実装おじさんと呼ばれて --------------------------------------------------------- とある公園のベンチに腰掛けた敏明は、酷く重いため息を吐いた。 「今日も成果なしか・・・」 敏明は元々技術畑の人間で、その方面ではそこそこの成果を上げてもいた。 だが、会社の事業再編の煽りを受けて、畑違いもいいところの営業部門へと配置を変えられた挙げ句、役立たずの烙印を押されてしまっていた。 今の職場では、上司の「ウンコをするしか能がない実装石みたいな奴」という発言から、実装おじさんとまで呼ばれる始末である。 そんな敏明の足元に、一匹の禿裸仔実装が現れた。 餌をねだるでもなく、不思議そうに敏明を見上げている。 特に実装石に対して関心がない敏明は、ただぼんやりと禿裸を見やるだけだったが、禿裸は何を思ったのか、近くに咲いていた名も知らぬ花を引き抜くと、敏明に向かって差し出してきた。 「ひょっとして、俺にくれるのか?」 「テチューン!」 敏明が花を受け取ると、禿裸は何故か嬉しそうに鳴き声を上げた。 こんな仔実装にまで励まされるとはね。 敏明の口元に苦笑が浮かぶ。 もうちょっとだけ頑張ってみるかと思い、ベンチから腰を上げた。 「テチュ〜ン」 公園の出口へと向かう敏明に向かって、禿裸はバイバイとでも言うように小さな腕を振る。 敏明が肩越しに小さく手を振り返すと、禿裸は嬉しそうにピョコピョコと跳ねていた。 翌日。 敏明は昨日と同じく公園のベンチに腰掛けて黄昏れていた。 昨日と同様、成果なし。 虚ろな視線を公園の地面に向けていると、視界を小さな影が横切りつつあった。 禿裸仔実装が、テッチテッチと鳴き声を上げながら小さな足を一生懸命動かして走っている。 昨日の禿裸かな?敏明がぼんやり眺めていると、禿裸は蹴躓いて転んでしまった。 禿裸を追うように現れた、禿裸よりもやや大きい仔実装(こちらは髪も服もある)が三匹、転んだ禿裸を囲んで寄ってたかって足蹴にし始める。 テチュンテチュンと泣き声を上げて蹴られるがままの禿裸を見ていられなくなり、敏明はベンチから立ち上がり禿裸の元へと向かう。 近寄ってきた人間に気付いた仔実装達は、悲鳴を上げて逃げていった。 敏明は仔実装達を無視し、腰を屈めて禿裸を見やる。 その小さな身体は至る所が傷だらけで、ところどころ血が滲んでいた。 禿裸は敏明を見上げると、よろよろと立ち上がってペコペコと頭を下げる。 助けられた礼をしているのかな?そう思った敏明は何とはなしに禿裸の頭を人差し指の先で撫でてやった。 「テチュ〜ン」 傷だらけの身体で嬉しそうに鳴き声を上げる禿裸に、敏明は自分を重ね合わせた。 禿裸のこいつにとって、公園はもう安住の地ではない。 そして俺にとっての会社も、もう長居するべき場所じゃないんだろう。 こいつも俺も、新しい居場所を見つけるべきなんだろうな・・・。 「どうする?俺のところに来るか?」 禿裸は少し間を置いてからコクリと頷き、テチュテチュと敏明の指に頬擦りした。瞳からは色付きの涙が流れている。 敏明は禿裸をハンカチで包んでやり、公園の出口へと向かう。 そこは出口であると共に、敏明と禿裸の新たな生活への入口でもあった。 ※スレに投下したものを若干修正しました。 また、本作は下記のスレの書き込みからアイデアをいただきました。 >虐められて実装服着せられてるおじさんが >野良実装に慰められるほのぼの交流物とか考えたけど >俺の文章力じゃ無理なので諦めた ありがとうございました。 -- 高速メモ帳から送信
1 Re: Name:匿名石 2024/08/25-09:00:40 No:00009300[申告] |
がんばれ実装おじさん |
2 Re: Name:匿名石 2024/08/28-12:52:19 No:00009303[申告] |
別のニンゲンにも花あげて惨殺されるか次に公園来たら食われてるのが定型なので救われて良かった |