炭鉱石関連の画像を元にしたスクです

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【双葉炭鉱の脱走者】



————ピピピッ、ピピピッ
お日様が沈む頃、ワタシたちの寝床がある部屋にアラームが鳴り響いたデス。
…起床の合図デス。
ワタシたちは急いで寝床から起きると、服を脱いで坑道の入口へと向かったデス。

ワタシたちは、この『双葉炭鉱』で働く炭鉱石…要するに労働石デス。
ニンゲンサンの炭鉱夫の仕事が終わった後で、ワタシたちの仕事が始まるデス。
仕事の内容は、坑道に落ちている細かい石炭屑を拾い集めてコンベアに乗せる事デス。
たまに大きな石炭が落ちていると、つるはしで割る事もあるデスが、
基本的には石炭屑を拾って運ぶだけの単純な仕事デス。

でも、仕事をしていると身体中が真っ黒に汚れてくるデス。
だから仕事中は裸なのデス。
大切な服を真っ黒にする訳にはいかないのデス…。

『デェ、デェ…どうしてワタシたちはこんなことをしてるんデスゥ？
　こんな力仕事はワタシたちには向いてないデス…』

ワタシと同室の実装石…3251番が、そう愚痴を言いながら石炭を運んでいるデス。
ワタシたちはそれぞれに番号が割り当てられていて、耳にそのタグが付けられているデス。
ちなみにワタシは2747番デス。

ワタシたち２匹の担当場所は、本坑道から脇道に入った狭い行動で、
コンベアの場所までは距離があるので労働はつらいデス。
でも、文句を言っても労働環境が良くなる訳ではないので、ワタシは3251番を諭したデス。

『文句を言わずに働くデス…働けばゴハンが貰えるデス。そのうち仔も産ませてもらえるデス。
　…ここならニンゲンサンが守ってくれるから、お外みたいに危険はないデス』
『お外なんて知らないくせによくそんな事が言えるデス。
　ワタシもオマエも、産まれた時からこの炭鉱にいるデス。
　でもワタシたち実装石は、本当は公園で暮らすものだと聞いたデス…』

3251番は元々愚痴っぽい奴だったデスが、今日はやけに愚痴をこぼしてくるデス…。
ワタシは適当に話を合わせながら、それでも手を緩めずに石炭を運んだデス。
…3251番の話は続いたデス。

『ワタシはここを出て行くデス。仔を産むなら自由に暮らせる場所で産みたいデス』
『お外に自由なんてないデス…お外は危険がいっぱいだと教わったはずデス』
『あんなのは嘘っぱちデスゥ！　お外に行けば飼い実装になる機会もあるんデス！』
『…そうデスか。出て行くなら私は止めないデス。考え直す気は…なさそうデスね？』

3251番は真剣な顔でうなずいたデス。
ワタシは3251番の肩を叩くと、こう言ったデス。

『でも、まだ仕事が始まったばかりで、今抜け出すと他のみんなに気づかれるデス。
　もうちょっと仕事を続けて、みんなが疲れてきた頃に抜け出すといいデス…』
『…そうデスね、そうするデス…ありがとうデス』
『礼には及ばないデス』

ワタシは3251番の顔を見ないようにしてそう答えを返したデス。
そしてワタシは、しばらく作業を続けた後…。

『デェ…つるはしの柄が曲がってるデス。ちょっと取り換えてくるデス。
　ついでに入口の様子を見てくるデス』

そう言って持ち場を離れたデス。
3251番は手を上げて返事をし、黙々と作業を続けていたデス。
どうやらもう少しの間、仕事を続けてくれそうデス。

少しして、ワタシがつるはしを取り換えて戻ってくると、3251番が声を掛けてきたデス。

『…入口はどうだったデス？』
『真夜中だから誰もいないデス。でも、見張ってるニンゲンサンはいるかもデス。
　でも暗いから上手くやれば抜け出せるかもデス…』
『わかったデス。それじゃあワタシは行くデス…世話になったデスゥ』

3251番はそう言って、持ち場を離れて行ったデス。
ワタシはその背中を黙って見送ったデス…。

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その日の仕事が終わってシャワーを浴びると、日当の実装フードが配られたデス。
みんな先を争う様にフードをおなかに詰め込んでいくデス。
ワタシもみんなに負けじと、フードを次から次へと口に入れ、咀嚼しては飲み込むと、
疲れた身体が元気を取り戻してくようデスゥ…。

あとは、就寝までのわずかな自由時間デス。
仔のいる者は仔に面会し、いない者は身体を休めたり同室の炭鉱石と話したりしているデス。

…ワタシは、ニンゲンサンの部屋に呼ばれていたデス。

「2747番、よくやった。褒美に金平糖をやろう」
『ありがとうございますデス』

ワタシがニンゲンサンからコンペイトウを受け取るのを見て、
部屋の中にあった檻に閉じ込められていた実装石…3251番が叫んだデス。

『オマエ！　オマエがニンゲンにワタシの事を教えたデスゥ！？』
『…そうデス。オマエが脱走すると教えたデス』

3251番は怒りと憎悪に満ちた目でワタシを睨み、口から唾を飛ばしながら罵ってきたデス。

『オマエは糞蟲デシャア！　ニンゲンに媚びる糞蟲デジャッ！　地獄に落ちろデジャア！！』
『…ワタシは、ここの仕事が気に入っているデス。
　ゴハンはたくさん食べられるデス。仔も産めるデス。虐待される事もないデス。
　正直、仕事はつらいデスが、だからこそオマエを密告して少しでも待遇が良くなるなら、
　ワタシは喜んでそうするデス…』
『糞蟲デジャアアアアア！　死ねっ！　糞蟲は死ぬデジャアアアアア！』

ワタシは3251番の叫び声を聞きながらコンペイトウを食べたデス。
とてもアマアマなその味は、疲れた身体に染みわたって癒してくれるようだったデスゥ…！

コンペイトウを食べ終えたワタシは、ニンゲンサンの部屋を後にしたデス。
3251番は脱走者として処刑され、見せしめとして皆に晒される事になるデス…。

…3251番を売ったことに関して、心が痛むことはないデス。
あいつはワタシが好きなこの仕事を侮辱したも同然の糞蟲デスから…。

そして、ニンゲンサンはワタシの仕事場所を今より楽な場所に換えると約束してくれたデス。
ワタシは部屋に戻ると、ついさっき食べたコンペイトウの味を思い出しながら寝床に入ったデス。
さぁ、明日もまた頑張って働くデス！



終わり

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炭鉱石は胎教や教育で会社への忠誠心や仕事について叩き込まれている。
その為、糞蟲率は低いが、それでも素行不良だったりする個体は処分される。