本稿はインターネット歴史資料サイト虹裏歴史資料アーカイブス(通称ニジ歴)
収蔵資料より抜粋したものです。
尚、本稿公開にあたり文章の一部を現代語表記に改めています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



戦時に於ける実装石の資源活用について

戦時においては、各種資源の数的・質的逼迫は当然想定されなければならず、
これに対しては代替資源の発見とその活用を以て時局の打開を図るものとす。
＊ 　　　　＊　　　　　(中略)　　　　　　＊　　　　　＊

実装石の項

実装石は、其の経緯の詳細は不明ながらも当時の資源調査を担当していた調査官
実相侍俊顕(編者注・じっそうじとしあき)氏により独国より導入されたるもので
あると伝われ、今日に至るまで生態その他に関して全ての解明は為されていない。
なれども、其の旺盛活発なる生命力と繁殖力は飼養容易なる希有な資源としてその
活用を大いに探求すべきに足る利点となれり。


その生態等について。

実装石は野生に於いては手近な洞穴や木の空などを用いて巣とし、5〜13程度を
一つの家族として集団を形成し生活をせり。
その知能は成体で概ね原始的な霊長類程度のものと推定せられり。
食性は雑食にて植物性・動物性問わずあらゆるものを食して生存の糧とせり。
性質は概ね穏やかにて飼養に於いては気温10℃〜25℃の適切な湿度を保ち快適
且つ安全な環境を供して飼育すれば畜産の知識に乏しい者でも容易に行えり。
但し、環境等の条件により粗暴なる気質の個体が発現せる事ありてこの場合他の
個体に危害加る恐れある為、即座に淘汰せられたし。


食料としての活用

実装石は肥養に於いて品質に劣る飼料で充分な飼料要求率を達成しうるものなり。
牧草・屑野菜は勿論の事、雑草・米糠・油カス・オカラ・フスマ等を飼料としても
充分な飼養効果を為し得る。
実装石には兎形目に見られる様な食糞の習性が有り、食糞だけで生存・肥育する事も
可能で有るがその場合、肉の食味は著しく低下せり。

肉質は食感・食味供に良好で有り常食にも耐え得るものである反面滋養には乏しく
その点においては栄養学的観点から注意が必要と思われり。

食味について成体実装は概ね四肢獣の肉を思わせる食感なり。
子実装は鶏肉を思わせる食感であるが食味は牛肉を思わせるものとの評も有り。
親指実装は子実装と実装海老(編者注・蛆実装の事)の中間に当たる食感なり。
実装海老は海老と称しながらササミに近けれども個体によって食感は大きく変われり。

以上の様に直接食用せる他、その他の代用食に添加して用いることも充分可なり。


燃料としての活用

実装石を強固な密閉容器に充填せる後に熱を加えて乾溜を行えば、油状物質の抽出に
至る所となれり。
この油は実装油と称され、燃料油としての品価は松根油よりも高いものと推定される。
松根の掘出しよりも実装石の飼養の方が容易なれば、実装石の飼養に力点を傾けられる
べきは明らかなり。
更に、飼料を以て飼養されたる実装石の糞を燃料用の実装石に食糞させ飼養すれば更なる
効率化を実現出来るものと考えられ得る。


その他の活用

実装石はその体内に石状の物質を有しており、これが実装石の名の由来ともなっているが、
その石状の物質は特定の電流特性を有し、真空管などの代替に使用せる可能性があり研究
の更なる進捗が待たれり。

実装石の体表を被覆せる服状の覆皮は高い断熱効果と放熱効果の両方を有し、尚且つ、軽度
の損傷であれば自己修復する特性を有す。
これは各種軍装の他、民間の被服でも活用の余地が有ると思われり。

比較的高い知能を有せる為、軍用犬などの代替として訓練を施せる後活用せる事も考えられ
得る所なり。


留意事項

実装石は大分県内での生息が確認されず、同県内での飼育例もまた一切確認されざり。
また、実装石輸送時には大分県内の通過は禁忌にてあらゆる対策が施されるがその理由
等については一切が不明なり。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

　　　　　　　　　　　　　　　　　　終わり