実装石の親子を預かることになった。 依頼人はお姉ちゃんから。以前に新型のバイクを買うときに半分ほど資金を出してくれたので、その礼も兼ねてのこと。 お姉ちゃんは大の実装石好きで、所謂『愛護』に属する人間だが、飼い方の方はお世辞にも上手とは言えない。 件のブツは高級実装ショップで購入した躾済み高級実装石であったが、購入後の甘やかしが祟って糞蟲化が進行し、 子供を繁殖させた時点ではお姉ちゃんの手に余るシロモノになっていたらしい。 たまに家に行くとピンクの実装服をめかし込んだ肥満体の物体がこちらを不快な目付きで見ていたが、アレがそうだったのだろう。 その親実装…『エルザ』は現在仔実装を1匹だけ連れている。 名前はまだない。産まれて一月も経ってない仔実装だ。 親同様に甘やかしが過ぎて糞蟲となっているらしいが、こちらはどちらかと言うと単に躾のなってないアホガキといった手合いであり、 まだ更生の余地はあると見ている。というのも、この親子は我が家に来て既に1週間が経過しているのだ。 お姉ちゃん曰く、「好きにしていいよ」 冷え切った目でそう告げられた時は、女性というものの恐ろしさの片鱗を見た気がした。 そして、そんなことを頼まれる俺は、『虐待』を嗜んでいた。 「いつも思うんだけどさ、お前、あの温厚なお姉ちゃんに何を言ったのよ?」 「デェェ…ズゥ…」 既に体組織の殆どを炭化させたエルザが力なく呻く 「あの人すっげえ優しい人だと思うぜ?多分お前さんの望む殆どのことを聴いてくれたんじゃないの?そんな人がさあ…」 「…ッデッ…!」 ジュワリという焼肉屋でよく聞く音と、肉が焦げる臭い。 俺が手にしたハンダゴテでエルザの耳の穴付近を撫でるように押しつけたせいだ。 当然先端は赤熱化している。 「デギッ!! デジェェエエエアアアゲッゲエゲエエエ!!」 「なんだあまだまだ元気あるじゃねえか…ほ〜れほ〜れ」 ぐりぐりと耳の穴の奥にハンダゴテを侵入させる。 赤熱部分が穴の奥を抉り熱する度にエルザは目を白黒させ(目は赤緑だが)首を捻りながら悶え苦しみ絶叫し逃れようとする。 しかし身体は一向に動かない。 その下半身は『万力』と呼ばれる器具で挟まれてるからだ。 「ジジジジッ!ッッッジャアアアアアア!?」 死にかけのセミのような絶叫をあげるエルザ。 リンガルを使ってもエラー表記が出ることは間違い無いだろう。 もっとも、リンガルを使う気は無い。 実装石の虐待においてリンガルを使わないことが俺のポリシーであるからだ。 「最初はえらく威勢が良かったけど、流石に1週間もすりゃ自分の立場ってもんが理解できるか?ショップで習ったこともだいぶ思い出したみたいだしな」 俺はエルザたちが来た1週間前を思い出す。 エルザは俺の家に着くなり周囲をじっとりと品定めするかのように見回したあと、 「デプププ」と糞蟲特有の雑音を放った後に俺に向かって何かしらを要求する声と仕草をした。 仔実装も「チプププ」と耳障りな雑音を放ちながら、目を三日月状にさせて俺を嘲笑っている。 「デスッ!! デッッスゥウウッ!!」 「テチッ! テッチュアアアッ‼︎ プギャッ! プギャーーーーッッ‼︎」 どうせ餌の要求やその他どうでもいい命令だろう。そんなことより自分たちの将来を憂うべきであると思うが。 当然俺は無視する。そしてじっとエルザを見る。 「デズゥウウーーーー!! デシャッ!! デッシャアアアアアアーーーーーッッ!! シャアアアアアアアーーーーッッッ!!」 雑音が騒音に変わった辺りで、エルザは糞投げの体制に入る。パンコンした股座をまさぐり糞を掴み、無礼な召使を教育せんと振りかぶり──── 「それはダメだろ」 「デッ!?」 バキバキと音を立てながら糞を掴んだ右手を捻り上げ、そのままミリっと引きちぎる。 「デッギャアアアアアアア!?」 「いきなり糞投げとはな。姉貴も相当苦労したと見える」 右腕を引きちぎられたエルザはブリブリとパンコンを膨らませながら、血涙を流して絶叫した。 「デズァ!? デギギィーーーーッ!!デッジャアアアアアアア!!」 「うるさいよ君」 「デジャッハ!?」 べゴンッという音はエルザの首元にぶち当たった横薙ぎの手刀から発せられたものだ。この感触は頚椎をやったと思う。 ガクーンというような音が聞こえそうな感じでエルザは糸の切れた人形のように崩れる。 「テチュッ⁉︎ テチャチャアッ⁉︎」 母親が突然の暴力に襲われて気絶する様を目の前で見た仔実装は、その現況を理解するには脳みそが少なめだったらしい。 今になって漸く理解できたようだ。 「歓迎するよ、短い間だと思うけどさ、楽しんでってくれや」 俺のスマイルを見た仔実装は、パンコンしながら失禁した。 そして今に至る 「デェェ…」 「今さら後悔してもおせぇよ。飼いの本分を忘れた時点でおめえは詰んでたんだよ」 グズグズになった黒い眼窩から血涙を流すエルザ。 その片目は既に焼き潰されている。 歯は全てペンチで歯茎ごとぶち抜き、髪は目の荒い紙やすりで皮膚ごと削り取った。 腕には分厚い布団ばりが数本突き刺さっており、電極を通して電流が流れる仕組みになっている。 足は万力によって既に壊死してしまっている。 さて、このように1週間思いつくままにこいつを嬲ってきたが、いい加減楽にしてやりたいと思っている。 「そこでお前の処刑方法なんだけどな、ねじ切ってお見送りしたいと考えてるのよね」 「デッ」 言いながら俺はエルザの腹に装着された『レバー』の取手部分を握り、少しだけ手前に捻る。 「デボッ!?」 エルザは腰から下を万力で固定されている。当然だが腰上は固定されている部分から捻られるわけで、まあ、このまま行ったら凄く苦しんで死ぬよなあ? 「デギィィィイィ…! デジィィィイイイ…!」 頭を横に振ってイヤイヤする。今までの苦痛と違いじわじわと締め上げるような鈍い痛みの継続。このままでは呼吸もままならないだろう。 「これから5分ごとに少しずつお前を捻っていく。ねじ切れるまで生き続けるか、その前にくたばるか。根性見せてくれや」 「ギィィイィイイイイイイ!! デギュイイイイイイイ!!」 無い歯を思い切り食いしばり、ミツクチからブクブクと血の混じった泡が噴き出る。 血だらけの頭部に血管を浮かばせ、顔を梅干しのように皺を寄せながらエルザは呻いた。 いよいよこいつも終わりである。 「ああそうだ、おめえのガキの処分についてなんだけどさ、なんかリクエストある?」 「デッ!?」 俺はスッとレバーを元の位置に戻した。急な苦痛からの解放でエルザも驚いたようだ。 俺はアプリのリンガルを起動し、エルザに話しかける。 こういう虐待の時以外はリンガルが便利である 「おめえのガキな、俺は仔実装はあんまし興味ねえんだよな。チリイから嬲り甲斐がねえし、 かと言ってゴミ箱行きも味気ねえからどうしようかと思ってんだよなあ。どうすりゃいいかな」 「デ…デズゥウウ…」 「おめえに聞いてんだよ糞蟲」 「デギャガッッッ!?」 ギュンッとレバーを一気に捻り、急行落下の苦痛地獄に叩き落とす。 落とされた方は悶絶死寸前である。 「いいかよく聞けよ。おめえはどう足掻いても死ぬ。俺に締め殺されて苦しんで逝く。これはもう確定なの。 お姉ちゃんは好きにしろとか言ったけどアレはぶち殺してくれと俺は受け取っている。だからおめえは間違いなく殺される」 「デハッッッッッ! デッッデヒャッッッ!!」 「だから『遺言』くらいは聴いてやろうという俺様の慈悲をありがたく受け取って、なんの憂いもなく死ね。わかった?」 スンッと再びレバーを戻す。心臓と肺を圧迫されたせいでエルザの呼吸は「デハー、デハー」と荒い。 「わかった?」 再びレバーを握る。それを見たエルザは必死の形相で、絞り出すように言葉を吐いた。 『わっ…わがりまじだデズゥ…仔は貴方様にお任せしまずデズゥウ…』 「そう、で?」 『あの仔は産まれだばがりで罪はないデズ…どうか、ふづうにそだででほじいデズゥ…』 「オーケー承った」 リンガルアプリを切ってレバーを先ほどよりもきつめに捻る。リンガルはポリシーに反するので必要以上は使わないのだ。 「デギュエエッ!? ジギイイイイッ…!!?」 「おまえの遺言は確かに聴いたぞ。だから安心して死ねよ」 「ジィィイィィイィ…! ジュギィィィィ…!!」 「あと何分保つかな?」 「デギュイィィイィィィイイィィィ…」 「……」 「イイイイイイイイイッッ〜〜〜〜!!」 「わりい、飽きた」 「デピャッッッ!?」 グルンとレバーを一周半程度回す。 ブチブチと胴体が引きちぎれる音と共にエルザの上半身がどしゃりと床に落ちる。 臓物と血糞の臭気が鼻を刺す。 エルザはパクパクと死にかけの鯉のように口を動かしたあと、デロリと舌を出して絶命した。 全くもって無様極まりない死に様である。 さあて、ママの遺言通りにしてやろうか どうやって遊んでやろうかね これからの事を考えて俺は久し振りに沸き立っていた。 -- 「カトゥンの〜メンバの中には〜」 男は大昔にテレビで聴いた北酒場の替え歌を口ずさみながら針を布に通す。 緑の生地にレースをまとわせるその一品は、人間の着る服ではなく、実装石用のドレスである。 「タナカんの〜髪は〜短ぁい〜ボウズ〜」 ここは某都内に開かれている実装向けアンティークショップ。 同時に男の居住する家でもある。 実装石専用の小物や服飾をオーダーメイドで作成するこの店は、高級愛護派閥からは一定の評価を得ている。 もっとも、公にはされていないが、店主である男の趣味はバリバリの『虐待』、 それも「苦痛を専門とした拷問」を好む。 その虐待派の男が口ずさむ妙ちきりんな歌とは裏腹に、針を操る手先は鮮やかである。 「カーツーオくーん〜みーたーいだーね〜」 きっかけは単純だった。趣味を兼ねた小遣い稼ぎ。 元々アンティークや旧車に関心がある男は、その趣味相応の金額をかけている。 兎角骨董品やバイク、車というものは『金が掛かる』趣味である。 趣味の一つであるビスクドール収集は年代ものを集めることにも苦労さながら、その美しさの維持に莫大な費用が掛かる。 その費用を賄うだけの給料をもらうには、かつて勤めていた会社の重役クラスに出世しなければ無理であったが、 根っからの趣味人である男はこれ以上仕事に縛られたくなかった。 なので、思い切って脱サラを敢行。 当時流行していた飼い実装石向けのアパレル関係店に目をつけ、 親の遺産と姉からの借金で実装向けアンティークショップを見切り発車同然で開店したところ、これが中々評判が良い。 これは男の感性と、愛護派の姉の宣伝が功を成した結果である。 この頃はまだ男は『虐待派』では無かった。 実装服を取り扱うのもあくまで趣味を実益化した結果であるし、 実装石そのものに関してはさほど興味はなかった。 あの事件が起こるまでは。 ツーリングから帰ってきた男が玄関に入ると、まず据えた悪臭が鼻に入った。 家の奥からは「デスゥ〜♪」という、ここ最近聴く機会が増えた声 嫌な予感は正しかった。 戸締まりを怠った窓から侵入した薄汚い糞蟲は、男のコレクションの一つであるビスクドールの服を剥ぎ取り、 反対側から着込んで糞で下着を膨らませながら悦に浸っていた。 「デッッズゥゥウ〜〜〜ン♪ デピャッ♪ デピャッ♪」 愛護派に対して冷ややかなれど、決して否定するまででは無かった男の感性は、この時一気に虐待派に振り切った。 その日から男の家には、実装石の血錆と悲鳴が染み付く部屋が一つ増えた。 その部屋の片隅に、ケージに入れられて「テチュゥン…」と呑気に眠りこける仔実装、 男によって地獄行きと相成ったエルザの娘の姿があった。 「テチュー…テチュー…」 仔実装が男の家に来て1週間。その間男は主にエルザのみを集中的にいたぶり、仔実装は餌と糞の始末だけは最低限行い、基本的に放置していた。 それも今日が最後。死んだエルザの『遺言』に従い、『仔を普通に育てる』日が来たのだ。 「テチャァァァァ‼︎ テッチャァアアアアア‼︎」 「はいはいうるせえうるせえ」 目が覚めた仔蟲が目に涙を溜め、歯を剥き出しにして俺に声を上げる。 おそらく母親を求めているのと腹が減ったのが同時にきたのだろう。 そして俺にそれを要求する。 家に着いた頃誰が母蟲を痛めつけたか忘れているのだろうか? しかし、まあこの程度は生物としては普通の反応ではあるな。 仔蟲の口にペースト状実装フードをスポイトで突っ込み速やかに食事を終わらせる。 落ち着いたところで俺はケージからつまみ出した仔蟲をテーブルの上に乗せて、まず目線をしっかりと合わせた上でこう告げる。 「おめえは今日から『テチィ』な」 「テチ?」 『テチィ』と呼ばれた仔蟲は右手を頬に当てて、首を可愛らしく(愛護的表現)傾げる。 「おめえの名前だよ、ネーム。某ホラーゲームの呪い人形のイントネーションと同じなの。 ありがたく頂戴しろ」 「テチュ… …テッ! テチィィィィィ!テッチュゥゥゥン!」 自分に名前が与えられた事を理解したのだろう。 テチィは喜んで飛び跳ね、腕を上下に腰を左右に振る『実装ダンス』を踊り始めた。 自分に利があることに関しては覚えが良いのが腹の立つところである。 ハッキリ言えばこの仔蟲には勿体無いくらいの名前であると思う。 下手すれば元ネタに呪われるかもしれないね。 「テ・チューン♪ テ・チューン♪」 プリプリィィィ… 「……」 踊りながらテチィ…もとい、糞蟲は糞をプリプリと垂れ出した。 おそらく喜びのあまりの嬉ションならぬ嬉グソであろう。 これが仔犬ならまだ可愛げがあるが、生憎コイツはチンカスにも劣るクサレチンカスの染み。 そこに可愛げなどカケラも存在しないのだ。 「垂れんなやチンカス」 バチュンッッ 「テ・チピェッッ」 ひゅんと手首のスナップを効かせて、チンカスの左耳の先の尖り部分を弾き散らす。 熟練の虐待師のみが使うと言われる実装破壊術である。 去勢された地域猫のような片耳になったチンカス…もとい、テチィは一瞬何事が起きたのか理解できて無かったが、 だんだんと近づく鋭い痛みで漸く理解できたようだ。 「テチッチ…!? チ…チ…ジャッ ジャァァァァッ⁉︎」 プボボボボと勢いよくパンコンし、両目から本気の血涙を流して絶叫するテチィ。 おそらく実生で産まれて初めての激痛であろう。 「うるせえ」 「テチャピッッ」 ひゅおんっと返す掌でチンカスの右頬の肉を抉り飛ばす。 突然の衝撃でチンカス…もといテチィはぴーんとなり、本日最大の糞を捻り出しながら気絶した。 ったくこの程度で飛んでんじゃねえよ。 だから仔蟲は嬲り甲斐がねえんだよ。 「起きんかこのボケが」 「テハウッッ」 テチィの背中を向け、『気付け』を行う。 呼吸停止していたテチィは一瞬で現世に復帰する。 「テ…テェェ…」 「おめえを普通に育ててくれっておめえのママが言ったけどなあ、生憎俺は普通のサジ加減てもんがわかんねんだよな」 指をパチリパチリと鳴らしながらテチィにそう呟く。 俺は世間一般の『普通の飼い方』なんぞ知らん。 虐待に始まり虐待で終わる虐待師。少し飽きが早いのが難点ではあるが。 そんな俺が今更実装石を育てようと思っても、土台無理な話であるだろう。 俺にとっての『普通』はコイツらにとっての『苦痛』なのだから 「だから俺の普通で、おめえを飼い切ってやるよ」 俺はテチィに見せつけるようにカキカキっと片手を鳴らし、じんわりと笑った。 「テチッ…ヂ…ヂャァァァッ‼︎」 産まれ初めての『恐怖』に包まれて、テチィは泣き叫んだ。
1 Re: Name:匿名石 2024/01/04-06:11:24 No:00008587[申告] |
普通に育てるねぇ
高級飼い実装という割には仔の少なさ以外は地頭が悪そうな下地だったなエルザ |
2 Re: Name:匿名石 2024/01/04-17:00:36 No:00008594[申告] |
まあ躾をしない姉が一番悪いんだが… |