これは白3328『特に何も起こらないバレンタインデー』の外伝です。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【特に何も起こらない実装ショップ】 バレンタインデーの営業が終わり、店頭展示されていた仔実装は店内に回収された。 そして、バレンタイン仕様のピンクの手袋やマフラーなどを脱がされてケージに移される。 だが、この仔実装が抱えているとある問題が解決していなかったので、 仕方なくショップの店長はその仔実装を一匹だけ専用の狭いケージに移し替えた。 そのケージは店頭展示されていた時に入れられていたケースよりも狭く、ほとんど動き回れない。 『テチュー!』 どうしてこんな狭い場所に入れるんだ、とばかりに鳴きわめく仔実装。 だが店長は耳を貸さず、そのケージを持って店の地下にある躾部屋へと移動した。 * * * 『テヂャアアア!』 仔実装の鳴き声が地下室に響き渡る。 店長によって身体を縛られ、低周波治療器のパッドを貼られて電気を流されているのだ。 だが別に店長は虐待派という訳ではなく、これも商品の躾の内だった。 その証拠に、流されている電気は仔実装の命に影響がないように「弱」になっている。 それでも、身体の小さな仔実装にとっては拷問に等しかった。 ちなみに万が一にも死なないように、偽石は摘出して栄養ドリンクに漬けてある。 何故こんな躾をされているかと言うと、実はこの仔実装は元気だけは良いがワガママは言うし、 何より他の仔実装と同じケージに入れると問題ばかり起こす困った奴であった。 仲間の仔実装に対し殴る、蹴るは当たり前。 髪の毛を引っ張ったり、糞を投げたり…仮にも商品実装なのにこの乱暴ぶりは酷い。 出荷検査の時は猫を被って合格したのかもしれないが、いずれにせよ乱暴なのは問題だった。 それでバレンタインセール中は、客寄せとして一匹だけで店外のケースで踊らせていたのだが、 セール後は店内に戻すしかなく…仕方なく荒療治を行っているという訳だ。 「どう? 反省してくれたかしら?」 『テチッ、テチュウ!』(どうしてこんなことするテチ!酷いテチ!) 仔実装は電気責めを受けながらも反省するどころか憤慨し、ついでに糞も漏らしている。 その憤慨の鳴き声をリンガルで翻訳した結果は以下のとおりだ。 【ワタチがお店の外で踊っていたからお客のニンゲンがいっぱいいっぱい来たテチ! 感謝されこそすれ、痛めつけられるいわれはないテチ! ワタチに感謝してアマアマとウマウマを献上しろテチャアアア!】 リンガルに表示された文字に店長はため息を吐くと、再びスイッチを入れる。 再び、地下室に悲鳴が響いた。 『テヂュゥゥゥゥ!』 * * * バレンタインデーの翌日。 遅くまで仔実装の躾をしていた店長は、眠い目をこすりながら店に立っていた。 店員のアキコが心配そうに声を掛けてくる。 「店長、大丈夫すか?」 「平気平気…さぁ、今日も一日がんばりましょう!」 実装ショップには様々な客がやってくる。 この店は幅広い客層が利用する店で、愛護派も虐待派もその他の少数派もやってくる。 「店長、このおしり用ローションって…なんすか? 人間用って書いてあるんすけど…」 「アキコちゃん、世の中には解からない方がいい事もあるんですよ」 さすがの店長も出産派への理解はまだだった。 だが、それ以外への対応は慣れたものだ。 例えば開店直後にやってきた客。 ショップの近くに住んでいて、とある理由で頻繁に店を訪れるその客。 いつもはリュックだけを背負ってくるが、今日は手に籠を下げていた。 「いらっしゃいませ♪」 『ルトー!』 店長が挨拶すると、籠の中から何やら美しい声がする。 …実装燈だ。 『テチュゥ…』『デスゥ…?』『デェェ…』『テチィ?』 その鳴き声が響いた途端、店内のケージにいた様々な商品実装たちが怯えた様にキョロキョロし始めた。 実装燈は実装石に卵を産み付ける事で知られ、それゆえ実装石たちは実装燈を恐れるのだ。 店長は慌ててその客に布を手渡すと、籠を覆うように頼んだ。 「商品の実装石が怯えますので、籠の中が見えないようにして下さい」 「あー、すいません。 でも今日は卵を産み付けさせる実装石を買いに来たんで、この子に実際に見て選ばせたいもんで」 「では布の隙間から覗かせるようにして下さい。 あと、できればあまり鳴かせないようお願いします」 「はいよ、お手数おかけしますね」 その客は10分ほど実装石のコーナーを眺めていたが、やがて一匹の成体実装を購入した。 キャリーケージに入れられ実装燈の籠の近くに置かれた成体実装は、客が会計している間、 すぐ近くで聞こえる『ルトー』という鳴き声にビビりまくってパンコンし泣き出している。 『ルトー』 『デェェェェン、デェェェェェン!』 「元気な泣き声だなあ、良い宿主になりそうだ」 その客が帰ろうとした時、入口近くの実装シリーズ向け飲食物のエリアで実装燈が騒ぎだした。 『ルトー、ヤクルトー!』 「おっ、そうだった。 悪い悪いニュウちゃん、これを買っていかないとな」 どうやら売り物の乳酸菌飲料に反応したようだ。 その客が頻繁に店に来るのも、実装燈に与えるヤ●ルトを買う為だ。 客は今日もヤ●ルトを1ダースまとめて購入してそれをリュックに入れ、 片手に実装燈の籠を下げて、もう片方の手で実装石のキャリーケージを引いて、 成体実装の泣き声を響かせながら帰っていった。 「あのお客さんは何度も来てるけど、実装燈を連れてきたの初めて見たっす」 「あの実装燈…ニュウちゃんはうちで注文して買われたんですよ」 「実装燈って綺麗な声してるけど、結構エグイ増え方っすよね」 「まあ、ね…卵を寄生させるなんて、あまり見たくはないですね」 * * * 午前中に来たある客は、禿裸の仔実装をじっくり選んでいた。 その客が選んだのは、良く走り回る活きの良い禿裸。 『テッチュ、チュッチュ♪』 レジの上で持ち帰り用の袋に入れられた禿裸は、これで飼いになれると、 リンガルを使わなくても分かるくらい嬉しそうに鳴いていた。 だが、客の男が聞かれてもいないのに「こいつ蛇の生餌にするんですよ」と喋り始めると…。 『テェッ!? テチュ、テチュ!』 内側から袋をペスペス叩いて、何やら訴えている。 客の男はそれを無視して、レジの応対をしているアキコに話し掛けていた。 「尊い命が失われていくのを見るの最高ですよね」 「そ、そうっすね…」 『テチュー、テチュー!』 「こいつ、活きが良さそうでイイですね…良いエサになりそうだ」 『テェェェ!? テェェェン、テェェェン!』 「あ、ありがとうございまーす」 客の男はその後もしばらく、ネットで見つけた動画を参考にしただの、 蜥蜴も飼ってみたいだのと喋った後でようやく帰っていった。 アキコは引きつった営業スマイルで客を見送った後、眉をひそめる。 「…いくら仔実装だからって蛇の生餌とか…さすがにないっす」 「こらこらアキコちゃん、そんな事言ったらダメですよ。 うちは幅広いお客様がたを相手にしてるんですからね。 「でも…ちょっとエグイっす」 「それに、アキコちゃんはまだ入って日が浅いから知らないかもしれないけど、 生餌はわりとよくある使われ方なんですよね…」 「マジすか…」 * * * 『テヂャアアアアアア!』 地下室に響き渡る仔実装の悲鳴。 業務の合間に様子を見に来た店長が、低周波治療器のスイッチを切り、仔実装の拘束を解く。 『テェ…テヒィ…テヒェェェェン!』(もうビリビリいやテチ…助けテチィィ!) 「それじゃあワガママを言わず、他の仔実装たちと仲良くやれますね?」 『テ、テチュウ…!』(わ、わかったテチュ…!) 「そうですか、それならお仕置きは終わりに…」 と、リンガルを通して仔実装の態度を確かめていた店長だったが、 両手で顔を覆って泣いていた仔実装がちらちらと見上げるのに気づくと、 一気に治療器のスイッチを「強」にした。 「…するのはやめましょうね♪」 そして響く悲鳴。 『テヂャアアアアアア!』 ビクンビクンと身体を痙攣させる仔実装。 店長は再びスイッチを切ると、仔実装を拘束し直した。 「じゃ、次はこのヘッドホンで重低音いってみます?」 仔実装へのお仕置きはまだ終わらない。 * * * 昼前にやってきたのは、実装金を連れた女性客。 実装シリーズの衣服が置いてあるコーナーで、あれこれ手に取っているが…。 それはまるで男性用トランクス。 実装金用の服なのだが、しかしどう見てもトランクスだ。 『カシラ~♪』 どうやら玉子焼きの絵がプリントされた物が気に入ったらしい。 他にも数着を選んで試着室に入っていった。 『カシラー!』 「うん、いいよー」 『カシラカシラ~』 「それもいいねー」 『カッシラー♪』 「いいね、全部買っちゃおう」 トランクスを5着ほど買うと、その女性客は帰っていった。 応対したアキコが、店長を振り返って言った。 「実装金ってなんであんなデカパンかトランクスかって服装なんです?」 「…知りません」 店長にだって…分からない事くらいある…! * * * お昼過ぎ。 バレンタインの日にも来た、ちょっと暗い感じの客…としあきがまたやって来た。 昨日は店長の薦めた金平糖型小粒チョコを買っていったが…。 「あのお客さん、昨日も来てたっすね」 「そうですね…昨日よりちょっと思い詰めた感じに見えます…。 ペットのミドリコちゃんと上手くいってないのかしら…?」 としあきは虐待商品のコーナーと、バレンタインで売れ残った処分品コーナーを 行ったり来たりして悩んでいるようだったが…。 やがて弱毒ゲロリ配合のチョコと、昨日も買ったバレンタイン用のチョコを籠に入れると、 思い詰めた表情のままレジに持ってきた。 「昨日に引き続きありがとうございます」 「あ、はい…」 「……。 では、こちら2点で1,000円になります」 「あ、はい…」 そして、俯き加減のまま会計を済ませると、足早に店から出ていった。 「どういう選択っすかね、今のお客さんの買い物は…」 「あまり詮索しないようにね…お客様にはそれぞれ事情があるんですから」 「それはそうとあのお客さん、店長の胸ばっか見てたっすよ」 「…俯いてただけじゃないかしら? でもまあ、それで商品が売れるんでしたら、私は別に構いませんけど…」 * * * その日の夕方、再び地下室にて。 拘束された仔実装がヘッドホンを付けられ、そこから重低音が流れている。 隣に置かれた、摘出した偽石を入れたコップの中の栄養ドリンクが、重低音に合わせて波打っていた。 『ヂギィィ…ィィ…』 午後の間ずっとこの状態で放置していたのだが、少々やり過ぎだったらしい。 仔実装は血涙と鼻水とよだれとウンコを垂れ流して全身を痙攣させている。 コップの中の偽石も黒くくすんできているようだ。 「あっ、仮にも商品なのに、こんなにしちゃったら売れないじゃない…!」 店長は慌てて仔実装の耳からヘッドホンを外した。 そして、偽石の入ったコップの中の栄養剤を強力な活性剤と入れ替える。 これで偽石もある程度は回復するかもしれない。 『テヂュ…テヂュゥゥ…』(ごめんなさいテチ…言われたとおりにするテチ…) 仔実装は血涙と鼻水とよだれでぐしゃぐしゃの顔で、そんな風にぶつぶつ鳴いていた。 ついでにヘッドホンを外した耳からも、何かの汁が漏れ出していた。 * * * 翌日、その仔実装は訳あり商品としてお店で最低ランクのEランク実装に分類され、 1匹100円の禿裸たちと並べて売られる事になった。 髪も服もある実装石がこのランクに分類されるのは珍しいが、それには理由がある。 躾の後で偽石を活性剤に漬けたものの、重低音の拷問による偽石と脳へのダメージは治りきらず、 耳が遠くなっただけでなく他の反応も鈍くなってしまった。 その為、このランクにせざるを得なかったのだ。 ちなみに偽石は体内に戻してある。 一応、大型ケージにまとめて入れられている他の禿裸から迫害されないように 狭い個別のケージに入れられてはいるが、エサも扱いも最低ランクだ。 「おい、エサの時間っすよ」 『……』 「エ・サ!」 『テ…? テチュ…』 最低ランクの実装フードでも全く文句を言わずに食べているが、 どこかうつろな目をしているその姿に、アキコは戸惑いを隠せないようだ。 「あいつ、こないだまでは凄いワガママだったのに…」 「ちょっとやり過ぎだったかしら…これじゃ売れそうにないかも」 『テム、テム』 うつろな目でもそもそとエサを食べる仔実装に、店長も思わずため息を吐くが、 開店時間になり店に客が入ってくると、いつもの笑顔で応対に向かった。 「いらっしゃいませ♪」 「仔実装を一匹下さい。 ちょっと実験に使うんで、大人しい仔が良いですね」 「あ、それならお薦めの子がいるっす!」 …どうやら店長の心配は杞憂に終わりそうだ。 こうして、実装ショップの特に何も起こらない一日は、再び始まるのだった。 終わり
1 Re: Name:匿名石 2024/02/09-17:22:31 No:00008695[申告] |
尊い命なんテッチャアアアア!!
でも元ネタと違って生き餌にされるの最初に聞いてるから覚悟できる分シアワセだよね… |
2 Re: Name:匿名石 2024/02/09-18:35:12 No:00008698[申告] |
売れた仔実装何の実験に使うのやら反射とか鈍くなってそうで使い物になるのかな? |
3 Re: Name:匿名石 2024/02/09-23:51:18 No:00008701[申告] |
本筋とは関係ないけど出産派用ローションで笑ってしまった |
4 Re: Name:匿名石 2024/02/11-05:45:17 No:00008705[申告] |
ちょっと待て
これめちゃくちゃ良い方法じゃね 何十年と根本的な糞蟲を解決する方法なかったのに これ糞蟲消えるじゃん 数日大音響で実装石の耳吹っ飛ばす これ これだけの躾で良実装石になるじゃん |
5 Re: Name:匿名石 2024/02/11-12:14:52 No:00008709[申告] |
>No:00008705
同じ音量を同じ時間聞かせても個体差で死んだり駄目にならなかったりピンピンしてたり治っちゃったりとかあると思う |
6 Re: Name:匿名石 2024/02/11-15:14:19 No:00008710[申告] |
プラント規模の生産出荷なら
パキン→飼料用・加工用、成功→音圧躾済み、ピンピン→その他用途(ペット・畜産) で上手くいったヤツを「おとなし仔実装ちゃん」として卸せる可能性はある |