タイトル:【虐】 冬の温もり
ファイル:温もり.txt
作者:ミドリムシ 総投稿数:9 総ダウンロード数:1209 レス数:5
初投稿日時:2023/01/24-23:13:26修正日時:2023/10/18-20:04:17
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部屋でくつろいでいるとテレビから明日の天気予報を告げる音声が聞こえる
『明日は記録的な大寒波が襲い、ところによって積雪をともなうでしょう。外出の際は十分な対策を…』
そこまで聞いて俺は立ち上がり強い衝動を持って出かける準備をする。
「外で凍えてる実装石ちゃんを温めてあげなくちゃ…」

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一方その頃、ここは近所の公園のとある一角にある野良実装のダンボールハウス
とっぷりと夜もふけそろそろ日付も変わる頃だ。
ダンボールの中は親実装に仔が3匹の4匹所帯だ。
そのいずれもがスヤスヤ寝息をたてて一家抱き合って眠っている。
この親実装、なかなかに賢くさらにその親からの教えを守り冬支度をよく整えていた。
とは言っても所詮は野良、古タオルに枯れ葉、新聞紙を敷き詰めた程度ではあるが。
そこに冒頭の男…俺が到着する。

俺はダンボールの横に開いている手穴から中の様子を覗き見、実装石がいることを確認する。
寒さで半覚醒状態となった仔の1匹がイゴイゴと動きまた眠りに入った。人間の接近には気づいていない。

なんともいじらしい感情が湧いてくる
くゥ~、寒くてつらそうだ!今温めてあげるからね!

俺は手穴からスプレーの噴射口を差し込み、中の可燃剤を噴霧する。
「…テェ?なんか臭うテチィ」
と、仔の1匹の浅い眠りが覚めていく。そこへ火の点いたマッチを投げ入れる。

ボワッと火がダンボール内部に充満し闇夜の公園の一角を明るく照らし出す。
「デギャアアアアアアアアア!?」
「テチャアアアアアアアア!?」
睡眠のまどろみから一転、阿鼻叫喚の地獄絵図だ。喜んでくれたようで何よりだ。
「デェ!デェエ!何でデス!?何で入り口が開かないデスゥ!?ていうか何でいきなり火事なんデスゥ!?」
親実装が出入り口を開けようとするが開かない。
言い忘れていたがスプレーの前に手穴以外の部分はガムテープでしっかりグルグル巻きにしていたのだ。
すき間からの風が寒いだろうし若干の耐久力向上になると思ったからだ。気に入っていただけただろうか?
「デジャ!デジャ!デッギャアアアア!!」
親実装がドン!ドン!と体当たりでなんとか開けようと試みる。やがて巻いてたガムテが燃え尽き拘束が緩む。
開放された出入り口から勢いよく実装石たちが飛び出す。
安物のガムテは燃えやすい。これは反省だな。

「テチィィィィィ……」   …パタッ
飛び出た火のついたままの仔の1匹が走り回った後倒れ、絶叫をあげながらもがき蠢き、声が止んだ後動きも止め、やがて物言わぬ炭クズだけが残った。
親実装は地面に転がって火消しに夢中だ。

「テチャアアアアアアアア!!ママァ!助けテチィィィ!」
また別の火のついた仔が辺りを走り回る。
「デェ!?ハァ…ハァ…待つデス!今消してあげるからおとなしくするデスーー!ゲホッ!ゲホッ!」
己の体の火消しも程々に、走り回る仔を追いかける親実装。
しかし追いつけない。仔は火を恐れる本能からか身体のリミッターが外れた全身全霊の全力疾走だ。そのパワーを地面に転がって火消しに使えば良いものを。
対して親実装は出入り口での悪戦苦闘と火傷のダメージで息が上がっている。明かりを灯した実装石親子の追いかけっこだ。美しい…

やがて仔がすっ転んで追いかけっこが終わる。
「大丈夫デス!?今助けるデスーー!!」
ポフポフと仔を叩いたり己の体で覆いかぶさってみたりして仔の火消しに努める。

努力の甲斐あって仔の火はなんとか消し止められたようだ。いつの間にか親実装についた火も消えている。
「テヒュー…、テヒュー…」
しかし仔の髪、服は焼け落ち、肌も焼けただれ、目は白濁しかかっていた。まさに虫の息といった様相だ。
「ああああ!なんて事デス!しっかりするデスーー!!」
「…マ…マ…」
親実装の腕の中で息も絶え絶えの仔。元気づけようと声をかけ続ける親実装。素晴らしい親子愛につい口元が緩む

「ウゥ…ハ!そ、そうデス!他の仔はどうしたデス!?」
泣きそうになるがじっとしてはいられない。他の仔の安否が気にかかる。
「テエェェ…ェン…ママ…アアア…」
かすかに聞こえる仔の声。しかしどこから?
「ママ!ママァァァァァァ」
「デェ!?まだ家の中にいるデスゥ!?」
見ると燃えて崩れかかったダンボールハウスの下敷きになっている仔がいるではないか!
すわ、助けるべく駆け寄る親実装。だが…すぐ近くまで来たがそれ以上近寄ることが出来ない。
火の勢いが強すぎるのだ。凄まじい熱気。さすがに躊躇してしまう。
「ママァ!はやく助けテチィ!熱いテチィ!死んじゃうテチャアアアアア!!」
助けを懇願する仔。
「…デェ!…デェェ!…デッスーーン!!」
躊躇しつつも腕の中の仔を優しく地面に降ろし、意を決して火の中に飛び込む。
「頑張るデス!もうちょっとだけ耐えるデスーー!」
熱に耐えながら仔を覆っているダンボールを解体していく。すでに燃焼が進んでいるため崩しやすくなっていたのだ。
やがて手を伸ばす仔の手を取り、一気に引きずり出す。
「デハァッ!デヒィーッ!デヒーッ!」
仔の手を引いて一目散に駆け出す!なんとか安全圏まで離れることが出来た。「ここまで来れば大丈夫デス!さ、ケガは無いか見せるデ…」

見ると仔の腕だけしかないではないか!
「ママァァァ!痛いテチャアアアアアアアア!!」
「デエエエエェェェェ!?」
仔はまだ火の中だ!
「テェェェェン!ママァァァァァ!」
よく見ると仔の身体が炭化しつつある。腕がちぎれたのは脆くなったせいか。
「ママ!早く助けテチィィィィ!」
「デ…、デ…、もう無理デスゥゥゥ!ごめんなさいデスゥゥゥ!!」
仔の懇願を拒否する親実装。火の勢いはピークに迫り、やや離れて観察している俺の所にまで熱気が伝わるかのようだ。
もはやこの火の中に飛び込めば親実装も五体満足で帰れるかどうか…。自分は他の仔のためにも健在であらねばならんのだ。
「…ママ?そんな…ワタチを見捨てるテチかぁぁぁ!!?」
思わず目を背ける親実装。
「熱いテチ!苦しいテチ!痛いテチ!もう死んじゃうテチャアアアア!このクソママ!さっさと助けろテチャア!」
先ほど地面に降ろした助けた仔を抱きかかえ、震えながら闇夜に向いたままの親実装。
「テチャアアア!そいつはどうせもうダメテチ!そんなヤツよりワタチを生かせテチィ!」
押し黙ったまま涙を流し震える親実装。
「ワタチは世界一不幸な実装石テチィィィィ!!!」


…ッ  

…!


……


…やがて声が止み、パチパチと燃える音だけが残った。…潮時か。
俺はあらかじめ用意していた水をたっぷり貯めたバケツを持ちザバザバと消化作業をした。
「デ…?ニンゲンサンデス…」
親実装が今さら俺に気づく。(ちなみにリンガルは起動してあるので会話に支障はない)
「やあやあやあ、実装石ちゃんごきげんよう。今夜は暑いね~、俺のサービスは気に入っていただけたかな?なに、礼はいらんよハッハッハ」
我ながらいけしゃしゃあとした物言いだ。
「デ…まさかこの火事…ニンゲンサンがやったデス?ワタシたちがこんな目にあったのはニンゲンサンのせいなんデス?」
憔悴していた親実装だったが、やおら生気が戻り出す。
「おいおいおい人聞きが悪いな!俺はお前らに親切をしてやったんだぞ!?きっと寒さで凍えてるだろうから温めてやったんだ!感謝しろ!」
ヒトの親切を無下にするヤツはクズだ。死んだばっちゃもそう言っていた。
親実装の身体がわなわなと震えだす…


「デジャアアアアアアアアアアアアア!!!」
                                        …パキン

「よくもやってくれたデス!ぶっ殺してやるデス!!ワタシの仔の痛みと苦しみの100倍味あわせてやるデス!!!泣いて謝っても許さないデシャァァァ!!!!」
「あ~、分かった分かった。でも手元の仔はいいのか?お前の怒号がトドメになって偽石が逝っちまったぞ?」
「デ…?」
見ると抱きかかえていた仔の目が完全に白濁し下を突き出しコト切れていた。
「デ…しっかりするデス、もう火は止んだんデス、起きて返事をするデス」
ゆさゆさと仔を揺するが返答は無い。その瞳は虚空を見つめたままだ。
「それともうひとつ、な」
俺はトングで掴み上げていた炭クズを親実装の前に突き出す。
親実装は最初分からないといった表情だったが、数秒してそれが何か分かったようだ
「長…女…デス?」
「へ~コイツ長女だったのか。ダンボールハウスから飛び出した後、お前が地面に転がってる間に焼け死んだヤツさ。今まで忘れてたのか?まあ色々忙しかったからな。仕方ないか」
親実装の顔から先ほどまではちきれんばかりにあった覇気が消え血の気まで失せていく。我が仔が全滅したのだ、さもありなん。

…気付けしてやらねばな。
俺は長女の丸焼きを親実装の口の中へ無理やり押し込む。
「ム、ムググ、や、やめるデス、オゴゴ」
「甘えるんじゃない!これからもっと寒くなるんだ!親がそんなことでどうする!?仔を糧にしてでも生きるんだ!生きろ!生きてくれぇ!!!」
勝手なことを言いながら喉奥まで長女を押し込み、ゴクンと喉を鳴らさせる。
「デ…ヒ…デヒ、デヒヒヒヒ!」
親実装が奇っ怪な笑い声を出す。気に入っていただけたようで何よりだ。
「デヒヒ~♪オマエたちママのお腹の中に入るデス~♪とっても温かいデス~♪」
パキン死した仔も腹に収めていく。うむ、愛する家族はいつも一緒だ。そんなセリフを昔どこかで聞いた。

俺は良いことをしたイイ気分のまま公園をあとにし、コンビニで肉まんを買った。
明朝はもっと冷えるだろうな…そう思いながら家路についた。



~~~完~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






*あとがき*
初スクです。
長年ROM専だったけど最近盛り上がってるので季節に合わせて書いてみました。
越冬ネタ好きですが、あえてファイヤーで。
語り手の「俺」は性根のねじ曲がった虐待派です。
親実装についた火が軽めだったのは抱きかかえていた仔たちがバリアになったからでしょう。
長女は貧乏くじを引きました。
糞蟲ちゃんは火事場泥棒するつもりが逃げ遅れたようです。





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1 Re: Name:匿名石 2023/01/25-03:04:03 No:00006725[申告]
公園が火事にならなくて良かった(違う
愛情深い親蟲が壊れるところは最高だね
2 Re: Name:匿名石 2023/01/26-01:11:56 No:00006726[申告]
火攻めに、続いて
氷点下で水攻めも見たいでごわす
3 Re: Name:匿名石 2023/01/26-18:37:31 No:00006728[申告]
この令和の時代に新たな実装創作者さん達が誕生している事実に嬉し涙を禁じ得ない
4 Re: Name:匿名石 2023/02/02-23:09:41 No:00006744[申告]
GJ!面白かった!
クソムシちゃんのセリフがたまんねえ〜
ツボを抑えてて好き過ぎる
良かったらまた書いてください!
5 Re: Name:匿名石 2023/04/27-06:04:42 No:00007097[申告]
燃やして殺すの冷静に考えるとかなりエグくて好き
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