そこは地方都市の空気穴のような場所、その公園は比較的穏やかで協調性のある実装石たちが暮らす。 こそこそと慎ましく暮らす実装石たちは妖精のようで、ニンゲンから半ば黙認される形で公園に根を張り暮らしている。 ある意味で実装石とニンゲンにとっての理想的なカタチが奇跡的に保たれたような、そんな場所だった。 秋めく公園の片隅で母実装は家族へ呼びかけた。 「さあ冬支度デス、寒くなって来るから落ち葉サンがいっぱい必要になるんデスゥ、寝床にもお尻拭きにも、香りがいいのは食べ物にもなるデス!長女、次女、頑張って集めるデス」 「ハイテチ!ママ!」「わかっテチ~」 「ついにウジチャと親指チャに言及がなくなったレフ。不穏な未来が予測され、たいへんに不安レフ」 「ウジチャ何言ってるかわからんレチ、よびわすれただけレチ」 落ち葉を踏みしめ歩く。母実装は幸福だった。 聡明な長女、素直な次女、ついでに生き残った親指と蛆。ダイジな家族だ。 落ち葉拾いを続けていると、群れのナカマが近づいてくる。 「ワタシはもうあるからやるデス。ニンゲンサンからタオルをもらってきたんデス」 「ありがとデス!これで寝床もフカフカデスゥ!」 「かわりに落ち葉を後でよこしてもらえると嬉しいデス」 「よろこんでデス!いっぱい集めておくデス!」 優しい群れのナカマもいる。支えて支えられて、皆揃ってこの穏やかな公園でいつまでも暮らしていたい…… ふと見上げる紅葉を見上げて母実装は想う ひゅるり、 木枯らしが吹いて厳しい冬の先触れを感じる。今年は例年よりも冷えそうだ。 「きっと、乗り越えられるデス」 胸いっぱいに落ち葉を抱え、手にしたビニール袋にも落ち葉をいっぱいにした母実装。それは祈るような呟き。 何代もこの公園で生き延びてきたからこそ知っている。冬は過酷だ、冷えこみ次第で親指も蛆も危ない。 先ほど呼ばなかったのは犠牲になる事が薄々理解できるからだ。 愛着を捨てなければ、心を壊す、心を壊せば体もだ。 自分が心を壊せば一家はオシマイだ。 ギャクタイ人間も近頃はあまり見かけない、今のうちこそ冬備えをする最高のタイミングだ。 「必ず、生き残るんデス」母実装は心に誓った。 「デデ?あれはなんデス?」 歩いた跡には拳の形が刻まれる!力強いナックルウォーク!? ラバーを思わせる艶アリのブラックなボディペイント…… 平和な公園はおしまいだ!ゴリラの暴力にすべてが支配される! 「うほうほレフ、ウジチャ、ゴリラ?レフ」 それはバイオ改造戦士ゴリラ—J(じっそう)! ギャクタイハに連なる改造派の作品にして刺客であった! 成体実装に実装用ステロイドを過剰投与して作ったバキバキ実装、その首を落とし、低級実装ショップで安売りされていた激安蛆の頭部と偽石を激移植! 体型を希釈トロリで曲げ伸ばして禁断のゴリラ型にしたモノだ! 「デッ」 「レフ?オバチャンいっしょに遊ぶレフ~!」 ノソノソと近づくゴリラの認知難度が高すぎた結果、母実装は逃走という選択をとることができなかった。 「ドボチョッ」 蛆アタマ故に知能が低すぎるゴリラは力加減などしないし、そもそもできない。 掴まれた母実装の頭は哀れにも……潰れ、即死!ゴリラの握力は強い! 「レ!?バナナレフ!バナナがなんでここにあるレフ!?」 低すぎる知能が死を理解しない! 実装肉ミンチをバナナだと言われて育てられたゴリラは手に付いたバナナにご満悦、それを「うまいレフ~ン♪」 ペロペロとナメ始める! 「あ、あれはなんテチ」「バケモンテチ」「おそらく肥大したニンゲンのテクノロジーの災厄レフ」「親指チャびっくりしてウンチ漏れたレチ」 しばらくして、落ち葉拾いから帰ってきたムスメたち! 頭部が圧壊した母実装の死体で人形遊びしていたゴリラを目にする! ブリブリ、ブチョ……と汚らしい音が鳴り響く、オール・パンコンの醜態をさらしたのだ! それぞれが集めた落ち葉を取り落とし、顔は青くなりガタガタと内股になる。 「レ!オネチャ達、あそぶレフ~!」 ゴリラがムスメたちに気づき、手を広げる!横一列になっていたムスメたちの両側面から高速で近づくゴリラの掌! 「危ないテッ」 「ドパァッ!」破裂音! 「お、おててがまたバナナまみれレフ……!」感動するゴリラ! 異様な悪臭……血臭を嗅ぎつけた公園の実装が駆けつける。 ゴリラと目が合ってしまう! 「デ」「レフ!?」 まだ、公園に放たれたゴリラのアソビは始まったばかりだ! 冬の公園も、ゴリラの暴力がアツい! 【GORILLA END】
1 Re: Name:匿名石 2024/11/08-19:04:30 No:00009400[申告] |
タイトルのことを忘れて生態観察系スクとして読んでたら突然のゴリラに笑った |
2 Re: Name:匿名石 2024/11/08-19:37:14 No:00009401[申告] |
サプライズゴリラ理論 |
3 Re: Name:匿名石 2024/11/08-20:30:31 No:00009402[申告] |
厳しくも穏やかな実装集落の風景を唐突に粉砕する
ムッキムキ筋肉ダルマ実装にちょこんと蛆ちゃんヘッドが鎮座しているクリーチャーのB級感好き |
4 Re: Name:匿名石 2024/11/09-02:53:44 No:00009404[申告] |
冬物と見せかけてからの突然の展開に笑ってしまった |
5 Re: Name:匿名石 2024/11/13-14:40:16 No:00009407[申告] |
理想郷が破壊されてしまった |