タイトル:【パ虐】 やどかり実装ネタをお借りしました
ファイル:やどかり実装の姉妹.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:452 レス数:3
初投稿日時:2023/10/19-17:33:33修正日時:2023/10/19-17:33:33
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やどかり実装の姉妹


俺が縁側に座っていると、庭にどんぶり型のカップ麺の容器が落ちているのが見えた。
誰だこんな所に捨てた奴は…いや、風で飛んできただけかもしれないな。
現に、その容器は逆さまに伏せた状態で風に吹かれて少しずつ動いている。
このまま放置したらどこかへ飛んで行ってしまうかもしれない…。

やれやれ、庭のゴミを放置する訳にはいかないな。
俺は玄関に置いてあるゴミ袋を取ってくると、庭に出てカップ麺の容器に近づいた。

「…?」

何か変だ。
今は風が止んでいるのに、容器はずりずりと動いている。

…中に何か入っているのか?
俺がカップ麺の容器を持ち上げると、中から『テチーッ!』と鳴き声がした。
驚いて容器を見ると、何と2匹の仔実装が容器の縁にしがみついてぶらさがっていた。

これはまさか、最近増えてるという「やどかり実装」か?
何でも、家の材料になるダンボールが入手し難くなったので、
手近な身を隠せそうな物を家の代わりにして持ち運ぶ実装石が増えているのだという。

まあ仔実装がこの型の容器を使うなら、2匹で入った方が動かしやすいのかもしれない。
重さ的にも軽くて動きやすそうだし…風で飛びそうな気もするが。

『テチュー!』
『テチィッ!』

パンコンして鳴きながら必死で容器にしがみつく仔実装を放っておいて、
容器をよく観察してみると、側面のあちこちに穴が開けられている。
周りが見えるようにという工夫だろう。

また、容器を傾けると何か音がするので、高く上げて内側を覗いてみたところ、
容器の内側に、粘着テープと厚紙の切れ端で作られた小箱が付けられていた。
コロコロという音がするので、木の実でも入っているのだろう。
…ふぅん、実装石にしてはそれなりに考えているようだし、器用なもんだな。

『テチュー、テチュー!』
『テェェェン、テェェェン!』

おっと、2匹とも腕が限界に近いようだ。
俺はカップ麺の容器をひっくり返し、仔実装を容器で受け止めてやった。

『テチュ…?』
『テェェ…?』

仔実装たちは不思議そうに俺を見上げていたが、やがて2匹そろって小首をかしげ、
口元に右手を添えて媚びるように鳴いた。

『『テッチューン♪』』

やれやれ…庭のゴミを放置する訳にはいかないな。
俺は手にしていたゴミ袋に仔実装を1匹放り込んだ。

『テェッ!?』
『チュアッ!?』

残された方の仔実装が、驚いた顔で俺を見上げる。
待ってな、お前は後だ。

俺がゴミ袋の中の仔実装に足を乗せて、じわじわと体重をかけていくと、
そいつは手足をイゴイゴさせながらくぐもった声で鳴き始めた。

『ヂギュゥゥゥゥ…!』
『テェェッ!?テッチュァァッ!』

潰れそうになり悲鳴を上げる仲間の声が聞こえたのか、もう1匹は容器の中で俺を見上げて叫ぶ。
俺は無視してそのまま足に体重を掛け続け…。

『ヂュァァァァァ————ヂィッ』

哀れ仔実装はゴミ袋の中で潰れ、緑の汚物となった。
残った仔実装は断末魔が聞こえたのか、容器の中で座り込んで泣き始める。

『…テェェェェン、テェェェェェン!』
「おいおい、泣いてる暇はないぞ、次はお前だ」

俺は残った仔実装の入ったカップ麺の容器を、仔実装を入れたまま地面に伏せる。
仔実装は逃げるチャンスと感じたのか即座に泣き止み、容器をずりずりと動かして移動を始めた。

…いいぞ、その生への執着。
逃げるチャンスがあれば例え泣いていてもすぐに泣き止む変わり身の早さは好きだ。
もっとも、元々嘘泣きだったのかもしれないが…。

それにしても、容器を捨てれば俺の手が届かない物陰に逃げ込めたかもしれないのに…。
そうしないのはその容器があれば身を守れるとでも思っているのかな?
まあ、最後までやどかり実装として死ぬと言うならその望みをかなえてやろう。

『テッチ…テッチ…!』

鳴き声を上げながら少しずつ離れていくカップ麺の容器。
俺は狙いを定めてジャンプすると、目測を誤ることなく容器の上に両足で着地した。

『ヂッ…!』

仔実装の悲鳴、身体が潰れるぶちゅっという音。
そして、カップ麺の容器が割れるパキッという音が三重奏を奏でた。

『テェ…テヂュゥゥゥ…ゥゥ…!』

おっと、容器の破片の下から仔実装の鳴き声がする。
容器の中でどんな体勢だったのか知らないが、破片を取り除いてみると
仔実装は身体の右側を下にして右腕と下半身を潰された状態で倒れていた。

『ヂュァァ…ヂュワァァ…!』

仔実装は血涙を流しながら、四肢の中で唯一まともに動く左腕を動かしてイゴイゴしている。
うん、こいつはこのまま放置しても死ぬだろう。
俺はあえてトドメを刺さずにゴミ用のトングで仔実装を摘まむとゴミ袋に放り込んだ。
良かったな、また姉妹一緒になれたぞ。

『…ァァ…ュアァ…!』

まだ微かに鳴き声が聞こえるが、これでよし、と。
もしかしたら死骸を食って再生するかもしれないが、明日は実装ゴミの日だ。
さすがに一晩では復活できないだろう。
なお、カップ麺容器の破片の方は糞で汚れてしまったので、破砕ゴミの袋に入れた。

しかし…やどかり実装を見て思ったが、家があるってのは幸せなんだなあ。
俺はゴミを片付け終えると、親父が建てた築40年は経つ我が家を見上げた。
あちこち痛んできたけどこれからも大事に住んでいこうと思った。


~終~

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前にスレに投下したスクに加筆修正したものです。
スレで出た「やどかり実装」のネタを使わせていただきました。

>ダンボールもポリ袋も手に入らない…
>実装石は親から仔まで各自ゴミで自分の身を守るモノを集めて家とした
>奪われないために身につけて行動できる家に帰結していく
>その姿を指して「やどかり実装」が増えていた
>割れた風呂桶や歪んだヘルメットを持つものが生き残りやすい
>仔実装は入るサイズのプラスチック容器があれば幸運で
>良くてもプッチンプリンの容器に尻を突っ込んで「やどかり」風にして見栄を張っている

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1 Re: Name:匿名石 2023/10/20-05:36:29 No:00008138[申告]
時勢も感じさせるいいスクだ
やどかり実装って中々面白いジャンルになりそう
2 Re: Name:匿名石 2023/10/20-08:01:56 No:00008139[申告]
器用さに感心したし家の大切さを再認識するきっかけにもなったが躊躇なく殺す
虫けらと同じで悪さして無くても見かけたらとりあえず潰す扱いが定着してるんだなあ…
3 Re: Name:匿名石 2023/10/27-21:39:35 No:00008169[申告]
実装石1か月でほぼ成体実装になっちゃうからなぁ
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