21XX年、世界の食糧事情は危機的状況にあった。 温暖化による気候変動により海産物は壊滅し更に飼料暴騰や新型ウィルスで畜産動物は大打撃を受けた。 現代から食料品全般の値段は数十倍に上昇した。 この食料危機に政府が打ち出した手段、それは実装石の本格的食料化であった。 実装食自体は存在していたがゲテモノ奇食の類である。コストの安さと繁殖効率から選ばれてしまったのだ。 ここに自宅で食事の準備をしている一般的な社会人の双葉利明がいる。彼の様子を例に見てみよう。 はっきり言って彼は現状に不満を抱いている。まあそうだろう。こんな糞蟲を食う事を事実上強いられているのだ。 とはいえ数十倍の値段の鳥豚牛肉は気軽に手を出せない。生きるためには仕方ないのだ。 キッチンの脇に禿裸の実装石が分娩台のような器具に固定されている。口には漏斗が嵌められていた。 これは米実装。遺伝子操作で生まれたこの時代の米である。 利明は無表情で赤インキを米実装の目に垂らした。出産が始まるが米実装は口の漏斗によりモガモガとしか呻くことが出来ない。 「テッテレー♪」6匹ほどの仔実装が排出される。それらは全て禿裸であった。遺伝子操作によりそうなっている。 利明はそれらを蛇口の水で洗う。相変わらず何の表情も無い 蟲共は「ドレイニンゲンご苦労テチュ♪」「ママはどこテチュ?」「お腹空いたテチュ」などと喋っているがリンガルを動かしてないので通じていない。 「テプププ イモウトちゃんみんなハゲハダカテチ!」などと言ってる禿裸長女を利明がつまみ上げた。 そしてザルの上で赤インキで目を染める。「テェッ!?」瞬く間に長女の腹が膨らみ出産寸前になる。 「う、産まれるテチュウゥウウ!!」長女の総排泄腔から無数の禿裸蛆がザルの上に産み出された。 「テッテレー♪」「プニフー♪」米粒大の大きさの蛆がレフレフ鳴いている。 誕生したばかりで出産した長女はもはや瀕死だったがとしあきは腹の中身を絞り出すように仔実装の腹から下を握りつぶし絞る。 「ヂッ!!」仔の口から内蔵の一部と腹に残っていた蛆が飛び出る。虫のような断末魔と共に長女は息絶えた。 それを見ていた姉妹は「オネチャァァ!」「イヤテチュ!死にたくないテチュ!!」「ママー!!」などと泣きわめく。 同じ工程を全ての産まれたての仔実装に行う。一匹残らず死んだ。 ザルにあけた細かい蛆を水で洗い炊飯器に放り込み電源を入れ炊きあがりを待つ。 その間に潰した仔実装の死骸を千切ってバラし母親である米実装の口の漏斗に放り込む。使用前と同じく下水に繋がるチューブを接続し米実装の総排泄腔を塞いだ。 本物の米のような匂いのする実装フードと仔の死骸で維持される米実装の寿命は一ヶ月程度である。 フードのおかげで蛆はまるで本物の米のような匂いだ。味は薄いが実装臭も薄く比較的食べやすい主食である。 スーパーの惣菜で買っていた仔実装串焼きと炊きあがった蛆の飯とインスタントの実装脳味噌汁。 それが今晩の利明の食事である。まるで自分が実装石になったような最悪な気分にさせる。 串焼きは仔実装の、味噌汁は脳の、米は薄い蛆の味である。他に例えようがない味だ。 利明は何の楽しみも無い食事を終えた。明日も大差無い食事だろう。 これがこの時代では平均的な食事なのだ。実装石を食わずにすむような時代はまだ遠い。
1 Re: Name:匿名石 2023/02/17-23:40:51 No:00006824[申告] |
望まない実装食には悲哀があるな…
これでおいしければ米実装の食卓は虐待的に楽しそうなんだけどねー |
2 Re: Name:匿名石 2023/02/18-03:47:33 No:00006837[申告] |
酷い時代だ…昆虫食を無理矢理流行らせようとするニュース思い出してしまった |
3 Re: Name:匿名石 2023/02/18-08:54:48 No:00006838[申告] |
SF考察的な感じの作品は大好きデス |
4 Re: Name:匿名石 2023/03/30-20:47:50 No:00006987[申告] |
ソイレントグリーンって言う昔の映画を思い出したデスゥ。 |