【お掃除実装シリーズ】 俺はとしあき。 掃除機を持ってないお掃除苦手あきである。 散らかった紙くずとかの大きなゴミはゴミ箱に放り込めばいいけど、 チリ、ホコリ、スナック菓子等のこぼれた食べかす、いつの間にか落ちているちん毛などの処理は面倒臭い。 粘着テープのコロコロする奴を買っても良いが、ここはひとつCMで見かけたアレを買ってみよう。 という訳でさっそく近くの実装ショップで買ってきたのがコレ。 【お掃除実装『キレイ好きのクリンちゃん』】 真空パックされ、眠るような表情で仮死状態になっている仔実装に、 仔実装サイズのホウキとちりとり、小さなゴミ袋が5枚セットで付いてくる。 この仔実装は労働石を生産する為の工場で産まれたので衛生面での問題はなく、 しかも胎教で掃除について覚えさせられている。 掃除をする事こそ自分のシアワセに繋がると思っているので、進んで掃除を行うのだ。 さあ、このホコリとちん毛まみれの部屋でクリンちゃんを開封して仮死状態から蘇生させれば、 あとは眺めているだけで隅々までお掃除してくれるぞ! おっとその前に、仔実装サイズじゃ掃除できない大きなゴミは片付けておこう。 このくらいは人間様がやってやらないとな。 …さぁ今度こそ、いざ開封! 『…テチュ?』 お、目を覚ました。 クリンちゃんは部屋の中をキョロキョロしていたが、俺に気づくとペコペコと頭を下げた。 そして、汚い部屋の様子を見るなり、ホウキとちりとりを持って掃除を始めた。 『テッチュ、テッチュ!』 ホコリや食べカス、ちん毛などを掃き集め、ゴミ袋に入れていく。 袋がいっぱいになると、新しい袋を広げて再びお掃除…。 『テチュ、テチュ…!』 しかし胎教で覚えさせたとは言え、実装石がここまで懸命に掃除をする理由は何だろう…? と思ったら、商品の説明書に理由が書かれていた。 こいつらは胎教で『掃除を終えたら飼ってもらえる』とも教え込まれているらしい。 なるほど、という事は俺はコイツを飼わないといけないのか? 『テェ、テェ…テチュッ!テチュッ!』 まあ、息を荒げながらも懸命に掃除をする姿を見れば、飼ってやってもいいかもと思わなくもない。 …ん?説明の続きがあるな。 何々…? 『テチュ~ン♪』 おっと、お掃除終了の合図だ。 俺はおあいそポーズでこちらを見上げるクリンちゃんの姿に、掃除が終わったことを知る。 部屋の隅に落ちていたホコリやらちん毛やら、ポテチの食べカスやらはすっかり綺麗になっていた。 「へぇ、やるじゃんクリンちゃん」 俺はクリンちゃんを摘まみ上げると、頭を優しく撫でてやった。 『テチュ…テチュゥ♪』 クリンちゃんは気持ちよさそうに目を細めている。 俺もそれを見ていい気分になった所で…。 「じゃあな、ご苦労さん」 『テェ…?』 クリンちゃんをゴミ袋に放り込んだ。 なお、クリンちゃんが使っていた掃除道具やゴミ袋も可燃素材なので、同じ袋に入れる。 掃除道具も実装グッズだし、一緒に実装ゴミに出してしまってもいいだろう。 『テェッ!?テチャ、テチャ!テッチュ~ン!テッチュ~ン!』 クリンちゃんがゴミ袋の内側で袋をペスペスと叩いて叫んでいる。 『飼ってくれるはずなのにどうして?』とでも言ってるのかな。 でもな、説明書の『これ』を読んじゃうとなあ。 【なおクリンちゃんは胎教により、お掃除が終われば飼って貰えると教え込まれていますが、 飼われた後は掃除に関する知識が急速に失われる為、お掃除させる目的で飼う事はできません。 使い捨てる事をお勧めします】 恐らく、使い捨てにして何度も買ってもらおうという理由で、 掃除の記憶が長続きしないようにしてあるんだろう。 まあ、大して高い商品じゃなかったし、また部屋が汚れたら買えばいいし、 クリンちゃんはメーカーのお勧め通りこのまま捨てよう。 「テチュー!テチューッ!」 クリンちゃんがペスペスと袋を叩く音をBGMに、俺は綺麗になった床に腰を下ろした。 お、テレビつけたらちょうどCMがやってる。 【使い捨てお掃除実装『クリンちゃん』は、お近くの実装ショップでお求めください!】 うん、今ちょうど使い終わったところだよ。 実に良い商品だった。 ******************** 最近また部屋が汚れてきた。 またお掃除実装を買ってこようかな…? そんな事を思いながらテレビを見ていると、CMが目に入った。 二人の男女が何やらやり取りしている。 「はーい、トシオ。 実は私、最近お掃除実装を買ったのよ。 でも、最初のお掃除はちゃんとやってくれたんだけど、 一回使って飼い始めたら、お掃除のやり方を忘れちゃったみたいなの」 「HAHAHA、それはそうさアキコ! お掃除実装は使い捨てだからね!」 「掃除の度にいちいち買いに行くのも面倒で…どうにかならないかしら?」 「オーケー、そんな面倒臭がりのアキコにはこれだ!」 【お掃除実装シリーズに新商品が登場! お掃除実蒼『キレイ好きのソウジィちゃん』! 多くのご要望にお応えした、永続使用バージョンでのご提供です!】 「わぉ、仔実蒼タイプなの? しかも使い捨てじゃなく永続使用可能なんて、素敵だわ!」 「このお掃除実蒼は、従来のお掃除実装では飼いになった後で消えてしまうお掃除の記憶を、 いつまでも保持できるように改善したんだ。 これでもう、掃除の度に何度も買いに行かなくて済むぞ!」 「なんて素晴らしいの!? …でも、お高いんじゃない?」 …高かった。ン万円とかマジか…。 希少な実蒼石だから仕方ないが、俺には手が届かない値段だ、そう思ったが…。 掃除機も高いのを買えば結構するし、たまには自分へのご褒美に良いかも…とか思い始めて。 …気づいたら注文していた。 そして今、ソウジィちゃんが俺の部屋で掃除をしている。 ちなみに、長く飼うなら個別の名前を付ける事が推奨されていたので、アオイと名付けた。 ソウジィちゃんタイプは拭き掃除もできるようで、水を張ったタライを用意してやれば 掃き掃除が終わった後で、床などを綺麗に拭いてくれる。 『ポクゥ…ポクポクゥ…!』 懸命に掃除をするアオイは、鋏を背中に背負っている。 そんな機会があるかは分からんがドアポスト託児をされた際には この鋏を使って、部屋に侵入した野良実装を駆除してくれるそうだ。 『ポク!』 「おっ、掃除終わったか…じゃあご褒美にコレをあげよう」 アオイに掃除をやらせるのは3日に1回ほどだが、掃除が終わった時にはいつも、 アメだのクッキーのかけらだのを与えている。 ちなみに今日はクッキーだ。 『ムグ、ムグ…ポクゥ!』 クッキーを旨そうにパクつくアオイの姿に、俺はこの仔を買って良かったと思う。 このまま成体まで育ってくれたら、ちょっとオシャレでもさせてみるか。 蒼いワンピースとか着せてみたい。 俺の妄想を感じ取ったのか、アオイはちょっと不安げに俺を見上げる。 『ポクゥ…?』 大丈夫、ちょっとスカート姿が見たいだけ…恥じらう姿を記録したいだけさ。 そして、お掃除実装シリーズに触れるきっかけをくれたクリンちゃんにも感謝を! …たぶん、とっくに焼却場で灰になってると思うけど。 終わり ~~~~~~~~~~~~~~~~ スレに投下したスクに加筆修正しました。
1 Re: Name:匿名石 2024/02/03-03:43:57 No:00008671[申告] |
蒼い子は可愛いなぁ。
確か実装石から稀に産まれるけど殆どは親に殺されるから希少だったかな。 ライン製造での大量生産でも1%切ってそうだし価格は仕方がない。 |
2 Re: Name:匿名石 2024/02/03-04:52:02 No:00008672[申告] |
使い捨てするやつで薄利多売するよりサブスク的発想で蒼い子におしゃれさせたりお掃除道具カスタムさせたりって路線で売ったほうが長期的には儲かりそう感
使うのが人間だからなんぼ実装石でも使い捨てて殺すってなったら相応に罪悪感ついてきそうだし |
3 Re: Name:匿名石 2024/02/03-06:53:42 No:00008674[申告] |
どうせ捨てるからついで虐待もできて良い商品
実装の方を永続仕様にしないのは蒼にすることで利益分も上乗せしつつ単価アップするためなんだろうなあ |
4 Re: Name:匿名石 2024/02/03-11:17:10 No:00008675[申告] |
飼ってもらうをゴールにしてる時点で仔実装のメッキなんか早々に剥がれるだろうし衛生面もいつまで持つか怪しいからね。永続させるには使用側にそれなりに躾スキルとハズレを引いた時のリスク等の負担を考えなくてはいけない
その点、蒼いのだったらその内育てば家の周辺に湧く緑の不届きモノも掃除してくれそうという将来性まである |