俺が小学生の頃はまだ駄菓子屋がその辺にあって、ベーゴマやメンコ、その他にも色々おもちゃを買って遊ぶのは定番だった

夏休みのことだ
俺の家の3軒向こうに住んでいた、トシアキと言う比較的裕福な家の子がいた。
トシアキと俺達は数人で、校庭に集まりひとしきり缶蹴りやら紙ヒコーキやらで遊んだあと、ブラブラと雑談に興じていた
校庭の塀に沿って何をするでもなく、飼育小屋のウサギを眺めたりしながら今日も暑いだのなんだの…
ぐるっと一周して職員室の前を通った、その時だ
ガサッと音がしたと思うと、テチュテチュと喧しい鳴き声を立てながら仔実装が花壇から飛び出してきた
どうにも蝶を追ってのことのようだ
仔実装は小学生には定番のおもちゃで、俺はおっと思って捕まえようと動こうとしたが、先にトシアキがサッとしゃがみこんで捕まえてしまった
「へへへ、やった…」
トシアキは薄く笑うとポケットから鉛筆よりも少し太い筒状のものを取り出した
「トシアキ、なにそれ」
聞いている間にトシアキはその棒を仔実装の排泄口に突き立てた
それまでヂーヂーテチャテチャ威嚇して暴れていたいた子実装は一瞬沈黙して
「テチョアァァ！！！」
痛みに絶叫した
「石笛。さっき駄菓子屋で買ったから試したくて。丁度良かった」
軽くグリグリと捻りながら中程まで押し込んでゆく
「ｹｯ…！ﾁﾞｭ…！」
仔実装は滂沱の涙を流しながら、悲鳴も出なくなっていた
イゴイゴと手足は動いているが短過ぎてどうにも出来ていない
トシアキは軽く仔実装の身体をつまんで、吹口から息を吹き込んだ
「テッ…！」
ビクッと仔実装が震える
血涙を流しながらイゴイゴとしていた動きが止まり、顔から血の気が失われていく
トシアキは暫く息を吹き込んでいたがそれ以外には特に何も起こらなかった
一度口を離すと、
「おっかしいなあ、もっと強く吹かないとかな？」
そう言って息を吸うと、今度は徐々に強く吹き始めた
2秒程して、痙攣し始めた仔実装
飛び出さんばかりに目を見開き、口からは舌を付き出す
その次の瞬間
「ケッ…パァ！」
一際大きく震えると、口から緑の半固形状の物が飛び出した
幸い、誰にもかからなかったが、トシアキ含め全員がビクッとした
「うおっ！何だこれ糞か！」
着弾点を見るに飛び出したの実装石の糞で間違いないようだ
「アブねぇ」
トシアキが石笛を構えたままこちらを向いたため、
「おい、銃口をこっちにむけんな！あっち向けあっち！」
一悶着してから演奏を再開した
息を少しずつ強めて行く
そのうちに音がし始めた
微弱なﾃﾃﾃﾃという音だ
空気の流量、流速が増えるに従って
その音量は上がっていき、一定に達したところで、
ﾃｪｪ↑という確かな音色を響かせた
トシアキはやったぞ、という笑みをたたえ、そのまま石笛を吹き回した

何か楽器をやっているとか言っていたトシアキの演奏は見事で、実装石から発する音とは思えない

とはいえ、仔実装の喉に人間の息は強すぎた
2分も吹けば音が掠れ、5分で死んでしまった
最初の一匹でコツを掴んだトシアキは、校庭を駆け回りどこに潜んでいたのか8匹の仔実装を確保すると、様々な曲を演奏した
なんでも、首と胴体の圧迫具合が息よりも重要らしい
遊び疲れていた我々は、トシアキの演奏にリクエストなどしながら捕獲した仔実装を握りしめて手慰みに小突いていた

尻から管を挿し込まれる先任を見て、最初は笑っていた仔実装達も、一匹、また一匹と数を減らすにつれて不安げにキョロキョロし始め、残り三匹になる頃には震えて泣くばかりであった

さて、残り2匹になった頃である
トシアキもやや演奏疲れが見えてきて、
軽い酸欠のようだ
しかし、あと二匹、捕獲した分は吹き切る決意で、更に一匹を受け取り笛をつきこむ
イゴイゴ暴れる仔実装を左手で保定しながら軽く喉下に指を添え、右手で笛の根本を持つ
仔実装の身体は水平に、管は僅かに下向きへこじる
滴るのは色違いの涙
およそ二分で一匹、おそらくは締めの一曲、高らかに吹き鳴らすべくトシアキは息を大きく吸った
吸ってしまった
吹き口に、口をつけて

ﾁﾞｭﾎﾞ！という音を立てて、仔実装がキュッとしぼみ、トシアキは口いっぱいに何かを溜めて、青ざめ
「ウォロろロロロ」
盛大に吐いた

その後暫くトシアキは糞虫というあだ名に悩まされることとなった