実翠石との生活 その5 お土産 ----------------------------------------------------- 「うちはペットショップだから、そういうの持ってこられてもね〜」 ペットショップの店先を掃除していると、何処からかやって来た三毛猫(耳に切れ込みが入っているからたぶん地域猫)が、 私の足元に半死半生といった状態で気絶した仔実装を置いた。 そのままにゃーにゃーと私の足にじゃれついて来るので、苦笑しつつとりあえず背中を撫でてやる。 この仔実装、どうしようかな〜。 時は前日まで遡る。 件の仔実装達(元々は四匹の姉妹だった)は、公園の一角に置かれたダンボールハウスの中で、親実装の帰りを待っていた。 この仔実装達はこの春に生まれたばかり。 当然ダンボールハウスの外を連れ歩くなど足手まといである。 このため、親実装は仔実装達をダンボールハウスに残し、いつものように餌取りに出向き・・・、二度と戻ることはなかった。 ゴミステーションに餌を漁りに来たところを運悪く近隣住民に見つかり、その場で惨殺されたからだ。 仔が居るからと命乞いをしたが、その甲斐なくゴミステーション添えつけの金属製トングで滅多刺しにされた。 (何より、その住民はリンガルなど持っていなかった) 親の帰りを待って、早くも二日が経っていた。 ダンボールハウスには食料の備蓄などない。 仔実装達の空腹は限界に近付きつつあった。 そんな中、ダンボールハウスの隙間から、ニンゲンがネコに対してエサをやっているのが見えた。 ニンゲンに撫でられ、可愛がられてさえいる。 『ネコのくせにナマイキテチ!』 『ワタチタチにも食べ物よこせテチ!気が利かないニンゲンテチ!』 『ネコもニンゲンもムカつくテチ!ウンチ食わせてやるテチ!』 『今度見かけたら食べ物奪い取ってやるテチ!』 『そうテチ!ニンゲンからも分捕ってやるテチ!』 『次見つけたらやってやるテチ!』 空腹と親の不存在から、徐々に糞蟲としての片鱗を見せつつある妹三匹を、比較的まともな長女が諌めようとする。 『テェェェ、ワタチタチじゃネコには勝てないテチ・・・。大人しくママを待ったほうがいいテチ・・・』 『そのママはいつまで待っても帰って来ないテチ!』 『そうテチ!食べ物を取ってこれないママなんてクソママテチ!』 『クソママの言うことなんて聞いてらんないテチ!』 『テェェェェ・・・・・・』 数の差と激しい空腹感によるストレスから、このまま反論すれば自分が妹達に喰い殺されない。 身の危険を覚えた長女は口をつぐむしかなかった。 そして翌日、再びニンゲンがネコにエサを与えているのを目撃した仔実装達は、早速ダンボールハウスを飛び出した。 ネコとニンゲンにウンチを塗りたくり、追い払ってエサを奪う。そんな無謀極まる行動に、仔実装達は踏み切った。 長女も仕方なくあとに続く。 『そのエサ寄こせテチィィィィッ!』 『ウンチまみれにしてやるテチィッ!』 『ニンゲンもクソドレイにしてやるテヂィィィィッ!』 敵対的行動に対する報復措置は直ちに実施された。 テチテチ鳴きながらやって来た仔実装を知覚するや否や、猫は仔実装の一匹、三女に飛び掛かった。 『チベッ!?』 あっさりと押さえ付けられ、爪を立てた前脚による容赦無い攻撃が、三女を立て続けに襲う。 『チヂッ!テヂャッ!やめテチィ!タスケテチィッ!』 前脚が振るわれる度に服が裂け、髪が引き抜かれ、皮膚が切り裂かれる。眼球は二つとも抉り出された。 腹を割かれて内臓が零れ出る頃には、三女は悲鳴すら上げられなくなっていた。 トドメに振るわれた一撃で頸が切り飛ばされ、姉妹の前に転がる。 『テ、テヒィィッ!?』 恐怖に糞を漏らしつつも背を向けて逃げる次女だったが、それは猫の追撃を誘発するだけだった。 あっさりと追い付かれ、噛み付かれた末に何度も地面に叩き付けられた。 『テヂィッ!?デヂャァッ!?ヂィィッ!?』 頭蓋が陥没し、全身の骨が折れ砕け、牙が内臓にまで達する。 ピクピクと微かに痙攣するだけになると猫は満足したのか、そのまま次女を咥えて何処かへ行こうとする。 『ま、待つテチィ!次女ちゃんを離すテチィ!』 長女は次女を救おうと猫を必死に追いかける。四女も後に続いた。 (四女の場合は単に一匹だけになるのが嫌だというだけだったが) 時は戻ってペットショップ前。 次女と四女は死体となってお土産として若菜達に供され、唯一生き残った長女は三毛猫に咥えられて、 妹達と同じくお土産としてアルバイトへ差し出された。 ほんとどうしようかな~。 当の三毛猫は撫でられて満足したのかどこかに行ってしまった。 とりあえず、お土産として置いていかれた仔実装を観察する。 服も前髪も皮膚も引き裂かれてボロボロだったが、何とか命は無事なようだ。 といっても、命の次に大事な服や髪を半ば失っている以上、このまま野良で生活出来るはずもない。 他の野良実装に見つかったら最後、良くて奴隷、悪ければそのままリンチされた挙げ句に生きたまま食い殺されるだろう。 ・・・などと考えている内に、仔実装が意識を取り戻し、立ち上がった。 キョロキョロと左右を見渡した後、こちらを見上げる。 「テチィィィィッ!?」 突然現れた人間に驚いたのだろう。 私に背を向けて駆け出した。野良としては比較的賢い判断だろう。ただし場所が最悪だったが。 「テチィィィィィィッ・・・・・・ヂッ!」 そこそこ人通りの多い商店街の雑踏の中に飛び出した仔実装は、あっさりと通行人に踏み潰されて地面の染みと化した。 ・・・まあ、処分の手間は省けたから良しとしようか。 仕事に戻ろうとしたところで、店奥から店長の呼ぶ声が聞こえた。 どうやら店の模様替えをしようかと思案しているとのこと。 というのも、その理由が・・・。 「え、うちの店、また実翠石ちゃんが来るんですか?」 驚いた反面、妙に嬉しくもあった。 前にいた実翠石ちゃんはホント可愛かったからな〜。 次に来る娘もきっと可愛いんだろうな〜。 そんな期待に胸を膨らませつつ、少なくとも時給分は仕事をしようと思うのだった。 --終-- -- 高速メモ帳から送信
1 Re: Name:匿名石 2024/04/24-22:45:23 No:00009047[申告] |
良心的な長女は残るのか、と思いきゃ...
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2 Re: Name:匿名石 2024/04/25-04:25:53 No:00009048[申告] |
姉妹の藪蛇に巻き込まれ虎の尾を踏んだあげく
折角の生存チャンスを自らパニックで自滅してふいにする 良い性格を活かす事のない実装生だったな |
3 Re: Name:匿名石 2024/04/25-06:44:03 No:00009049[申告] |
正直本編よりこっちのが好き |