コンペイトウ星に願いを… それは陽の沈んだ公園での出会いだった。 「ニンゲンさん、ニンゲンさん…食べテチ…ワタチの夢を叶えテチ」 1匹の禿裸仔実装が俺の前に飛び出してくるなり言った。 「ワタチ、ママの言ったあのお空に無数にあるコンペイトウ星の一つに行きたいテチ…」 俺が言葉に耳を傾ける人間だと理解した仔実装は、まくしたてるように長時間かけて早口で説明してきた。 理解不能に近い妄言も含まれていたが噛み砕くと…。 コイツの親は人間に襲われて生食されたらしい…野良を生食とか相当狂った実食マニアだ。 親を失った一家はコイツを残して、餌の確保競争や人間への媚び失敗で減っていった。 その行為に関しては恨みは多少あれど、人間に抗議までする気はないらしい。 ただ独りでは生きていけそうもないので、どうせ死ぬのなら親と同じ方法で殺されれば、死後に親と同じコンペイトウ星と言う天国的な場所に行けるのでは? そう小さな頭で考えたみたいだ。 その仔実装が胎教や教育で学んだコンペイトウ星は、見上げる星空に散る無数の星。 想像したところで、せいぜい実装石の標準的一家が乗ったら手狭になる程度の石ころなのだろう。 それが無数にあるから、同じ方法で死なないと同じ星、または近い星に行けないと言う事だ。 なんとなく分からない話でもない。それがコイツの精一杯願う夢なのだ。 『悪いが俺は実装石を食べる習慣はないし、不衛生な実装石を生で食べる人間なんて簡単には見つからない』 世の中には食用実装石もあり、コイツの親を食った酔狂な人間は居るが…。 常識があるのなら、不潔の代表格と言われる野良実装である限りはどう調理してでも食べようとは思わない。 こんな物を食えるのは、無人島でもう食べ物が手に入らなくなった場合だろうと俺は思う。 「食べられてチなないとママと同じ星に居られないと思うテチュ」 仔実装はガクリと膝を折って両手を突く。絶望したように顔色が白くなる。 こんな生き物でも切に叶えたい願いを持っていると思うと少し可愛そうに思う。 『俺は実食派じゃないんだけど…俺の家に来るか?』 俺は出来心か運命的な出会いかを見分ける間もなく思い仔実装に手を差し出していた。 こうして俺とコイツの生活が始まった…。 飼ってみれば知能はさして高くはないが、思っていたより手間がかからない。 そもそも礼儀や何やらは最初から期待していないし、身の回りの事は出来るので、溜まったトイレの最終始末位。 手間のかからない分位は甘える事を許し、遊んでやる。 ただし徹底的に気を付けるのが、清潔に生き清潔に食い清潔に出す生活を心掛ける事だ。 俺の与える餌だけを食べ、日々身体と服は洗うだけでなくアルコール殺菌もして、日に1回は総排泄腔から水を入れて胃洗浄を行う。 そこだけは並の飼いより厳しく徹底させるが、それがコイツの為でもあるのだ。 どれぐらい生活しただろう。60cm…すっかりコイツも成体で、水槽で生活させるのは厳しくなっていた。 コイツはすっかり自分が数ヶ月前まで野良だった事を忘れている。 そこに1通の封書が届いた。 俺はその中身の紙を確認すると、同じ様な紙を3枚見比べる。 「ゴシュジンさま、何を見ているデス?早くゴハンを下さいデス」 コイツは水槽の上枠を手で叩くように餌を催促する。 『喜べコイツ。お前の健康診断は遂に3週連続で健康体、血液も有害な雑菌なしだ』 「それが何デス!ゴハンデス!もう2日何も食べてないんデス!!ウンコも出ないデス」 『何を素っ頓狂なことを言っている。俺の覚悟は決まっている。これからお前の夢を叶えるぞ!お前はもう食用実装並みに清潔と言うお墨付きが来たんだ』 「デ!?」コイツが一瞬固まる。 『時が来たんだ…よく頑張ったな!コンペイトウ星のママを随分と待たせたな!』 コイツは出会ったときと逆に尻もちを突いて狭い水槽を後ずさる。 「ゴゴゴ、ゴシュジンさまぁ悪い冗談デス…ワタシは今日も身体とオベベ洗ったデス、おまた流したデス!ちゃんとお役目してる実装ちゃんデス」 『酷いなぁ…これだけ世話してやったのも、お前が俺に食べられたいと言ったからじゃないか?』 「デー!!ゴシュジンさまはワタシを食べないニンゲンさんだって言ってたデ…デ!?」 『お、ようやく俺の意図がわかったか?不潔な野良肉なら食えないが、この半年の生活でお前はもう立派な食用なんだよ。食用なら生食に挑戦だ』 「デズゥ!デヂィ!」コイツは水槽の壁まで後退し、それより下がれなくなるとパンツがミドリに染まりパンコンしていく。 飯を食ってないから糞が出ないと言っておきながらこのざまだから食実装なんて興味なかったんだ。今はどうかって? 『ちゃんと生きたまま生食してやるぞ。そうしないとお前がママの星に逝けないだろうが』 足を掴み、限界まで開かせてな足裏がお脇に付くほど開かせて、捻りながら引くと、心地よくパキパキと骨と筋が壊れて抜ける。 「デビィィ!おまた、お股が裂けデズゥゥゥゥ!アンヨォォォ!ワタシのアンヨがデズゥゥ」 コイツの前で引き抜いた足にかぶりつく。面白い食感ではあるが、その触感が正直なところ食べ難さにもなっている。 肉に味があれば良いが、味は冷凍と解凍を繰り返した味の薄い鶏肉程度で期待したほどではない。 血の味は、自分の傷を舐めた時のような鉄臭さはないが、野菜のような青臭さがある。食による栄養を獲った感は鳥獣肉には劣るだろう。 口の中がにちゃつく…独特のウレタンボディの部分が影響している。 まあ、それを言っちゃぁ生食すりゃ、大抵の動物はそんなものだと言える。 ちゃんと調理するならそこそこなものになるのだろう。 だが、そこはコイツとの約束、コイツの小さな願いの成就の為に命尽きるまで…生食だ!! 「デシャァァァァ!ワタシを食べないでデス!なんでデス!ワタシは不幸デスー!!」 生命器官を避け、偽石を避け、頭にがぶりついていると充実感が沸き起こる。 あの時小さく無力の仔実装のバカバカしい願いのために、俺が半年を費やした。 人がこれほどの労力と時間を掛けて叶えてやるのだ幸せでないはずが無いのだ。 脳をすする。まるで白子だ。情報の詰まった大事な部位と言う感じはしないが、ここだけは濃厚で美味いと感じる。 生食派はこの部位を求めるのか…。 「パリュメン…ムリ…ポプー」コイツの表情が緩み翻訳できない音をデタラメに発している。 そうか…俺の初生食クライマックスだな。偽石食い。クッキーのように砕いて… 逝け!望みのコンペイトウ星へ!(パキン) 残った部位は、BBQにして平らげた。やっぱり野良生食に関しては自分の分野ではないと思った。 ただ、実装石の怯え歪み竦む様がスパイスなのだとは感じる。 その後、俺はこの経験を活かし食実装肉工場を経営から料理店経営にも乗り出し成功を収めた。 「実装料理専門店 コンペイトウ星」 コイツの後釜を1日千単位で皿に並べ提供する。コンペイトウ星は無数に光る空の星…定員オーバーということはあるまい。 『生産者の心構えですか?自信があるならばまずは自分の作った物を生食して下さい…愛情をいくら注いでも食えたもんじゃない!ここからメニューやお客様への演出が大事だと理解できます』 生食王子とも呼ばれる若社長は、机にあるコイツ像を撫でている写真で取材を終えた。
1 Re: Name:匿名石 2023/10/08-16:37:58 No:00008090[申告] |
やっぱ増長するよね…遠慮なくコンペイトウ星に送れるわ
生の脳すすりやってみたい |
2 Re: Name:匿名石 2023/10/08-18:59:34 No:00008094[申告] |
信念ある個体に感心させられる流れかと思ったらざまあ展開ですっきり!
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3 Re: Name:匿名石 2024/02/11-19:15:13 No:00008713[申告] |
60㎝ってそうとう食うところあるよな
しかもあの横幅 |