「祭事実装」 俺の地元の田舎では秋口に、神社でささやかながらお祭りが開催される お祭りといっても田舎町なので、出店も町内会や地元企業などの有志が中心で行っており焼き鳥 やたいやき屋などが10軒ほど並ぶ程度だ それでも秋の祭事として根付いており、来所者も規模にしては多いほうだと思う 出店が出るだけではなく出し物もある 神社に設置してある舞台は昭和の時代からあるボロボロのものだったが、ここで祭りのオープニ ングとして実装石が演舞を行うのが恒例だ 禿裸の実装石が3体、祭り囃子のBGMに合わせて踊るのだ 今となってはなぜ実装石が踊っているのか、一般人は誰も知らないだろう そもそも観客はほとんど誰も見ていない みんな出店に夢中になっているか、その後ステージで行われるカラオケ大会のスタンバイに忙し いようだ それでも実装石達は懸命に踊り続けている ---------------------------------------------------------------------------------------------------- 踊り子実装のうちの一匹は以前俺が飼っていたテチコだ もともと高級飼い実装として購入したものだが、先代の祭事実装が相次いで引退したため踊り手 不足で困っている様子だったので、テチコを祭事実装として供出した 祭事実装になるには髪を抜き俺の元を離れることになると話すと、テチコは悩んでいたが大好き な踊りが活かせるならと決心し出家したのである それ以来、神社の境内の犬小屋で飼われており、他の禿裸実装と三匹で祭事係の「トシさん」の 世話になっている 暇があれば古いラジカセを持ってきて、曲に合わせて振り付けを教えてくれていた トシさんは高齢のためなのか適当な性格のためなのか、餌やりを忘れられたり数日放置されたり とそこそこ危ない状況もあったらしい そして仔実装なので時には仲間同士で喧嘩をすることもある 家に帰りたくて泣くこともある それでも… 三匹「ワタチ達の踊りでお祭りを盛り上げるテチ!」 腐っても元飼い実装の三匹は、使命感と熱意を持って練習を行っていた ---------------------------------------------------------------------------------------------------- そしてお祭りの当日… …努力の成果か、三匹とも踊りにキレがある (一般人から見ると手足をイゴイゴしてるだけの動きに見えるかもしれないが) …特にテチコの動きは素晴らしい。手先足先の動きも艷やかだ (一般人はまるで興味を示していないが) …踊りも最終盤になり、三匹が動きを合わせて足を開き総排泄腔を晒しながら「デスーン♪」と ウィンクをしてフィニッシュだ。実にセクシーである (一般人は最早誰も見ていないが) なぜ実装石の踊りを祭事として行っているのか?元々は厄除けの意味があったという 実装石=地獄からの使者を人間が服従させることで厄を抑える 禿=怪我(毛が)無い 裸=福(服)が実装石から失われて人間の元に来る 総排泄腔=穢れの象徴を晒す事で人間の煩悩を鎮める という話だが、所詮歴史20年程度の浅い祭事なので実装石ブームのときに誰かが面白半分で始め て適当に理由を後付しただけかもしれない ---------------------------------------------------------------------------------------------------- しかし、この祭りの実装石の踊りもこれで最終回だ 町内会や祭りのスポンサーの地元企業から 「アレってお金(実装石飼育費)かかってるの?要らないんじゃね?」 「ステージの枠埋めにしても誰も見てないしやめたほうがいいと思う。下品だし」 と突っ込みが入ったからだ 祭事係のトシさんも話を受けて「まあ…あんなの実装石が気持ち悪い踊りするだけだったし無く なってもしょうがねえな」と承諾した テチコ達はそれを聞いていて甚くショックを受けたらしい 三匹で涙ながらに抗議をするも当然覆らず、祭事実装は解散 約20年に及ぶ歴史に幕を下ろした テチコはうちで引き取り元通り飼うことにしたが、他二匹は引き取り手が無くトシさんがそのま ま犬小屋で飼い続けることになったとのことだ ---------------------------------------------------------------------------------------------------- …そして次の年。 祭事実装の役割を終えて俺の家に帰ってきたテチコと、リニューアルされた祭りに出かけた テチコは以前飼っていた頃と違い成体になり、髪も服も無くなった 禿裸という状態は偽石に大きく負担をかけるらしく、禿裸実装の平均寿命は通常の半分以下と言 われている 特にテチコは家に帰ってきてからは自分の役割を失い、一気に老け込んでしまった感じで活気も 無くなってしまった あれだけ力強い踊りができていたのに… 今では足にあまり力が入らずよく転ぶようになってしまったため、長距離の移動は背負ってやっ ている ちなみに服はトシさんに保管をお願いしてたけれど無くしたらしい 多分捨ててしまったのだろう 既に寿命が近く余生であるのと、洗う手間を考えると別に服は要らないので俺はこれでいいと 思っている テチコ的にどう思っているのかはともかく。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------- 今年から祭りのオープニングは実装石の踊りではなく、地元小学校の出し物になったそうだ 祭事係のトシさんは「なるほど小学生が出し物をやるのか。…合法的に小学生を近くで見られる なんて最高だぜ。頑張らないとな」とステージをほぼ一人でリニューアルしてくれた 木枠が腐り金属が錆びてボロボロだったステージは神社の周りの間伐材を使い、自然に溶け込ん だ幻想的な雰囲気に生まれ変わった まさに匠の技…還暦を越えているのに凄いバイタリティだ 今後も犯罪に手を染めることなく現役でいてほしいものである 小学生の出し物は奇しくも踊り…というかダンスであったが、去年とは比較にならないくらい観 客が盛り上げてくれた 児童の親族や学校関係者も来てくれていて、来所者も大幅に増加しているだろう …もはや実装石の踊りは過去の醜行になるのかもしれないな ---------------------------------------------------------------------------------------------------- 祭りのオープニングが終わった後の幕間に、テチコは涙を流しながらステージを「デー…デスゥ …」と見つめていた 昔の栄光を思い出すと共に、本来ならば今年もあのステージで踊っていたであろう自分の役割を 失い悲しんでいるのだろう 俺は思わずテチコの肩に手を置き、声をかける 「テチコ」 「デス?」 「あんなの実装石が気持ち悪い踊りするだけだったし無くなってもしょうがないよ」 「デ?………デ!?…デッ…デッシャア!!」 テチコは両手を上げながら抗議する ここのところずっと元気がなく心配だったが、怒れるならまだまだ大丈夫だな 俺はテチコにすまんすまんと謝りながらリンゴアメを買ってきてやると 「デスー♪」とすぐ機嫌を直し、少しだけ舐めてそれからは嬉しそうに眺めている もう、たくさんは食べられないのだろう 来年も一緒に来られるだろうかと考えると、少し切ない気持ちになる そして夕暮れの中をテチコを背負い、これからが本番といった夜の祭りの喧騒を惜しむように ゆっくりと家路につくのだった (終) ---------------------------------------------------------------------------------------------- 過去作 3437【哀虐】実装石ブリーダーの苦悩 3420【食哀】実装石のなる木 3416【哀】 幸せな部類の実装石 3405【哀虐】実装石が実装されなくなる世界 3396【虐哀】短~中編色々詰め合わせ2 3395【愛虐】働く野良仔実装 3368【虐哀パ】短~中編色々詰め合わせ1 テチコ系他 3270【虐観察】楽園とは実装石の産物なり 3240【観察】フォトコンテスト 3199【虐観察】本能と理性の狭間で 3193【虐】里親 3140【虐】ビン飼育
1 Re: Name:匿名石 2024/10/24-20:44:24 No:00009389[申告] |
惰性の産物から打算の産物へ
どんまいテチコ |
2 Re: Name:匿名石 2024/10/25-00:05:41 No:00009390[申告] |
人の都合に振り回されただけの純粋にかわいそうな珍しい実装石 |
3 Re: Name:匿名石 2024/10/26-06:21:09 No:00009391[申告] |
意味もなく禿裸にされ寿命も奪われたけどテンプレ殺処分されずにまともな飼い主のもとで余生を過ごせるのでかなり幸せなんだよな… |
4 Re: Name:匿名石 2024/10/26-16:29:16 No:00009392[申告] |
実装石のクソみてえなダンスが正当に評価されて腐される流れ美しい
テチコ自身は悪くないんだけどね |