タイトル:【虐愛】 遺言 その4
ファイル:遺言 その5.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:357 レス数:5
初投稿日時:2024/01/06-21:13:23修正日時:2024/01/09-20:02:13
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遺言 その4





「よぉジ◯ンちゃんじゃねえの、久しぶりじゃね?」
「おう冴島ァ、相変わらずワリー顔してんな」
「ギャハハハオメーに言われたくねえよ!」

ここは行きつけの実装ショップ『代々木実装會』
大手の実装ペットショップのような系列店とは違い、東京のみに構える完全な個人経営店で、
昔馴染みのツレである『冴島としあき』がブリーダーと店主を兼ねている。
こぢんまりとした店だが、
その堅実な飼育方法は都内でも一定の支持を得ている。

…主にアウトローな客からだが

「まあ寛いでってくれや、今ビール出すからよ。アサヒでいいか?」
「バカヤローこっちはバイクで来てんだよ。
エスプレッソ砂糖入りに決まってんだろ。いい加減捕まるぞおめー?」
「まあまあとにかく久しぶりに会ったんだからまずはカンパイってことで…」

カキーン ワーワー
ウッタァアア
オカモト サヨナラマンルイホームラン
ヤクルト サンレンパイ
キョネンノイキオイハドコヘイッター

「ま…負けただぁ!?ざけんじゃねーぞコラー!!」
「はあ!?何やってんだよあームカつく!!」
「神宮だぞ神宮!? ホームで巨人に負けてんじゃねーぞコラァ!!」
「高津ゥてめぇBクラスにナめられてんじゃねぇぞ!?
っろすぞボケェ!!」

燕の不甲斐なさにブチ切れる2人。
中学から燕党のつながりで仲良くなった俺たちは、
高校の族時代を経て社会人になってからも親交が続いていた。

「ちっ…ダメだな今年のヤクルトはよー。
乳酸菌が足りねえんじゃねぇのか?」
「しっかり乳酸菌キメねぇから打たれるんだよ。まったくだらしねぇ」

愚痴りながら俺は椅子に座り、胸ポケットからタバコを取り出して一本口に咥える。
それとほぼ同時に、いつのまにか側に待機していた実装石がライターを差し向けていた。

「デス」
「おう、わりィな」

シュポッ
…スパァアア〜

「フーッ…相変わらず気が利く実装育ててんじゃねぇか?冴島ァ」
「まあコレでメシ食ってるからな。これくらいは当然よ?
おいオメーら、揉め」

「デスッ!」
「デッス!」

冴島に命じられた2匹の実装石が、シャキッとした良い返事の後に俺の肩と脚をマッサージにかかる。

モミモミ…

「サンキュ。後でコイツらに金平糖やるよ」
「あーダメだジ◯ンちゃん、そんなことしたらコイツらすぐに糞蟲になっちまうから。
ここまで躾すんのスゲー大変だったんだぜ?」
「ふうん…でもそれじゃ愛護もおちおち出来ねえんじゃねぇのか?」
「バーカ売るまでが肝心なんだよ!
売った後のことなんざいちいち気にしてられねーよ?この商売」
「そんなもんかねえ」
「この前なんざ金バッジのオッサンが実装見に来てよー、上手くいきゃ大金転がり込みそうなんだよ。
今が一番大事な時なの。
わかる?」
「わかったわかった」

この店は忠誠心の高い実装を育てるので、特にアブナイ道の人たちから人気がある。
主人の望む行動を先読みして気を利かせるという実装石にあるまじき有能さの蟲どもは、
マルボウの愛護派から大人気で、予約もかなり先まで埋まっているらしい。
それもこの冴島の手腕の賜物である。

そうこうしてるうちに、1匹の実装石が2杯のカップを乗せたお盆を持ってこちらに寄ってきた。

「デスー」

「ご苦労様。……おい冴島、このコーヒーぬりぃぞ」
「えっマジ?……あーわりわり。ちょっと待ってろよ?」

言い終わると同時に、冴島はコーヒーを持ってきた実装石の首根っこを掴む。

「デッ!?」
「すぐ終わるからな。……オラ、さっさとこい」
「あんまやり過ぎんなよ?」
「デェエッ!?」

ズルズルと引き摺るように実装石を引っ張り、店の奥に消えていく。
この切り替えの速さはさすがプロと言うべきか。

「ッてんなよ!?クソがあ〜〜〜〜!?」
「デボォオッ!?デベギャッ!!デジャアエッッッ!!」
「わかってんのか!?わかってんのかっろすぞラァ!?
ゴラァ!!ゴラァア!?」

それから少しの後、何かを殴打する音と冴島の怒号。
そして実装のくぐもった悲鳴が聞こえ始めた。

「デべジャッ!?デズェァ!!デジィイイイイッッッ!!」
「巨人ァア!?っろすぞラァ!?
ボケゴルァ!!クソボケゴラァァ!?」

もはや日本語の体を成していない意味不明な言語が聴こえてくる。
俺は実装の絶叫をBGMにしてぬるいコーヒーを飲む。

「厳しいねえ…」
「フーッ待たせたなジュ◯ちゃん。やらかした奴はすぐに精神的教育をしねえと意味ねえからさ」
「肉体的教育の間違いじゃねえのか?」

返り血を顔に浴びた冴島が戻ってきた。
周りにいた他の実装石は顔を真っ青にしてすっかり怯えてしまっている。
連れて行かれた実装はどうなったのだろうか?

「悪かったなあ。でも俺の実装は同じ失敗は2度と繰り返さねえから!
マジでそこんとこしっかりしてるから安心しろよ?」
「そりゃあ死んだら同じ失敗はしねえよな」

卸す前に死なせたら本末転倒な気もするが、
この厳しさが店のクオリティを保っているのだろうな。
愛護派に聴かせたら卒倒しそうだ。

「気分転換にソープ行かねえか?ほら、前言った店に居たんだよ。中学ん時の」
「はぁっ?誰よ?」
「委員長だよ。オメーが引きこもってた時によく相手してくれてただろ?」
「まっマジかあっ!?あの委員長がソープ!?嘘じゃねえだろうな冴島ァ!?」

信じられないことを聴いた。
ある理由で当時引きこもってた俺をなにかと気にかけてくれた委員長。
あのまじめだが気の利いた委員長が…

「マジマジ大マジよ?もうセクシーストロベリーよ?」
「ストロベリー!?」

なんてこった。
目の前の淫獣は既に委員長を毒牙にかけてたらしい。
聴きたくなかった…そんな事実…。

「帰る…」
「はっ?もう帰るん?来たばっかじゃねえかよ」
「実装栄養剤買いに来ただけだからいいんだよ。
ヤクルトも最近高ぇからよー」
「ああそれなら適当に持ってっていいぞ。
この前潰れたショップの在庫を大量に回してもらったからよ?」
「ああサンキュー助かるわ…」

ガチャガチャと実装栄養剤のセットを纏める。
とにかく今は早く家に帰りたい気分だ。

「なあ今度オメーんとこの姉ちゃん紹介してくれよー。独身なんだろー?
俺もそろそろシロート卒業してーよー」
「うるせえ!テメェなんざソープで十分だァ!!」

愛車の内の一台であるホンダGB500TTに実装栄養剤の箱を積み、
俺は軽い傷心のまま帰路に着いた。
…………今度店に行ってみるか…
俺はアクセルを全開にしてマシンを走らせた。


--


「帰ったぞー」
「テチュ~!! テチュテチュ~~♪」

家に着いた俺を仔実装特有の甲高い声が迎える。
トテトテと玄関に近づいてくるのは、お姉ちゃんから譲り受けた仔実装のテチィである。
飼育開始から既に半月と少しである。
このままいけば中実装に成長する日も近いだろう。

「テチュ~ン♪ テチュ~ン♪」
「……」
「テチュー♪ テチュー♪」

テチィは靴を脱いだ俺の足にテチテチ言いながら纏わりついてくる。

「チュワッ!! チュワッ!! テチュゥゥゥーーーッッ!!!」
ピスッ… ピスッ…

鼻の穴をピスピス膨らませて、俺に何かを催促する。
おそらく抱き上げて欲しいのだろう。
愛護派が見たら泣いて喜びそうな光景だ。
……が。

「キショいわ」
ゲシッ
「チュボォッ⁉︎」

俺は気にもなくテチィの無駄にピスピスしている鼻の穴目がけ、軽くケリを入れる。
躾の結果主人に対して懐くのは大いに結構ではあるが、
虐待派の俺にとっては気色悪いにも程がある。

「ケホッ!! ケホッ!!……テ テェェェェェー…」
「なんだその目は。文句あるんか?ん?」
「テッ⁉︎ テェッ!! テェッ!!」

何もないとばかりに首を横に振るテチィ。
涙目になりながらも必死の行いを一瞥し、俺は構わず部屋に向かう。

「テチッ テチッ」

テチィも俺に遅れまいと急いで後を追う。
まーよくもここまで懐いたもんだ。
躾当初は怯えまくっていたテチィが、今では俺のことを恐れながらも家族として認識しているようだった。
もっとも、俺とテチィの序列は元帥と二等卒並みの開きがあるが。

カシュコッ

部屋に着いた俺は冷蔵庫からつまみと缶ビールを用意して晩酌を始めた。
テチィは少し離れた実装スペースでカリコリと晩飯の実装フードを食らっている。
課題だった零し癖は俺の熱心な虐待のお陰もあって影も形も無くなった。
出された餌も問題なく全て平らげる。
一度餌のグレードに文句を言ってきた時は、
例の雑巾絞りを両足バージョン込みで行い、そのままヤクルト抜きで丸一日放置し、
己の愚かさを嫌と言うほど認識させた。

(ここまでやってコイツは模範的な飼い実装に育ったわけだが…)

増長した糞蟲の仔であったテチィだったが、血統そのものは紛れもなく高級飼い実装のそれである。
しっかりと躾を行えば通常の糞蟲よりも遥かに物覚えが良いのは明らかだった。
仔蟲特有の母を求める行動や夜泣きも少なく、はっきり言えば『手のかからない』方である。
普段はチンカスだのなんだの辛辣なことを言う男であるが、その出来の良さは素直に認めている。

しかし……

「なんか…つまらねえな?」
「テチ?」

『普通に育てる』
それがテチィの母蟲の遺言であり、俺は俺なりの『普通』でテチィを育てた。
しかしそれは…虐待と褒美を交えたありふれたスパルタ教育に過ぎない。
このまま惰性でテチィを育て続ければ、可も不可もない無難な実装石が1匹誕生するだけである。
それの一体どこが面白いというのだ?

(冴島んとこに行けば何かアイディアが浮かぶと思って寄ってみたが、
あれは俺の求めるものとは違うな)

冴島の育てた実装石は、噂に違わず忠誠心が高く賢い。
規律と目上に対する気配りを忘れず、
まるで反社の下っ端構成員のような佇まいだ。

(あれはあれで面白い。だが、まだ足りねえ)

俺の理想…つまりは『美意識』
それは高貴さだとか、誇り高さだとか。
そういうものを身につけさせること。
野良の糞蟲が宣う紛い物のそれとは違う、
とにかくありありとそこにある『骨』のある生き様を
ヨーロッパの古き名家のブルーブラッドの如く、誰も寄せ付けない純粋さを…
しかし、その明確な形をイメージしきれないでいる

「テッテロケ〜♪ テッテロチ〜♪」
「このアホには無理な注文か」

調子外れの歌を歌うテチィを横目に俺はため息を吐いた。
アホといえば『終末室』のノラだが、最近は意識と記憶が混濁しているのか、反応が鈍い。
俺と一緒に虐待の道を邁進してきた大事な実験台だが、そろそろ限界だろうな。

思えばあのアホも俺のコレクションに手を出さなければ、今頃は普通の実生を送れたかもしれない。
当時の状況を思い出すと今でも総毛立つ。
あの醜悪な糞蟲が、俺の大事なコレクションの服を剥ぎ取り、
トンチンカンな雑巾以下の着こなしで、
ホームレスも裸足で逃げ出すような『しな』を作りながら、
気色の悪い喘ぎ声をミツクチから垂れ流し────

メキグシャッッ

「テッ⁉︎」
「…なんでもねえよ」

つい缶ビールを握りつぶしてしまった。
いかんな、手は大事な商売道具なのに。
それもこれもあの糞蟲の『着こなし』がチンカスにも劣るからだ。
あれでまともに着込んでいれば、ここまでトラウマになることは無かっただろうに。
まったく、委員長のことといい、今日はやけに俺を苛立たせやがる…。

「テチィ?」

…
……待てよ

俺の作る『作品』に見合うような実装石を作ればいいんじゃないか?
俺の『芸術的感性』…
俺にとっての『普通』を『実装石』に、その数百分の一でも叩き込むことができれば、
そしてその実装石に俺の傑作群を身につけさせれば、
今までにない最高傑作ができる…かも。

「テェー?」

俺が難しい顔をしているのが気になったのか、
テチィが怪訝な顔で首を傾げる。
コイツは…まだ仔実装ながら物覚えは良い。
調教は早いほど効果がある、悩んでる暇は無いな。

「失敗したら、まあそん時は仕方ねえか」

これは虐待とは異なる初の試み。
いわゆる『ブリーダー』擬きの調教を行うことを、俺は決心した。

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1 Re: Name:匿名石 2024/01/06-22:31:09 No:00008604[申告]
トゥモエ…嘘だよな…?
2 Re: Name:匿名石 2024/01/07-02:32:27 No:00008605[申告]
二言目には高貴とか自称しちゃう実装石だけど
実際にはあるんだかどうだか怪しい美意識とか気品をどうやって身に付けさせるのやら
3 Re: Name:匿名石 2024/01/08-01:09:04 No:00008610[申告]
おお、なんかやっと面白そうな話になってきたな
これこれ、こういうのこそ拘りってもんよ
指パチへの拘りとかは虐待師としての腕がいいことの証明にはなっても
本人の趣味嗜好でやる虐待とはまた違うからな
こういうのが見たかった

それにしても反社と実装石か…
あの人らは“けじめ”をつけさせるのが上手いから
自分ちの飼いが糞蟲化してもすぐ矯正させられそう
4 Re: Name:匿名石 2024/01/08-18:11:37 No:00008612[申告]
そっち方面の方々に異様に忠誠心の強い実装か…なんか愛護以外にも使えそう
5 Re: Name:匿名石 2024/01/25-12:15:17 No:00008647[申告]
神宮で巨人のサヨナラホームランは無いかなw
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