「おめでとう、カイジッソウになれたね!」 ぐよんぐよんと跳ね回る貝。 カタツムリの死体をベースに実装石を接合した新実装。 実装改造キット『へんし~ん実装石!』を使って改造した仔実装だ。 「こ、こんなんじゃないテチ!こんなのカイジッソウじゃないテチ!」 涙を流して抗議する下半身が巻貝と一体化した仔実装。 「貝にしてくれっつったのはおめーだろーがよー!」 「テチャッ!」 デコピンの構えを指先でとったら咄嗟に貝に隠れて安全を確保した、かしこい。 「活用できてんじゃん。」 「でもイヤテチ!こんなじゃなくてちゃんとしたカイジッソウになりたいんテチィ!」 「まだ不満なのか?まあ大丈夫だ、そういうことならワンランク上を約束する」 俺は容器からジャンボタニシの死体と改造液を取りだした。 …… …… 「ママ~!ママァ~!」ビョンビョンと跳ねて俺から逃げていく貝実装改。 ジャンボタニシの筋肉と仔実装の筋肉にカタツムリの筋肉が合わさってなかなかの機動力。 やはり、日曜日にはこういった手軽な実装改造遊びをするに限る。 「あれはなんレチ!?」 「ウジチャびっくりしてウンチもれたレフ」 「デデ!?バケモンデス!お前たちハウスに隠れるデス!」 「ちがうテチィ!ワタチテチィ!」 哀れ、辿り着いたハウス前でママは敵意むき出しで仔実装を威嚇した。 姉妹をハウスに隠し、仁王立ちで貝実装改に立ちふさがる。 「ほ、ホントにお前デス?」 「そう言ってるテチャアアアアアア!!」 やがて見覚えのある顔である事に気が付いたらしい。 「な、なんでそんな事になったデス!?」 「あのニンゲンがやったんテチ!」 「デデッ!?」俺にやっと気が付いた親実装が目を丸くする。 「仔実装、お前家族全員カイにしてほしいって言ってたよな?」 「な、なにするデス!やめるデス!」 「カイジッソウになれるチャンスレチ!?」 「ウジチャびっくりしてウンチもれたレフ」 俺は容器から改造液とアフリカマイマイ、マルタニシとカワニナ、それぞれの死体を取り出した。 …… …… 半年後 「チププ、ナメクジテチ」「テ…テェ…」 髪も服もある実装石が指をさされて笑われている。指を指している実装石たちは皆貝を背負っている。 炭酸カルシウムで組成された甲羅の強さは圧倒的だったらしい。貝実装は公園から通常実装を勢力として駆逐し、公園は今では貝実装至上主義の世界と化していた。 「貝なしがいるテチ!ナメクジテチ~!」「テチャアアアアアア!ナメクジじゃないテチ!」「チププ~!」 反撃を受けそうになれば貝に籠れる貝実装。防御能力の高さがモノを言う。 禿裸だろうがなんだろうが関係ない。貝がないのが悪い世界がそこに誕生していた。 …… …… 一年後。 「デデッ!?仔たちに貝がないデス!」「ママ!?早くナメナメしないとウジチャのまんまレフ!」 トイレで狼狽える親貝実装、生まれた子供たちには誇らしき貝がついていない! 「なんでないデス!?なんでデス!?」「ママは糞ママレフ……クソママ?クソ…ウンチ!…ウジチャ、ウンチダイスキレフ~!」 驚きのあまりにナメナメもできず、仔は皆下等な蛆になってしまっていた。 …… 付け焼刃の改造手術。それが種族としての固定化を引き起こすことはほぼない。 しっかりと改造したならともかく、簡易に改造キットでいじくった程度の改造は数世代で終焉する。 「ママ!カイガラのジッソウはのろまテチ!みんなで戦えばやっつけられるテチ!」 「デシャアアアアアアア!くるな!くるなデスゥ!」 瞬く間に数的不利になっっていく貝実装。終わりが近い。 「チププ、オソイオソイでキモチワルイのカタツムリさんがいるテチ」「のろまじゃないデス!」「のろまじゃないテチ~!」 数の暴力に負け禿裸にされ、奴隷階級にされている最後の貝実装家族。 公園には、かつて栄華を誇った貝殻の慣れの果てらしき風化した欠片がそこら中に転がっているのだった。
1 Re: Name:匿名石 2024/03/06-14:57:43 No:00008860[申告] |
くっつけただけで何世代かは遺伝するのすげえ
何かしら利用できそう |
2 Re: Name:匿名石 2024/06/17-09:22:35 No:00009186[申告] |
確かに数世代は遺伝するのさすがデタラメな感じで好き
いろいろな虫とくっつけてみたい |