【灰皿テチコ・交換】



俺の名はとしあき。
禿頭にパンツ姿の仔実装、テチコを灰皿として飼っている。
と言っても煙草の灰は本物の灰皿に落とし、テチコは煙草の火を消すために使う。

「テチャァァァァ！」
「よし、金平糖食ったら寝床に戻っていいぞ」

今日の一服を終えた俺は、煙草の火をテチコの禿頭に押し付けて消すと、
テチコにエサの金平糖を与え、火傷の痛みと金平糖の甘さによる喜びに歪む表情を眺める。
ちなみにいつも与えている金平糖は、実装石用のおやつとして売られているもので、
成長抑制剤が配合されているものだ。

「テム、テム…テチュ…」

テチコは金平糖を食べ終えると、部屋の隅の寝床にふらふら戻っていく。
その全身は火傷だらけで、歩くだけで痛むのか、その足取りはおぼつかない。
デタラメな再生力を持つ実装石だけど、火傷は治らないんだったな…。
…そろそろ限界かなぁ、新しい灰皿と交換するか？
でも、灰皿役としての仕事を覚えさせるのも大変なんだよな。

公園で拾ってきた仔実装に灰皿としての仕事を仕込むのだが、もちろん糞蟲には務まらない。
良質で我慢強い個体でなければならない。
俺に逆らわない事はもちろん、構ってやらない事、呼んだらすぐ来る事、なるべく糞を漏らさない事、
そして仕事をこなせば金平糖が貰える事。
覚える事は少ないが、完璧に仕込むのは難しい。
煙草の火を怖がって恐慌状態になる奴や、火を押し付けたショックでパキンする奴もいた。
そんな中、今飼っているテチコはなかなか優秀で、手放すには惜しいと思わせる程だった。

ふと、俺の頭にあるアイデアが思い浮かんだ。
上手く行くかは分からないが、どうせテチコはもう限界だし、やってみる価値ありますぜって奴だ。
さっそく俺は外出すると、虐待派向けショップで実装石実験セットを購入する。
これは色々な薬品や道具がセットになっている商品だ。

帰宅した俺は、テチコの寝床に歩み寄ると、その火傷だらけの小さな身体を摘まみ上げた。
テチコは火傷の痕を触られる痛みに顔を歪めながらも、不思議がって俺を見上げる。
普段は灰皿として使う時以外はめったに声すら掛けないので当然の反応かもしれない。
そしてさらにテチコが想像していなかったであろう言葉を掛ける。

「今日は特別に、金平糖をもう１つ食べていいぞ」
「テ…テチュ？」
「普段がんばっているご褒美だ。遠慮せず食え」
「テェ…テチュー！」

テチコは涙を流して喜び、金平糖…実は実験セット付属の実装ネムリだが…に噛り付いた。
やがて、テチコは眠りに落ちる。
さあ、ここからが本番だ。


テチコの偽石は、灰皿役の仕事を覚えた際に除去して栄養剤に漬けてある。
その偽石を購入した実験セットの容器に移し、付属の培養液を注ぐ。
続いてテチコの頭部を切開し、脳を取り出してこれまた培養液に移す。
後は残った身体を焼却処分して容器の中身が再生するのを待つだけ…。
それまで、俺は再び禁煙するとしよう。


————１週間後。
テチコの身体は再生され、火傷ひとつない綺麗な身体になっていた。
火傷がなくなり、テチコも身体が痛くない事を喜んでいるようだ。

「テチュー！」

身体を焼却処分し、脳と偽石をセットにして再生させる事で、
記憶を保ったまま綺麗な身体を再生する方法…。
実装石の再生能力に関する記事に書かれていたやり方だが、上手く行って良かった。
なお、実は髪まで再生してしまったが、これは邪魔なので目を覚ます前に毟っておいた。

さて…俺もそろそろツラくなってきた。
テチコは元気を取り戻したし、昨日また眠らせて偽石は再び取り除いた…もういいだろう。

「おいテチコ、灰皿」
「テッ…テェェ！？」

テチコは目を見開いて俺を見上げた。
せっかく綺麗な身体に戻ったのに何故、とでも言いたいのか。

「ん、記憶が上手く維持できなかったか？久々にお仕置きするか？」
「テッ、テチュ…」

テチコがイヤイヤと頭を振る。
なんだ、どのお仕置きを思い出したか知らないが、かなり昔の事なのにちゃんと覚えてるじゃないか。

「お仕置きがイヤなら、分かってるな？…灰皿」
「テェ…テチ！」

テチテチとこちらに駆けてくるテチコを見つめながら、俺は思う。
心配するなテチコ。
また火傷だらけになったら、何度でも再生させてやるから。

「テヂュ！」

一服を終えた俺が煙草の火を押し付けると、テチコは禿頭に手を当てて小さく鳴いた。



終わり