【実装石】 ジッソウセキ 幼蟲は3~5cm。 成蟲は15~20cm。 そのまま成長を続け、野生化では最大30cmほどになる。 飼育下では60cmまで成長するなど、環境による個体差が著しい。 雄は存在せず、全て雌のみで構成される。 西暦2005年初頭、日本の首都東京で初めて存在が確認された。 その後、短期間で日本各地に発生し、大量発生した地域では社会問題になった。 2008年頃にはその数を激減させ、以後、大量発生は確認されていない。 生命の定義のうち、恒常性、組織化、代謝、成長、刺激、生殖が確認される。 発見がごく最近で、化石が発見されていないため適応については議論されている。 しかし、偽石など実装石特有の身体的特徴が、地球上の他の生命と明確に異なるという特徴を持つ。 そのため、実装石を生命に含めか、それ自体が議論の対象となる。 極端な例では実装石に生命は無く、機能停止するだけで死が存在しないとされる。 生物の分類上、動物に酷似しているが、その定義に当てはまらない。 故に分類、学名共に決まっていない。 哺乳綱との類似が確認されるが、相似に過ぎないとされる。 外観は類人猿、特にヒトに良く似ているが、相違点が多数ある。 古来の表現で地を這う様を蟲と呼び、そこから成長過程の個体を幼虫、成長を終えた個体を成蟲を呼ぶ。 【名称】 発生当初から実装石と呼ばれており、その名称の由来や、何時、どの様に決まったのか定説は無い。 実装石を構成する漢字は次のように分解される。 実:事実、ほんとう。じつ。 装:衣服を身につけること。よそおい。みじたく。 石:いし。いわ。また、いしでできているもの。 次に漢字を2文字ずつ並べてみる。 実装:装置などを動かすために必要な部品などを組み込んで使用できるようにすること 装石:- (該当なし) 実装石の名前で最も重要な箇所は「石」である。 偽石と呼ばれる核を石に例えたのだろう。 「何らかの目的で偽石を実装し、作動するもの」 それが実装石の由来と考える。 上記仮説を補足するものとして、「仮想美少女存在説」があるが一般的ではない。 【頭部】 全長における頭部の割合が非常に大きく、アンバランスな印象を受ける。 頭1:胴1.5:足1の3.5等身が基本で、その比率は成長しても変化しない。 左右に大きく広がった楕円状で、肩幅より小さくなることは無い。 表皮の色はフィッツパトリックのスキンタイプでスケール1-5に相当する。 これは北ヨーロッパ系白人の肌の色であり、頭部だけでなく表皮全体にも適用される。 【脳】 脳は皺の無い球形をしており、大脳や小脳などの区分が無い。 脳を損傷させても再生するが、記憶が失われる事がある。 体長に対して脳が著しく発達しており、誕生時点で人間の幼児に勝る知能を有する。 100匹の実装石の頭から皮膚、頭蓋骨、眼球などを摘出し、体と脳だけが繋がった状態を作った。 そのままでは脳を損傷するため、プラスチックケースで脳を覆った。 視覚的、聴覚的な刺激を与えても全ての個体で反応が無く、目や耳で得た刺激を脳が処理していると判明した。 その状態で全身にギンピ・ギンピを刷り込むと、全ての個体が反応を示し、平均18.9時間ですべての偽石が崩壊した。 偽石を影響ドリンクに漬けた状態で同じ実験を繰り返すと、平均89.7時間まで偽石崩壊が抑制された。 次に100匹の実装石にそれぞれ番号を振り、十分な時間をかけて記憶させてから脳を摘出し、ランダムに入れ替えた。 番号を呼んで反応した個体の脳、体の組み合わせを評価した。 結果、17%の個体が正しく反応出来た。 しかし、残りの個体は脳を摘出した段階で偽石に亀裂が生じ、テスト前に偽石崩壊する個体が続出した。 テスト完了までの期間、偽石崩壊を抑制しなければ正しい成果が得られない。 偽石同様、体を栄養ドリンクに浸して脳を摘出したが、33%までしか亀裂抑制効果が得られないと分かった。 栄養価の高いハチミツを用いたところ、85%もの亀裂抑制効果が得られた。 こうして実験を再開したところ、74%の個体が正しく反応出来た。 次に同じ教育を施した100匹の実装石を用意し、ギンピ・ギンピを刷り込んでからハチミツに漬け、脳を摘出。 同じくランダムに脳と体を入れ替え、正しい番号で反応出来なければギンピ・ギンピを再び刷り込むと伝えた。 結果、試験前に12%が偽石崩壊したものの、残り88%全てが正しい反応を示した。 このことから、実装石の脳は人間同様に外部からの刺激に反応を示し、刺激が強いほど反応も強まると分かった。 口述伝承によって親蟲から子蟲に言葉と知識を伝えていると思われたが、研究の結果、それは否定された。 実装石100匹の顎と声帯を摘出し、熱した鉄の棒で再生しないよう焼き色を付ける。 次にこれらを強制妊娠させ、1匹の蛆蟲を選んで取り出し、それを栄養ドリンクで幼蟲まで育成した。 リンガルを通じて会話を試みると、ヒトとの会話が成立し、挨拶を交わすことが出来た。 他の蛆蟲は親蟲の見ている前で磨り潰し、親蟲に強制給餌した。 複数の国の研究機関が連携して数百例を繰り返したが、いずれの幼蟲も口述伝承無く、ヒトとの会話をこなした。 幼蟲をハチミツに漬け、偽石を摘出した。 成蟲まで育成してから強制妊娠をさせ、その幼蟲も育成してから強制妊娠をさせた。 10世代までこれを繰り返したが、それでも口述伝承無く、幼蟲は会話をこなしていた。 この様に実装石は、先天的にあらゆるヒトの言葉を理解すると考えられる。 日本語環境下で飼育した個体に初めて英語を聞かせても意味を理解し、行動に移す事が出来た。 個体ごとに保有する知識に大きな差が無く、個体の知識が全体に伝播をすることが分かっている。 初めてギンピ・ギンピを用いた実験が行われた後、別室の実装石がギンピ・ギンピに強い拒否反応を示したと云う。 喜怒哀楽、どの記憶が強いのか、砂糖を喜、ギンピ・ギンピを哀として実験を行った。 砂糖を口内、体内に敷き詰めた個体を100匹用意し、遮断された別室の実装石が甘いと感じるかを検証した。 砂糖が零れない様、口と総排出腔を接着剤で塞いだ。 しかし、何度実験を繰り返しても別室の実装石に砂糖の甘みが伝わることは無かった。 全ての個体が干からびるまで砂糖に水分を吸われ、その苦痛がノイズになったと推測された。 次にギンピ・ギンピを刷り込む実験を行おうとしたが、既にその苦痛を実装石は知っている。 そこで今回は総排出腔にギンピ・ギンピを差し込み、偽石が崩壊するまで強制妊娠を繰り返すことにした。 自身の肉体的激痛加え、子蟲が生まれた瞬間に悶絶死する様子を見せ、精神的苦痛を付与した。 特に子蟲の悲鳴をスピーカーで繰り返し再生して、親蟲の罪悪感を助長した。 実装石100匹を用いて試験を行ったが、別室の実装石に苦痛が伝わることは無かった。 砂糖、ギンピ・ギンピという既知の組み合わせがマイナスに寄与したと推測される。 これまでにない刺激として、世界最悪の麻薬クロコダイルの投与が検討された。 検討の結果、クロコダイルの使用は法令違反に当たるとして見送られた。 代わりに材料となるガソリン、ペイント希釈剤、アルコールなどを混ぜ、3時間ごとに総排出腔に流し込んだ。 100匹を用いた試験で13時間経過後、別室の実装石が初めて苦痛に顔を歪めた。 溶解した大量の実装石について、研究チームは別室の実装石に情報を与えていない。 28時間経過後、口から緑の泡を吹く実装石の腹を割くと、偽石に亀裂が確認された。 リンガルを通じて今日の天気を聞いてみたが、明瞭な返答は得られなかった。。 この実験から実装石は、何らかの手段で隔離された仲間とも情報共有が出来ると分かった。 言語獲得能力も高く、幼児向けアニメを見せるとその感想を仲間内で語り、時に物真似さえも行う。 ヒトに教わらずとも、感情を歌や踊りで表現する。 他に身振り、手振りを交えた感情表現も可能である。 総排出腔から中身を全てかき出した実装石の残骸を作り、手足に糸を結び、実装石の親子の前で動かしてみた。 幼蟲はカクカクした動きを踊りと考え、早速、真似を始めた。 逆に親蟲は死の踊りを鑑賞していた。 親蟲とリンガルで会話すると、珍しい踊りなので鑑賞に専念しており、終えたら拍手をしようと考えていると分かった。 また、なぜ踊りに合わせて歌わないのか、彼女い質問したいと表示された。 この事から、喜怒哀楽それぞれに適した歌や踊りがあると判明した。 例えば、怒り歌と喜び踊りを組み合わせると実装石は違和感を抱くのか。 検証することにした。 複数の実装石をハチミツに漬けながら頭、腹、手、足に分解し、適当に接合した。 1. 1つの胴に可能な限り頭を付けた個体。 2. 前後両方とも前向きな個体、つまり縦に割った2つの個体の前方同士を合わせたもの。 3. その逆バージョン。 4. 頭と頭の接合面を合わせたダルマ。 5. 全身の皮を剥いでから、別個体の総排出腔にねじり込んだもの。 6. 全身の皮を剥ぎ、別個体の頭皮を可能な限り取り付けたイエティ。 7. 顔と腹のすべての面に、可能な限り手足が接合されたムカデ。 8. 体の側面を切り落とし、それを何匹も横に長くつないだぬりかべ。 9. 手足を落として胴を割き、その胴に別個体の表皮をつないだ一反木綿。 10. 残った部分とどうにか全て繋いだ巨大な何か。 どの個体も歌と踊りが不可能なことに気づいたが、ギンピ・ギンピを刷り込み、その悲鳴と動きを哀の歌と踊りという事にした。 これらにLEDライトを括り付けて点灯させ、喜を表現してみた。 100匹の幼蟲に1から10まで見せ、どこまで脱糞しないか計測した。 結果、平均1.7という結果が得られた。 10まで見せた後で腹を割くと、23%の偽石に亀裂が生じていた。 この結果から、実装石は喜怒哀楽の表現の違いを理解出来ると分かった。 また、笑いながら泣く、などの相反する表現に違和感を感じることも分かった。 識字能力は低いが、教育によって平仮名、片仮名、数字、アルファベットなど様々な文字を読むことが可能になる。 漢字は苦手をされるが、漫画を読む個体が確認されており、識字能力の個体差は大きい。 手の構造から文字を書くことは非常に困難とされる。 複数個体の手を摘出し、1つの個体の手に5本指状に接合した。 別個体の手の先に切れ目を入れ、5本指状を成形した。 それを100匹ずつ用意し、通常の実装石と手先の器用さを競わせた。 ビーズを縦に何個、何列並べることが出来るかで評価した。 結果、通常の個体と有意な差は無く、手の形状や指の本数と実装石の器用さに関係は無いと分かった。 手先にギンピ・ギンピを刷り込んだが、通常個体と対象全ての個体とで反応に有意な差は無かった。 次にこれら全ての個体の手を切り落とし、別個体とランダムに接合してみた。 ギンピ・ギンピを刷り込んだところ、反応に差が無いことから難しい手術をしなくても神経系が接合される事が確認出来た。 最後に手足の配置を入れ替える、頭や腹に手を生やす、左手を無くして右手を10本にする、など様々な形状で同様の実験を試みた。 実験の結果、これらの個体は通常個体より作業効率が78.1%も低下した。 右手10本などの異常事態に脳が追い付かず、十分に体を動かすことが出来ないと判明した。 これら個体の手足に熱した針を刺して反応があるか、確認した。 結果、100%の個体に反応があった。 同一個体の手足にフッ酸を塗布しても同様の結果が得られた。 親子の親愛の絆は深く、親蟲の目の前で子蟲を殺すと泣く、などヒトに近い情愛を示すことが分かっている。 実装石100匹を強制妊娠させて大量の幼蟲を生成し、親の目の前で幼蟲を1匹ずつ引きちぎる実験を行った。 平均23.9匹の幼蟲を引きちぎった時点で、親の偽石が崩壊した。 偽石を栄養ドリンクに漬けた状態で同じ実験を行うと、平均107.4匹の幼蟲を引きちぎるまで偽石崩壊は抑制された。 別家族、つまり仲間に対しても同様の感情を示し、実験でもほぼ同等の結果が得られた。 実装石は直接的な親子関係と、周囲の仲間との関係を同等レベルに扱うことが出来ると判明した。 次に実装石100匹を強制妊娠させ、排出された大量の子蟲を目の前で刷り潰し、それを親蟲に強制給餌した。 子蟲の偽石の成分が還元されるためか、偽石崩壊まで平均8回の出産と給餌に耐えた。 偽石を栄養ドリンクに漬けることで、平均28回まで出産に耐えることが出来た。 さらに実装石100匹を集めて強制妊娠と出産をさせ、50匹に自分の子蟲を、50匹には別個体の子蟲を給餌した。 結果、自分の子蟲では平均10回、別個体の子蟲では平均9回まで耐えた。 100匹の実装石を追加し、偽石を摘出して栄養ドリンクに漬けて同じ実験を行った。 すると、自分の子蟲では平均27回、別個体の子蟲では平均28回まで耐えた。 回数に有意な差は無く、肉体的負担は変わらないと判明した。 しかし、自ら出産した子蟲を給餌させることは精神的な負荷が強く、明らかな精神疾患を発症する個体が多かった。 実装石は親子、仲間に強い親愛の情を抱いており、一般的と思われた共食い、間引きに強いストレスを感じる事が判明した。 厳しい野生化で生き抜くため、そこまで追い詰められたと解釈すべきだろう。 特に共食い、間引きを繰り返す個体は精神疾患を発症している可能性が有り、それを糞蟲と呼んでいたことが分かった。 なお、強制妊娠は両目を赤くすることが一般的だが、目を抉る場合は投薬で同様の効果を得ることが出来る。 今回の実験では投薬を主とした。 【顔】 顔面は頭部形状に沿った楕円状で、2つの目、耳、1つの鼻、口がある。 実装石の顔面は極めて不衛生である。 食糞により、鼻や口にかけて糞が付着している。 汗腺に似た器官が顔面に集中しており、色素の無い無色透明な液状の糞が表皮から湧き出す。 そのため、実装石の顔を殴ることは衛生面から禁止され、専用の器具を用いなければならない。 皮膚がむき出しになった顔面は蚊の標的になり、血液の代わりに液状の糞を吸われる。 シラミに寄生されると血液、体液の代わりに液状の糞を吸われる。 実装石-ヒト間に未知の感染症が発生するリスクがあり、実装石駆除の重要な理由となっている。 【目】 眼球は眼窩に位置し、視神経で脳と結ばれている。 眼球は固い外壁と内容物で構成され、その最外層は血管や硝子体によって赤、または緑に見える。 基本的に右目は赤、左目は緑である。 この色の違いは色素によるもので、左右で視力の違いは無い。 感情の起伏や、外的刺激によって涙を流す。 特に実装石はヒト以外で泣く、唯一の動物である。 涙は体液と同じ成分であり、右目は赤、左目は緑の涙を流す。 出産時、両目から赤い涙を流す個体もいる。 この涙も実態は液状の糞で、赤い色素によって色分けがされている。 実装石100匹の眼球を抉り、ランダムに交換して視覚が回復するか検証した。 高さ10mの2つの柱の間に鉄骨を渡し、鉄骨を歩いて隣の柱まで移動出来るか、という試験で再生状況を判断した。 実験の前に強制妊娠と出産を行い、子蟲に十分な愛情を注がせてから、親蟲同士の眼球交換を行った。 子蟲が動かないよう、首から下をレジンで固定し、鉄骨の上に置いてみた。 その姿見た親蟲は子蟲を視認し、泣き叫ぶなどの反応を見せた。 100匹とも同様の反応をしており、全ての個体の資格が回復したと分かった。 実装石の視力はヒトと同等、またはヒトよりも良い事が分かった。 次に鉄骨の上に置いた子蟲を蹴り飛ばしてから、全ての子蟲を同じ目に合わせると伝えた。 助けたければ鉄骨を渡り切るよう伝え、拒否した個体には口内にフッ酸を垂らしてから鉄骨に乗せた。 結果、鉄骨を渡りきれた個体は0%で、眼球の交換で視覚は回復しないという結果が得られた。 しかし、評価方法に問題が有るとの反論が提起され、100組の親子を用いた実験を試みた。 十分に愛情を注いだ子蟲の眼球を、親蟲に摘出させた。 摘出が円滑に行えるよう、親蟲には子蟲の瞼を先に切除するよう命じた。 嫌がる親蟲は胴体全ての皮膚を剥いで粗塩を刷り込むと、摘出に協力的な姿勢を見せた。 摘出完了後、こうした個体には罰としてフッ酸を口内に塗布した。 眼球を栄養ドリンクに漬けてから、適当な子蟲の眼窩に入れてみた。 子蟲に親蟲を見せると全ての個体が反応を示した。 子蟲の前で親蟲の首を切り落とすと、強い反応を見せ、視覚の回復が確認された。 次に同じ個体の眼球を再摘出し、眼窩を熱した鉄の棒で焼いてから眼球をランダムに入れ替えた。 結果、目の前に親蟲の首を置いて縦に割っても、反応が無く、視覚の消失が確認された。 念のため、割った親蟲の顔から眼球を抉り出し、熱した鉄の棒に刺して口内に押し込んでみた。 反応が乏しく、視覚の消失が確認出来た。 出産直前は両目が赤くなる。 外的要因で両目が赤くなると実装石の意思に関わらず、腸下部に偽石片が生成される。 偽石片は周囲の糞と反応し、蛆蟲が生成される。 蛆蟲は総排出腔から噴出するように出産される。 これは流血による視界不良を緊急事態とみなし、種の保存のため反射的に出産を行う機能が備わっているためである。 実験では幼蟲、成蟲を100匹ずつ用意し、強制出産を繰り返し、機能停止するまでの数を計測した。 幼蟲は平均1.7回、成蟲は平均5.1回の出産に耐えた。 特に幼蟲は腹部の膨張に体が耐え切れず、そのまま爆発する事例が見受けられた。 偽石を栄養ドリンクに漬けた個体を同数用意し、同様の実験を行った。 幼蟲は平均7.8回、成蟲13.2回と大幅な向上が確認出来た。 出産は実装石に大きな負担をかけるため、十分な栄養摂取が必要と分かった。 眼球の中は硝子体が入っており、中間層、最内層の区別が無い。 光の投射量を制御する虹彩が無い。 上記は丁寧に書いたもので、簡単に説明すると眼球の中にはゲル状の糞が詰まっている。 どうして糞で視覚が獲得出来るのか、研究が続けられている。 光への反応を確認するため、100匹の実装石の眼球に工業用のレーザーを照射した。 しかし、全ての個体の頭部が著しく損傷してしまい、実験は失敗した。 ヒト同様、3色型色覚を持つ。 瞼があり通常は上瞼のみが開閉する。 少数だが、下瞼も開閉する個体が確認されているが、機能上の有意な差は確認出来ない。 接着剤で瞼を閉じたまま固定すると、開くことは出来ない。 睫毛、眉毛ともに無い。 【鼻】 鼻はヒトの様に前方に突出せず、顔の輪郭に沿って2つの穴が開くのみである。 鼻孔は正面を向いている。 保湿のため粘液で詰まりやすく、呼吸器や口の補助器官としての役割を果たせないことが多い。 そのため、実装石の嗅覚、味覚は弱く、腐肉食に耐えることが出来る。 【口】 口は消化器官の初端を務め、咀嚼や唾液との撹拌を行う。 口内は粘膜に覆われている。 ヒトはその粘膜が裏返り、唇を形成するが、実装石に唇は無い。 頬は咀嚼を助けるだけでなく、リスの様に口内に食料を貯めて運搬することも出来る。 下顎を上下に繰り返し動かすことで咀嚼する。 顎の可動範囲は小さく、咬合力は極めて弱い。 頬と顎とで口を閉じ、体内からの水分の蒸発を防いでいる。 唇が無いことで隙間が生じるが、それを補うように粘液上の唾液を分泌している。 口の上側が縦に裂けて△状になり、外観上の大きな特徴となっている。 鼻が呼吸器としての機能を果たさず、口は補助器官として用いられる。 歯は永久歯のみで、その構造はヒトと極めて類似している。 実装石は雑食性で腐肉食、糞食、共食いも行う。 雑食性らしく切歯と臼歯があり、その本数は個体差がある。 舌は筋肉で構成され、咀嚼や発音に用いる。 手や髪を舐めることで、そこに付いた小さな羽虫を食べることが出来る。 出産直後は幼蟲の粘膜や糞を舌で舐めとる。 共食いをする実装石にとって、互いの体を舐め合う事は強い信頼の証になる。 表面に味蕾があり、貧弱ながら味覚を有する。 甘い、塩辛いという大雑把な区分けしか出来ないため、この2つしか味覚が無いと推測される。 舌は引き抜いても再生し、味覚も戻る。 【耳】 人間の聴覚は130dBで安全上の限界域を超え、重篤な痛みや永続的な障害が生じる。 特別な施設を借り、実装石100匹に130dBの音を聞かせ、その反応を検証した。 24時間放置すると全ての個体の聴覚が異常を示していたが、その後、24時間で全て回復している。 次に同一個体の耳に熱した鉄の棒を入れ、内耳をかき出した。 全ての個体の内耳は復元しなかった。 そのまま熱した鉄の棒を右耳から左耳まで貫通させた。 脳が損傷したためか、時間の経過と共に全ての個体の偽石が崩壊した。 改めて100匹の実装石を用意し、常温の鉄の棒を右耳から左耳まで貫通させ、接着剤で固定した。 鉄の棒が再生を阻害し、24時間を経ても聴覚は戻らなかった。 その状態で鉄の棒に電流を流し続けてみたが、聴覚は戻らず、やがて全ての個体の偽石が崩壊した。 このことから、実装石の耳は異常音量による聴覚障害から回復することが出来る。 ただし、外的要因による損傷からは回復しにくいと分かった。 【頭髪】 顔面の上と後ろに頭髪が存在する。 頭髪以外の毛器官は確認されていない。 毛器官は触覚に関わる知覚神経の補助を行い、それは実装石も変わらない。 ヒトと異なり、頭頂部に頭髪は生えず、前、右後ろ、左後ろの三方にのみ生える。 色は茶色で、左右後方の髪は足元まで、前側の髪は額にかかる程度まで伸びる。 加齢による色素とメラニンは確認されず、白髪は確認されていない。 頭髪は外力や光線からの頭部の保護、高温や低温からの保温の役割がある。 しかし、頭頂部に頭髪は生えず、冬季は気温低下による低体温症を発症する個体が多い。 実装石の頭巾は頭髪を補完する役目があると考えられる。 実装石にとって頭髪は重要な役割を果たしており、生存競争に大きな影響を与える。 実装石は親子、仲間同士でのグルーミングを非常に重視する。 頭髪を舐め合うことで互いの匂いが混ざり、親愛の情が強まる。 群の結束を高めることで群の生存率を向上させている。 グルーミングの際、手や口を介して髪に糞が付着する。 頭髪に日光が当たると、付着した糞との化学反応を起こし、表面にビタミンなど各種栄養素が生成される。 グルーミングによって各種栄養素を補給出来る。 実装石を捕獲する際、頭髪を掴むことがあるが推奨しない。 糞を塗り込まれた頭髪を素手で触ることは、衛生上、極めて危険な状態と言える。 長い頭髪は、厳しい環境を生き抜いた証と見なされる。 頭髪を失った禿頭個体は脆弱と見なされ、それまで所属していた群れから排斥され、共食いの対象になる。 逆に禿頭個体を保護し、餌を分け与える個体もいる。 禿裸に対する接し方でしか、実装石の本当の性格は分からないと評する専門家は多い。 頭皮を強い力で引っ張ると肉ごと抜けることがある。 頭皮は再生しても、頭部から離れた頭髪は何故か再生しない。 実装石100匹の頭皮を剥がし、そこに髪の毛と同量程度の注射針を刺し、頭部を剣山状にした。 鏡に映して見せたが、自身に刺さった注射針を髪の毛と認識せず、狂った様に泣き叫んだ。 100匹全てが同様の反応だった。 仲の良い群から1匹捕獲し、頭皮を剥いで群に戻すと迫害の対象となり、やがて共食いの餌食になった。 通常個体10匹:頭皮無し10匹を並べてみると、個体ごとに攻撃性の違いが表れた。 通常個体は迫害や共食いを行う個体5、相手を慰める個体5に分かれた。 頭皮無しの場合、泣き叫ぶ個体8、通常個体に襲い掛かる個体2に分かれた。 続けて、全ての通常個体の頭皮を剥ぐと泣き叫ぶ個体6、通常個体を攻撃する個体4に分かれた。 頭皮を剥いだ個体を見た時の反応で、AからDまでの4パターンに区分けした。 4パターンそれぞれ1,000匹を用意し、頭皮を剥ぎ取り、攻撃性の変化をまとめた。 A. 共食い⇒攻撃 78.6% B. 共食い⇒号泣 21.4% C. 慰め⇒号泣 50.9% D. 慰め⇒攻撃 49.1% Aの様に共食いをする個体は攻撃性が高いことが裏付けられた。 Dは髪の喪失に発狂したもので、他の個体を殺傷して頭髪を手に入れようとしていた。 これは糞蟲に多く見られる錯乱行動である。 外観劣化による心理的負荷が糞蟲化を誘発したのか、そもそも糞蟲の気質を備えていたのか判断が出来ない。 今後の研究に期待する。 B,Cとも長時間に渡って叫び続け、ほとんど抵抗すること無く全てのAの捕食対象になった。 優位性を失った個体は泣き声で存在を周囲に知らせ、共食いを誘発させたと考えられる。 自ら食肉になることで、群の存続に寄与する機能が備わっているのだ。 Bからランダムに100匹を抽出し、熱した鉄の棒で声帯を焼いた。 泣き声が消えたため、この個体群は最後に共食い対象になった。 実験を繰り返すと、頭皮を失っても号泣や、他者への攻撃を行わない個体が確認された。 リンガルによると家族や仲間のために生きるという、前向きな意思を示していた。 こうした個体1,000匹を抽出した。 その際、93,848匹の頭皮を剥がさなければならなかった。 前向きな個体を1匹ずつ、通常個体の群れに混ぜてみたが、1000匹全てが共食いの対象になった。 【首】 首は頭部を支えるために筋肉が発達するが、極めて短く、柔軟性に欠ける。 首を動かすことが出来ず、同意を示す場合は腰を動かして頷きに近い動作をする。 左右確認なども苦手で、腰を起点に体を振るか、左右それぞれに体を向けて確認する。 発達した脳を収納するために獲得した特徴と考えられる。 喉に声帯があり、腸から空気を排出する際に振動させ、声を発することが出来る。 音声による会話能力を持つが、声帯は簡素で、幼蟲は「テチ」、成蟲は「デス」と鳴く。 実際は人間の可聴域を超えた音域で会話をしており、小学校低学年相当の会話をしている。 【胴】 直立姿勢では下腹部が前に突き出た形になる。 胸部に乳房が無いため母乳は出ない。 腸下部に蛆蟲が形成されるが、胎盤と臍帯が無く、腹部に臍は無い。 食道が通る以外、胸に心臓や肺などの臓器は無い。 循環器系が存在しないという特殊性から、実装石は動物ではないという意見が根強い。 【偽石】 胸部を開くと偽石があり、これが実装石の命というべき役割を果たしている。 強いストレスや、過剰な再生を偽石に負荷がかけ、やがて亀裂が生じる。 この段階でケアを行えば、亀裂は修復される。 逆に負荷をかけ続けると亀裂は広がり、やがて灰色になって崩壊する。 この時、実装石の肉体はあらゆる機能を停止する。 この状態が実装石の死と定義される。 逆に偽石が無事であれば、脳が損傷しても再生する。 偽石を体内から取り出し、人為的に管理することが可能である。 偽石を栄養価の高い液体に漬けると、その崩壊が抑制される。 ハチミツや栄養ドリングが適している。 体外の偽石を砕いても、実装石の肉体は死に至る。 逆に実装石の首を切り落とし、脳を摘出しても栄養ドリンクに漬けた偽石は無事である。 肉体と魂の分離と比喩されるほど、この現状は特異性に満ちている。 そのため実装石は生命体ではないという意見も根強い。 【腸】 腹部には腸が有り、食物の消化と吸収を行う。 また、呼吸によって腸に空気が運ばれることから肺に類似した機能を有している。 腸に送り込まれた空気は圧縮され、その空圧で液状の糞を血液の様に体内循環させている。 糞の体内循環が阻害されると仮死状態に陥るが、それだけで死に至ることは無い。 そのため、実装石の呼吸はヒトを模倣しただけで特に意味は無い、という説が有る。 実装石100匹の口にパイプを入れ、腸まで串刺し状にした。 200℃の熱風をパイプを通じて体内に送り込むと、21.1時間で全ての個体の偽石が崩壊した。 この事から、腸は温度変化などの刺激に弱いと分かった。 次に総排出腔を接着剤で完全に塞ぎ、口からパイプで腸に空気を送り込んだ。 100匹の個体、全ての腹部が膨張し、破裂した。 偽石の崩壊まで平均6.4回かかった。 偽石を栄養ドリンクに漬けると平均38.2回まで向上した。 恐らく、腸と偽石の距離が近く、偽石に直接衝撃が加わることで崩壊が早まったと推測する。 同数の実装石を強制妊娠させ、同じ実験を行たが有意な差は生じなかった。 最後に実装石200匹の胴にナイフを突き立て、輪を描くように実装石同士の穴を繋ぎ合わせた。 200匹全ての総排出腔を接着剤と養生テープで塞いだ。 1匹の口にパイプを入れ、圧縮空気を流したが周囲の実装石の口から漏れてしまい、胴が膨らむことは無かった。 200匹全ての口にパイプを入れ、空気が漏れないよう口とパイプを接着剤と養生テープで塞いだ。 200匹同時に圧縮空気を流すと、ほぼ同時に200匹全ての胴が破裂した。 偽石崩壊まで試験を繰り返したが、個体で行った結果と有意な差は生じなかった。 偽石を栄養ドリンクに漬けても結果は同じだった。 実装石の腸は内部からの膨張に弱いと分かった。 腹部を膨張させる殺蟲剤は、有効性が高いと分かった。 【糞】 腸内は緑色の糞で満たされている。 実装石の腸は単純な構造で短く、反芻することも無い。 糞には大量の栄養と水分が残留し、食糞を繰り返すことで摂取効率を高めている。 腸内に入った空気は圧縮され、全身に液状の糞を循環させている。 実装石は潰すと緑と赤のシミが出来るが、液状の糞を血と誤認したに過ぎない。 体内で生成された色素で糞が赤く染まるが、成分は糞と大差無い。 眼球にも糞が詰まっており、僅かな成分の違いから硝子体の役目を果たしている。 食糞後にグルーミングを行うと、手や舌を通じて髪に糞が付着し、髪を保護している。 糞で湿った髪に羽虫が付着すると、それをグルーミング時に舐め取ることが出来る。 実装石100匹の腹を圧縮空気で破裂させ、修復時に緑のアクリル系塗料を腸内に塗り込んだ。 重篤な中毒症状を示し、19.3時間で全ての個体の偽石が崩壊した。 同様の実験をフッ酸で行うと、強烈な腐食を示し、5.2時間で全ての個体の偽石が崩壊した。 糞以外を腸に詰めることは実装石に負荷を与えると分かった。 また、フッ酸などで腸を腐食させると偽石が近いためか、崩壊までの時間が短くなると分かった。 親蟲が子蟲に自身の糞を食べさせる事があり、実装石なりの幼児食と見なされる。 親蟲の糞を食べた子蟲は、親蟲に対して親愛の感情を強く示すとされる。 親子関係に無い個体の糞を食べることは、実装石に大きな心理的ストレスを与える。 群の最上位の個体が優位性を示すため、最下位の個体に糞を食べさせることがある。 群の最下位になった時点で性格に難がある個体と分かる。 ここから性格に著しく難を抱えた個体を、糞蟲という呼ぶようになった。 糞蟲は生きた備蓄という側面を持つ。 冬から春にかけて食料が尽きた時期に糞蟲を食べることで、群を存続させている。 100匹の糞蟲を用意し、10匹単位の糞蟲の群れを10セット作成した。 群れの中で優位性の主張が始まり、やがて最も強い個体を頂点としたピラミッドが形成された。 最上位の糞蟲は最下位の糞蟲に食糞を強要した。 最上位の糞蟲10匹で1つの群れを作成しても、同様だった。 生存した個体に糞蟲を補充し、計1,000匹の腹にナイフを突き立て、糞蟲同士の穴をタイヤ状に繋いだ。 1,000匹の手足を切断し、再生しないよう熱した鉄の棒で入念に焼き入れを行った。 1匹の総排出腔にチューブを刺し、外れないように周囲を接着剤と養生テープで固定した。 チューブの反対側を前の個体の口に入れ、腸まで刺し込み、接着剤と養生テープで固定した。 この状態で一切の栄養、水分を与えず、全ての個体が偽石崩壊するまで何日かかるか検証した。 結果、全ての偽石が崩壊するまで31日を要した。 糞蟲3,000匹を用意し、3ターンの追加実験を行った。 1. 栄養ドリンクに漬けた状態 ⇒ 159日 2. 点滴で外部から栄養を補給させた状態 ⇒ 142日 3. その両方 ⇒ 342日 この様に、偽石崩壊まで半年から1年もの期間を要すると分かった。 食糞が実装石の生存に大きく寄与すると分かった。 【総排出腔】 胴の下部には総排出腔があり、排泄や出産を行うことが出来る。 総排出腔の周囲には筋肉があるものの弱く、排泄の失敗することが多々ある。 【妊娠・出産】 腸下部に蛆蟲が形成され、幼蟲まで成長すると総排出腔から出産する。 強制妊娠では出産時に母体に強い負荷がかかり、総排出腔を激しく損傷することがある。 実験として100匹の成蟲の腹を割き、中に幼蟲を3匹ずつ入れて縫合した。 総排出腔から疑似的な出産を行うと推測したが、幼蟲が暴れ、全ての成蟲の偽石が崩壊した。 生存した幼蟲265匹を全て成蟲まで育成し、偽石を栄養ドリンクに漬けた。 265匹の胴にナイフを突き立て、穴をタイヤ状に繋ぎ、総排出腔と口を接着剤と養生テープで塞いだ。 全個体を強制妊娠をさせると全ての胴が破裂し、その内部からはじけ飛んだ大量の蛆蟲、幼蟲が確認された。 全ての蛆蟲、幼蟲を腹部に戻し、破損部を縫合して再び強制妊娠させた。 破裂の規模が大きくなり、全ての個体で体が上下に分断された。 蛆蟲、幼蟲は全て液状になり、飛び散っていた。 成蟲の修復はせず、このまま強制妊娠を行った。 すると驚くべきことに分かれた腸下部に蛆蟲が形成された。 幼蟲まで成長するか確認するため、成蟲の上半身に熱した鉄の棒を当て、再生を抑制した。 幼蟲まで成長した個体は無く、成蟲の偽石が崩壊するまで実験を繰り返したが結果は同じだった。 次に実装石100匹の胴にナイフを突き立て、再生を抑制するため熱した鉄の棒を切断面に当てた。 この状態で強制妊娠を行うと、全ての個体の腸下部表面に蛆蟲が形成された。 栄養ドリンクをスポイトで垂らすと幼蟲まで育ち、腸表面から出た液状の糞で総排出腔から排出された。 出産を阻害するため、腸表面と総排出腔周囲に熱した鉄の棒を当てた。 栄養ドリンクで育成された幼蟲は出産を経ず、自ら立ち上がって母体から離れた。 実装石100匹の胴を横に切断し、上半身と下半身をランダムに入れ替えて接合した。 下半身は腹部に穴を空け、切断面が再生しない様に熱した鉄の棒を当てた。 この状態で強制妊娠させると、別個体に漬けられた元の体の下半身に胎児が形成された。 100匹全てで同様の結果が得られた。 実装石1,000匹を用意し、強制妊娠と出産を繰り返し、その都度、親蟲の前で子蟲を全て駆除した。 これを偽石崩壊まで繰り返したが、崩壊直前でも子蟲は異常は確認出来なかった。 実験の結果、出産は実装石に大きな負荷を与えると分かった。 何らかの信号で上半身と下半身は結ばれており、下半身への強制妊娠が可能と分かった。 しかし、通信技術は発達しており、実装石を通じた新たな通信技術の需要は無い。 【前足】 前足は手と呼ばれ、歩行に用いることは無い。 先端の細い円筒状をしている 先端に指や爪は無い。 先端を曲げる、広げることが可能で、物を掴み、投げることが出来る。 しかし構造上、複雑な動作は出来ず、道具を作成することを苦手とする。 また、力が弱く、ゆるく締めたペットボトルのキャップでも空けることは困難である。 骨格からは明瞭な肘は確認されていない。 肩を中心に腕を回すことが出来、糞や砂利の投擲が可能。 巨大な頭部に対して手が短く、頭頂部を触ることは出来ない。 これは生存競争で不利に働くと推測される。 検証として下記の実験が行われた。 実装石100匹の手を肩から切除し、熱した鉄の棒で焼いて再生を阻害した。 同じく実装石100匹を用意し、それぞれの頭皮を剥がし、頭頂部に穴を空け、寄生バチの卵を入れてから穴を塞いだ。 寄生バチの幼虫を脳を餌に成長する。 羽化するまでに幼虫を取り除けるか検証した。 結果、計200匹全てが羽化までに幼虫を取り除くことは出来なかった。 手の有無に関わらず結果が同じため、頭頂部への攻撃は実装石の弱点になると分かった。 しかし、頭頂部の穴を塞いだことで、そもそも幼虫を取り出すことが出来ないという意見が挙がった。 新たに実装石の親子100組を用意し、親蟲100匹の頭部に穴を空け、熱した鉄の棒を当てて再生を阻害した。 親蟲100匹の脳に寄生バチの卵を植え付けた。 幼虫が脳を食い荒らすまで待ち、子蟲に爪楊枝を持たせ、親蟲の頭から寄生ハチの幼虫を摘出するよう命じた。 摘出出来なければ親子共々、顔の皮を剥がし、蟻の餌にすると伝えた。 念のため、別の実装石100匹の顔の皮を剥がし、蟻の群れを使って少しずつ肉が削られる様子を見せた。 蟻が喜ぶようにハチミツを垂らしたが、偽石が活性化して再生力が強まり、死に至るまでの時間が延びてしまった。 また、蟻を巻き込んで体が再生してしまい、肉や皮膚に蟻がめり込むことになった。 子蟲の手は震えてしまい、ハチの幼虫に爪楊枝が刺さることは無かった。 親蟲の脳はグチャグチャにかき回され、涙を流して笑いながら歌うなどの奇行を見せた。 結局、全ての子蟲が親蟲の救助に失敗し、蟻の餌になった。 親蟲の死骸と規制ハチの幼虫も蟻の餌になった。 この実験を100匹の実装石に見せてから、100匹全ての頭頂部に穴を空けた。 2匹1ペアにして、穴の周囲に接着剤を塗布し、互いの頭頂部をつなげた。 こうして出来た50組に相手との握手を命じ、出来なければ何かの餌にすると伝えた。 互いの頭が邪魔をして、握手が出来たペアはおらず、100匹全てが何かの餌になることが決まった。 捕食者としてゴキブリ、ミールワーム、アメリカザリガニを用意した。 全て爬虫類や魚類の餌として養殖されており、実装石がその餌になるか確認する機会になった。 皮の剥がされた顔や背中にゴキブリは齧りついた。 ミールワームは口や総排出腔から体内に侵入した。 アメリカザリガニはハサミで表皮を切り、ゆっくりと肉を引きちぎった。 実装石200匹100ペアで同様の実験を行ったが、結果は同じで全て餌になった。 この実験が有名な「実装石100,000匹不法投棄事件」の引き金になった。 別の研究機関は実装石に鬼ごっこをさせ、手が頭頂部に届かないことが生存にどう影響するか検証するとした。 なんと、この実験には100,000匹もの実装石が投入された。 全ての実装石に対し、命令に従わなければ下半身の皮を剥ぎ、沼の浅瀬に浮き輪で浮かべると伝えた。 別に用意した100匹を浅瀬に浮かべると、ザリガニやブルーギル、水生昆虫などが少しずつ肉をはぎ取った。 下半身が食い尽くされると上半身は浮き輪から落下し、そのまま水底に沈んでいった。 100,000匹にこれを見せてから、24時間の鬼ごっこを行うと伝えた。 鬼は実装石を捕まえ、頭頂部を触れたら、そこから頭皮を剥ぎ取る。 鬼から24時間、逃げきれば金平糖10個が支給される。 捕まっても頭頂部を守れば危害を加えることは無い、というルールを伝えた。 また、実験終了後に頭皮の接合手術を行い、参加者全員に金平糖10個を支給すると伝えた。 100,000匹の実装石の士気は高まり、ほぼ全ての個体が歌や踊りで喜びを示した。 鬼役は研究員5人が務める事になり、200m四方の広い公園を模した屋外研究室に実装石100,000匹を押し込んだ。 屋外研究室は 季節は夏で、屋外研究室は40℃まで気温が上がり、コンクリートの地面は60℃をはるかに超えていた。 本来、過酷な環境は実験への悪影響を危惧されるが、24時間ならば問題無いと判断された。 実験は24時間で終了するはずが、なぜか240時間後に終了宣言が出された。 研究員5人は誰も鬼役を務めず、カメラ越しに観察が行われた。 スピーカーから目の前の実装石を殺害しろ、と30分毎に自動音声が流された。 水と食料は一切提供されない。 高さ5mの壁から外に出る事は出来ない。 炎天下の中、やがて100,000匹の実装石は殺し合いを始めた。 後に研究員5人は、今後の対応協議に追われ、取り合えず間引きを行ったと証言している。 実装石は殺した同胞の血肉と糞を食べることで生き続けた。 500時間経過後、防護服に身を包んだ5人は研究用特殊洗浄液用の高圧ホースを手に、屋外研究室に入った。 驚くべきことにこの時点でも数匹の実装石が緩慢と立ち上がり、救助を求める様子がカメラに収められている。 5人は特殊洗浄液で汚染された地面を洗い流し、排水溝は実装石の血肉と糞で溢れた。 排水溝が詰まると、5人はゴミ袋に死骸を入れ始めた。 1人、1人と泣き崩れた。 異常に気づいた他グループの研究員が上層部に通報し、研究所全体が蜂の巣を突いた様な混乱に見舞われた。 なぜ、この様な事態が生じたのか。 当初、実装石100匹を用いた鬼ごっこが計画されていた。 捕食者に襲われた際に手で頭頂部を防御出来るか、その検証が目的だった。 しかし、研究員の発注ミスにより、100,000匹を用いた実験と申請をされ、それが受理されてしまった。 想定外の実装石を見て、研究員は間引きすることを決めた。 同時にその廃棄方法と、実験内容の変更理由を協議した。 実装石の不法投棄は法令違反であり、指定の焼却施設に持ち込まなければならない。 大量の死骸を投棄すれば、その悪臭から苦情が市に届き、やがて警察に通報される。 焼却場に持ち込んでも研究所に連絡が入り、本当に実験に使われか確認が行われる。 結局、徹夜で協議しても実験内容の変更理由が浮かばず、不法投棄も現実的でない。 100,000匹の死骸が積み重なり、少しでも排水溝に流すことでその量を減らそうとした。 しかし、どれほど洗浄しても実装石を流しきることは出来ず、やがて5人の心は折れてしまった。 研究員5名は実装石の死骸を排水溝から流したことで書類送検され、前代未聞の事件が世に知れ渡った。 研究員はいずれも罰金100,000円が確定した。 実験はお盆休みの前に始まり、その年は多くの職員が休暇に入ったため発覚が遅くなった。 死臭で異常に気づくはずだが、屋外研究室は外部からの接触を断つため山間部に設置された。 その年、お盆休み直前に地震があり、大型台風の接近警報が連日流されたため観光客の足が遠のいた。 こうした条件が重なり、事件発覚まで時間がかかった。 捜査過程で、研究所所長による研究員へのパワハラが横行していたと判明した。 些細なミスで罵声が浴びせられ、ようやくつかんだ研究員としての職を失うリスクに晒される。 長期間のパワハラで研究員は萎縮し、正常な判断が出来なくなった。 そのため、実装石の発注ミスを上層部に報告出来ず、結果、この様な事態に陥った。 元凶であることが判明した所長は書類送検の上、失職。 その謝罪会見での不遜な態度が問題視され、社会的地位を失った。 自宅に押し寄せたマスコミをウィスキーの空き瓶2本で殴打し、3人が負傷した。 所長は酩酊状態のまま車で逃走を図り、それを止めようとしたマスコミの列に突っ込み、6人が負傷、3人が死亡した。 逮捕された所長の裁判は継続中である。 以上が実装石100,000匹不法投棄事件の顛末である。 240時間に及ぶ100,000匹の殺し合いは研究価値が高く、多くの研究機関から提供依頼が殺到した。 やがて殺傷部分を抽出した編集動画の流出が起こり、それはコレクターから「黒の章」と呼ばれ、非常に高い評価を得た。 その中で、頭頂部への攻撃を手で防いだ実装石がいない事が分かった。 この実験で手の短さが生存競争で不利に働くことが証明された。 【後足】 直立二足歩行を行う生物はヒトと実装石だけである。 実装石は誕生直後から二足歩行出来るが、蛆蟲という未熟児のみ四足歩行をする。 歩行速度は低速だが体力を消耗しやすく、縄張り外への移動を好まない。 後足は足と呼ばれ、歩行のために特化している。 先端の細い円筒状をしている。 手と同様に指、爪が無い。 膝を完全に伸ばした姿勢がとれるが、骨格からは明瞭な膝は確認されていない。 踵とつま先に形状の違いは無く、足の甲は存在しない。 そのため、直立二足歩行が出来るものの、不得意というアンバランスさが生じている。 骨格筋や腱は未発達で、移動時の体重移動、分散に支障を来す。 歩行の困難さは生存競争で不利に働くと推測される。 実装石100匹の両足先端に消しゴムを当て、外れないよう裏から何本も針を刺した。 疑似的につま先、足の甲、踵を作り、歩行速度が改善するか検証した。 結果、1歩でも歩くことの出来た実装石はいなかった。 足の先端形状を変えても、それが自由に動かせなければ歩行出来ないと分かった。 次に、実験に用いた実装石100匹の総排出腔に、熱した鉄の棒を入れて頭頂部まで串刺しにした、 それを地面に突き立て、短距離走のコースを作った。 串刺しにされた実装石はハチミツが塗られ、大量の蟻に肉を剥ぎ取られていた。 聖火リレーとして、新たに用意した実装石100匹を並べ、1匹ずつ太陽に熱せられたマンホールに5分、顔を押し当てた。 反抗的な態度を示した3匹の頭皮を剥ぎ、服と髪を結んでゴールテープにした。 耳の穴に紐を通すと、泣き叫ぶ入賞メダルが完成した。 残った実装石は適当に分解し、それを並べてコースを延長した。 実装石100匹にコース制作過程を見せ、早く走らないと聖火リレーの走者になってもらうと伝えた。 まず、普通のコースを走らせてタイムを計測。 次に串刺しにした実装石で出来たコースを走らせ、どちらが早く走れたか検証した。 結果、100匹とも後者の方がより早く走ることが出来た。 この事から、実装石も努力すればいつもより早く走れることが分かった。 【仮想美少女存在説】 仮想美少女存在説は実装石の名称問題に端を発し、実装石の存在を解き明かしたとする奇説である。 科学的に証明可能な事象が無く、社会に広く受け入れられるものではない。 以下にその概要を示す。 実装石の核は偽石と呼ばれている。 正とする何かがあり、その対比として核に偽石と名付けたと推測される。 しかし、実装石を解剖しても偽石以外の核は存在しない。 核が対象でないならば、実装石の存在自体を偽者、つまり失敗作と見なすことが出来る。 ここで野生化の実装石の容姿に注目したい。 体に比べて異常なまでに大きな頭。 前後にしか生えない茶色い頭髪。 落書きのような単純な顔。 左右で色の違う、虹彩だけの目。 蝙蝠のような耳。 上唇が縦に裂けた口。 太く短く、指一つない手足。 触れた腹には腸と総排出腔しかない。 糞で汚れた緑色の服、頭巾、靴。 元は白かったと推測される涎掛け。 外れかけたボロボロのリボン。 この様に、ヒトに強い嫌悪感を抱かせる容姿をしている。 その全て逆転させ、ヒトの視点で美しく形作ればどうなるか。 美しい茶色の頭髪が小さな頭部を覆っている。 丹念に作りこまれた彫刻の様に秀麗な顔。 左右で虹彩の違う、美しい瞳。 ファンタジー世界のエルフを思わせるような耳。 今にも旋律を奏でそうな小ぶりな唇。 長い手足と無駄な肉の一切排除された細い体。 緑の装いに白いエプロンはどこかメイドを思わせ、赤いリボンが人目を引き付ける。 この仮想の美少女を正とする。 美少女と言っても、体に不思議な石を宿しているだろう。 偽石ではなく、正解となる石である。 その石は美少女にとって命、または命に次ぐほどの重要さを持っているのではないか。 では、この美少女と実装石は誰が創造したのか。 日本では馴染みが薄いが、中東には造物主に対する信仰がある。 複数の預言者を経て、その思想は世界各地に広まっている。 造物主は自らに模した人間を創造したと云う。 造物主が実在すると仮定する。 造物主Xが世界を創造した。 造物主Aが美少女を創造し、他の造物主にそれを見せた。 造物主Bは感銘を受けて模倣をしたが、造形に失敗した。 造物主Cは失敗作の出来栄えを面白いと感じ、創造した世界に巻き散らした。 造物主D、E、Fも失敗作を世界の巻き散らし、混乱を助長した。 日本社会に当てはめると下記の様になる。 漫画家、アニメ監督が美少女の登場するアニメを作る。 それを見た絵師が美少女を描くが、デフォルメをした結果、実装石の原型が出来上がる。 他のネット住民が実装石の設定を拡充し、実装石にかき回される作品群が作られていく。 実装石という常識が通用しない生物が存在する以上、この仮説を否定することは出来ない。 実装石に関するあらゆる事、リンガルなどのオーバーテクノロジーは舞台装置ではないか。 最後に美少女の名前と口癖について考察する。 デフォルメを加えたとしても、元となる美少女から大きく外れた名前は付けないと考える。 似せた名前を付けなければ連想しにくいという弊害が生じる。 そのため、美少女の名前は〇〇石と考える。 〇〇には何が入るのか。 美少女の儚さ。 服の緑の鮮やかさ。 左右の瞳の鮮烈さ。 この辺から漢字2文字が選ばれるだろう。 実装石の鳴き声はデスであり、リンガルで翻訳しても語尾にデスが付く。 美少女は語尾に「です」を多用する、丁寧な口調なのだろう。 以上が概要である。 この様にトンデモ説の域を出ていないながら、一部でこの仮説の熱烈な支持者がいる。 架空の美少女というキーワードから実装石擬人化が創作されたためである。
1 Re: Name:TT 2024/08/18-20:42:21 No:00009288[申告] |
初投稿です。
実装石がいる世界で、どの様な研究が行われているかを考えてみました。 その世界で実装石の名前、誕生経緯などをどう理解しているのか、そこに力を入れました。 楽しんでいただければ幸いです。 |
2 Re: Name:匿名石 2024/08/21-10:58:43 No:00009290[申告] |
実験という名の殺戮で笑った |
3 Re: Name:匿名石 2024/08/22-19:18:52 No:00009292[申告] |
ご発注事案は肉付けすれば単品スクとかになりそう
日常的に大量に使い潰しているから受注側から確認が無かったのだろう |
4 Re: Name:匿名石 2024/10/12-18:47:57 No:00009369[申告] |
>体長に対して脳が著しく発達しており、誕生時点で人間の幼児に勝る知能を有する。
言われてみれば蛆実装であっても会話自体は可能な時点で、知能は決して低くないのよな。 だというのにその高知能を台無しにする行動の数々が余計に研究・観察を難しくしてる節ありそう。 |
5 Re: Name:匿名石 2024/10/12-20:49:21 No:00009370[申告] |
その知性と思われるモノが偽石に由来なのかは不明だが
胎教とはまた別に言語などの基礎知能や知識が初めから実装されている節があるよな 勿論アドバンテージになる部分もあるが将来の可能性を殺してる所も大いにある 馬鹿げた胎教にも洗脳されやすくなるし実装石特有の虚妄に凝り固まって身を滅ぼす連中が大半だし |