとミドリの縄を刃物で切り裂いてくれた。
デスデス、デスー
「ん? なんだよミドリ」
デスデス、デスー! デスーデスー!
「だからー、今の俺はお前の言葉わかんねーの。
携帯戻ってくるまでもうちっと待てや」
デギャーデギャー、デギャアッ!!
べちゃっ!!
としあきの額に、粘っこくて生暖かい何かが叩きつけられた。
それが何か、確認するまでもない。
刺激の強い臭気が、たちまち周囲に充満していく。
デププププ♪
「こ、こんの…糞蟲野郎〜!!
よくもやりやがったな、久々にぶっ殺してやるぜ!」
額に怒りマークを浮かべて腕まくりをしたところで、栗色の髪のメイドが、真っ白なタオルを差し出してきた。
ポクポク
「あ、どうも……って、こっちも言葉通じねえ!!」
栗毛のメイドは、その態度こそ凛としていたが、ハンカチでしっかり鼻を塞いでいた。
→NEXT
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このスクは、
実装石虐待保管庫
sc1862
sc1863
sc1865「じゃに☆じそ!」第一話(公園実装の世界編)
sc1891
sc1892
sc1893「じゃに☆じそ!」第二話(虐待正義の世界編)
sc1897
sc1899
sc1900「じゃに☆じそ!」第三話(人化実装の世界編)
sc1948
sc1949
sc1951「じゃに☆じそ!」第四話(実装愛護の世界編)
sc1956「じゃに☆じそ!」第五話(実装石のいなくなった世界編)
sc1975
sc1978「じゃに☆じそ!」第六話(実装人形の世界編)
sc2042
sc2044
sc2052
sc2055「じゃに☆じそ!」第七話(他実装の世界編)
実装人保管庫
up0210.txt
up0211.txt
up0212.txt「無謀なる天使達3」(実装人荘編)
の続きです。
今回は実装人が主体のエピソードですので、白保ではなく人保に投稿させていただきました
尚、9話(全4回・完成済)も同じく人保に投下させていただく予定です。
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