俺は、中古実装ショップの『ふたば屋』という店をやっている。
クリスマスが終わって数日経った頃、うちの店には大勢のお客さんがやってくる。
そのほとんどは、クリスマス前に実装ショップで買ったサンタ仔実装を
うちで下取りしてもらう為に来るお客さんだ。
…クリスマス直後のこの時期は、サンタ仔実装が最もダブつく時期だ。

「サンタ仔実装は在庫が多数ありまして、１匹５０円での引き取りになります」
「えー？実装ショップで買う時、この仔…クリスちゃんって言うんだけどね？
　ほら、商店街の実装ショップ『エメラルド』ってあるでしょ？
　あそこでクリスマス前に３０００円で買ったのよ？」
「すみません…クリスマス後はサンタ仔実装を売りに来られるお客様が多くて…」
「そうなの？どこのうちも同じなのねぇ…」

飼い主がそう言いながら、サンタ仔実装…クリスちゃんをケージから取り出してカウンターに乗せる。
虐待などはされていないようだし、クリスマスに良いものを食べさせてもらったのか
肌の張りや毛ヅヤも良い…が、そんなことは関係ないのだ。
在庫がありすぎる以上、５０円より高い値で引き取る訳にはいかない。

『テェ…？』

カウンターに置かれたクリスちゃんは、不思議そうな顔で飼い主と俺の顔を交互に見上げている。
大人しそうで糞蟲には見えないし、少なくとも馬鹿ではなさそうだ。
在庫が少ない時期なら、もっと高値で引き取っただろう。

「まぁいいわ。５０円で引き取ってちょうだい。…やれやれ、娘が欲しがるから買ったけど、
　クリスマスが終わったらすぐ飽きちゃうんだから困るわねぇ」

そう言い残して飼い主は店を出て行った。
俺からすれば、すぐ飽きるのが分かっているのに娘に言われるがままサンタ仔実装を買い与え、
クリスマスが終わって飽きたら、すぐに売りに来るってのも褒められた行動じゃないと思うがね…。
まあ、捨てる奴よりははるかにマシだけど。

『テェッ！？テッチュー！』

置き去りにされたクリスちゃんが、鳴きながら飼い主の後を追おうとするが、
カウンターから下りられずウロウロしている。

「お前はこっちだ」

俺はクリスちゃんを捕まえると、サンタ服を剥ぎ取って店内のケージに移した。
そのケージは厚紙で細かく仕切られていて、狭い個室ごとに裸仔実装が入れられていた。
買い取ったサンタ仔実装は、服を剥ぎ取ってただの裸仔実装として店で売るのだ。
ちなみに剥ぎ取ったサンタ服は、仔実装用の衣装として別に売る。
仔実装の着せ替えをして楽しむ飼い主は一定数いるので、クリスマスシーズン以外でも
変わり種の実装服はそれなりに売れる。

『テェェェェン、テェェェェン！』

ケージに入れられた元サンタのクリスちゃんが、いつまでも泣き喚いている。

『テェェェェン、テェェェ『テチャアッ！』テヒッ！？』

あ、泣き声がうるさかったのか、隣にいた裸仔実装に怒られた。

『テッチャア！テチャーッ！』（ペスッペスッ）
『テェッ！？テェェェェェン！』（ブリブリ…）

あーあー、狭いケージの中で鳴き喚くもんだから周りの裸仔実装たちをイラつかせたのか、
全方位の壁をペスペス叩かれて威圧されてるよ…あ、泣きながら糞漏らしちゃった。
まあ、こいつらは特売品だから、多少汚れても構わないんだが。

『テェェェェン、テェェェェン！』
『テッチャー！』（ペスッペスッ！）

うん、今日も平和だ…。
と、俺が微笑ましい思いでケージを眺めていると、店の入り口が開いた。

「すいませーん、仔実装くださいな」

おっと、お客さんだ。
この時期、ダブついて値崩れしている裸仔実装と実装服を、セットで買いにくるお客さんもいる。
年越し前に少しでも多く売りさばかないとな。


なお、正月三が日の後は着物仔実装を売りにくるお客さんが増える。
その時期まで売れ残ったクリスマス時期の裸仔実装は…。

『テギョォッ！？』（ミヂミヂ…）
『テェェェン、テェェビョベベッ！？』（ミヂミヂッ…）
『テッチュアァァアビュッ！』（ミヂッ…ミヂミヂ…）

…実装ミンサーでフードに加工されて店に並ぶことになる。
生きている中古仔実装よりフードにした方が良く売れるのだから、哀れなものである。


終