実装ゴミの再利用


近頃流行りのSDなんちゃらの影響が、俺の働くゴミ処理業界にも及んできた。
ゴミ焼却の際に発生するCO2を減らすべきだと声が上がったのだ。

今までは実装石の死骸などのいわゆる「実装ゴミ」は、可燃ゴミと同日に専用車で回収し、
同じように焼却処分していたのだが…これが槍玉に挙げられた。
焼却せずに処分できないかと言うのだ。

そこで実装ゴミを、簡単に「実装石」と「糞やその他の混在物」に分別。
「実装石」は文字通り実装石の肉体で、生死は問わない。
「糞やその他の混在物」は、実装石がゴミ袋の中に漏らした糞や、
実装石と一緒に捨てられた実装グッズなどの、いわば肉ではないモノ。

そう…お察しのとおり分別した「実装石」の方を実装フードに加工することにしたのだ。
元々、実装フードは実装石を加工して作られているので、成分的に問題はないそうだ。

なお、実装ゴミの大半はゴミ収集車が指定された日に回収するもので、
それらの実装石は、以前ならほぼ全て収集車内で圧縮されて死んでいたのだが、
今後は実装フードに加工する都合上、圧縮せずに回収しなければならない。
その他の混在物を分別する必要があることと、いくら実装フードの原料とは言え、
洗浄や消毒もせずに使う訳にはいかないからだ。

回収された「実装石」のうち、死体は腐乱が酷いものを除き、服を剥いで洗浄槽に放り込む。
息のある個体は、助けてくれだの、飼ってくれだの、媚びてきたりとやかましいが、
これも服を剥いで洗浄槽に放り込む…何のことはない、やることは一緒だ。

別のパターンとして、市民が実装ゴミを処分場に直接持ち込むこともある。
これは年末などに多く見られ、大掃除のついでに飼い実装を捨てようとしたが、
実装ゴミの日と折り合いがつかず、仕方なく近所の処分場に直に持ち込むパターンだ。

こちらのパターンの場合、実装石は生きていることがほとんどである。
初めのうちこそ主人に捨てられたと泣いているが、洗浄槽に入れるために職員が掴み上げると
飼ってもらえると勘違いするのか、大半が媚びるように鳴き始める。

『新しいゴシュジンサマデスゥ？良い子にするから可愛がって欲しいデスゥ』

などと言いながら、右手を口元に添えて小首を傾げる例のポーズをするのだ。
だが、そんなものに心動かされる作業員はいない。

（自分では可愛いと思ってるかもしれないが、その姿かなり滑稽だぞ）
（まあ、とりあえず綺麗になろうか）
（はぁ…何が悲しくて実装石の処理なんて…）

作業員たちは様々なことを思いながらも、無言で実装石の服を剥いで洗浄槽に放り込んでいく。
洗浄槽の中では、実装石の身体を冷水と消毒液でキレイにするのだ。

『デスゥゥ！冷たいデスゥゥゥ！クソニンゲン、洗うなら温かいシャワーにするデシャア！』
『高貴なワタシが凍えるデシャアアアアアア！』
『寒いテチ！寒い寒い寒い…テッ』パキン
『隣のオトモダチチャがパキンしたテチ！？』

あまりの冷たさでパキンする個体がいるが、どうせ加工するので問題はない。
また、洗浄が終わる頃には、消毒液に混ぜられた成分で実装石たちの髪は全て溶けていて、
自分が禿裸になったショックでさらにパキンする個体も続出。

『ワタシの髪さんが消えたデシャ！？』
『酷いデスゥ…せめて服さんだけでも帰して欲しいデスゥ！』
『テチャァァ！ワタチの髪さんと服さん返しテチィィィ！』
『ワタチ…禿裸になったレチ…？ハゲハダカ…』パキン
『ウジチャさむいレフ…ママ…』パキン

ここまで生き残った個体の中には、自分は試練を耐えたのだから飼ってもらえる、
などと幸せ回路をフル稼働させる個体も現れ始める。

『パキンした奴は軟弱者デスゥ…ワタシはニンゲンサンの試練に耐えたから、
　高貴なセレブ生活が待ってるんデスゥ、デププ…』
『チプププ…ワタチはこれからアマアマとウマウマの食べ放題テチ！』
『この程度でパキンする奴は弱蟲テチィ！』

だが、お前たちの行き先はフード加工処理機の中だぞ。
洗浄槽から出された実装石たち（死体含む）は、次々に処理機に投げ入れられていく。

『デスゥゥゥ、乱暴にしないでくださいデスゥ！慌てなくてもワタシは逃げない…デ？
　…オトモダチがいっぱいデス…？何か嫌な予感がするデス』
『テチャッ！…どうして投げる必要があるテチ！？高貴なワタチが潰れてもいいテチ！？』
『デデ…死んでるオトモダチもいるデス。ここは何の部屋デス…？』

俺は処理機の透明な蓋から、中に詰め込まれた実装石を見下ろす。
今回は生きている奴が多いな…こういうのはフードの味に影響したりするんだろうか。
まぁどっちでもいいか…スイッチオン！

『デッ？何か音がするデス、怖いデス！ニンゲンサン助けてデス！…デギャアアアアアアア！』
『テヂィィィィィィ！』
『デジャギャギャァァァァァァァ！』

ミンチにした後で固めて乾燥させれば、実装フードの完成だ。
…元がゴミなので低ランク品だが、値段も安いので好評である（少なくとも飼い主からは）。
これで少しは環境保護ができるだろう。


～終～

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スレに投下したものに加筆修正しました。

　実装石　→　処分場行き
　　↑　　　　　　↓
購入・エサ　　処分加工
　　↑　　　　　　↓
ショップ　←　実装フード

実装石の循環。