このスクは白3330『特に何も起こらない実装ショップ』につけて頂いた感想を元に作成しました。

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【おとなし仔実装ちゃん】



双葉市にある「おとなし仔実装ちゃん」製造工場の話。

≪デッデロゲー、デッデロゲー♪≫
『ﾃｯﾃﾚｰ♪』『ﾃｯﾃﾚｰｯ♪』『テッテレー！』『テッテレ～♪』『ﾃｯﾃﾚ～』

人工的な胎教の響き渡る部屋で、出産石の群れから新たに誕生した蛆実装たち。
ベルトコンベアに乗って流されていく過程で、ラインの横に待機している労働石により
全身の粘膜を舐め取られ、仔実装に成長する。

『デスゥ、デスゥ』ﾍﾟﾛﾍﾟﾛ
『レピ？…………テチュー♪』

ちなみに胎教の内容は「おとなしくて良い仔に育つデス」という内容だ。

『テビィ…？』
『レフー』
『テチューン♪』
『テッチャーーッ！』ﾌﾟﾘﾌﾟﾘ

奇形や、ナチュラルボーン蛆実装、そしてこの時点で明らかに糞蟲と判る、
誰に向けてでもなく媚びたり、糞を漏らす個体は、ラインから外れ実装フード加工室に流されていく。
一方で、問題のなかった個体は服を剥ぎ取られた後、１００匹単位で狭い部屋に入れられる。

『テチュテチュ』『テチィ？』『テッチィ！』『テチャ？』『テチュー』

仔実装たちが狭い部屋でテチテチと騒いでいると、いきなり部屋の天井にあるスピーカーから
重低音が大音量で室内に鳴り響き始めた。

『テェッ！？』『テチィィィ！』『テェェェェン！』『テッチャーーーーッ！』『テッ…！』ﾊﾟｷﾝ

突然の音による拷問を受けて仔実装たちは耳を塞ごうとするが、当然ながら手は届かない。
できることと言えば、糞を漏らしたり部屋の中を走り回ったり、ただ座り込んでイゴイゴしたりするだけだ。
そして一部の個体は一瞬でパキンした。
…この重低音による拷問は一昼夜続くことになる。

　　　*　　　*　　　*

「よし、いつものとおり死んだ奴の回収と大人しくなった奴の蘇生を並行して行え」

音が鳴り終わり、人間の作業員が部屋に入ってくる。
まず大半を占めるパキンした個体は袋に入れられ、実装フード加工室に運ばれる。

次に生き残った個体だが、その中の多くは虚ろな目で座り込んで、
目からは血涙を、鼻からは鼻水を、口からは涎を、耳からは脳汁を、総排泄孔からは糞を垂れ流している。

「いつもの事ながら汚ねぇな」
『テェェ…』『テ…テェ…』『テチュ…』『…テェ』
「まあ仕方ないだろう。俺だって同じ事されたら漏らすぜ」
「ははは、違いない」

これらの個体は偽石と脳に深刻なダメージを受けており、このまま放置すると命に係わる為、
すぐに部屋から運び出して栄養ドリンクのプールに漬け込む。

「ほーら、お前らの大好きな栄養ドリンクだ」
『テチャッ…』『がぼがぼ…』『テヒィィィ…』『テジャァ…』

溺れ死んでは意味がないので浅いプールだが、それでも口から栄養ドリンクが容赦なく流れ込み、
仔実装たちは小さな悲鳴を上げる。
だが、こうすることで偽石のダメージが少し回復するのだ。

しかしながら、偽石へのダメージによる後遺症で仔実装たちは耳が遠くなり、反応も鈍ってしまう。
では何の為にこんな工程を行うのか…？
それはこの会社の新商品「おとなし仔実装ちゃん」を製造する為だ。

「おとなし仔実装ちゃん」とは、重低音による音圧躾で性格を矯正した仔実装と銘打っているが、
実際は偽石が機能障害を起こして糞蟲化しにくくなった実装石の事だ。
この工程を経て生き残った仔実装は、ほとんどが糞蟲化せず、大人しい性格のまま育つ。
これは、とある実装ショップで躾をしていた店長が偶然発見した事例で、
その話を聞いた本社の人間が商品化を提案したと言われている。

栄養ドリンクプールから引き揚げられた仔実装たちは、「音圧躾済」のハンコを尻に押され、
実装ショップにペット用として卸される事になる。

「よし、これでお前らも立派な躾済み実装だ。
　良い飼い主に買ってもらえよ」
『テェ…』『…テチ』『…テチュゥ』『…』

ちなみに「おとなし仔実装ちゃん」を買う客は、愛護派と言うよりはペットを物のように思っている
歪んだ愛情を持った飼い主が多い。
本当の愛護派は音圧躾の時点で拒否感を示すからだ。
ただ糞蟲になりにくい実装石を可愛がれればそれで良い…。
そんな飼い主が「おとなし仔実装ちゃん」を買っていく。

　　　*　　　*　　　*

最後に、パキンもせずおとなしくもならず、元気なまま音圧躾を乗り切る個体もごく僅かだが存在する。
重低音の拷問をものともせずに元気に生き残った個体は、健康で頑丈な個体という事で、
牧場で育てられた後、食用実装を産む為の出産石となり、仔を産み続けて生涯を終える。

通常だとパキン７割５分、おとなし２割、元気０割５分といった具合で、
どれも中々に悲劇的だが「おとなし仔実装ちゃん」は他に比べればまだマシと言えよう。

「おとなし仔実装ちゃん」の大量生産は難しいが、それでも一部の飼い主からの要望が多く、
今後も生産を続けていく予定だという…。



終わり