タイトル:飼い実装石のetc。。。
ファイル:実装石のif.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:600 レス数:0
初投稿日時:2023/03/07-01:47:03修正日時:2023/03/07-02:00:50
←戻る↓レスへ飛ぶ

飼い実装石のetc。。。

先生から小包が届いた。
私と先生は平たく言えば主従関係。
いつも唐突に無理難題を押し付けてくる。
いろいろ借りがあって受け入れざるを得ないと言う悩ましさ。
とりあえず小包の中を開けると中にはさらに木箱が・・・。
興味をそそられた私は躊躇なく木箱を開ける。
中はベルベットの生地が敷き詰められていて一匹の奇怪な生き物がスースーと寝息を立てていた。
なんじゃこりゃ。
生き物の大きさは掌に収まるぐらい。ネズミやシマリスぐらいのサイズ感。
これは・・・いわゆる実装石というやつか。
しかしまた何でこんな生き物を・・・!?
私はすぐさま携帯電話を手に取り、先生に電話をかけた。
「おお、さっそくかけてきたか。びっくりしたか?」
着信コール1回ぐらいで先生は電話に出た。
先生の声に笑いが含まれていてるの感じる。
当たり前ですよ。何ですかこれ?
送られてきた物に対する意味を尋ねた。先生はフフっと笑い声を漏らす。
「おまえに、とある検証に付き合ってもらいたい」
「えー、検証ですか?」
「めんどくさそうにするな。やる事は至って簡単。その送られてきた小箱の生き物、実装石をペットとして育ててほしい」
はて?
「それだけですか?」
呆気にとられ、私はさらに追求する。
「ああ、大体一年ぐらいだな。成体に成長する育ててほしい」
なんだ、動物の飼育か。なんてこともない。
実装石という生き物のことはほとんど知らないが。前の頼み事に比べたら。
「わかりました。それで成体になったらどうするんですか?」
「それはその時にまた話そう。それまで愛情を持ってその仔を育ててくれ」
要件が済むと先生は電話を切った。
相変わらず勝手な人だ。
そんな感じで私とその実装石との日々が始まった。

— 飼育初日

「テー?」
目を擦りながら大あくびをする実装石。
よく寝たと言った感じで伸びをする。
そしてキョロキョロと周りを見渡し、私の存在に気づく。
その仔はひどく怯えて後退りする。
ここはどこ?あなたは誰?といった感じか。
緊張を解してあげたくて手を差し伸べた。
「チー!!!チーー!!」
それが余計に怖かったらしく威嚇してきた。
弱ったなあ。
そうだ!ご飯を与えたら喜んでくれるかも!
私はキッチンに向かうと小鉢にパンの切れ端や冷蔵庫に入った昨夜の余り物を入れて実装石に差し出した。
「テチ!!!」
食べてくれるかな。
・・・と思いきや小鉢をひっくり返し中に入った食べ物を投げつけてくる。
怒り狂って泣き喚く。
この日、実装石は疲れて眠るまで泣き喚いた。

—飼育2日目。

お風呂に入れてあげることにした。
汚れているように思えるし、何より少し臭う。
洗面器に入浴剤を入れてバブルバス体験を演出する。
服も洗ってあげたかったので脱がしてあげよう。
だが実装石が物凄く抵抗して大変だった。
全然、服を脱がさせてくれる様子がない。
こりゃいっそのことと服ごと洗っちゃうか。
面倒になった私は実装石をそのまま洗面器にぽちゃっと放り込んだ。
洗面器の中でも水音を激しく立たせたがやがてバブルバスのお湯の気持ちよさにうっとりし始める。
大人しくなった頃を見計らって服を脱がせて体を洗ってやる。
すっかりお風呂の虜になってる実装石だったがのぼせる前に引き上げてタオルで水気をしっかり拭いてあげた。
その後、乾いたタオルを用意し、赤子のようにくるんで木箱で寝かせた。

— 飼育3日目。

思えばうちの実装石に着替えを用意していない。
寝床やトイレも用意してない。
相応の餌も用意していない。
これでは住みづらかろう。
私は実装石専門のペットショップへ向かい、飼育に必要なグッズを買いにいった。
不慣れな私にショップ店員は親切丁寧に商品や実装石に関してレクチャーしてくれたおかげで時間を忘れて買い物を楽しんだ。
すっかり長居してしまい帰宅時間が遅くなってしまった。
実装石はどうしているだろうか?と覗き込んでみると小箱から出て部屋の周りをうろうろしていた。
部屋はあちこちに糞が散らばっていて荒れ放題になっていた。
実装石は私をみると「チーチー」と泣いていた。
ごめんよ。悪かったね。私は指で実装石のあごの下を愛撫した。
この日は実装石の糞で汚れた部屋を掃除して実装ショップで買ってきた実装石用の寝床とトイレシートを設置。
寝床には素直に収まってくれた。
トイレを覚えさせなければなあ。

—飼育4日目

気づけば実装石がぐったりしている。
それもそのはずで私が用意した餌に全く手をつけていなかった。
うちに来てから一度も食事していない。生き物なら衰弱するのは当然だ。
口元に無理やり餌を持っていってみたが食べてくれない。
水すら飲んでいないみたいだ。
このままだと死んでしまう。
先生の叱られてしまうのももちろん嫌だがここ数日世話を続けて多少なりとも実装石に愛着を感じている。
このまま死なせてしまうのは不憫だ。
ここまで衰弱すると食べ物を食べるのも難しいか、何かいいものはないか?
縋る気持ちで冷蔵庫を開ける。
昼に買ったアーモンドミルクがあった。
冷えたままだと良くなさそうだ。
ぬるま湯でミルクを薄めてスポイドで採り、嫌がる実装石の口元に流し込んだ。
けれど飲んでくれない。
何度も吐き出す。
頼む!飲んでくれ!このままだとお前死んじゃうんだよ!
諦めずミルクを流し込み続ける。
何度吐き出そうとも諦めない。
そうして少しずつ、ゴクリ、ゴクリ。
思いが通じたのか。
・・・というより流し込む勢いに押し負けて飲み始めたという感じか。
吐き出せず涙をいっぱい流して苦悶の実装石。
だが少し、反応が変わった。
ミルクの味がお気に召したようで乳飲み子のようにスポイドにしがみつき吸い付き始めた。
よかった、ちゃんと飲んでくれた。
そうだ、そうそう。どんどん飲め。
スポイドのミルクが空になると実装石はおかわりを要求する。
よしよし。待ってろよ。
私は嬉しくなって追加のミルクを飲ませた。
そういえば、この子の名前まだ決めてなかったな。
「ミルク」なんてどうだろうか。可愛いし。
・・・など考えたりした。


—飼育8日目

ミルクの効果もあって実装石は息を吹き返した。
あれからスポイドでミルクを飲んでくれるようになった。
消化器官が発達してないのかな?
まだ歯応えあるものが食べられないのかもしれない。実装フードの前に今度はオートミールでも食べさせてみようか。
ミルクを飲む様は愛らしくて、ついついあげ過ぎてしまう。お腹がパンパンに膨れて動けなくなることもしばしば。
なんとなくだが飼育する上で1段階クリアしたような気がしていた。
けれどすぐに次の問題に直面する。
トイレのしつけである。
相変わらずところ実装石は構わずに漏らしてしまう。
今はまだ子供であるから可愛い気があるものが成体の状態でもこんなことされては堪らない。
ゆくゆくは外に連れ出して一緒にお出かけしたいなどと考えていたのでこのままにしておくわけにはいかない。
そうしているとさっそく実装石が便意を催す。
こないだ買ったトイレシートを用意してそこにする様に促す。
しかしこの仔は私を無視してをプリっと床に糞を落とした。
コラ!ここにしろっていってるだろ!
スカした顔で私を無視する実装石。
このままじゃダメだ。
私は床の糞を手に取り、シートの上に乗せて指出す。
いいかい?この上でうんちするんだ。
ほかのところはダメだよ?
興味無さそうで見向きもしない。
そもそも悪いことだとわかっていないのか?
私は心を鬼にして実装石の顔を指で叩いた。
「テギャアアア!!」
実装石はひっくり返って顔を抑えて転がった。
しまった!やりすぎたか。
「テエエエエン」
鼻血を垂らして泣き喚く。
でもここで可哀想だと思って諦めたらずっとトイレを覚えてくれない。
いいかい?おトイレはこの上でするんだ。お部屋のどこでもやっちゃいけない。決まった場所でするんだ。わかったね?
ちゃんと守れないならまた叩くよ?
トイレのしつけは手がかかりそうだ。

—飼育14日目

ミルクからオートミールに食事を変えた。
ぬるめのミルクによくかき混ぜて柔らかくした穀物。
専用のスプーンで掬い取り、口元に運ぶと美味しそうに食べてくれる。
まだスポイドでミルクをあげてた頃の名残りが残っていてスプーンをペロペロ舐めてしゃぶる。
満腹になると幸せそうに笑うところが可愛らしい。
これでトイレさえちゃんとしてくれたらなあ。
そう、しつけはうまくいっていなかった。
この仔は隙あらばどこでもうんちしようとする。
見つける度に叱りつけてているが暖簾に腕押しといった感じだ。
しかたない。
便意を催したら捕まえてシートの上でお腹を圧迫して無理やり強制排便させることにした。
私が留守の時はトイレシートを敷いたケージに入れて隔離する。
可哀想だがしかたない。

—飼育30日目

実装石はお腹いっぱい食べた後はじゃれついてくる。
足元に駆け寄ってスリスリしてきたり、踊って見せたり、奇声で歌って見せたり。
これは鳥が囀りみたいなものか?本能的なものなのかもしれない。
もしかすると芸を仕込んだりすることも可能なのか。
この仔は起きてる時はずっと私にべったりくっついて回るようになった。
ちょっと動いただけでどこに行くの?ワタシもついていく!っと引っ付いて回る。まるでカルガモの親子のように。
当初は全く懐かなかったのになあ。
テレビを流し見しながらスマホをポチポチ触っていた時だったか。
ふっと実装石に対して意識が及んでいなかった束の間。
一匹でトコトコトコと歩いて行く。なんのつもりだろうか。
するとトイレシートの上に屈み、トイレをし始める。
なんと!自分でトイレ行けるようになったのか!やっとトイレを覚えたのか!
すっきりして気持ちよさそうにしている実装石。
そうだよ。そんなんだよ。ずっとそうしてほしかったんだ。わかってくれたんだね。
えらいよ!私は実装石を指で撫でまわした。
実装石はなんだか照れ臭そうだった。

—飼育45日目

急に私の家に来訪者がやってきた。
先生・・・、ではなく知人の女の子。
「最近、構ってくれないから来ちゃった。中に入れてよ。」
え?一瞬、悩んだ時にはもう玄関で靴を脱いで部屋に入っていた。
「ねえ、ここ最近何してたの?あら?」
彼女が部屋に入ってすぐにここ最近一番の部屋の中の変化に気づく。
「ええー?なにー、動物飼いはじめたの?」
そういうと無防備に実装石に手を差し出した。
お手でもさせたかったのだろうか?
「テエ?」
首を傾げる実装石。誰だこいつ?といった反応。
そして、すぐに手を払い退けた。
「えー?何—?この仔。私が嫌い?」
警戒心が強いこの仔は露骨に臨戦態勢となる。
「あー、だめだよ。急に触っちゃ。気難しい生き物だから」
「ふうん。最近ずっとこの仔にご執心だったってわけね」
「まあ、そういうことだよ」
「よかった。浮気じゃなくて。」
「なにいってんだよ・・・・・・」
「この埋め合わせしてもらわないと、ね?」
「埋め合わせ?」
「ご飯まだでしょ?さ、いくわよ」
この娘はいつも強引なのだ。
「ちょっと待てよ」
腕を引く彼女の手を払って、私は出かける準備をする。
実装石は・・・・・・連れていけないのでケージにいれた。
そそくさと身嗜みを整えて、私は彼女と自室をでた。


—飼育48日目

どうもずっと実装石の機嫌が悪い。
ご飯はちゃんと食べるし、トイレもちゃんと自分でする。
・・・がいつものようにベタベタと懐いてこない。
なんだろうか。何か怒っているみたいだ。
こういう時、意思の疎通ができるようなものがあれば便利なのだが・・・・・・。
実装石が何の原因で不機嫌なのか私にはわからない。
どうにか機嫌を直してくれまいか。
トイレのしつけもできるようになったし、一度いっしょにお外に出かけてみようか。
おい。出かけるよ。おいで。
私は実装石を抱き寄せて出かけることにした。
そういえば。ちょっと大きくなったな。片手で乗るぐらいの大きさだったのに。
着実に成長していってるんだな。
私は近所の公園のグランドで実装石と一緒にボール遊びする事にした。
サイズ感的にも丁度よかったのでテニスボールを投げたり転がしたりして実装石に取りに行かせる。
始めのうちは不機嫌だったもののこの仔はちゃんとボールを取りにいって、こちらに持ってくる。
何往復させても飽きずにとても嬉しそう。
ちょっと悪戯心が芽生えて、ちょっと強めにボールを投げる。
どんな反応するだろうか?
投げつけたボールは実装石をかすめて草むらの方に飛んでいた。
実装石は迷わず草むらの方へ駆け出していく。
戻ってこない。
おかしいな。ちょっと草むらの方に様子を見にいく。
そこには野良実装石にリンチを受けるうちの実装石がいた。
五匹はぐらいの野良に羽交い締めにされて蹴ったり小石をぶつけられたり。
顔はボコボコに変形し、血塗れ。
着ていた衣類は破り捨てられて今まさに髪の毛が引き抜かれようという時に私は居合わせた。
やめろ!うちのミルクに何をする!
私は髪の毛を引き抜こうとしていた野良実装石の手を掴むとそのまま握りつぶした。
絶叫する野良を地面に叩きつけ、羽交い締めする野良を剥がして、そいつの目を潰した。
「デエエエ!?デスデス!!」
リーダー格の野良は絶叫し、退却だ!といった様子で一目散に離脱する。
他の連中も逃げ出し、地面にめり込んだ野良と目が潰れた野良だけ悲鳴をあげてヒクヒクして残された。
大丈夫か?ミルク。
ミルクと呼ばれた実装石はよろよろになりながら私に手を振る。
怖かったな。痛かったな。ごめんな。もう大丈夫だから。
この仔を担ぎ上げると安心したのか、ブワッと泣き出した。
おー、よしよし。痛いな痛いな。ちゃんと怪我の手当してあげるからな。
服がボロボロになっちゃったな。新しいの買ってあげるよ。
何か美味しいものも買ってあげるよ。ミルクは何がいい?
金平糖、プリン、ご馳走を用意してあげるね。
ミルクは私にしがみついて泣いていた。

—飼育90日目

ミルクは大きくなった。
分類でいうと中実装石という大きだろうか。
成体と仔の中間ぐらい。人間でいうと思春期が到来するぐらいの時期か。
こないだ服を新調してあげた。
赤いベルベットの生地で高級な肌触り、豪奢な服だ。
とても気に入ってくれたみたいで着せた時はすごく喜んでいた。
こないだ外にでて、外が怖くなったみたい。
散歩しようといっても嫌がり、もっぱら家の中でおとなしくテレビをみている。
リモコンをつかってテレビの電源をつけたり切ったりするなどなかなか賢い。
・・・なんだか前よりまして私にべったりしてくるようになった気がする。
寝る時も気がつくと側で寝息を立てていたり、本当に甘えてくる。
私はそんなミルクをついつい甘やかしてしまいがちだ。
こないだはお取り寄せで高級な金平糖やアイス、プリンなどを食べさせた。
贅沢を覚えさせてしまった。
まあ普段のご飯も残さず食べてくれるので何の問題もない。
最近では実装石専用の食器を使って自分で器用に食事できるようになった。
食べ終えた後はご馳走様と手を合わせ、食器を片付ける。
お風呂に入りなさいといえば、自分で服を脱いで、風呂場に向かう。
脱いだ服は綺麗に畳むし、シャワーをかけてあげると自分で体を洗う。
最中に目を合わせると恥ずかしそうにしてるところは何とも寒気を覚えるが。
さて、今日は何だか面倒なので出前ピザ頼もうか。
そんなことを考えていると呼び鈴が鳴った。
いつもの女友達だ。
「やあ遊びに来たよ」
ドアを開けると友人は間髪入れずに中に入ってくる。
上がり込んで居間のクッションにドカッと座り、ミルクと居合わせる。
「やあ実装石ちゃん。元気してる?」
相変わらず不用意に手を差し出す友人。
ミルクはその手を掴むといきなり友人の指に噛みついた。
「痛!!」
結構思い切り噛みついたみたいで友人の指から血が吹き出した。
「だ、大丈夫?」
私は急いで救急箱を取りに向かう。
中から消毒液を取り出し、患部に塗ると絆創膏を湿布した。
「人を噛んじゃだめだろ!」
私はミルクにゲンコツを叩き込んだ。
殴られてショックを受けた様子のミルクは震えてヒクヒクした後、ブワッと涙を流す。
「いやいやごめん。私も不用意だったよ。その仔を叱らないであげて。」
友人はミルクを庇い、割り込んだ。
「ね?」
手を合わせてウインクする友人。
「まあ、君がそういうんだったら・・・・・・」
なんだか照れてしまう私。
「出前ピザ一枚で許してしんぜよう」
その日は結局ピザを出前した。
ミルクにもピザをお裾分けしたが何故だかこの日ずっと悲しい顔をしていた。

—飼育180日目

ミルクは相変わらずだ。
行儀もよく、ほぼほぼ粗相することがない。
体もどんどん大きくなってきた。
テチだとかテチュという鳴き声がちょっとづつ声色が濁るようになっている。
そろそろ成体に近づいてきているのかもしれない。
ミルクを飼育するようになってそろそろ半年。飼育は成体になるまで。
終わりが近づいてきているのを感じた。
ミルク、さあおいで。今日は星空がとっても綺麗だよ。
私はミルクをベランダに連れていくと共に夜景を楽しんだ。

—飼育300日目

季節は冬。
年末進行で世間は忙しく、私も流れに逆らえず多忙を極めた。
ミルクは帰宅する私を出迎えるとエールの歌を歌う。
本当に利発で思慮深い子に育ってくれた。俺の日々の癒しだった。
今年の激務も今日まで。
気力を振り絞り今日まで頑張って、無事に納めることができた。
こたつに入って蜜柑を食べながら、予約したおせち料理が届くのが遅いだとか、テレビがつまんないなどとブツブツ呟きながらゴロゴロしていた。
ミルクもこたつに入ってニコニコしている。
蜜柑をむいて1欠差し出すと嬉しそうに食べた。
そのままゆったりした過ごし、時間でいうとゴールデンタイム。
友人が訪ねてきた。
「メリークリスマスだよ。暇してるかなと思って」
友人はおつまみや料理、お酒などいっぱい持っていた。
こんなに持ってきて私がいなかったらどうするつもりだったのか?
「まあ今日用事があるわけないよね。わかってるよ」
見透かされている。
急遽、友人とミルクと私でクリスマスパーティーをすることに。
料理をこたつの上に広げて切り盛りする友人。
そんな友人にミルクは露骨に嫌がり、私にしがみついてきた。
だらだらと食い散らかし、酒を飲み、友人は猥談だの共通の知人の近況などを話してケラケラ笑う。
和やかな時間が流れていた時、友人は隠していた紙袋を持ち出す。
「じゃーん!君にクリスマスプレゼントだよ」
中から手編みの赤と緑ストライプデザインのマフラーを取り出した。
「ちゃんと実装石ちゃんの分も作ってるから」
友人はミルクにもマフラーを手渡した。
「驚いてるね。何で?って感じだね。いやまあ喜んでくれるならうれしいよ」
「なんというかありがとう。でもなんで?」
「・・・親愛の証だよ。はずかしい!いわせんな!」
顔を真っ赤にする友人。鈍い私でもさすがにこのマフラーの意味を察した。
「ごめん。でもこっちは何も用意してないんだ」
「お返しは別にものじゃなくてもいいよ?」
そういった友人と目が合う。友人は目を閉じた。
この後、友人は私の彼女になった。
「じゃあさ、さっそく巻いてみてよ。マフラー」
私は照れながらマフラーを巻く。ミルクの分のマフラーも巻いてあげた。
「どちらもよくお似合いだね。私の見立ては正しかった」
彼女は誇らしげに胸を張る。
「実装石ちゃんも気に入ってくれたかな?」
彼女はミルクにマフラーの心地を聞く。
「デスデスゥ・・・」
ミルクはぎこちなく笑みを浮かべてマフラーをくれた事に感謝しているようだった。
「よかった。似合ってるよ。マフラー」
彼女はミルクの頭を撫でた。
「お酒切れたし、買い出しいこうか。そのマフラー巻いて」
彼女が俺の手を引いて外に連れ出す。
ミルクにはお留守番をお願いした。
外は雪景色。
「いいね。ホワイトクリスマス。」
彼女はニッコリ笑うと私の手を握ってきた。
「なんか楽しいね。来年も私と君と実装石ちゃんでこんな風に過ごしたいな」
降り積もっていく雪。差し込む街灯。きらきらと光るパウダースノー。
来年も、か。
でもそれは無理だな。
「君の手、あったかいね」


—飼育最終日

私は閑静な住宅街の邸宅の応接間にいる。
ここは先生の住まいだ。
「長い間、ご苦労だったな」
先生は労いの言葉と共に札束で分厚くなった封筒を私に手渡した。
「いえ、どうということはありませんよ」
「それでは実装石は引き取らせてもらう」
「はい。わかりました」
約一年間、実装石とずっといっしょだった。苦労の連続だった。楽しい日々だった。
だが最終日がくると私は冷淡だった。
「デスデス?」
どうしたんですか?ご主人様?といった具合の私の側に実装石。
どうもしない。それにもう今日から私はご主人様ではないのだ。
これからこの実装石はどうなってしまうのか。
「実装石がどうなるか知りたいか?」
先生は私に問いかける。
「いえ、興味ありません」
「そうか。では何も言うまい」
その後、私は実装石に金平糖を食べさせた。老舗の高級なやつだ。
これがこいつ大好物だった。嬉しそうにぺろぺろ舐める実装石。
この金平糖には即効性の睡眠薬混ざっている。
食べれば食べるほど眠くなっていく実装石。
そして実装石は眠りに落ちた。
じゃあな。
それがこの実装石をみた最期だった。


———————————————————————————————————
飼い実装石のetc。。。
あなたはこの実装石にどのような結末を望むか。
私は三つ用意する。あなたは好きな物を選んで欲しい。
結末はのちに明らかになる。

To Be Continued












■感想(またはスクの続き)を投稿する
名前:
コメント:
画像ファイル:
削除キー:スクの続きを追加
スパムチェック:スパム防止のため1030を入力してください
戻る