「大収穫デスゥ!」 ある早朝、先日初めての出産をしたばかりの若い野良の成体実装は歓喜に震えていた ゴミ捨て場で人間たちが捨てたゴミを漁り食べ物を調達するのが野良の実装石達の生態だ しかしいつもゴミ捨て場では同族との熾烈な競争と奪い合いで無事に食べ物を得るのは運任せ 出産で消耗した体に毎日同族と争う体力の余裕など無かった 加えてこの親実装は喧嘩の腕前はからっきしであった しかしこの実装石は突き止めたのである とあるゴミ捨て場でまだ同族達が活動し始める前の朝方に行くと深夜の間にゴミ出しする自治体のルールを守らぬ人間がいることを 早朝はカラスや野良猫が活発になる危険な時間帯だが背に腹は代えられない。仔達のためだ 悩んだ末に早朝狙いに切り替えたのであった そして思わぬ収穫… 金平糖詰め合わせ一袋!!! その量、1kgおよそ3000粒!である! これは我々人間で例えるなら10億円宝くじに当選したかの如き僥倖である 平均的な野良実装石が十回実生を生まれ変わり繰り返しその全ての幸運を一度に集約してもなお有り余るほどの幸運ではなかろうか それが今、己の手元にある ふと冷静になり周囲をキョロキョロと見回す こんな場面を同族に見られたら折角の幸運も水の泡である 幸い、同族も敵対動物も居ない 持っていたビニール袋で収穫を包み、足早に帰路につく 「待っているデス、ワタシのかわいい仔どもたち!」 「ママが帰ったデスゥ、オマエたち良い子にしてたデス?」 「ママ!おかえりなさいテチ!抱っこしテチー!」 帰宅した母をまず出迎えるのは甘えん坊の5女だ 母に一目散に飛びつく 「おかえりなさいテチママ、毎日ありがとうテチ」 母を労うのは長女だ 「遅いテチ。もうお腹ペコペコテチ」 口の聞き方を知らないのが3女だ 「3女チャ、ワガママは良くないテチ、ママだって頑張ってるテチ」 3女を諫めるのが家族思いの次女 「ママ!ゴハン!ゴハン!早く!」 食い意地一番の4女 「蛆チャ、プニプニするレチ」 「レフー、プニフー♪プニフー♪」 2匹はいつも一緒、親指の6女に蛆の7女だ 7匹の仔たちが母を出迎えた 「ただいまデス、今日はすっごいゴチソウがあるデス!」 「テエェ!?ゴチソウテチ!?」 色めき立つ4女 「ハン、どうせお菓子の包装紙テチ。香りだけでも、ってオチテチ」 過度な期待などしない3女 親実装はそれを受けて不敵な笑みを浮かべる 「デッフッフ…これを見るデッス!」 ド ン ! 親実装は虎の子である金平糖詰め合わせ一袋を披露する 「テエェ!?それ何テチ!?それ何テチィィ!?」 「テチャアアア!すっごいキレイテチ!美味しそうテチィィィ!」 「ほほほ、褒めてやるテチ。ママよくやったテチ…ジュルリ」 「おおおお落ち着くテッチ!!妹チャたち落ち着くテッチャアアアアアババババババ」 「レッフー♪」 目を爛々と輝かせ、歓声を上げ大騒ぎする仔どもたち 実装石にとって金平糖とは宝石かそれ以上のような物だ どれだけ厳しい躾をされても本能がそれを求めて止まない物だ 加えてこの仔たちはまだ生まれてからろくに甘味というものを味わっていない 人間が捨てる果物の皮ですら野良社会では殺し合いの争奪戦なのだ 眼前の金平糖にいとも簡単に心を奪われるのは必然であった 親実装は得意気であった 仔たちにはいつも腹を空かせてすまないと思っていた 皆喜んでいる、その顔を見たかったデス 嗚呼、幸せとはこういうのを言うのか… 3女がいちいち口が悪いのが気にかかるが今日は祭りだから許すデス まあこの親実装は甘くていつも許してるんだけど 7匹それぞれの手に一粒ずつ金平糖が渡される さあいただきますというところで長女が口を開く 「ママは食べないんテチ?」 「ママは後にするデスゥ、オマエたちで遠慮なく食べるデス」 (オマエたちの喜ぶ顔こそが最高のゴチソウデス…) という言葉を飲み込む 「もうガマン出来ないテチィ!テチテチペロペロテチテチペロペロ…」 食い意地一番の4女がいただきますの礼を待たずにがっつく 「あ!ズルイテチ!ワタチももう食べるテチ!」 5女がそれに続く 「妹チャたち、はしたないテチよ、もう…」 呆れる次女。しかし表情は微笑みだ ウマウマテッチュン♪ウマウマテッチュン♪ 一家団欒のひと時 「ママ、ワタチ大きくなったらお空を飛びたいレチィ♪」 「蛆チャもレフー♪」 壮大な夢を語る6女と7女 「きっと空も飛べるはずデスゥ♪」 「ワタチはずっとママと一緒がいいテチ」 甘えん坊の5女らしい願いだ しかしいつかは独り立ちしなければならない時が来る せめてその時までは精一杯の愛情を注ぐデス 「ワタチは美味しいものをいっぱい食べるテチ!」 食いしん坊の4女 野良の世界は厳しい お腹いっぱいに食べる機会すら滅多に訪れまい でもいつか飼い実装になれたらもしかしたら… 「ワタチはいつか飼い実装になってクソニンゲンをドレイにして働かなくても贅沢な暮らしをしてこんな安物の金平糖だけじゃなくスシとステーキとそれからそれから…」 3女は欲が深すぎるデス いずれ現実との折り合いをつけなきゃやっていけないデス 「ワタチは家族がいつまでも一緒に仲良く笑って過ごせたらそれでいいテチ」 控えめな次女 オマエはもう少し欲があってもいいデス でないと競争の激しい野良社会では損をするばかりデス 「長女の将来の夢は何デス?」 自分が産んだにしては出来た長女だ。 仔どもたちに優劣をつけたくはないがこの長女が最も見込みがある 期待に胸をふくらませる 長女の返答や如何に? 「テヘェェ…なんだか気持ち悪いテチ…」 青ざめた顔をした長女の姿 「デ?どうしたデス?具合が悪いんデス?」 「テ…ギ…テジャアアアアァァァァァァァァ!!」 ブリブリブリブリブリ! 血混じりの糞を噴出しながら体を激しく振り乱し狂ったように暴れだす長女 「デデ!?どうしたデス長女!?しっかりするデッス!」 「テジャジャジャジャジャアアアアァァァァァギャアァァァァ!!!」 長女はもはや意味のある言葉を発することさえ出来ないようだ そして… バ ン ッ !! ビシャア! 「デジャ!?」 熱い液体が親実装の顔に勢いよくかかり視界が封じられる 何が起きたのか? 慌てて顔を拭い目を開ける 家の中の壁、天井、床、辺り一面に飛び散った血、肉、糞… ***************************************************************************************************** 爆裂コロリ 口にした実装石を爆発させるように殺すジョークグッズだ 周囲を汚すため駆除に用いるにはいささか不適切としてあくまでジョークグッズとして流通していた ***************************************************************************************************** 親実装は呆気にとられていた まさか…毒!? しまった、思わぬ収穫で目がくらみ毒の可能性を考えるのをすっかり頭から抜け落ちていた ワタシの失態のせいで長女、最も大事な長女が… 突然の長女の死に目まぐるしく思考がめぐる親実装だが状況は待ってくれない 「テ…ボ…オロロロロロ!!」 ゲロを吐き出す4女 「ハッ!?どうしたデス4女!?しっかりするデース!」 「テボロロロロォォォーー!」 ストレスかショックで吐いてるものと思われたが、何か様子がおかしい 嘔吐が止まらない…? ムリムリムリムリ! !? 口から糞をひり出し始める4女 「テ…ボ…」 「4女!?4女ぉぉぉぉ!?」 親実装は弱りゆく4女を前に狼狽えることしか出来ない ***************************************************************************************************** 実装ゲロリ 口から強制的にゲロや糞を嘔吐させる薬物 4女が口にしたのはどうやら成体用のようで子実装には強力すぎたようだ ***************************************************************************************************** 次第に4女の肌は土気色へと変化し体が急速にしぼんでいく 全身の体組織が糞とゲロに変換されているのだ それでもなお嘔吐は止まらない 絶え間ない吐き気、胃が裏返ったような不快感、食道と口内を侵略する糞 想像を絶する苦痛に4女の精神は… 「メパソ…ハミュラピョ…」 パキン 「4女…?4女ォォォォォ!!!!オロローン!」 4女まで死なせてしまった しかしその死を悼む時間すら今の親実装には無いのだ 「「「「マ゛マ゛…、ダズゲデヂィィィ…」」」」 地の底から響く唸り声のような声に親実装は振り返った 3倍の体積に肥大化した胴体 ぶどうの房のようにいくつもの数に増えた頭 めちゃくちゃに十数本生えた手足 かすかにくっついた頭髪と内側から破れ裂かれた衣服 バ◯オハザ◯ド2のG最◯形態のようにめちゃくちゃな肉の塊となった次女が鎮座していた ***************************************************************************************************** おそらく成長促進剤を強力にしたもの 次女のこれから一生かけて少しずつ消費していくはずの偽石のエネルギーが 今この一瞬に全開で引き出されているのだろう 実装石のでたらめな再生力が暴走し肉体をでたらめに増殖させているのだ ***************************************************************************************************** 「デ、デデ…デギャアアアアアアアアア!!!」 「テチャアアアアアアアアアアア!!」 「レピイイイィィィィ」 あまりにおぞましい姿に恐慌状態に陥る一家 「テヂィィィィ、く、苦しいテチ…ママ!助けテチ!ワタシを引っ張り出しテチ!」 この声は3女!? 見ると次女の膨張した肉に取り込まれ抜け出せない様子だ 「デェェェ!?3女!?何でそんなことになってるデス!?」 「分かんないテチィ!金平糖を舐めてたら体がシビレて動けなくなって次女オネチャの巻き添えになっちゃったテチィ!」 ***************************************************************************************************** 実装シビレ 実装石を麻痺させ行動の自由を奪う ***************************************************************************************************** 「とにかくそこから出るデスゥ!」 かろうじて頭と右腕だけは次女肉の外に出ているので親実装は3女の腕を引っ張って出そうとする 「テジャジャジャジャジャーーーッ!イタイイタイテチャ!もっと優しくしろテチャア!」 「そんなこと言ったって抜けないんデシャア!」 3女救出に悪戦苦闘している間にも次女の膨張は進む 「テギャギャギャジャ…!苦しいテチャ…!圧が高まってきたテチャ…!」 「頑張るデース!きっともう少しデス!こらえるデッス!」 腕を引っ張り続ける親実装 「デッスーーーーーン!!!」 あらん限りの渾身の力で引き抜こうとする ブチッ 急にガクンと抵抗が無くなり親実装は勢いで尻餅をつく 「や、やったデス…3女、無事に…」 親実装が掴んでいたのは3女の腕だけで根元でちぎれていた もはや圧迫により声さえ出せなくなっていた3女が絶望の表情で親実装を見つめていた その顔さえも次女が埋め尽くしていく 「「「「「テジャアアア!3女チャが…3女チャが死んでしまうテチャアアアアアアアアアアア」」」」」 十数個に増えた頭、何十とある口から絶望の声が発せられる 3女はまるでAK◯RAのカオリのごとく次女の隙間で血と肉があふれ、そして次女の肉の中へ埋もれていった あまりに凄まじい光景に親実装は呆然としたまま、ただ見ていることしか出来なかった そして3女の死の余韻に浸っている暇さえ与えられない ドパン!ドパパン! けたたましい破裂音に驚き振り返ると5女が胸元に突っ込んできた 衝撃で家の外まで突き飛ばされる親実装 飛ばされながらもかすれた視界に家が吹っ飛んでいくのが見えた 6女と7女が壁や天井に激突し体を大きく損壊しながらもなお勢いは衰えず、糞を撒き散らしながら天高く舞い上がっていった その光景を見ながら親実装の意識は薄れていった ***************************************************************************************************** ドドンパ いわずと知れた定番の毒 テイクオフ! ***************************************************************************************************** 何時間経っただろうか? 意識を回復させた親実装がムクリと上体を起こす 太陽の位置からしてまだ昼過ぎ頃らしい 胸元に痛みを感じ、見ると5女の首から上が、自分の胸に突き刺さって体の方はダラリと力なく垂れ下がっている おそらく頭部がグチャグチャに破壊されつつも胸の中に埋没しているらしい 家があった場所には巨大な肉塊が鎮座していた 次女だ。偽石パワーを使い果たしたらしく既に膨張は停止し死体のように生気が枯れた様子になっていた 4女の死体は次女に取り込まれたらしく無くなっていた 飛んでいった6女と7女ももう生きてはいまい 我が仔たちが全滅したのは明白だった 近隣の野良たちは一家の騒ぎが6女と7女、次女らの様子から毒によるものだと見て察したため近寄りもしない 何でこんなことに? 何でゴミ捨て場に毒が捨てられていたのだろう 何故自分はあの状況を怪しめなかったのだろう まず最初に自分が毒見をすべきだった そうすれば仔どもたちは死なずにすんだかもしれない 仔どもたちのため…ただ、仔どもたちを喜ばせたかっただけなのに それは平均的な野良実装石が十回実生を生まれ変わり繰り返しその全ての不運を一度に集約してもなお有り余るほどの不運かもしれない 親実装は金平糖型毒詰め合わせ一袋を見やる 読めないがパッケージにはこう書かれていた 『実装石用毒バラエティセット!ハロウィンで訪問してくる迷惑野良実装石にお使いください。』 *この製品によって生じたいかなる損害に対して当社は一切の責任を負いません 親実装は力なくゆっくりと毒袋を持ち上げ… 「ワタシのかわいい仔どもたち…今そっちへ行くデス…」 口の中へ一気に中身を流し込んだ オワリ あとがき お久しぶりデス かなり前に某スレに書き込んだ1レススクを肉付けしたものデス あと、ここに過去作書き連ねるより作者名を決めることにしたデス 「ミドリムシ」と名乗ることにしたデス よろしくデス
1 Re: Name:匿名石 2023/10/18-21:58:20 No:00008126[申告] |
バラエティセットは欲張り展開で楽しかったデス
ミドリムシさん今後の投稿も楽しみにしておりますデス |
2 Re: Name:匿名石 2023/10/18-23:40:45 No:00008127[申告] |
こういう時に蛆チャンを毒見役として数匹トイレに飼育しておけば… |
3 Re: Name:匿名石 2023/10/19-00:51:07 No:00008128[申告] |
怒涛の連続惨死!親も苦しんで死んだのだろうな… |
4 Re: Name:匿名石 2023/10/20-05:31:32 No:00008137[申告] |
この作者サンも
「るぱも はみゅらぴょ めぱそ」の愛好家デス ワタシと同じデス… |
5 Re: Name:匿名石 2023/10/24-13:37:45 No:00008150[申告] |
次女の死に方、AKIRAの鉄雄みたいだな…と思ってたら本文でも言及されてて吹いた |
6 Re: Name:匿名石 2023/10/27-01:15:02 No:00008165[申告] |
どうせ毒だろと思ったら毒だった、実装石の実生なんてこんなもんでいいんだよな |
7 Re: Name:匿名石 2023/10/31-01:14:22 No:00008185[申告] |
実装石にはトリックもトリートも無いというね |
8 Re: Name:匿名石 2023/11/24-01:59:08 No:00008493[申告] |
スピーディーに苦しんで逝く実装一家!これは面白い!!今後の活躍に超期待!!! |
9 Re: Name:匿名石 2023/12/30-18:03:10 No:00008574[申告] |
遺された親、最後の一気食いで奇跡的に薬効全部が相反しあって何も起きずただ茫然としていてほしい |