タイトル:【観察 哀】 スクイージッソウ ラストの解釈は見る側に任せるデス
ファイル:スクイージッソウ 再誕経路と同じ世界観デス 三部作の最初の作品になるデス.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:407 レス数:9
初投稿日時:2024/02/10-21:25:10修正日時:2024/02/10-21:25:10
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【スクイージッソウ】

 柔らかく弾力がある素材でケーキや赤ちゃんなどを模したファンシー玩具・スクイーズはその名の通り握った感触を楽しむアイテムだ。
 その不思議で病みつきになる感触は子供たちに大ウケし、本邦におけるそのブームは未だ続いている。

 これに実装産業界も乗っかり、その結果生まれたのがスクイ—ジッソウだった。

……

 『やわらかボディの新たなトモダチ!握って楽しいスーパー・ペット!スクイージッソウ新発売!』

 「おててでギュ~っと、にぎっテチ♡」

 ※過度な圧延は実装石の破損に繋がりますのでお控えください。

……

 握り込んでも反発して元に戻り、あらゆる衝撃や打撃に対して強い耐性を持つこの実装石は不幸な事故死が絶えない飼い実装界に新たな旋風を巻き起こした。
 そしてその風はすぐに止んだ。

「触り心地がきしょい」
「握り込んだらなんかよくわからん油が溢れて来て最悪だった」
「打撃に強いから躾が難しすぎるンだわ」
 
 予想されうる当然の結果だったが、とっとと売るだけ売って逃げ切りを果たした企業にとっては想定内かつ既定の路線。
 キラキラ光るラメ実装やパタパタ羽ばたくハネ実装、メタルボディの実鋼石などが流行った時と同じ、まさしく実装石を使い捨てるのに手慣れた手腕だった。

 一方でやはり市場には売れ残り不良在庫となったスクイージッソウが出る。大半が殺処分された、当然今では販売している店舗も少ない。
 例にもよって『ある一部の人間の需要』から絶滅こそしていないものの今やレア実装と化している。


 大々的に流通した時期の短さから野良になったものは多くはなかったが確かにそれらは存在した。
 では野良になったものはどうなったか?頑丈さゆえに野生の世界では良い位置へ君臨できたのか?

 そんなことはなかった、ある一匹の野良スクイージッソウの運命をここで追ってみよう。

……

 「デェ~!パンチが効かないデスゥ~!?」
 「デピャデピャ!やわらかすぎてそんなじゃ蛆チャンも殺せないデスゥ!」

 デププ、チププ、レチチ、醜い野良実装達の嘲笑、円形になって囲まれた二体の実装石。
 一匹はスクイージッソウのミドリーナ。先ほど突然公園に置き去られた。
 もう一匹は野良実装、捨てられたと思しい飼い実装がおろおろとしているのをいち早く見つけ、暴力的なコミュニケーションを一方的に開始した格好だ。


 ミドリーナは困惑で一杯だ。ジュースを買ってくると言ったきり、待てど暮らせどゴシュジンサマは帰っては来なかった
 そうこうしているうちに小汚いオトモダチが襲い掛かってきたのだ。状況の変化にまるでついていけないが、応戦しないわけにはいかない

 しかし、しかし

 「なんでデスなんでデス!なんでパンチが効かないんデス~!?」
 「デピャデピャ!お前は奴隷になる為に生まれてきたんデス!」

 生まれ持った柔らかボディはまったく暴力というものに適性がなく、されるがままに嬲られた。
 

 「デヒッ!髪の毛とらないでデス!やめてデス~!」
 「デピャデピャ~!ゴムみたいに伸びておもしろいデス~!」

 あれよあれよのうちに髪も服も玩具にされる。伸び縮みする髪の毛は玩具として野良仔実装たちが大はしゃぎだ

 たっぷり遊ばれた後禿裸にされてしまったミドリーナ。

 「やめてデス、ダイジダイジなんデス、ゴシュジンサマが洗う時困るデスゥ!!」
 「おまえにもうゴチュインチャマなんかいないテチ!おまえのボロでおまたキレイキレイテッチュ~~ン♡」

 「デギャアアアアッ~~~~!!やめて!やめてデス!!やめてほしいデス!」

 二度と戻らない髪の毛と服が仔実装の尻拭きに使われているのを見て、涙が溢れて止まらなかった。
 すぐに彼女は公園の群れが共有するクソ放り穴に連行され、糞食い実装として奴隷階級とされた。逆らう余地はまるで存在無かった

 そこでも、過酷な運命が待っていた。

 「コンニチワデス、オトモダチ……お、同じ禿裸だからなかよ…デヒャッ!」
 「うっさいデス。殴らせろデス。お前は殴っても死なないってみんなの評判デス。」

 マウントポジションを取られたミドリーナ。殴る。「デヒッ」蹴る「デギャッ」踏みつける「デボォッ!!」

 同じ穴倉の仲間としてせめてもの交流を期待した禿裸たちは無論穏やかな世界の住人ではなかった。

 ミドリーナのその身体の特性は、日々ストレスに晒される禿裸たちの荒廃した精神からくる攻撃衝動の解消用品として扱われた。
 噛みついても噛みついても千切れない肉は常時空腹に苦しむ禿裸には特に好評だった。

……

 数か月か数字か?ミドリーナの主観時間は既に鈍化しており、時間の感覚はとうに麻痺していた
 だがとにかくいくらかの時が経っていた。

 ある時『ミドリーナが頑丈なら生まれた子供も頑丈なのではないか』と考えた公園の野良たちは彼女を奴隷製造機にすることを思いついた。

 「デッデロゲー!デッデロゲー!奴隷デス!お前らは奴隷デス!奴隷はとっとと生まれてオモチャになるデッシャアアアア!」

 同じ禿裸たちに取り押さえられ、膨らんだ腹に醜い笑みを浮かべた糞蟲たちが歪んだ胎教を行う。ミドリーナはただ黙っている事しかできなかった。
 読みは当たって、ミドリーナより大きく劣るものの柔らかく頑丈な仔実装が生まれると判明してからミドリーナの妊娠しない日はなかった。

 「テッテレー…ワタチは……ドレイテチ…?」「ちが……ドレイデス……」ミドリーナは生まれた仔のありえないようなその初めての言葉を否定しかけた。
 だがその瞬間、こちらを見ている監視実装たちが目に入る、否定したくてしょうがないその言葉を、肯定するしか選択肢はなかった。

 生まれてくる仔は胎教の悪しき成果によって歪まされ、卑しく媚びて卑屈に生きる事を当然だと考えるような仔ばかりだった。
 それでも、ある程度大きくなるまではミドリーナの下で暮らす事が許された。

 「ママ!ママ!たのしいお話しテチ!」「デスデス、やさしいゴシュジンサマのお話をしてあげるデス……」
 常に監視実装の目が光っていたが、ミドリーナにとって仔との交流は少しの救いだった。

 仔を奴隷として供出した時、一気に苦痛へと裏返るまでは。

……

 「あ、あの家族がお前のゴシュジンサマデスゥ…達者で暮らすデスゥ…」
 「ママ…行きたくないテチ…いやテチ…テッ!?テチャアアア!」

 「デププ、いいドレイデス~」
 「ママー!コイツ殴ってもいいテチ!?」「いいデッスン」

 糞蟲たちに手を引かれて連れていかれる我が子の顔をひとつたりともミドリーナは忘れなかった。

 仔を孕んでいない日は今やない、仔を生んでは仔を生む、産み続ける。みんな奴隷にされていく。

 糞溜めの穴倉に冷たい風が今日も吹いている。

……

 「お前は死なないからここでず~~っとワタシたちの為にギセイになるといいデス!」
 「殴られゴミムシみじめテチ!ワタチたちに使われる為に生まれてきたんテチ!」

 自分を嘲る声が今日も聞こえる。慣れたつもりでもやはり苦しいものは苦しい。

 「デェェェェ……ゴシュジンサマ……ミドリーナを助けてほしいデス……どこにいるんデス…」「ママァ…しっかりしテチ…」

 この頃になるとミドリーナとその一族への虐待は公園中の糞蟲たちの悪しき情操教育の教材となり、もはや文化にすらなっていた。
 どのハウスを覗いてもミドリーナの産んだ仔、ドレイがいる。耳をすませば穴倉の中からも仔たちの痛みに叫ぶ声がここまで聞こえる。

 「いつまで…いつまでこんなことされるんデスゥ…?」

 ミドリーナは輝かしかった飼われていたころの事を思い出す。
 自分がぷにぷにやわらかまんまるで、かわいがってくれるゴシュジンサマにずっと尽くしておりこうで居ようと誓った時代のことを。

 妄想に耽る時間は多くなっていった。


……

 「デ…?」

 ある日の事だった。暗い穴倉にニンゲンの手が突き入れられ差し伸べられる。

 ミドリーナはその手を差し伸べたニンゲンの姿を覚えていた、ゴシュジンサマだ!


 『遅れてごめんなミドリーナ、ひどい目に合ったんだな?』

 「た、大変だったけどムスメたち……とられちゃったけどムスメたちが支えになってくれたんデス!」

 『そうかそうか…かわいそうに、さぁ、みんな連れて家に帰ろうな、遅れてごめんな、本当に』

 「お、お……お、遅れてなんかないデス…!でもずっと待ってたデス…!大好きですゴシュジンサマァ!」

 声をかけてくれたゴシュジンサマに抱き上げられ、公園中からムスメたちを取り戻して回る。
 「怖かったテチ!ママ~!」「もう絶対に離さないデス…!」

 泣きじゃくる娘たちを一匹一匹抱きしめ、仲直りしたらおウタを歌っておうちへ帰る。

 「デッデロゲー!」「テッテロチェー!」

 糞まみれの穴倉ではなく、大好きなゴシュジンサマのおうちだ
 ……ふとミドリーナの肌に冷たい風が当たる。
 何故?あの穴倉にいつも吹いていた風と同じ感触。

 温かいはずの仔たちを抱き、またゴシュジンサマの胸の中にいる。

 なのに冷たさなど感じるのか?

 「これは夢デス?」

 ミドリーナはその思考を否定した。寒い風くらいどこにだって吹くものデス。

 さあおうちへ帰るデス、おうちへ帰るデス、おうちへ帰るデス、おうちへ帰るデス。

……

 それからミドリーナが死んだのは、実に五年ほど経ってからのことだった。

 野良になった数少ないスクイージッソウは大体が過酷な運命を辿った。

 偽石には実装ペット産業お決まりの強化処置が施されておりパキンによる自死さえ難しかったという。


【終わり】

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1 Re: Name:匿名石 2024/02/11-00:32:57 No:00008704[申告]
これすごく良い
徹底的に痛めつけられて仔も奴隷にされてさらに五年も死ねないなんて
やはり実装石の虐待のプロは実装石だな
2 Re: Name:匿名石 2024/02/11-07:00:44 No:00008706[申告]
死の間際に見たシアワセな妄想って流れなのにそこから5年地獄が続いたのか…
妄想に浸ったまま死ねたのかどうか
3 Re: Name:匿名石 2024/02/11-10:54:39 No:00008708[申告]
先発商品だったハネ実装やラメ実装もロクな末路じゃなかったんだろうな…
4 Re: Name:匿名石 2024/02/11-15:35:52 No:00008711[申告]
デタラメさの逆利用で魔改造される実装たちの悲喜劇な末路がなんとも言えなくいい
精神的な救いすら容易に与えられない非道っぷりよ
5 Re: Name:匿名石 2024/02/11-18:23:50 No:00008712[申告]
ミドリーナ悪い子じゃないから余計光るよなあ
保管してくれて嬉しい
ありがとう
6 Re: Name:匿名石 2024/02/12-02:08:10 No:00008715[申告]
文脈的には糞穴奴隷で五年過ごして死んだんだろうけど、あえて本当にご主人様が迎えに来てたならという解釈で発展させると…
レア種のスクイージッソウの値段がマニア向けに高騰して元ご主人が拾いなおしに来たって感じかな
子供も高く売れるならと回収するけどミドリーナ含めて禿裸だから売ることもできずに再度リリースとか
7 Re: Name:匿名石 2024/02/12-11:05:08 No:00008716[申告]
ミドリーナ躾が難しいって明言されてるスクイージッソウにあるまじき忠実さだから利益目的で後からそこそこ価値があることに気づいたご主人様が回収に来てるのもあり得るっちゃあり得るんだよな
8 Re: Name:匿名石 2024/02/13-03:39:15 No:00008718[申告]
仮に平然と無思慮にも捨てた奴が打算的に回収しに来たとしてミドリーナが求める元鞘ハッピーなんてあり得ないだろうし
都合の良く子供も回収、転売目的としても棄てた経歴がバレ難いもしくは見て見ぬふりが効くルートで捌く事になるのかな
9 Re: Name:匿名石 2024/04/02-20:15:48 No:00008979[申告]
望んだわけでもない特殊な体にされた上で
全てが不幸にしか向かわなかったミドリーナがあんまりにも哀れでとても良い…
可哀そうは可愛い
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