タイトル:【観察虐】 実装石と生きる一族③
ファイル:実装石と生きる一族③.txt
作者:石守 総投稿数:9 総ダウンロード数:721 レス数:3
初投稿日時:2021/12/18-19:50:03修正日時:2021/12/18-19:50:03
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   実装石と生きる一族③   糞蟲と案山子



さて、糞蟲たちの処分をどうしようか。
いや、糞蟲どもの末路は、もう決まっているのだが、問題はその方法だ。

警報に対して速やかに対処することを最優先にしたため、必要な道具を
何も持って来ていない。ほぼ手ぶらだ。
カッパと同色同材質の防水抗菌手袋をしてるが、それでも糞蟲に手で
触れるのは最小限にしたい。 

そう、まさに糞蟲である。
親も仔も、我が家の庭で好き勝手の我が物顔だ。

『ママぁ、おなかがすいたテチィ。ママばっかり、なにたべてるテチィ?
 かわいいアタチにもコンペイトウかステーキよこすテチィ』
『アタチもう、つかれたテチ。あるくのムリテチ。あるきたくないテチ。
 ママ、トクベツにアタチをダッコさせてやるテチ。はやくダッコテチ』
『つかれたテチ、つらいテチ。だけど、このつらさのさきには、ママが
 いってたチアワセなカイジッソウせいかつがあるテチ。がんばるテチ。
 テププ、かわいいアタチのミリョクでニンゲンドレイつかまえるテチ♪』
『ブサイクなイモウトチャにはムリテチ。ドレイニンゲンにケンジョウ
 させるステーキとコンペイトウは、ぜんぶアタチのものテチ♪』 
『ブサイクがブサイクにブサイクと言ってるのは、イミわからんテチ。
 アタチのウツクしさにカナうものないテチ』

『  ボリボリ ボリボリ  デ、ペッ
 殻が少し固いデズが、なかなか美味いドングリデズ。ほめてやるデズ。
 デ、長女ちゃん、お腹空いたデズ?  ガサガサ
 アダシの美しさには敵わないデズが、世界一可愛い娘ちゃんたちには、
 まだこの実は固すぎて食べられないデズから、高貴なアダシが集めた
 ニンゲンの餌を少し上げるデズ。これを食べるデズ。
   ボリボリ ボリボリ
 クンクン、しかし、ここは、公園デズ?ニンゲンの家デズ?
   ボリボリ ボリボリ ゴギュ……ン
 おいしそうな木の実のニオイとニンゲンのエサのニオイがするので
   ボリボリ ボリボリ
 高貴なアダシがわざわざ入ってやったデズが、木がいっぱいの感じは
 公園の感じに近い気がするデズ……
 他のジッソウセキのニオイもあるデズが、少ない気がするデズ。
 飼いジッソウセキのいるドレイニンゲンかもしれないデズ?……

 ……まあニンゲンがいたら、美しいアダシの魅力でメロメロにして
 スシでもステーキでも献上させるデズ♪』

   …………うるせぇな(怒)

糞蟲は、虐待されるために存在する、いや、造られた。
その言葉に聞く価値は1ミリもない。
よって、ここからは一言も口を聞かせないことにする。

糞蟲どもの死角になる木の陰で、特製リンガル端末をカッパのポケット
から静かに取り出す。
手袋を外し、タッチパネルで内臓された特殊機能を起動。

『実装石生体チップ・パルス・ジャミング・モード』だ。

バッテリー消費が凄まじいが、一瞬で済ませればいい。
射程は約5メートルだが、ここは確実に仕留めたい。

一息、静かに、ゆっくり深呼吸。
……終わった次の瞬間に、飛び出す。

木の陰から出て、足を滑らせるような速足で、一気に距離を詰める。
幸せ思考回路を発動させながらオタオタ歩く糞蟲どもが、自分たちに
何か大きなものが近付いて来る気配に気付き、その穢い顔を私の方に
向けた時には、私は既に、1メートル強の距離まで迫っていた。

   ジャミング・パルス 発射

次の瞬間、糞蟲どもは、声ひとつ上げることさえも出来ずに、パタパタ
コテコテと地面に倒れ伏す。
例えれば、糸が切れた不潔で不快なマリオネットだ。
意識はあるままだから、目は見開いている。
しかし四肢はおろか、眼球さえも動かせない。
動いているのは、脳の本能部分で動く内臓ぐらいだろう。

最新式のジャミング・パルスは今までのものより、より正確かつ深く、
通常、“偽石”と呼ばれる実装石生体チップが発する思考パルスを任意に
誤作動させ、その身体を麻痺させることができるようだ。

運動機能を麻痺させるが、筋肉を弛緩させず、むしろ収縮させるため、
糞さえも漏らさせない優れものだ。

これが我が社から支給されたのは2週間前だが、何か面倒だったので、
まだ試運転さえしていなかった。
ぶっつけ本番でうまく行って良かった。
ありがとう、優秀なスタッフたち。
我が社のスタッフが生み出す製品は、極めて高性能かつ有用なのだが、
機能その他のネーミング・センスが中二病チックなのが、玉に瑕だ。
とはいえ、正直、私の好みに近いセンスなので、別に問題はない。

さて、糞蟲だ。
糞蟲どもには言葉を掛けてやる労力さえもったいないが、優しい私は
一言だけ、説明してやる。

「ここは、俺の家の庭だ。
 糞蟲どもが勝手に入ったので、殺す。
 糞蟲どもは、ゴミのように死ぬ。
 楽しみにしておけ」

聞こえていても理解する機能は麻痺しているだろうが、どうでもいい。
説明してやる慈悲は与えた。
あとは、イヤだし面倒だが、一気に始末してしまおう。

   ……朝飯は完全に抜きかな、こりゃ。
   あぁ、ちきしょう、腹が減った。

===================================

やや細めで生木の長い枝を探し、糞袋だけは慎重に避けて、服の上から
糞蟲仔実装の腹に、力任せにズブリと突き刺す。
トノサマガエルの腹に同じことをした感触が蘇る。
痛みは感じるので、反射でビクンビクンと動くが、声も糞も出ない。
素晴らしい麻痺機能だ。

糞蟲どもは、基本“蟲系”の末裔だから、生体チップ、面倒なので通常の
例に倣い、偽石、と書くが、その偽石は胴部にある。
大体、胃の上辺りだ。

   ……糞蟲の異常な食欲は、偽石の場所のせいか?

ともあれ。
枝を突き刺したのは腹の下の方。
殺してしまってもいいのだが、なるべく長く苦しませたい。
腹の下の方なら、偽石を傷付ける心配は少ない。

突き刺した枝を、そのまま背中に貫通させる。
そのまま次の仔実装の腹を貫通させ、次も同じく。またその次も。
5匹の仔実装が、見苦しく一本の枝に実った。

穢い赤い血と体液化している緑の葉緑体が地面に滴り落ちる。
不潔だが、仕方がない。
このサイズの仔実装なら1匹1キロ前後の重さでしかないので、5匹が
枝に実っても大したことはない。

問題は、親糞蟲か。

まず、これが持っていた大きなスーパーのレジ袋、中には生ゴミが満載で、
さっきもこの生ゴミを仔糞蟲に喰わせていたわけだが、言うまでもなく、
私にとっては無価値以下である。
この親糞蟲自体とともに悪臭と不潔の根源を、仔糞蟲が実る枝とは別の
枝で親糞蟲の醜い太い腕から外し、とりあえず一旦地面に置く。
この文字どおりのゴミは、後で片付けることにする。

そしていよいよ、親糞蟲の身体本体なわけだが、さてどうするか。
これのサイズなら、7キロくらいの体重があるんだよな。

しかしこれは、存在を許したくないほど汚穢だ。
頭飾羽という名の髪はフケとシラミだらけのベタベタ、胴羽という名の
服も緑ではあるが、洗ったこともないのだろう、積年染み込んだひどい
汚れでなんとも表現できない色になり果てていてダニだらけ、一瞥すら
したくもないが否応なしに目に入ってしまう腰羽という名のパンツも、
当然のようにガビガビでもはや焦げ茶色に近いド深緑。
しかも、当然のように吐きそうなほど臭い。
間違っても触れたくはない。
が、他に方法はないか。

まず仔糞蟲の連なる枝を両手で持ち、穢い実を身体からなるべく離す。
そして親糞蟲は、防水ブーツの底で蹴って転がして移動させる。

   ゲンッ ゴロゴロ……  ボンッ ゴロゴロ……

足裏に伝わる感触は、ブヨブヨしているが固い芯がある肉塊だ。
この親糞蟲なら、同属食いや仔食いも積極的にやっていたことだろう。
でなければ、野良生活でこんな肉塊にはなるまい。

   ボンッ ゴロゴロ……  ボンッ ゴロゴロ……
   あぁ、気持ち悪い
   ブーツの底越しにすら、こんなのに触りたくねぇ 

目を見開き、身体が固まり、醜い手足を投げ出して地面を転がるこれは、
極めて不気味で不快な、顔手足付き緑色のサッカーボールだと思おう。

無遠慮に勢い良く転がしているため、親糞蟲の身体や服は地面や木の根、
石などで削れまくり、見る間に赤緑の血に塗れ、ボロボロになっていく。

5分ほどで森を抜けると、デカホソ組が裸のままで、服を小屋の屋根や
植木の上に広げてテキパキと干しているのが目に入った。
この糞蟲と、同じ野良実装石とは思えん。
背が高く視野が広いためであろうか、デカが真っ先に私に気付く。

  ア、ニンゲンサマ…………デ、デッデエェ?!
  ママ、ドウシタテチ…………テ、テッテッ、テッチィィィ?!!!

私はデカたちには目もくれず、その脇を糞蟲を蹴り転がし、仔糞蟲付き
枝を持って通過する。
デカたちはまず私の異様な様子に驚き、そして、私の足元に転がる物と
手に持つ物が何かを理解すると、一様に激しく怯え出した。

   デ……デェェェ  テ、テチィィ  レチィィィ……

恐怖のあまり、赤と緑の涙を流し、漫画のようにガクガク震える。
デカとホソが、健気にも仔どもたちの視界を遮るようにして胸に抱え、
こちらにみすぼらしい背中を向け、背を丸めた。
見せたくなく、見たくないのだろう。

だが、この糞蟲どもがデカホソ組と接触した場合、デカホソの仔たちは、
この親糞蟲に喰われてしまうことになった可能性が高かろう。
そうでなくとも、何かしらのろくでもないことになったであろうことは、
ほぼ間違いないと思われる。
私がやったことは、デカホソたちを守ったことにもなるはずなのだが、
まあ、どうでもいい。

私にとって、デカホソ組とこの糞蟲どもなど、観察対象かそうでないか、
その違いしかない。
そもそもが虐待されるために私の祖父に造り出された実装石に、感謝(!)
などされても気持ち悪いだけだ。

親糞蟲を蹴って転がし、仔糞蟲枝を持ったまま、水道の近くの庭の東側、
塀際にある花壇のところまで移動する。
そこに糞蟲どもを一旦置く。

   あぁもう  既に疲れてしまっているんですけど!

誰にともつかずに心の中で訴えるが、時間がない。
偽石の麻痺は、1時間ほどだ。
急ごう。   頑張る。

小走りに、庭の物置からガスバーナーとトング、刈込バサミ、それと、
鉄パイプを6本持って来る。

まず、親糞蟲からだ。

無造作に、刈込バサミで、親糞蟲の頭覆羽という名の頭巾と服を切る。
皮膚を裂き、肉まで切れているが、スピード勝負なので気にしない。
パンツまで切り剥ぎ、裸にしてから、髪も切り取る。頭の肉ごとだ。
糞も漏れず、静かでいい。
見事に穢い禿裸が1匹、ここに現れた。
しかし、まだ完成ではない。

次は、手足と耳。
同じく刈込バサミで無造作に切り落とす。  バヅンッ バキィッ

   デェエ  テ、テッチィィ

離れたところからデカホソたちが見ないようにしながらも見てしまい、
そして怯えているようだ。
怖いもの見たさか?         レフー チョウチョサン ヒラヒラレフー

……まあいい。気を取り直して、親糞蟲の仕上げだ。
トングで転がしながら、髪、両手、両足、両耳を切り取った部分を、
ガスバーナーで念入りに焼く。再生防止だ。
肉が焼ける、それなりに香ばしいニオイだが、極めてクサい。
これだけ不潔なのだから、当然である。

さてとこれを鉄パイプに……おっと忘れてた。
物置から追加で、透明の水槽用ホースと大型カッター、それと工作用の
大型ホチキスを持って来る。

素早く親糞蟲の腹を切り裂き、糞袋から総排泄腔に伸びる糞管を途中で
断ってその先端を透明ホースに大型ホチキスで接続する。
ホースのもう一方の先を、親糞蟲の口を抉じ開けて、ノドの奥深くまで
無遠慮に突っ込む。
汚い歯が何本か折れたが、どうでもいい。

最後に、緑を通り越して黒く糞がこびりつく総排泄腔を大型ホチキスで
何回も留めて塞ぎ、さらに念入りに体内と外側から焼いて、固着させる。
……フルフェイス越しなのに、耐え難い臭気だ。
この場合、通気性が良いのも考えものだ。
必死に吐き気を抑える。

総排泄腔を単に焼いて使えなくすると、糞が口から出るようになる。
良く知られた方法だ。
それはそれで楽しいのだが、今回行った方法の方が、糞が糞蟲の体内で
完結というか循環する点において、断然清潔である。
当然、臭いも少なくて済む。
しかも、うるさい声も出せなくなるから、一石三鳥だ。

足で踏みつけて動かないようにして、鉄パイプを一気に、さっきまで
総排泄腔だった部分から、偽石ギリギリまで突き刺し通す。
それなら総排泄腔を焼く必要がないのでは?と、以前指摘されたことが
あるが、私は無駄なところで念入りな性格なのだ。

さて、そして、鉄パイプを地面に立てれば、

     禿裸丸坊主親糞蟲の案山子

完成だ。

親糞蟲案山子ひとつの完成までに、15分もかかってしまった。
急がなくては。

仔糞蟲は小さいので厄介だが、枝を刺して開けた穴もあり、楽ではある。
親糞蟲と同じ手順を繰り返す。
徐々に手慣れてきて、1匹当たりの作業時間が短縮されていく。
仔糞蟲の方が、骨なども柔らかいし、何より、まだ親糞蟲ほどの不潔さ
ではないので、気分的に楽ということもある。

見事、1時間弱で、大小6つの禿裸糞蟲案山子が我が家の庭に並んだ。

壮観である。
……汚ならしいが。



     ——続く——

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1 Re: Name:匿名石 2021/12/19-00:56:23 No:00006452[申告]
楽しくなってきましたね!
続き、期待しております!!
2 Re: Name:匿名石 2021/12/19-04:02:30 No:00006453[申告]
糞蟲案山子!これは楽しい
3 Re: Name:匿名石 2022/01/13-22:13:29 No:00006468[申告]
カカシオブ実装石
基本にして究極の糞蟲の末路かな
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