タイトル:【実装人】 奴隷闘士スカイ2
ファイル:奴隷闘士スカイ2.txt
作者:特売 総投稿数:41 総ダウンロード数:237 レス数:1
初投稿日時:2023/01/31-21:31:13修正日時:2023/01/31-21:31:13
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奴隷戦士スカイ2 「初陣」

ベッドに横たわり肩の火傷の痛みに耐えながらうずくまって暫く経った頃
何者かが牢に近づく気配がした
それは鉄格子の前で止まると何やら金属がガチャガチャと鳴る音が聞こえ
そしてカチンという音が響くと不快な軋みを響かせて何かが動く音が響く
思わず音のする方を見るとそこには粗末な身なりの実装人が立っていた
どうやら看守のようだ

よく見ると鉄格子の一部が開いていてさっきの音は
この小さな扉を開ける際に鳴ったものだったのだろう
側には椀が置かれた手押し車が置いてあった

「飯の時間だ…」

そう言って手前にあった空の椀を取り上げ代わりにスープが盛られた椀が入れられた
食欲をそそる匂いが漂いスカイのお腹が鳴る
思えば今日はまだ何も口にしていない
色々な事が起き過ぎて食欲すら忘れていたのだ

だがスープを取ろうと手を伸ばした時肩に再び激痛が走り
思わず呻いていてしまう
その様子を見ていた看守がぼそりと呟く

「ああ…烙印を押されて間もないのだったな…
お館様から仰せつかっている…これでも塗っておけすぐに痛みが和らぐ…」

懐から小さな容器を取り出し椀の側に置く

そして扉を閉め鍵をかけると手押し車を押しながら奥の方へと消えていった

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まずは肩の烙印に渡された薬を塗った
とにかくこの痛みから解放されたかったのだ
塗ってしばらくすると痛みが引いていくのが分かった

次は腹ごしらえである
思いのほか具がたっぷりのスープでまだ温かく
味付けは単調な塩味であったが
今は何を食べても旨いと感じる位には空腹であった

食事を終えたスカイは一息つくとベッドに寝転がった

状況はいまだ絶望的ではあるが悲観に暮れている訳にはいかない
何としても生き延びて勝ち上がり
我が半身である鋏を取り戻すためにあの実晶人に勝たなければいけないのだ
今はそのための力を蓄える事しかできない
横になってしばらくそんな事を考えていたがやがて眠くなってきた
(疲れた…長い一日だった…)
スカイの意識は闇の中に沈んでいった

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朝になりあの荷車を押す音で眼ざめた

「飯の時間だ…」

看守は昨日と変わらない口調でそう言って
パンにスープをかけたものが盛られた椀が渡された
パンは保存を優先させているのかとても固く
スープに浸してやっと食べられるようなものだった

「早速だが今日から闘技に参加してもらう…昼になったら準備のために
闘技場の控室に連れて行くからな…あとくれぐれも脱走しようとか…
馬鹿な考えはするんじゃないぞ」

そう言って看守は奥へ去っていった

いよいよこの闘技場での戦いが始まるのだ

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時間の経過が分かり難くて待っている間の時間は長く感じた
やがて武装した兵士二人を連れて看守がやってきた

「時間だ…」とだけ言って牢から連れ出した
両脇には兵士が付き変な動きをしたら即拘束する構えだ

「着いたぞここが控え室だ…」

そこには長椅子が一つと壁には様々な武器が並べてあった
看守に連れられて奥へと進むと
そこには薄着の実紅人と実雛人が立っていた

二人はスカイの前で軽く会釈をすると
簡単な自己紹介をした
実紅人の方はアール
実雛人はベリと名乗った

「私達は本日より控え室での貴方のお世話係を仰せられました
よろしくお願いします
では早速ですがこれから入浴を行い
それが終わりましたら戦いの支度をいたします」

簡単な説明のあとまず連れてこられたのは浴場であった
それも規模がとても大きく下手な公衆浴場並みの広さがある
あっけに取られていると腰布をあっという間にほどかれ
戸惑う間もなく洗い場へ連れていかれた

腰かけに座らせて全身に良い香りがする香油が塗られ
丹念に泡立てられ次に布で丁寧に体を擦られた
思いのほか気持ち良い
さらに髪にも別の香油が塗られて泡立てると指で丹念に擦られた
そしてお湯で洗い流すと次に浴槽に案内されて
お湯の中に浸かった

温かい…体の疲れが抜けていくようだ
暫くして出るように促され
先ほど二人と出会った場所に戻った
丁寧に濡れた全身を拭き真新しい腰布を締めてくれた
そして足には紐を編み上げたサンダルを履かせ
両手には篭手を装着された

「準備が整いましたご武運をお祈りいたします」

そう言って二人は退出していった
二人と交代するように看守と兵士がやってくる
これから闘技場へ案内すると言う

ふと疑問に思った事を看守に向かって言う

「僕は奴隷闘士にされたと思っていたが随分と丁寧な扱いをしてくれるのだな」

それを聞いた看守はニヤリといやらしい笑みを浮かべながら言った

「お館様はお前たち奴隷闘士を商品だと考えている…
だからその大切な商品を…丁寧に扱うのは当然の事だと言っていた
またこれから観客の前に出るというのに…薄汚いなりでは失礼にあたるから
試合前にはみんなこうして身綺麗にさせるのだ…
あと…使用武器だが…ここの控室にある好きな物を使って構わないのだが…
お館様がお前にこれを使うことを特別に許可してくださった…」

看守が指さした先には布に包まれた長細いものが立てかけられている

(まさかっ!?)

慌ててその包みを手に取り布をほどくと
そこには奪われた鋏の片刃があった

奪われたいた半身のまだ半分だけではあるがこの手に戻ってきた
これだけでも心強い
だがどうして奴がこんな事をするのだ
看守に疑問を訪ねると

「俺にも分からんよ…お館様の気紛れじゃないのかな…
そんな事よりも準備が整ったなら闘技場へ出てくれ…
もう対戦相手が待っている…」

看守はスカイの背中を押しながらせかした

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控室から闘技場へと続く通路は細長くて薄暗かった
歩いてるとやがて出口が明るくなっていく
通路から出ると周囲から一斉に歓声が上がる
その中央には誰かが立っているのが見えた
あれが今日の対戦相手なんだというのは分かった

対戦相手の前に立つと横から審判が走ってきた
最初に対戦相手の紹介が始まる
今回の相手は実装人で名はグラスと読み上げられると
直後に歓声が沸き上がり
グラスはそれに応えるように剣を掲げて雄たけびをあげる

そしてスカイの名が読み上げられる
観客はこの初見の闘士に対してさほど声援を送ってこなかった
それどころかヤジすら聞こえてくる
だがスカイはヤジなど気にしない様子で鋏を振り下ろし構えた

それも仕方が無い事だ
かたやグラスは成人の実装人それに対してスカイは
実蒼人とはいえまだ少年である
始まる前から勝敗は決まっている物だとみんな思っているのだ

試合開始前を告げる銅鑼の音が闘技場に響き渡った直後に
騒がしかった観客席が静かになった

「試合始めっ」

審判の掛け声で戦いが始まった
再び観客席からは応援や罵声が上がり混沌としていた

先手必勝とばかりにスカイが挑みかかった
片手には金色の鋏の片刃を携えてグラスに斬りかかる

だがその一撃をグラスは盾で受け止め流してしまう
そして生じた隙を逃さず剣を突き立てて来る

辛うじて躱すが胸に皮一枚分ほどの浅い斬り傷が刻まれる
油断できない相手である
特にこれと言った特徴はないが実戦慣れした動きだ
下手に飛び込めば返り討ちにされてしまう

お互い間合いを取りながらジリジリと円を描くように動く
ここで相手を観察し勝機を見出さねばならないのだ

今度はグラスの方から仕掛けてきた
一瞬で間合いを詰めてきて盾を構えて体当たりしてきた
それを鋏で受け止める逆に押し返した

あの華奢な体のどこにそんな力があるのか
倍ほどもある体格のグラスが後ずさりしている

グラスの顔に焦りが見える
体格差を利用して圧倒しようと目論んだようだが
押し戻された事で算段が狂ったのか態勢が崩れていた
その隙をスカイは見逃さなかった

グラスの胸に鋏が突き立てられ
それは胸の命の石を突き砕いた
鋏を引き抜くと
全身から血を吹き出し膝から崩れ落ちるように倒れていく

審判がグラスの体を調べ死亡を確認すると
片手を挙げる

「勝者スカイっ」

と告げると観客席から一斉に歓声が轟いた
この番狂わせの勝敗に観客の興奮が止まる事が無かった

その場に立ちすくしていたスカイであったが
審判から控室に戻るように言われ
その場を後にした

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控室に着くとアールとベリが迎えに来ていた

「「初勝利おめでとうございますっ!」」

二人はスカイの初勝利を祝うと両手にはめた籠手を外し
まず傷の手当を始めた
傷口を丁寧に拭き傷薬を塗る
そして包帯を巻いてくれた

終わる頃には看守が兵士を連れてやって来て
再び地下牢に戻された

その後配られた食事を平らげ
スカイはベッドに仰向けになって寝転がりながら
じっと手を眺めていた

「今日は勝てた…明日も勝たなくてはいけない
負ける事は出来ない必ずもう片方の鋏を取り戻さないといけないのだから」

やがてその日の疲れからか深い眠りに落ちていった

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1 Re: Name:匿名石 2023/02/01-03:29:47 No:00006740[申告]
スカイの運命や如何に!?
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