「なんかちょうだいテチ！いっぱいあるならなんかちょうだいテチ！」

休日の昼、適当なファスト・フード店でテイクアウトを頼んで近場の公園ベンチでピクニックもどきとしゃれこんだ俺の足元にやってくるのはお馴染みの小さな緑色。
一斉駆除があったばかりなので、公園には賢いのしか残っていないと思ったがそうでもないようだ

人間に警戒心もない捨て実装の類か、好奇心を抑えられずママの言いつけをやぶったアホの仔だろうか
どうであるにせよろくな個体ではないだろう。

少しリンガル越しの会話を楽しもう。

「何かほしいならいいよ、でもちょっと待ってね」
「テェ？ホントテチ？まつテチ！」
「いいこだね、ちゃんと待ってるんだぞ」
「はいテチ！はいテチ！ワタチ、イイコテッチュ～ン！」

ぴょんぴょんと足元で跳ねる仔実装は意外にも行儀よくおこぼれをもらえるその時をまっていた。
もちろん、食べ物はあげない。あげるのは……

……

ママはあぶないからダメダメっていうけどやっぱりこわくないテチ！
ニンゲンサンはとってもやさしいんテチ！オイシソウなにおいのをくれるテチ！
もしかしたらかってくれるかもしれないテチ！

…

まだごはんくれないテチ。まちくたびれテチ。
「テチテッチ！」ニンゲンサンにちょっといそいでもらおうと、ワタチがピョンピョンしたら、ニンゲンサンがワタチをだきあげてくれたテチ！

……

「さて、と」ファスト・フードを食べ終わったので約束通りくれてやるとする。仔実装を片手で優しく抱き上げる。

「テチ！テチ！モガッ…！？」手の中の仔実装は困惑している。

当たり前だろう、突然口の中いっぱいに丸めた紙を突っ込まれたのだから。

「ﾓｺﾞｯモガゴッ！モギョッ！？」

丸めたバーガーの包装紙。指でぐいぐいと押し込んでやると、血涙を流しながら仔実装はバタバタと抵抗する。

「どうしたどうした、ほしいつったのは君じゃあないか」

「ﾁｭﾍｯ…チヒィィィ……」


俺の声にイヤイヤと首を振る仔実装。
やっとバーガーの包装紙を飲み込み終わったらしい。

腹がぷっくりと膨らんでいてかわいい。

「ほら二品目だぞ、がんばれよ」
「チィィィ！？」

軟質だったバーガーの包装紙とは違い、鋭角的でいかにも硬質な厚紙、ポテトの包装紙
それを片手にする俺を前にして、仔実装はぶるぶると震えてついにパンコンをかます。

「ヂギィ～～～！デヂィィィ！！」

猛烈な抵抗を示して亡者のような声を上げ、顔を何とか丸められたポテトの包装紙から遠ざける仔実装。

「遠慮せず食え食え、ほら、ほら」

がごっ。仔実装のアゴを外し、その口に放り込む。

ミリミリと末端を切り裂きながら、それはやっと仔実装の口の中に納まった。

「……ﾁﾞｯ……ﾎﾞｯ」空気の漏れるマヌケな音。

「はは、おもしろい顔になったな」

「…ﾁﾞｯ、ﾁﾞｯ…！」

俺はやさしく仔実装を地面に卸してやる、それはヨタヨタと走り去っていく。時折転倒して涙を流す。

口をミヂミヂと押し広げられた所為で胴体と同じくらいに大きくなった顔が重いのだろう。

顔を引き摺って茂みに消えていく仔実装を見送ると、成体実装の鳴き声が木霊した。
ああ、きっとお腹いっぱいになったかわいい我が子に驚いたんだろう。

俺は昼下がりの公園を後にする。施しの後は胸がすくものだ。