タイトル:【虐】 節分にはちょっと早いけど
ファイル:節分セールの後で.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:364 レス数:2
初投稿日時:2025/01/18-12:50:27修正日時:2025/01/18-21:34:06
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【節分セールの後で】



2月のイベントと言えば節分だ。
時期になるとコンビニやスーパーでは恵方巻の予約が始まり、予約はお早めにとか今年の恵方はこの方角とか
そんなような事が書かれたのぼりやらポスターが店の前に飾られる。

そしてこの町の実装ショップでも、節分に合わせたイベントが行われている。
店の前……出入り口のすぐ横に置かれた展示台には、虎柄ビキニを着て角飾りのついた実装頭巾を被った
『節分仔実装』が1匹、透明のケースに入れられて店頭展示されていた。

この仔実装だけでなく、店内の『節分仔実装』はすべて節分に合わせて生産された個体で、
実装福豆と呼ばれる専用の豆を投げると、テチテチ鳴きながら楽しそうに逃げ回るよう胎教されている。
要するに節分イベント用のおもちゃみたいなものだが、イベントの盛り上げに一役買っていた。

<鬼は外テチ!福は内テチ!>

ケースに備え付けられたスピーカーからは、仔実装が喋っているかのような甲高い声が聞こえてくる。
実際にはケース内の仔実装がテチテチ鳴くのに合わせて、装置が反応して機械音声を発しているだけだが。

さて、節分なので季節は冬である。
そんな時期にビキニ姿で店の外に展示されている仔実装は寒くないのかという疑問を持つ方もいるだろう。
ショップとしても客寄せの為の仔実装が凍死しては商売にならないので、寒さ対策としてケースの床に
小型の電気毛布を敷いている。
朝、店を開けて展示ケースの中に『節分仔実装』を入れると同時に電気毛布の電源を入れてやるのだが、
あまり設定温度を高くすると仔実装が寝てしまうので低めに設定する。
それでも仔実装には十分なようで、

『テッチュー、テチュテッチュン♪
(このハコにいるとオミセのナカとおんなじでポカポカテッチュン♪)』

と、元気に動き回る。
そして店員に渡されているスポンジの棒(鬼の金棒を模している)を振り回しながら、
手足をジタバタさせたり尻をプリプリ振りながら踊るのだ。

『テッチュン、テッチュン♪テッチテチ♪テチュテチュチューン!
(ワタチをミテッチュン♪おミセにもよっていっテチ♪かわいいジッソーセキがいっぱいテチューン!)』

仔実装なりに台詞を考えて懸命に客寄せしているようだが、実際にスピーカーから聞こえるのはこうだ。

<鬼は外テチ、福は内テチ!節分仔実装をよろしくお願いしますテチューン!>
<あなたの実装ちゃんにウマウマな実装福豆をどうぞテチ!>
<実装恵方巻ほしいテチュ!買っテチ!>

この時期の商品には前述した実装福豆の他に実装恵方巻というものもあり、節分限定の実装フードの一種だ。
だが愛護派御用達の品であり、今回の話とは全く関係がなかった。

  *  *  *  *  *

その日、昼前から雪が降り始めていた。
店員のとしあきは、店の中から空模様を見上げ、店長の双葉に提案する。

「店長、外の展示ケースですけど……温度上げても良いですかね?」

それを聞いた双葉店長も、雪が降り始めた外を見て頷く。

「そうね、商品が凍死しても損失になっちゃうし……」
「……店長、ドライっすね」
「だって実装石だしね。他実装なら大事にするけど……まぁ確かにカワイソーだし、温度上げていいよ」

店長の許可を得たので、としあきは店を出て展示台の下にある電気毛布の温度調節のダイヤルに指を掛けて
設定温度を「弱」から「中」に上げようとした。
しかしその時、

「ちょっとそこの店員さん、スピーカーの声うるさいよ!」
「あ、すいません。すぐ音量下げますんで……」

通りすがりの人に展示ケースから発せられる音を注意され、としあき店員は慌てて頭を下げる。
そして通行人を見送ってから音量を調節すると、彼は電気毛布の設定温度の方は確認せずに店内に戻った。
どうやら電気毛布の温度の方も適切に調節し終わったものと思い込んだらしい。
店内に戻ったとしあき店員は、双葉店長に向けて笑顔で親指を上げて見せる。

「店長、これであいつも大丈夫ですよ。ちょっとくらいなら吹雪いてもばっちりっす」
「吹雪くと客足が鈍るからそれは勘弁してほしいかなー」

一方、外の展示ケース。
『節分仔実装』が急に温かさが増した床に喜んでいた。

『テッチュテッチュ!チュッチュテチュ!
(なんだかいつもよりポカポカテチュ!あったかいテチュ!)』

喜びの余り、テッチュンテッチュン鳴きながら激しく手足を動かし、ケツを振って踊る仔実装。
その甲高い鳴き声に装置が反応して機械音声を発する。

<鬼は外テチ、福は内テチ!>
<豆を投げると逃げる!節分仔実装をお求めくださいテチ!>
<実装福豆で一緒に豆まきをしテッチューン!>

  *  *  *  *  *

2時間後……展示ケースの中は高温になっていた。
その暖かさに最初は喜んでいた仔実装も、今では苦しそうだ。

『チー、チー!』

これには理由があった。
実は先程としあき店員が温度調節をした際、操作を誤って温度を「最強」にしてしまったのだ。
これは毛布に付いたダニを駆除するための設定であり、仔実装には高すぎる温度だった。

『チー!テッチー!』

仔実装は息を荒げながら展示ケースの壁に張り付き、その壁をぺすぺす叩いて助けを求めるが、
店内の二人は客の相手をしていて仔実装に気づく様子はない。

『テヒィィ、テヒェェェ……!』

狭い展示ケースを最大温度で熱している為、真冬だというのにケースの中はとても暑くなっていた。
冬だから必要ないだろうとの判断で、展示ケースの中には給水器もない。
もっともこれは展示ケース内に糞をされない為の処置でもあるのだが、いずれにせよ仔実装には地獄だった。
2時間前に振り始めた雪はすぐに止み、今では日差しが照り付けているのも、暑さに拍車をかけていた。
仔実装は汗だくで舌を出して息を荒げ、喉を押さえて通行人に必死に助けを求める。

『テヒュゥゥ、テヒュゥゥゥン!
(そこのニンゲンサン、タスけテチ!アツいテチ、タスけテチ!)』
<鬼は外テチ、福は内テチ!今年の恵方は西南西テチ!>

しかし助けを求める鳴き声は、スピーカーから発せられる機械音声にかき消される。
その音声を聞いて、展示ケースの前を通って店内に入っていく客もいるが、
そのほとんどはケースの中で苦しむ仔実装など見てはいなかった。
たまにちらりと仔実装を見下ろす客も、

(客寄せで展示されてるのにさぼって遊んでやがるな)

……などと思う程度で、無視して通り過ぎていく。

『テ、テヒッ……テヒュッ……』

ついには仰向けにひっくり返り痙攣し始める仔実装。
次第にその意識は薄れていった……。

  *  *  *  *  *

……気がつくと、仔実装は薄暗い部屋の中に倒れていた。
さっきまでの熱々な展示ケースからは助け出されたらしく、いつも店内にいる時に入れられている、
壁に給水器がセットされた部屋の中だ。

ただ、他のオトモダチの姿は見えず、一匹だけで部屋に寝かされていた。
それもさっきまで着ていた虎柄ビキニと実装頭巾は脱がされて裸の状態で、
全身のだるさの所為で仔実装は気づいていなかったが、髪は毟られていた。

『テチュ……』

色々な事が気になったが、何より喉が渇いていたので、仔実装はおぼつかない足取りで給水器に近づくと、
その下部から伸びた管に水を求めて吸い付いた。
だが給水器は空のようで、求めていた水は出てこない。

『テェェ……』

喉が渇いた。全身がだるい。ふらふらする。喉が渇いた。ぼーっとする。頭が痛い。喉が渇いた。
仔実装は誰に向けるでもなく両手を挙げ、水が欲しいとアピールする。

『テチュ、テチュ……』

と、そこへ見覚えのある二人の人間がやってきた。
双葉店長と、としあき店員だ。
二人は何やら談笑しながら、仔実装のケージに近づいてきた。

「おっ、目が覚めたね。いやぁ悪かったね、サウナに入れちゃって。
 としあき君が温度調節を間違えたみたいでさ」
「悪い悪い、うっかりしちゃって」
『テェ、テェ……』

そんなことはいいから早く水が欲しい。
仔実装は二人を見上げて必死に訴える。

「店長、こいつ何か言ってるみたいですよ」
「うん、リンガルを見てみよう」

『テチュ……!テチュテチュ……!テチテッチ……!
(ノドがカワいたテチュ……!おミズをモラえたら、またおソトのハコでガンバるテチ……!)』

だが、二人はそれを聞いて顔を見合わせる。
仔実装はなんだか嫌な予感がした。

でも、今はとにかく水が欲しかった。
今までゴハンとお水は一日に一度は必ず貰えていた。
今日はまだお水を飲ませてもらっていない……ゴハンはいいからお水が欲しい。

『テチュ、テチュ……!』

両手を挙げて水をねだる仔実装に、双葉店長は言った。

「残念だけど、君の客寄せの仕事はもう終わりなんだ」
『テ、テチ……?』

冷たい響きのその言葉に、仔実装の背中にぞくりと悪寒が走り、嫌な予感が増していく。

「目が覚めたなら、君には別の仕事が用意してある」

店長はそう言って、仔実装の右腕を摘まみ上げるとケージから出した。

『チャァァッ!?』

いきなり乱暴に右腕を掴まれ、その痛みに仔実装は悲鳴を上げる。
今まで双葉店長は、仔実装たちに乱暴したことはなかったが故に、ショックは大きかった。

『テッチャァァ!チャァァァァン!
(イタいテチ!ランボウはやめテチ!シッパイしたならアヤマるテチ!ユルしテチ!)』

双葉店長は無言で部屋の隅に置いてある機械まで仔実装を運ぶと、機械の上にある開口部に
仔実装をゆっくりと下ろしていった。
開口部に仔実装を近づけると、機械がウィィィィンと音を立てて動き始める。
それはまるで金属の怪物がガチガチと歯を鳴らして獲物を待ち構えてるようで。

『テヂッ!テッチャア!テチャ、テチャ!
(コワいテチ!タスけテチ!あれはコワいコワいテチ!やめテチ!)』

仔実装もそれが何なのか気づいたようだった。
そう、実装ミンサー(全自動実装石挽肉機)だ。
双葉店長は仔実装をぶらさげた手をゆっくりとミンサーの開口部に下ろしていき……。

————ミヂミヂッ
『テヂィィィァァァァッ!』

仔実装の膝から下がミンサーに食い千切られて消え、仔実装は甲高い悲鳴を上げる。
痛みと恐怖に泣き叫ぶ仔実装を見下ろすとしあき店員はにやにやしていたが、
双葉店長は対照的に無表情だった。
彼女は仔実装の両脚の膝下が千切れて消え、入れ替わりにミンサーの下部から挽肉が現れたのを確認すると、
一度仔実装の体を引き上げた。

『ヂィィィ……テヂュゥゥゥ……!ヂュヂュァァァ……!
(イタいテチィ!タスけテチュゥゥ!ワタチワルいことしてないテチ!もっとがんばるテチ!)』

仔実装は残った手足をイゴイゴさせ、痛みを訴えながら助けて欲しいと懇願する。
その返事の代わりに、双葉店長が仔実装に語り掛ける。

「客寄せをやる気になってる君には悪いけど、節分セールは今日で終わりなんだ。
 君は失敗したなら謝ると言っていたが、君は何も失敗していない。
 でも、節分仔実装はもう必要ないんだよ……用済みの君にできる仕事は、
 実装挽肉になってエサ売り場に並ぶ事だけなのさ」
『チャァッ、ヂュァァァァァッ!
(シにたくないテチィ!イタいのイヤイヤテチュゥゥ!)』

双葉店長の言葉を理解したのかしていないのか、仔実装はその手の中で激しく暴れるが、
店長はここで仔実装を取り落とすような素人ではなかった。
無表情のまま、再びゆっくりとミンサーに向けて仔実装を下ろしていく。

————ミヂミヂミヂィィッミヂヂッ
『ヂャァァァァァァ……ァァァッ!』

今度は残った脚をすべて挽肉にする。

「うひぃぃ、グロっ!いつも思うけど、店長よく無表情でそんな事できますね。
 こいつが起きる前に、他の売れ残った節分仔実装も全部挽肉にしたんですよね?」
「逆だよとしあき君。感情的になっていたらこんな仕事できないね。
 事務的に、機械的に処理するのが長く続けるコツだよ。そして……」

双葉店長はミンサーのスイッチを操作して、刃の動きをゆっくりにすると……、

「実装石を挽肉にする時は生きたままゆっくり時間をかけて、これが旨味を引き出すコツさ」

下半身を失い息も絶え絶えの仔実装を、ミンサーの開口部に三たびゆっくりと下ろしていった。

————ミヂミヂ……ミヂッ、ミヂミヂミヂィッ
『ヂィィィァァァァァッ!ヂャァァァァァァッ!ヂュゥゥァァッァァッ!
 ヂヂィィィィ!ヂュゥゥゥゥァァッァァ!……ヂィィィィ!ヂャアアアア————
(イタいテチ!やめテチ!ユルしテチ!がんばってオドるテチ!タスけテチ!
 イタいイタいイヤテチ!……ママ、ママはどこテチィィィ!ママたすけ————)』
————ミヂィ、ミヂッ、ミヂヂィィッ
『————ッ!ヂ……ヂヂィ……ヂッ!』パキン

仔実装の体内にあった偽石が、ミンサーで砕かれた音がした。
……その瞬間、双葉店長は口元にうっすらと笑みを浮かべていたのだが、本人も自覚してはいないのだった。

  *  *  *  *  *

節分の翌日。
実装ショップでは特別セールが行われていた。

お徳用実装フード『テチミンチ』!
おいしいうれしい生タイプ!
100パック限定、1パック200円(税込)!

クリスマス、正月、節分などのイベント後の恒例セールで売られる『テチミンチ』の評判は上々で、
毎回その日のうちに売れてしまう。
なお、直前のイベントで売れ残った実装石が主な原材料である事は周知の事実である。

各種イベントの時期に合わせて大量に胎教生産された仔実装たちは、イベントにあった仕草はできるが、
一般的な躾や教育は詰め込む余裕がなく、あまり行き届いていない事が多い。
それ故にイベントが終わってしまえば商品価値は急落し、こうして徳用フードに加工されるのである。

(あいつらもただ廃棄処分されるより、オトモダチの栄養になった方が嬉しいよね、うんうん)

今回も好評な『テチミンチ』の売れ行きに双葉店長は満足そうに頷くと、
ハーネスを着けた実装石を散歩中と思われるお客に、『テチミンチ』の袋を満面の営業スマイルで手渡した。

「お買い上げ、ありがとうございましたー!
 またお越しくださいませー!」



終わり

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・イベント用仔実装の特殊行動(一部)

クリスマス…クリスマスソング及びそれに合わせたダンス。
正月…年始の挨拶。着物姿での舞踊(と称するいつものダンス)。
節分…実装福豆を投げると逃げ回る(遊びとして)。金棒(スポンジ)を振り回しながらのダンス。

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1 Re: Name:匿名石 2025/01/18-21:16:29 No:00009476[申告]
催事が過ぎた不要品がうま味を引き出す丁寧な仕事で人気のフレッシュミートに!
これは素晴らしいリユース精神
2 Re: Name:匿名石 2025/01/19-01:44:18 No:00009477[申告]
季節モノ商品実装路線好き
クリスマスのやつといい特別なお洋服もらって自分を特別だと舞い上がっちゃった実装が惨めな死を迎えるの愉快
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