タイトル:【観察】 林の仔実装
ファイル:林の仔実装1.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1443 レス数:1
初投稿日時:2023/02/05-19:43:16修正日時:2023/05/01-01:20:53
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「テェ…真っ暗テチ…」
仔実装は夕暮れの森にいた
夕暮れのとはいっても、師走ともなればあたりは闇に包まれ
空の端に陽光の残滓がかろうじて滲むだけである

ごうごうという音が耳を打ち、強い風が木々を揺らす
風でザワザワと蠢く梢は、人の身でさえ不気味に思わせ心細くさせるのだから、
手のひらに乗るような仔実装には悪鬼羅刹の類であろう

「テッ…テテッ…!」
枝葉の落ちる音にさえ何者かの気配を感じ、キョロキョロとあたりを見回す
自然と足は速くなり、もはや駆け足である
もっとも、ナマケモノよりはマシといった程度ではあるが

仔実装は公園に隣接する林の奥まったところに住む一家の末娘である
賢い親実装の下で、公園やその外縁に住む一般的な同族や、人間ともあまり関わらない平穏な生活を送っていた

既に冬籠りの最低限は終え、親は追加で食料集めに、
仔実装たち四姉妹は追加の枯れ葉集めを言いつけらた

末の仔実装も途中までは熱心に集めていたが、ふと、白い何かが舞っている事に気づいた
所謂雪虫なのだがとにかく、その後はよくある運びである

チョウチョさんまっテチ!といった具合に、フラフラと公園まで彷徨い出たのだ

仔実装は植栽から飛び出して、開けた公園の道に出る段になってようやく、正気を取り戻した

「テテッ!まずいテチ、怒られるテチ…」
仔実装が踵を返して植栽へ飛び込もうとしたその時、その平坦な鼻が甘い匂いを嗅ぎ取った

「テェ!何テチ、すごくいい匂いテチ」
匂いのする方へ何となく、またふらふらと彷徨う
丁度近所の暇な老人が金平糖を撒いているところだったようで、少し先の広間に実装集りができているのが目に入った

仔実装は迷った
親実装からは公園の同族には近づいてはいけない
ニンゲンにも近寄るな
餌は毒の場合がある
そう厳しく何度も言い聞かされていた

「みんな食べてるテチ。きっと大丈夫テチ。持って帰って謝れば許してもらえるかもしれないテチ」
甘い誘惑に仔実装の忍耐は3秒もたなかった

仔実装は駆けた
テチテチと駆けた
実装集りからこぼれた数粒の金平糖を掻っ攫うために
たまに食糧庫からどんぐりを持って行ってしまうリスの様に、少なくとも仔実装はそのつもりで全力で駆けた
例えそれが傍からみれば毛虫と五分の速度であっても必死で駆けた

幸い、撒かれる金平糖に夢中な他の実装には気づかれなかった
全力疾走のかいあって三粒の金平糖を確保した仔実装は、そそくさと植栽に飛び込み家を目指した

その様子を一匹の大柄な実装石が見ていた
「見慣れないやつデスゥ…あっちに住んでる奴なんて居たデス?」

実装集りには加わらず、持ち帰る実装石から収奪した金平糖をかじりながら、道のわきで飛び出してきた仔実装をずっと見ていた
「きれいな服を着てたテチ!」
野良にしては太り気味な仔実装を一匹連れている

大柄な実装はその仔の頭をなでながら、仔実装の消えた植栽をしばらくの間眺めていた


さて、仔実装は林に出ると、一目散に家の方角へと駆けだした
正確な場所は解らないが、きた方向はわかる。家の近くまで行けば道もわかるだろう

林で暮らす仔実装は道がわからないことをそこまで不安に思っていなかった
さして広い林でもない
実際、なんどか迷ったこともあったが戻ることができていた

しかし、今回は今までとは違っていた
どんどんと暗くなり、風も吹き出した
特に周囲から光が失われていく様は仔実装を不安にさせた
金平糖を確保できた喜びは湯冷めするように失せ、徐々に暗くなるにつけ鼓動は速まり背筋は寒くなる

自然と足は速くなった

強まる風は木々を揺らし、ザワザワと威嚇する
仔実装はとうとう泣き出した
「テ…テェック…テェーン!テェーン!」
べそをかきながらそれでも足は止めない仔実装だったが、長続きはしなかった

林から公園への移動、金平糖獲得のための全力疾走、その疲労、そして恐怖心と焦り
足をもつれさせ顔面から転んだ
「テッチャッチュ!…テェ痛いテ…こ、金平糖、なくしちゃうテチ!」
抱えていた金平糖は周囲に転がってしまった
痛みと焦燥に束の間恐怖を忘れ金平糖を一つ拾い、やや遠くに転がった2つを拾いに走る
その時、一際強く吹いた風が仔実装を追い立てた

ゴウゴウ!ザワザワ!ガサガサ!

「テテテテテヒャア!」
たまらずに隠れ場所を求めて転げまわり、近くの木の根の合間に溜まっていた枯れ葉へ飛び込んだ
頭から突っ込み、目をつむる
それなりに堆積していたようで、全身は枯れ葉の山に埋もれた
「いやテチいやテチ、こわいのいやテチ…」
少しの間、カタカタと震えていると、何となく暖かい
木の根がうまい具合に風を遮り、三方向は木の根がある
地面は木くずや腐葉土でふかふかしていて、堆積した枯れ葉が全身を覆う
安堵して少し落ち着いた仔実装ではあったが、そっと枯れ葉の隙間から外を窺っても、今度はそこから出る勇気がなかった

「こわいテチ…」

既に日は完全に落ち、月明かりが灰に照らすだけである
走り回った仔実装の体温で枯れ葉の中は温まりつつある
疲れと心地よさ、包まれた安心感から急速に眠気がやってくる
「すっごく眠いテチ…お外はまっくらテチ、帰るのは明るくなってからにするテチィ…」
金平糖を抱え込み出来るだけ枯れ葉の下に蹲ると目を閉じた


次の日、仔実装は朝日に目を覚ました
「テ…ママ…もう少し…テ、テチャ!朝テチ!お家かえるテチ!」
枯れ葉の山からガバッと立ち上がり辺りを見る
冷気が肌を刺すが、昨晩と違い風はなく寧ろ清々しいとすら言える
よく晴れた朝は霜が煌めき、木漏れ日が獣道を照らす
仔実装にはそれが無事を祝しているように見えた
「テッチュン!」
気合を入れると、大きく深呼吸を一つして、家路へとついた

明るくなってみれば存外近くまで来ていたようで、何となく見知った道である
昨晩の追い立てられるような駆け足ではなく、家へ帰り着くことが待ちきれなくなり走り出す

「帰ったらママにごめんなさいするテチ!それから、一個になっちゃったけど、金平糖を皆で順番に舐めるテチ!」

足取りも軽やかに、と言ってもカブトムシの飛翔のようにぎこちないのだが、家路を急ぐ

「最初に舐めるのはワタチテッチュン!その次はママ、でもでも、すっごく怒ってたら一番はママにあげるテチ…その次は上のオネチャ、真ん中のオネチャ、下のオネチャテチ」

遂に茂みを抜ければすぐという所まで辿り着いた
仔実装は茂みの隙間を潜るように走り込むと、そのまま家族の待つ段ボールハウスにすべり込んだ
「テッチャン!ママ、遅くなってごめんなさいテチ!道に迷ってしまったテチ、許してほしいテチ…」
ボスっと、ママの懐に飛び込み頬をグリグリと押し付ける
そのまま数秒が経過した
おかしい…いつもならこの辺りでお小言を言いながらもギュッとしてくれるはずテチ…
ソロソロと顔を伺う

ギロリ、と目があった
其処にあったのは、見知らぬ大柄の成体実装の顔であった
「デスゥ…戻ってきちまったデスか…」
唸るような声だ
「テ、テヒ、お家間違えたテチ…?」
仔実装が数歩後退る
コロリと金平糖が転げた
「お前の家で、間違いないデス」
「オバチャ、誰テチ、ママ…オネチャ、どこテチ?」
戸惑い怯える
しかし、成体実装はそんな仔実装を気にかけた様子もない
「知らないとはいえ、約束は約束デス、悪く思うなデス」
言っている意味はわからない
しかし、本能的にまずいと感じた仔実装は数歩よろけるように後ずさると踵を返して家の出入り口へ走り出した
「テヒャァァァ、ママァ!」

だが、時すでに遅し
成体実装は仔実装の緩慢な逃走を見てからややみを屈め、ムンズと、仔実装を両脇から挟むように持ち上げた
「いやテチいやテチィ!離しテチ!やめるテチィイイ!」
捕まえる手をペスペスと叩きまくるがびくともしない

成体実装は持ち上げた子実装を品定めするようにためつすがめつ眺め、探るような手付きでグリグリと押したする

無遠慮に圧迫され、振り回され、子実装は気が気ではない
そのうちに、成体実装は仔実装を左右から捩り始めた

ペキペキ…パキパキ

「テヂャァァァァァ!!痛いテチ!やめテチ!ママァ!助けテチ!!!」

成体実装は何も言わない
一思いに潰すのではなく、丁度よい所を探っているかのようにゆっくりと、丁寧に
「…!ヂッ!テ、ッハ…!」
仔実装は最早声も出ない
その内に小枝の折れるようなパキンという軽い音がした
肩から肋骨が圧迫に耐えかねて折れたのだ
成体実装は圧迫する力を弱めると、今度は捏ねるように両手を回し始めた

「ヂュアァァァァ!」

耐え難い痛みに、仔実装は一際大きく叫ぶと気を失った









手が痛くなったのまた今度書きます


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1 Re: Name:匿名石 2023/02/07-03:45:39 No:00006760[申告]
続き待ってます…
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