タイトル:【虐他】 剣呑な話の横でマヌケな寝息立ててる実装がイチバン書きたかったところデス
ファイル:メイド・イン・ヘル.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:383 レス数:5
初投稿日時:2025/03/13-12:17:22修正日時:2025/03/14-00:40:05
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「おまちどうデス~」「ごゆっくりどうぞデッス」
リンガル越しに聞こえる愛想のいい実装石たちの言葉。

『実装カフェ』は、愛護派に評判の癒しスポットだった。

よく訓練された賢い実装石たちがメイドとして働き、愛らしい仕草で客をもてなす。
沢山の関門を乗り越えたエリート実装だけがメイドとして立てるその場所は、実装石愛護派たちで連日賑わっていた。

実装石たちは、トレイを器用に持ち運び、注文を正確に覚え、時折「デス~!」と愛嬌たっぷりの鳴き声を上げて客を笑顔にさせる。
彼女たちにとって、このカフェはただの職場ではなく、ニンゲンからの注目と愛情に自尊心を満たされる充実した居場所だった。

客が「可愛いね~!」と褒めれば、実装石たちは目をキラキラさせて「ありがとうデス!」と返す。
そんな日々が、ずっと続くものだと誰もが信じていた。

ところが、ある日からカフェでうわさされるようになった存在が、この場所全体を揺るがしていく。

きっかけは、愛護派の客たちが口々に噂し始めた話題——実翠石の存在だ。
近頃急速に数を増やしているこの実装石の近縁種は、人間に近い美しい姿と、おとなしい性格で注目を集めていた。

「実翠石って見た目がエルフみたいで素敵よね」
「性格も穏やかで飼いやすいらしいよ」と、客たちの会話に実翠石の名前が頻繁に登場するようになった。

まさしくホットトピック。実装石愛護派でさえ、その魅力に目を奪われつつあった。

実装カフェの店長は素早かった、商売人としての勘を働かせた。
「気を見るに敏」とはまさにこのことだ。
実翠石の人気が高まっている今、取り入れるのは賢明な選択だと判断した。

さっそく一匹の実翠石を購入され、いくつかの指導の後に試験的にカフェで働かせることを決められた。

新キャストとして紹介された実翠石は、長い髪を揺らし、控えめな笑顔で客に挨拶する姿がなんとも愛らしかった。
店長はその姿を見て「これで客足がさらに増えるはずだ」と半ば確信をもったように満足げに頷いた。

しかし、この変化はメイド実装石たちにとって歓迎すべきものではなかった。

彼女たちはよく訓練されており、実翠石をいきなり襲ったりはしない。
だが、その態度は明らかに不機嫌そのものだった。
店員や客の前ではネコを被る故に見えない、ほんの小さな所作から苛立ちが表出していた。

実翠石を見るとトレイを持つ手がピクピク震えたり、客に注文を届ける際に「デス…」とぶっきらぼうに呟いてしまう。
普段の愛嬌にひびが入っている。

控え室では、実翠石が通るたびにチラリと睨みつけ、「フン」と鼻を鳴らす姿が目立った。
それでも、実装石たちは自分たちの人気に自信を持っていた。

これまでカフェの看板娘として愛されてきた自負がある。

リーダー格の黒髪メイド実装は、特にその自信を隠さない。
「ワタシタチのほうが愛されるに決まってるデス!これまでも、これからもデス!」と、鼻息を荒くして胸を張った。
他のメイド実装たちも同調する「そうデス!」「ニンゲンサンはワタシタチを選ぶデス!」と声を揃え、気合を入れる。

それからしばらくの間は見かけ上は平穏に仕事に臨んだ。
実翠石なんて、いくらかわいくても自分たちの地位を脅かすことなどできない——そう信じて疑わなかった。

だが、現実は彼女たちの期待を裏切った。
実翠石の登場から2週間も経つと、客の注目は明らかにそちら主体になり始めた。
実翠石はまだまだメイドとしてまだ不慣れで、トレイを落としそうになったり、注文を間違えたりすることもある。

それでも、その直球で愛らしい仕草と素敵な外見が客の心を掴んで離さない。

「実翠ちゃん、ドジっても頑張ってる姿が可愛いね」
「絵本に出て来る妖精さんみたいで癒されるわ」と、客たちの賞賛が飛び交う。

一方、実装石たちの熟練したメイドスキルは「いつものこと」として見慣れられ、特別な注目を集めない。
カフェのテーブル席では、実翠石が「ご、ご注文をお預かりしますです!」とぎこちなく頭を下げると、
客が「ありがとう、実翠ちゃん!」と笑顔で返す。

実装石が「コーヒーデス!」と注文された品を運んできても、
「お、ありがとう」と今まで通りの返事しかもらえない。

そんな光景が日に日に増えていった。
メイド実装たちのイライラは募るばかりだった。



控え室では、鼻息を荒くした黒髪メイド実装が吠える。
「アイツ、ニンゲンサンに媚びてるデス!わざとらしくドジって注目されてるだけデスゥ!」と吐き捨て、
他の実装石が「名推理デス!ワタシタチのほうがずっと賢いデス!」と同調する。

しかし、そんな勢いとは裏腹に彼女たちの自信、自尊心は揺らぎ始めていた。
だが、それを認めるわけにはいかない。メイド実装にはメイド実装なりのプライドというものがある。

実翠石への苛立ちは、日に日に膨らんでいった。



深夜、メイド実装たちは控え室兼飼育スペースに集まり、ヒソヒソと不穏な会話を交わし始めた。
暗い水槽の隅で、彼女たちの目が怪しく光っていた。

「デースカ……デー!デースカ……」「デムデム……」
陰謀に参加しない能天気な数体がマヌケな寝息を立てる。
そんな彼女たちを除き、暗い野心がメイド実装たちの心に邪な火を滾らせる。
異様な熱気に包まれていた。

リーダー格の黒髪メイド実装は特に興奮しており、鼻息を荒くして顔を真っ赤に染めていた。
彼女の目は血走り、普段の賢く愛らしいメイド姿からは想像もつかないほど険悪な雰囲気を漂わせていた。

「アイツはワタシタチのニンゲンサンを盗んでるデス、ドロボーはやっつける必要があるデス」黒髪メイド実装が低い声で吐き捨てる。
他の実装石たちも「悪いのはドロボーデス、ワルイコトたくらんでるにちがいないデス」「許せないドロボーの陰謀デス」と大きく同調する。

彼女たちが話していたのは、実翠石を殺害する計画だった。

「ドロボーをころしてワルイコトを企んでたはずだって話すデス、そうしたらニンゲンサンはまたワタシタチを見てくれるデス」
「ワタシタチがまた一番愛されるデス」
黒髪メイド実装は拳を握り潰すようにして言い切った。計画は単純で残酷だった。
翌日の営業中、客の見ている前で実翠石を襲い、完全に排除する。
なにか……わからないが悪い事を企んでいるに違いないドロボーの排除で大歓声を受けるはずだ。
それで全てが元通りになると信じていた。

だが、客も店員も実装たちを無視している訳ではない。しっかりと反応するし、これまで通りに可愛がっている。
偏に、実翠石がそれより可愛がられている。たったそれだけの話だった。だったのだが……



翌日、カフェはいつも通り開店した。
愛護派の客たちで賑わい、メイド実装たちはトレイを手に笑顔を張り付けて働いている。
実翠石もまた、新キャストとして控えめにメイドを続けていた。

だが、その平穏な空気は長くは続かなかった。
正午を過ぎ、店内が最も混雑する時間帯に差し掛かった瞬間、黒髪メイド実装が突然トレイを床に叩きつけた。

ガシャンという音が店内に響き渡り、客たちが一斉に振り返る。
その音を合図に、暴徒と化したメイド実装たちがそろって動き出した。

「ニセモノ、かくごデス!」黒髪メイド実装が叫びながら実翠石に飛びかかり、腕に噛みついた。
実翠石は悲鳴を上げて逃げようとしたが、他のメイド実装たちが一斉に取り囲み、殴りつけ、引き倒した。

手に持っていたカップを床に叩きつけて割ると、その破片を拾い上げ、実翠石の顔面に突き立てる。
鮮血が飛び散り、実翠石の美しい顔が切り裂かれる。

「キャーーーーーーー!!!!」

客席から女性の悲鳴が上がり、店内は一瞬にして混乱に包まれた。

「な、なにやってるデス!?」
数匹のメイド実装が実翠石を庇おうと立ち上がった。
暗殺会議の際に間抜けな寝息を立てていた、のんびり屋たちだった。

彼女たちとて実翠が気に入らないが、それはそれ、これはこれだ。
ブリーダーに教育されていた時代にこんな事をするのは、まして見過ごすのはNGだと教え込まれていた。
動いた理由は、たったそれだけだった。

「やめるデス!ニンゲンサンこわがってるデス!」
「きにいらんけどアイツも同じメイドデス!」と叫びながら暴徒に立ちはだかったが、その勇敢さは報われなかった。

「う、ウラギリモノデッシャアアアアアアアアッ!!!!」
ヒートアップしきっていた暴徒メイド実装たちは仲間さえ容赦せず、庇う実装石たちの手足をバラバラに引きちぎり、頭を踏み砕いた。
血と糞が床に飛び散り、カフェの清潔な雰囲気は跡形もなく消え去った。

実翠石も、それを庇った数匹のメイド実装石も動かなくなり、暴徒たちはその死体を見下ろして息を荒げていた。

メイド実装たちはよく訓練され、店員や客から信頼され、愛着を育まれてきた存在だった。
ミリー、アイン、ラミー、タリア、それぞれにしっかりと名前があり、大切にされてきた。
それだけに、この突然の暴走は誰にとっても予想外だった。

店員たちは呆然と立ち尽くし、客たちはショックでパニックになり、誰もがすぐに動けずにいた。
この場所は、純粋な信用の構築の上で成り立つものだった。

それが、崩れた。

実翠石への攻撃が終わり、血まみれの床に横たわる死体を前に、メイド実装たちは誇らしげに胸を張った。
「ワルイニセモノやっつけたデス!ワタシタチが勝ったデス!」と、黒髪メイド実装が勝利宣言を上げる。
他の実装石たちも「こいつはワルイコトをたくらんでいたんデス!」
「これでニンゲンサンはアンシンデス!さあエライエライなワタシタチだけを見るデス!」と声を揃えた。

その無根拠な期待はすぐに裏切られた。
客たちは誰も拍手を送らず、賞賛の言葉をかけるどころか、顔を顰めてゾロゾロと店から出て行き始めた。
血と糞にまみれた惨状を見て、耐えきれなくなったのだ。

メイド実装たちはその様子に困惑した。
「な、なんで帰るデス!?」「悪いニセモノやっつけたんデス!」
「みんなでワタシタチを褒めるデスゥ!!」と、涎を飛ばしながら吠えたが、客の足は止まらない。

店内に残ったのは、慌てて清掃を開始する店員たちと、血まみれで胸を張るメイド実装たちだけだった。
店長は頭を抱えながら誰よりてきぱきと清掃を進める、訓練された実装への信頼の崩壊に胸を痛めながら。
「なんて事だ…」と呟きながら。

カフェの看板だった、手塩にかけて育ててきた実装石たちが、目の前で暴徒と化し、愛らしい新キャストを殺してしまった。
客足は遠のき、店の評判は地に落ちただろう。

この惨劇をどう収拾すればいいのか、誰も答えを持っていなかった。



実装カフェは血と糞にまみれ、静寂に包まれていた。
客は全員去り、メイド実装たちは血まみれの床の上でなおも「ワタシタチが正しいデス!」と無根拠な主張を繰り返す。

実翠石の死体は、カップの破片が顔面に突き刺さったまま冷たく横たわり、彼女を庇おうとした数匹のメイド実装のバラバラになった遺体が周囲に散乱していた。

誰もが、この店が終わりを迎えたと思ったその時、異変が起きた。

死んだはずの実翠石が、微かに動き始めた。
再生能力に優れる実装石の近縁種である実翠石もまた再生能力が極めて高く、
顔面に突き刺さった破片が残る痛々しい姿のまま、傷口が徐々に塞がり、仮死状態から目覚めた。

彼女はよろよろと起き上がり、血に濡れた手で店長にすがりついた。
「て、店長さん、助けてくださいです…」と小さな声で呟いたその姿に、店長は素早く実翠石を抱き上げて、バックヤードに退避させた。

メイド実装たちはその様子に怒りを抑えきれない。
「デェ!?まだ生きてるデス!?」「ニセモノ、しぶといデス!トドメをささせるデス!!」というブーイングが響く。
店員は「もうやめろ!」と一喝し、なんとか実装石を黙らせた。

だが、それだけでは終わらなかった。
実翠石を庇って手足をバラバラにされ、頭を踏み砕かれたメイド実装たちの遺体からも、微かな動きが見え始めた。
実装石もまた、特に頑強な個体であれば致命傷から回復は可能な種族だ。
店員たちが驚きの声を上げる中、庇った数匹のうち二匹がゆっくりと身体を起こし始めた。

片方は腕が一本欠けたまま、もう片方は足を引きずりながら。
「アイツを守れなかったデス…」と弱々しく呟いた。
暴徒実装石たちの攻撃があまりに激烈だったため、全員が復活することはなかったが、この二匹もまた奇跡的に仮死状態から蘇ったのだ。

暴徒に更なる攻撃を受けないように二匹も退避させられ、このケオスは店長の指示でカフェは即座に閉店となったことで一旦区切りをつけた。



シャッターが下ろされた。
店内の片付けが一段落した後、店員たちはメイド実装たちに動機のヒアリングを行った。
血と糞を拭き取られ、控え室に戻された暴徒実装石たちは、口々にまくし立てた。

「アイツはニセモノデス!ニンゲンサンを騙してるデス!」
「ワタシタチの店を乗っ取ろうとしてるデス!」
「実翠石は邪悪デス、みんなを不幸にするデス!」と、黒髪メイド実装を筆頭に陰謀論じみた「実翠害悪論」を演説し続けた。

対して、復活した二匹の実装石は「アイツはきにいらんけどやっぱり同じメイドデス……」
「殺すなんてオベンキョでダメだって教えられてたデス、間違ってるデス」と静かに反論したが、暴徒たちの声にかき消された。

店員たちは呆れ返り「まともな理由は聞き出せそうもない」と諦め、メイド実装たちを控え室に帰らせた。あの二匹は念のため別場所で待機を命じられている。

その夜、店長は店員たちを集めた。
バックヤードの会議室に集まった彼らの顔は、疲労と困惑で青ざめていた。

店長は重い口調で切り出した。

「判断を早めたい。多数決を取る。見た通り、どうやら共存は難しいらしい」

実翠石と実装石の対立は、暴走と殺戮未遂という最悪の形で証明されてしまった。
かねてからうわさされていた関係性だが、まさか訓練されたエリートたちがこうなるとは読めるはずがなかった。

店長はテーブルの上に拳を置き、続けた。
「俺は貯蓄が太い。この店の評判はガタガタになったろうが、この事件の後処理含めて最後の一回コンティニューが効く」

「その上で選ぼう、実翠オンリーのカフェにするか、それとも実翠抜きの従来の実装カフェに戻すか。あるいは、お前たちはどうしたい?」

店員たちはしばし沈黙した。
実装石たちは長年この店の看板であり、愛着もあった。
それこそ店員なのだから全員が実装石の愛護派だ。

……しかし、今日の暴挙で信頼は崩れ、その価値観も大きく揺らぎつつある。
一方、実翠石は穏やかで新たな客層を惹きつけ、再生したことで無事も一応アピールできる。
全てを実装石のせいにできる。

その時、一人の店員が口を開いた。
「でも、庇った実装石たちがいたじゃないっすか。あの子たちなら共存できるんじゃないすか?」

別の店員が頷き、「暴徒になんなかった子たちみたいな、実翠石と一緒に暮らせる子を集めるって言うのは」と提案した。

反対意見も出る。
「これまでのみんなだっていい子だったけど実翠が来てああなっちゃった以上実装をこれからまた複数集めるってのはやめた方がいいと思う」
「実装ちゃんのキャストは教育コスト高いけど実翠は一発投入が効いたでしょ。ならもう答え出てる気がするんだけど」
「実装ちゃん集めてまた同じことが起きたらかかるカネやばいし、リスク高すぎると私も思う」と。

議論が続く中、あの二匹の実装石がバックヤードに連れてこられた。
傷だらけながらも穏やかな目で「ワタシタチは、アイツと一緒に働けるデス、おねがいしますデス」と訴えた。

その姿に心を動かされた店員もいた。

最終的に多数決が取られ当然のごとく「実翠オンリーのカフェ」が選ばれた。

だが、特例中の特例として、復活した二匹の実装石だけは残すことを認めると店長は判断した。



翌日、暴徒化したメイド実装たちが保護団体に引き取られる手はずが整えられた。

控え室の実装たちはすべてを察して籠城した。
だが所詮実装だ。数分も経たずに引きずり出された。

「デェ!?ワタシタチを捨てるデス!?なにもわるいことしてないデスゥ!!」
「ニセモノに負けたデス!?ならアイツのインボーでこの店は終わるデスゥ!!!」と喚き散らす。
黒髪メイド実装は最後まで「アイツが悪いんデスゥ!ハナシを、ハナシを聞くデスゥ!」と叫んだのだが、その声は虚しく響くだけだった。


一方、実翠石と復活した二匹の実装石は、店員に手当てを受けながら新しいカフェの準備を始めていた。
実翠石は「また働けるです…?」と尋ね、二匹の実装石は「今はオマエになんでかイライラしないデス」と呟いた。
窮地を共に乗り越えた事で芽生えた何かしらがあったのか、一種の連帯が形成されつつある。

店長は優しく頷くと言った「お前たちが新しいカフェの顔になるんだよ」と答えた。
数日後、実装カフェは「実翠カフェ」として生まれ変わった。

穏やかで愛らしい実翠石がメインのメイドを務め、特例として残った二匹の実装石がベテランの教育係・メイド長としてそっと脇を固めた。
実装石が「ご注文デス」と微笑む横で、実翠石が「です~!」と控えめにトレイを運び、客から「仲良しで可愛いね」と笑顔を引き出した。
あんな事件を起こしたとあって、最初こそ客足は壊滅的だったが、やがて全盛期には劣るものの徐々に戻り始めた。

こうして、店は新たなスタートを切れたといえた。



一方その頃、元メイド実装たちは劣悪な保護団体とその施設——実質的には実装石虐待者のコミュニティで地獄を見ていた。
巧妙に社会に溶け込みカモフラージュした悪意の捕食者が、捕らえた獲物を弄び愉しむ。

そこは「保護」とは名ばかりの場所で、薄暗いコンクリートの部屋には血と糞の臭いが染み付いていた。
嘲笑う人間たちの声と、実装石の絶叫が絶え間なく響き渡る。

かつて実装カフェで胸を張っていたメイド実装たちは、今や傷だらけで憔悴しきっていた。

「ザンネンな話だよなぁ、お前らは実翠と仲良くさえしてりゃ幸せだったのになぁ」と、虐待者の一人がニヤニヤしながら言い放つ。
その言葉に、顔面を蹴られていたリーダー格の元黒髪メイド実装が反応した。
髪と服を奪われ、禿裸にされた彼女は、血まみれの身体でなおも気勢を上げた。

「ワタシタチはハメられたデス!アイツの陰謀を暴こうとしただけデスゥ!」と吠えたが、その声はすぐに拷問と虐待の中で悲鳴と絶望に変わった。
鉄パイプで殴られ、熱した針で刺され、彼女たちの「かわいさ」は無残に踏みにじられた。

虐待者たちは、横一列に並べたいよいよ致命的な傷だらけになり、もう長くはないだろう元メイド実装たちを前にして「フィニッシュ」の準備を始めた。

「お前ら、ちゃんと宣言しろ」と命令し、強制的に「ワタシタチはゴミデス」と口にさせる。
そうして、順番にギロチンで首を落としていった。
刃が落ちるたび、鈍い音と共に首が転がり、血が床を濡らした。

元メイド実装たちは震えながら宣言を繰り返し、次々と命を奪われた。

抵抗する者もいたが、力尽きて泣き叫ぶしかなかった。

最終的に、リーダー格の元黒髪メイド実装の番がやってきた。
目の前で転がる仲間の首や死体を見て、彼女はガクガクと震えていた。
だが、ギロチンの刃が落ちる瞬間、彼女は最後の力を振り絞って叫んだ。

「実翠がいけないんデス!ワタシタチはアイツに嫉妬したんじゃないデス!嫉妬させられたんデス!」
「嫉妬させられなきゃワタシタチはずっとずっと愛されるはずだったデスゥゥゥ!!」と叫ぶ。

嫉妬というこれまで覆い隠してきた本心に触れつつ、その自覚を持ちつつ飽くまでも自分は悪くないと。
めちゃくちゃな論理関係を絶叫し、ギロチンの刃に果てた。

落ちた首は憤怒の表情を浮かべたままだった。
虐待者たちは冷たく嘲笑った。

「嫉妬させられたんじゃなくて、したんだろ、勝手にさ!」と言い放ち、彼女たちの無数の死体をゴミ袋に詰め込んだ。
おまけとばかりに詰め込まれた死体の上にバラバラの実装メイド服、かつての彼女たちの栄光の装いを乱雑に落とす。
そうして袋の口を閉じると、乱雑に蹴られながら袋は実装ゴミ置き場へ導かれた。

元メイド実装たちの最期は、誰にも悼まれることなく、ただの廃棄物として処理されるものだった。



実翠カフェは大繁盛を迎えていた。
店内は、笑顔と温かい会話で溢れている。

店員たちもあれから実翠と実装の関係や生態を学び直し、今後の万が一にも備えられる態勢を整えている。
しかし、あの二匹にならきっと心配はないだろう。

そんなある昼下がり、店員と実翠石、復活した実装石たちがカウンターで休憩しながら雑談していた。

「そういや保護施設に行った子たち、どうしてるのかな?再指導を受けてちょっとはマシになって暮らしてるといいけど」と、店員の一人が呑気に呟いた。
実翠石が「ひどい子じゃなくなってるといいです」と頷く。
実装石も「アイツらも反省してるといいデス」と控えめに口にした。

だが、その話題はすぐに途切れ、次の注文の話に移った。
「クレープの注文がはいったデス~」もう一匹の実装石が注文をとってくる。
「おっ今日はクレープが人気だね」「いそいで運ばなきゃ、です!」と、店員と実翠石、実装石たちは忙しく動き始めた。

元メイド実装たちのことは、その会話の刹那だけ思い出されたものの、それきりに忘れ去られた。
輝かしい過去よりも、未来の方がずっと透き通っていた。

カフェの窓からは陽光が差し込み、血と糞の記憶は遠い過去のものとして薄れていった。
『実翠カフェ』は、新しい日常の中で輝き出している。

おわり

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1 Re: Name:匿名石 2025/03/13-21:35:16 No:00009565[申告]
かわいいの前者と後者的な感じで共存できると良いね
もちろん善良な実装石に限るが
あと糞蟲たちが計画を練ってる横で寝てる実装石の姿は間抜けだがその間抜けさこそ実装石の良い所だと思う
下手に無い知恵を振り絞ったり現状に疑問を持ち始めるとロクなことが起きないよね
2 Re: Name:匿名石 2025/03/14-10:59:10 No:00009566[申告]
「させられたんじゃなくてしたんだろ」は核心
暴徒一派が被害者の態度で加害に打って出た事への根っこの部分でのアンサー
3 Re: Name:匿名石 2025/03/14-18:09:43 No:00009567[申告]
実装石は本能的に実翠石を嫌うはずだけどそうでもない個体がいたことに驚き
4 Re: Name:匿名石 2025/03/14-22:55:30 No:00009568[申告]
実翠石への本能的な嫉妬や嫌悪も対ニンゲンへの奴隷スシステーキと本質的に同じ
ロジカルとモラルをもってそれを捩伏せた実装石達こそ真の共存を勝ち得た個体
賢いといっても所詮殆どが歪に矯正された存在で何処までいっても人間達に下駄を履かされた程度の価値
そこに一方的に敵愾心と嫉妬を燃やす存在が現れた事による綻び、元々他責思考の強い実装石それも黒髪の高慢ちきな自尊心と煽動
残った実装石は杜撰で最悪な謀略に乗り損ねた連中だが咄嗟の事態に最良の選択が出来た。そしてそれによって本当の価値と誇りを自ら手に入れられたと思う
5 Re: Name:匿名石 2025/03/15-18:47:40 No:00009569[申告]
図らずしも協調性の高い個体が残って結果オーライ
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