タイトル:【虐愛】 遺言 その6
ファイル:遺言 その6 3.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:473 レス数:2
初投稿日時:2024/01/09-19:42:50修正日時:2024/01/09-20:30:32
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遺言 その6




『ジ◯ンくん!今日から外に出るって本当なの?良かった、お姉ちゃん嬉しいわ!』

『ジ◯ンくん、お友達と遊びに行くの?
ジ◯ンくんに友達ができるなんて…本当に良かったわね!』

『ジ◯ンくん、ごはんできたわよ!今日はジ◯ンくんの好きな花丸ハンバーグ…
えっ?今日は外で食べる?そ、そうなの…』

『ジ◯ンくん、こんな朝早くからどこに出かけるの?
えっ、友達とツーリング?
でも…ジ◯ンくんまだ中学生だよね?』

『ジ◯ンくん…こんな時間にどこ行くの?そんな格好して…悪いことはしちゃダメよ?
お姉ちゃん毎日心配してるんだからね?』

『ジ◯ンくん』

『ねえ、ジ◯ンくんってば』


『うるせぇぇーぞブス!?俺に指図してんじゃねぇよあああ!?ブチ犯すぞコラァ!?』ピキピキッ

!?


『ご、ごめんなさいジ◯ンくん…』

『ちっ…大体よぉー、両親(あの人)たちがやめろっつったのかよ?ああ!?』

『そ、それは…』

『だよなぁ?知ってて止めねえんだよなあ?
息子がグレても全然問題じゃねんだよ。
あの人たちにとってはな?違うか?』

『そんなこと…ないわよ…』

『現に何も言ってこねえだろうが!?
親公認の夜遊びなら問題ねえだろ!?お姉サマよぉ!?』



あの頃の俺は、荒れていた。
何者にも束縛されたくなかった。
ただひたすらに、自由になりたいともがき続けていた。


--


「カスカルはこう言った。『実装は考えるクソ』だと」
『テェ…その人は酷いこと言うテチィ』
「事実だマヌケが」

俺はこの世のただ一つの真実をテチィに教える。
今は『哲学』の授業中である。
実装石のような少なめの脳みそであっても、己の存在意義をひたすらに考え抜くことで、
自己の確立は可能であると俺は考える。
そしてそれが崇高なる実格形成に繋がるのだ。

「ようし、哲学はここまで。次は社会学だ」
『テヒィイ…テツガクは難しいテチ』
「今度は人間社会のルールを教える。
それと言っちゃなんだが…明日は土曜日だから外出許可日とする」
『テェッ!?外に出ていいんテチ!?』

外出許可日…つまりテチィにとっては、初めてにも等しい『外の世界』である。
あまりの興奮にテチャテチャと騒ぐテチィだが、
当然の事ながらタダで外に出す気も、また遊ばせる気もない。

「ついては明日の朝07:30から『服装容儀点検』を行う!!」
『テチッ!?』
「この前言った通り、キレイでシワのない実装服を着て整列すること!!
時間厳守!遅れたら外出は無し!!」
『テヒィイ……!』

俺は衆目に晒して恥ずかしいような実装石を外に出すつもりは毛頭ない。
常に清潔かつスマートな身だしなみを完璧に身に付かせる。
そのための休暇と点検の相互関係なのだ。
しかしテチィは『点検』と聴いて青ざめている。

『ご、ご主人サマ!!』
「あん?」
『ワ、ワタチはまだアイロンがけが上手にできませんテチ!!』
「知るか、予定に変更はねえ。
外に出たかったら『死ぬ気』でアイロンやれ」
『ムリでチィ!?も、もうすでに一着こがしちゃったテチィ!!』

そう、このチンカスは俺様がせっかく与えた三着の実装服のうち、すでに一着をしくじって
焦がしてしまったのだ。
今着ている服がそれだ。
残り2着は今もシワだらけである。

「ムリもチンカスもねえんだよ!?
やれつったらやれぇ!!出来なきゃ外出は永久に無しだぁ!!」

「…わかった?」

パチンパチン

『は、はいテチ…』

指をパチパチ鳴らしながら、俺はニッコリとテチィに言い聞かせた。

そして、いよいよ点検日…


「気をつけぇえ!?これより服装容儀点検を行う!?これより一切の私語を禁ずるものと思え!!」
『はいテチ!!』

目にクマを作ったテチィが、ややふらつきながらも気をつけの姿勢をとった。
予定の最後にある『延灯可能時間』…
即ち、『徹夜』を使ったせいだ。
『延灯』はテストの追い込みなどに使う最終手段である。
本来ならたかがアイロン掛けごときで延灯など
笑止千万であるが、その根性を買って特別に許可した。
さて、こいつの努力の成果を見せてもらおうか?

「……」
『……』

静かである。
実装石と相対してこれほどの静寂は俺でも初めてだ。
テチィは緊張のあまり、全身に冷や汗をかきながら直立している。

頭巾…適当。
襟元…良好。
裾…可。
腹回り…可。

『靴』…

「おい」
『テヒャッ!?』

「『靴』が汚れてんぞ…!?」
『テッ…テッチャアアアアア!?』

しまった。って顔だなあテチィさんよ?
しかし『靴』も立派な実装服の一部である。
その汚れを放置するなど不精の極みでしかない。

「服装の乱れはァ心の乱れェ!!なら靴の曇りはァア!?」
『テッ…テッ…』
「心の曇りだろうがァ!?昼の12:00に再点検を行う!!それまでに再度服を整備しろ!!」
『テピィイイイイイ!?』

この後、テチィは泣きながら靴を磨き抜くことでようやく点検をパスした。
せっかくの休日が半分吹っ飛んだのだ。泣きたくもなるだろう。
だが、痛い目に遭わなきゃ実装は物事を絶対に覚えねえ。
今日の失敗を必ずモノにするために、この仕打ちは確実に必要なのだ。

そして、この後俺たちは休暇先である公園…
実装石にとっての『地獄』と化した『井の頭恩賜公園』にて、
鮮烈な『公園デビュー』を果たすこととなる。

--


井の頭恩賜公園

デッギャアアアアアアア…
ジビィイイイイイ…


「予定より遅くなっちまったが、まあいい頃合いってとこじゃねえか?」
『ごっ、ご主人サマ…ここで一体なにが起こってるテチィ?』
「見りゃわかんだろ。『一斉駆除』」
『テェエッ!?』

そう、実装石の絶叫と悲鳴が吹き荒ぶこの公園は、現在大規模な一斉駆除が行われていた。
理由はもうお約束もいいところの『実装被害』である。
景観破壊
家宅侵入
大量繁殖…
『野良』実装ほどこの世に不要な存在はない。
実害を被った俺だからこそ断言できる。
『野良は根絶これ第一』


『デギィィイイィ…ハナシてくだざいデズァ…髪がちぎれちゃうデズゥゥ…』
『デッシャアアアアア!!クソニンゲン!!
ワタシの可愛い仔たちには指一本触れ…デボギャッ!?ジュビギイイイイッッッ!?』
『ママーーーーッ!?』
『デッッズゥゥウーーーーン♪ニンゲンには特別にワタシを抱かせてやるデッスン♪
だからワタシは助けヂベェエエエエッッ!?』
『おまえたち!ママに構わずにはやく逃げるデスゥ!!はやグボロォエエエア!?』


命乞いをするもの
歯向かうもの
媚びるもの
庇うもの
一切合切カンケー無し
それが一斉駆除。人間社会の義務であり、実装社会の終着点である。

『かわいそうテチィ…この人たちが一体どんなワルイことをしたテチ?』
「いいや、なんもしてねえよ?」
『テッッ!?』
「コイツらはただフツーに生きてただけだ。
メシ食って、ウンコして、オナニーしてガキ作る。
そのライフスタイルはニンゲン様と対して変わらねえ」
『じゃ、じゃあなんで…?ワルイことしてないなら、どうしてカナシイことをされるテチィ?』

チンカスにしてはいい質問だ。
そうやって『疑問』を持つことが優れた頭脳を形成する。
連れてきた甲斐があると言うものだ。

「良いも悪いも関係ねえ。『実装石の生活』が、
ニンゲン様にとっては迷惑以外の何者でもないからだ」
『テェッ?』
「ここはニンゲン様の生活圏で、コイツらはそこに無断で侵入した分際でメシを食い荒らし、ウンコをバラ撒く害虫にすぎない。
そしてそういう害虫は速やかに駆除される。
それが社会の『ルール』ってやつよ。わかるか?」
『テチ…』

うむ、この光景を見てコイツもだいぶ実装石というものが理解できてきたようだな?
己が如何に卑小で醜悪な存在か理解させる。
それが増長を防ぎ、自己研鑽のキッカケとなるのだ。

『なにがルールデッシャアアアアアアーーーーーッッ!?』

「あん?」
『テチッ!?』

気づくといつのまにか、数匹の成体実装石が俺たちの前に集まっていた。

『クソニンゲンの勝手な都合で殺されてたまるかデズァ!!』
『オマエの言う通りワタシたちは何もワルイことなんてしてないデジャ!!
オマエらニンゲンは黙ってワタシたちに奉仕するべきなんデジャアアアアアア!!』
『クソニンゲンこそワタシたちの奴隷の分際で、身の程を弁えるデッッジャアアアアアア!!?』


「…………」
『テ…テェエ…』



カキカキッ



--



ザバァッッ


『エロパッ…デ…デェエ…』
『ジィイイイイ…デジィイイイイ…』
『デギギョ…ギャ…バ…』

「どうだあ?井の頭公園の池の水はうめえだろ?
遠慮しねえでガブガブ飲んでもいいんだぜ?」

数分後、見るも無残にギタギタにされたハゲ実装どもが仲良く逆さ水責めの刑に処されていた。

『ず…ずびばぜんでじだデズァ…』
『殺さないでデジャアァ…』
『ニンゲン様ァ…おねがいデズゥゥ…』

「ったく…、
さっきの威勢は何処に行ったんだぁ?」
『テヒィイ…!』
「なあテチィよ?」
『テヒッッ!!』
「ここで駆除されるやつらは確かに『悪いこと』はしてねえが、
『悪い実装石』ってのは確実にいるんだよ。
なんだか知ってっか?」
『チ…』

俺は逆さ吊りにされたハゲチンカスどもを指差す。


「ニンゲン様に『逆らう』実装石だよ」


「仔思いだとか、親思いだとか、仲間思いだとか…
そんな実装の価値観なんざチンカス以下だ。
『ニンゲン様に絶対服従』なら、どんなクソゴミ野郎でもある程度は認められるんだよ」

そして…

「ニンゲン様に『逆らい』『歯向かう』やつがどうなるか…
それはおめえが1番よく知ってるだろ?テチィちゃん?」
『はいテチ!!よくわかりましたテチ!!』

テチィは泣きながら今にもパンコンしそうなのを我慢しつつ、全力で首を縦に振った。
外での実習はまずまず成功というべきか。
やはり絡んでくる糞蟲がいたのが運が良かったな。いい教材になってくれたわ。


「あ、すいません職員さん。コイツらもお願いしますゥ」
「はいどうもー、ご協力感謝します」
『やべで…ダズげで…』
『ジニダグない…ジニダグないデズ…』

俺は泣いて命乞いをする糞蟲を無視して、一市民としての義務を果たした。

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1 Re: Name:匿名石 2024/01/10-05:08:49 No:00008615[申告]
余程の糞蟲でもない限り駆除見学は人間社会でどう扱われてるか解らせるのに効きそうよな
実装の価値観で悪くなくても人間との摩擦があれば看過して貰えないのを知るのは大事だし
目の前の賞罰だけでなく構造で理解すればテチィの視野も変わりそう
2 Re: Name:匿名石 2024/03/24-18:24:28 No:00008944[申告]
続編お待ちしてます…
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