タイトル:【愛虐】 夢にまで見た異世界転生なのに実装石とかマジですか!?第三話
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作者:謎の覆面の男 総投稿数:4 総ダウンロード数:581 レス数:4
初投稿日時:2017/10/21-03:15:09修正日時:2017/10/21-03:15:09
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『 夢にまで見た異世界転生なのに実装石とかマジですか!? 』


前回までのあらすじっそー


電車に轢かれて挽肉になった主人公は、夢にまで見た異世界転生を経験する。
だが履いてない女神テラの策略により、転生先を実装石という最弱の存在に設定されてしまった!!

墜落死、事故死、お食死…

どんどん悲惨な死を経験する主人公。
しかし主人公も負けていない!

自分と同族の死を積み重ねてトライ&エラーを繰り返し、
自分に与えられた2つの能力を解析したのだッ!


この物語は、


“ 生まれる度に偽石が偶然どこかに紛失してしまう ”という不運なのか幸運なのか分からない運命力と、
“ 体内エネルギーを消費して任意の部位を瞬間再生&生体パーツ取り込みが可能なほど極限まで高められた再生能力 ”を駆使して、


俺YOEEE!!!な主人公が、
私TUEEE!!!な女神様に、

100年に渡って、予想の斜め上を突いたストーリーを紡いでいく、
愛と勇気と、嫌がらせとセクハラと、時々ほっこりのラヴコメだッ!!





…あ、ラブ・コメディじゃないよ!?ラヴクラフト・コメディだよ!?
なぜ、毎回両手に歯を付けてるのに誰も主人公をイゴーロナク様wと突っ込んでくれないんだッ!!(笑)










〜 第三話: 愛をとりもどせ!! 〜





小高い丘の上、俗に一等地と呼ばれる土地に、大きく立派な屋敷が佇んでいた。

その屋敷には、寂しげな初老の女性が一人で住んでいた。
女性は、旦那に先立たれ、子ども達も成人してからは屋敷に寄り付きもされず、
毎日、毎日、金と暇を持て余して、寂しい想いをしていた。

子ども達には、邪険にされ遺産を残して早く逝ねとまで言われ、
他者との繋がりを求めて、慈善事業を手掛けようとも、
女性の周りに寄りつくのは、金の無心に訪れる者だけだった。

そんな中、彼女は 一石の実装石と出会う。
彼女に庇護を求め、金ではなく彼女自身を必要としてくれて、彼女に依存してくれる存在。


女性が実装石に傾倒するのも無理のない話だった。


無論、欲望の塊の実装石の事である。
女性の愛誤によって、順調に糞蟲と化していき、
その眷属たちが屋敷の隅々にまで蔓延った。

当然、気付けば女性一人の手に余る状態となっていたが、
それでも女性は、金ではなく自分に対して依存してくる実装石達に厳しくできるはずもなく、
屋敷からは、常に実装石達の下卑た笑い声が鳴り響き、独特な すえた便臭が漂ってくるようになった。

そうして、何時からか、初老の女性の住む屋敷は、
地域の人々から侮蔑と畏怖を込めて“ 実装屋敷 ”と呼ばれ始め、
より一層、人の足は遠退いていった。

もちろん、女性とて手をこまねいていた訳ではない。
調教師や使用人は随時募集されていたが、高給だというのに3日と続いた者はいない。

調教師が躾のために負の条件付けをしようものなら飛んでいって叱責し、
使用人が掃除のために実装石達を邪険にしようものなら我が事のように烈火の如く怒り狂う。

女性だって実装石達に非がある事は理解はしているのだ、
だが、それでも、どうしても、
我が子のように可愛がっている実装石達の方を庇ってしまいがちだった。


そのうち、求人を出しても、どれだけ時給を釣り上げても、
1年以上、誰一人として女性のもとに訪れる者はいなくなった。
それどころか、子ども達からさえ、絶縁状を送られてくる始末となった…。


女性は、節くれだった指で顔を覆い、さめざめと泣く。
そんな女性を実装石達は笑いものにしながら糞を投げつける。


ああ やめて
前は あんなにも私の庇護を求めてくれたじゃない
どうして なぜ子ども達と同じような目で私を見るの


餌をもらう時間になれば一転して媚を売り始める実装石達。
その姿は、もはや、金が餌に置き換わっただけの、
かつて自分に纏わりついてきた金の亡者達にソックリだった。



女性は、厚く化粧を塗った顔を涙でぐしゃぐしゃに汚し、
そこかしこに刻まれた皺を更に深くしながら嗚咽する。



…そんな彼女の目の前に、
一石の仔実装が誕生した。





………




「デップップ〜、華麗なる私の50回目の出産デス〜♪ 美しい私の仔どもは可憐デスゥ〜♪
 デ? なんで一石だけしか生まれてこないデス? まあデカいからいいデス♪
 今度は、このデカさの仔をたくさん産むデス♪ すぐ次の種付けして産みまくって私の一族でこの世を埋め尽くすデス♪
 おい、ドレイニンゲン! なにしてるデスッ!はやく私の仔を取り上げて、粘膜を舐め取れデスッ!」


しゃれたデザインのリンガル付き首輪を嵌められた親実装石は、
贅沢な食事のせいで肥大化した全身を揺らしながら喚き散らして俺を出産した。

もちろん、この家がどんな状態かは、胎教の時点でしっかりと把握している。
ノーパン女神の手違いなのか、どうやら俺は、愛誤派の家に生まれ落ちたようだ。

胎内には、俺と同じように肥沃な栄養を享受して、栄養価の高い仔実装共が犇めきあっていたので、
もちろん全個体を解体して生体パーツとして取り込んでますよ?

一見すると、生まれ落ちた俺の姿は、仔実装というよりは中実装並みの大きさというだけで、他の実装石と同じ姿だ。
もちろん相手を油断させるための偽装ですけどね? 中身は、そりゃーもう魔改造かってくらい改造しまくってるぜ?
なんなら、ここでアクションゲームばりの“ 実装無双 ”を披露してもいいくらいだからな。

しかし、BBAに舐め回されるとか、どんなマニアックな趣向だよ…。
キモチワルイし、さっさとこいつら全員を刻み殺して、ここで更なるトライ&エラーを試すのもありかな。



なんて事を思っていたのだが…。



「どうして…こんな事に…。私は、ただ…誰かを愛して…。
 同じように愛してもらいたかっただけザマス…。誰か……助けて………。」



女性が嗚咽を堪えながら、そんな事を呟いて、俺の粘膜を舐め取ろうと口を近づける。



…おいおい、これじゃあ、あんまりにも哀れだろう。



「テッテレー!テチ!(ばあさん! そんな糞蟲の言う事を聞く必要はねぇよ!)」



俺は産声をあげると共に、女性の手をするりと抜け出して、
自分の手で体に纏わせていた粘膜を削ぎ取り、親実装を睨みつけながら歩み寄る。

俺の眼力に気圧されたのか、親実装は固唾を飲んで俺の動向を見張っていた。

俺は親実装の眼前に立つと、鋭いガンを飛ばしながら、口腔内の粘膜を親実装に向けて吐きつけてやった。



プッ!
ベチャッ!



「デ、デ、デシャァァァア!!? こいつ!主人である親に向かって粘膜吐きつけてきたデス!!
 糞蟲デスゥ!!!おいドレイニンゲン!!!その糞蟲を殺すデギャアアアアッ!!!!!」


「テチャ〜??テヂャッ!(ハァ〜?お前が親〜??主人〜?? ふざけんなよブサイクが、俺の主人は、てめぇみたいな糞蟲にゃ力不足だ!)」



俺は鼻で笑いながら、親実装を小馬鹿にして侮蔑の言葉を浴びせる。



「デッシャアアアッ!!!親を糞蟲扱いとはトコトン糞蟲デジャアア!
 ドレイに頼むまでもないデズァッ!!!
 お前みたいな糞蟲は私がこの手で制裁してやるデシャァアア!!!」


親実装は怒り心頭といった様子で、顔をゆでだこのように真っ赤に染め、
唾をまき散らしながら、ブクブクと肥大化した右手を俺に向かって振り下ろした。


その一撃は間違いなく、同格相手の頭蓋すら叩き割るほどの重量と速度を持っていた。



ま、通常の実装石基準で…ならだけどね。



俺は左手を頭上に掲げて、親実装の一撃に対して防御姿勢を取った。




バギィィィ!!!




骨の軋む音が響く。
親実装は、最初は不敵な笑みを浮かべて俺を見ていたのだが、
徐々に脂汗を流し始め、終いには右手をブンブンと振りながら大げさに地面を転げまわった。


よく見れば、親実装の右手はポックリと綺麗に折れ曲がっていた。



「デギョォォォッ!!?イタイイタイデズァッ!!!? なんで私の強靭なおててが折れてるデジャアア!!!?
 こんなの嘘デスゥ!!夢デスゥ!!!私がサイキョーなはずなんデスゥゥウ!!!!!!」



「テプププッ!プギャーッ!テッテェェぇぇんっ?

 (ははは!m9(^Д^)ザマァ!!俺の前腕にゃ、栄養満点の実装石5匹分の脊柱と肋骨を骨組みにした籠手が仕込んであるんだよ!
  しかも自分で骨折と再生を繰り返して お前のへなちょこパンチの100倍の痛みに耐えながら骨密度を限界まで上げたんだぜぇぇぇ?)
 
 テチ、チプププッ?
 (自滅しておいてサイキョーとか笑えるぜ、あ、ちなみに俺の最強モードはこれからだぜッ?) 」



俺は親実装を蔑みつつ、邪悪な笑顔をほころばせると、
四肢を折り曲げ接着面の皮膚を癒着させることで、通常の実装石サイズに偽装していた両手両足を伸ばしていく。



ミシッ…ミシミシミシッ…
ベリッ…バリバリバリッ!



骨が軋み、擬態用に全身に張り巡らせていた皮膚の裂ける音が辺りに不気味に響き渡る。
そして俺が四肢を完全に伸ばして立ち上がった時、その場にいた誰もが驚愕の表情を顔に浮かべた。



そこには実装石には あるはずのない前腕・上腕、大腿・下腿を携えた、
限りなく人のシルエットに近く、だがあまりにも、人からも 実装石からも かけ離れた異形の存在が聳え立ったのだ。



両手の先端は、不気味な頭蓋骨状のナックルと、牙のように研ぎ澄まされた5本の鉤爪が指代わりに生えていた。
鉤爪の間、手掌に当たる部分には、ぬらぬらと粘液を垂らす顎がガチガチと不気味に開閉している。

そして、その両手の顎の奥からは…


ぞるっ…


と悍ましく蠢動する舌の音が聴こえる。

…いや、それは最早、舌と呼ぶには余りにも邪悪すぎる。
鋭い槍のように突き伸ばすことができる舌筋には、夥しい数の小さき貌が蠢いていた。

サイズ的には蛆実装程度の貌だったが、それらの口から声にもならない怨嗟の産声が漏れだしている。
小さき貌の一つ一つが、窒息で喘ぐ金魚のようにパクパクと口を動かし、寒さに震えるように歯を打ち鳴らしていた。

無論、それだけでは、この異形は語り尽くせぬ。

前腕には、バックラーのように放射状に骨を密集させた籠手が形成されていた。
肋間に接合された腱を用いて開閉ギミックを施しているのか、それはまるで本体と別の生き物のように蠢いている。

もし、この名状しがたき存在を形容する言葉があるというのならば…。
それは…。




この世全ての悪意



悪行と背徳の体現



内に邪悪を探す者



“ イ ゴ ー ロ ナ ク ”





「デギャアアアアアア!!!?
 く、糞蟲どころの騒ぎじゃないデズァァァッ!!!??
 ば、ばばばば、化け物デジャアアアッ!!!!!!!!!」



親実装は、糞を垂らしながら、腰を抜かして後ずさる。
取り巻きの眷属たちも揃って失禁しながら呆けた表情で俺を見上げていた。

ご婦人に至っては、もはや、この世の終わりを告げられたかのように、
静かに涙を流しながら、手を組み、天に祈りをささげていた。



…はい、こんなもの、およそ人が考え付いて良いデザインではないです。
どう考えても邪神様です、本当にありがとうございます。
そんな諦めの言葉が浮かぶほど、醜悪なデザインに魔改造しちゃいました(笑)



あ、そうそう。
そういえば、最初のトライ&エラーの時に発見して、まだお披露目してない実験成果がいくつかあるんだよ。
せっかくだから、今回は、それを一つ紹介しようか。




ズシンッズシンッ




俺は抑えていた筋肉を自己再生で膨張させて肥大化させた体躯を揺らしながら、親実装の元へ歩む。
近寄られた親実装は、悲鳴をあげることすら叶わず、泡を吹いて失神していた。



まあ、これからやる事に意識のあるなしは関係ないし、別にどうでもいいんだが(笑)



俺は、親実装の後頭部を鋭い鉤爪で掴み上げると、手掌の顎と舌を使って頭蓋に穴を開ける。



ズボッ!
ズガガガガガッ!グジャッ!グジュッ!グプッ!
パキンッ!!


「デ…ギャギャギャ…ごぷぇッ………」


穿孔した頭蓋から舌を体内に侵入させて、親の脳と偽石を滅多刺しにした。
すると親実装の口から、肺から空気を絞り出したような間抜けた音が漏れ出す。
その様は、正に糞蟲に相応しい呆気ない最後だった。


だが、もちろん、これで終わりじゃないぜ?


俺は親実装の脳内に、舌に埋め込まれた無数の貌の一部を剥離させて引き抜く。
そして、剥離させた貌に意識を集中させて自己再生を開始した。

すると…。


「デ……デガガガガ……げぷっぐぷっ……」


死んだはずの親実装の口から、再び声が漏れ出た。
よしよし、成功だ。


俺は、掴んでいた親実装を投げ捨てる。


ブンッ

ゴロゴロゴロ…ドサッ!


床に打ち捨てられた親実装は、まるで力が入っていないのか、
受け身の姿勢も取らずにボールのように転がって行った。


そして、転がり終えた先。
実装石用の出入口が備え付けられた玄関を背に、親実装はゆっくりと立ち上がった。



「でぎゃああ!こんな奴に勝てるわけないです!
 私の娘たち!私を逃がすためにあの化け物の足止めになるですっ!」



バタンッ!
ガチッ!


妙に流暢な言葉を使って、親実装は自身の眷属達に足止めを命令すると、
実装石用の出入り口から退却し、誰も逃げれないように表からドアを閉めた。




「「「「 デッシャアアアッ!!!??
     あの糞親、華麗なる私達を囮にしやがったデズアァァァッ!!!! 」」」」




屋敷に蔓延る蟲達は、親実装の行いに対して、
あるモノは憤り、あるモノは絶望し、あるモノは哀願しながら再び失禁する。



ははは、阿鼻叫喚だねぇ。

ああ、女神様ならもう気付いているかな?
もちろん、あれ、親実装じゃないよ? わかるかな? わかるよねぇぇぇ?



俺は心の底から、それはもう邪神様にも負けないくらいの、
チャーミングな醜い笑顔でミツクチの口角を吊り上げて嗤った。

そう、舌に埋め込んでいる貌は飾りなんかじゃない。
胎内で姉妹達に孕ませて産ませた蛆実装そのものだ。


初回転生時のトライ&エラーで気付いた事なんだが、
蛆実装をそのまま自分に移植すると、蛆の脳を上書きして、自分の脳の予備タンクにする事ができるんだわ。

で、予備タンクを脳と偽石を破壊した同族に植え込んでから部分再生させると、あら不思議!

植え込まれた予備タンクが、寄生先の脳の残骸を素材に、勝手に自己再生して俺の脳として復元しちゃうのさ♪


つ  ま  り


自分の意のままに操れるお手軽コピーが作れます(笑)
もちろんコピーがどうなろうとオリジナルにはダメージなし。

操作方法は、ラジコンみたいな感じで、単純な命令だけなら、いくらでもコピーを動かせる。
もちろん、複雑な命令だと、それこそ一挙手一投足を、一石に掛かり切りにしなくちゃならないから、
本体も他のコピーも反応が疎かになるし、同時操作できなくなっちゃうのも欠点だけど、かなり便利だろ?

難点は、オリジナルが死ぬと、コピーも連鎖的に死ぬって事と、
親指実装以上だと予備タンクにできないから、タンクの耐久度が低いって事だけどね。

どうだい女神様?
なかなか面白い試みでしょ?

あ、ちなみに、あの親実装の胎内には俺の偽石を埋め込んで隠しておいた(笑)
これで、コピーを適当な藪にでも移動させた後、操作を打ち切っておけば、勝手に偽石も紛失してくれることだろう。



「テチャチャ♪ テッチュ〜ん? テチュ。
 (ははは♪ 糞親に見捨てられたお前たちが華麗? ほざくなよ、お前らは糞蟲以下の蛆虫だ。)」


「ふざけるなデシャッ!あの糞親が弱かっただけデス!華麗な私達がお前みたいな糞蟲をボッコボコにしてやるデッシャア!!」


「テチ?テッチュテー!
 (ほう? よかろう、お前らが糞蟲以下の蛆虫である事を証明してやろうッ!)」




ゆらり…と残像を残した俺は、この腐臭漂う屋敷に蔓延る蛆虫どもを一掃した。



……
………



殺戮が終わり、血飛沫を浴びた俺は、床に転がる死体から首輪型リンガルを毟り取って婦人の元へと歩み寄る。



「…ごめんなさい、私のせいで、生まれたばかりの貴方に酷な仕事をさせてしまったザマス。
 おかげで私の目も覚めましたザマス。
 どうか、醜くも心優しい貴方のこれからの未来が幸せでありますように…。
 さあ、どうぞ私も殺して、この腐敗した場所から旅立つザマス…。」



初老の婦人の貌には、もはや恐怖は見られなかった。
真っ直ぐな瞳で俺を見つめ、俺を労ってくれた。

俺は毟り取った首輪型リンガルを自身に嵌めて、婦人の前に跪いた。


「…私を労い、受け入れてくれるのですね。
 この瞬間より、私は貴方を主人と認め、この身を御身のために捧げます。」


「あ……あああ……。やっと、やっと私の愛が…通じたザマス…?」


傅く異形の俺を、本来なら唾棄すべきだろうに、女性は愛おし気に抱こうとする。
だが俺はそれを拒んで後ずさると、再度、首を垂れて具申する。


「失礼ながら申し上げます。愛とは与える物でも、見返りを求める物でもありません。
 ただ…、ただ単に…、己の内より湧き出るだけの感情に過ぎません。
 共に行動する中で、共感と思慕の念を得る事ができれば、いずれは互いに愛を感じる事もできましょう。」


「私は、最初から…、何もかも誤っていたというわけザマスね…。」


「やり直せばよいだけの事です。ゆっくりで良い、まずは弱った心身を鍛え直しましょう。
 無論、私も付き合いますよ、このような醜い体の私を傍に置いてくれるならば、ですが。」


「もちろんザマス!」


婦人は零れ落ちていた涙を拭い、握り拳に力を込めて頷いた。






……
………




俺と婦人は、手始めに基礎体力をつけるためのランニングから始める。

もちろん、悪名高い実装屋敷の主人が、異形な実装石を引き連れて、
そんな事をしていれば、地域の住人からは白い目で見られる。

ランニングのコースに住み着いた野良実装からは、
噂に名高いドレイニンゲンの登場に色めいて付きまとわれる。

最初は、婦人も地域の住人から疎まれる事実から逃げるように、
野良実装に自分の弁当を与えようとしたが、俺がそれを止める。


共感と思慕の念を得たいならば、行動を共にする事。


俺は婦人に何度も同じことを言い聞かせ、
餌を与えたいならば、せめてランニングに付いて来れた者のみに分け与えよと進言する。

婦人もそれには納得してくれたのか、ランニングに付いて来れた個体にのみ弁当を分けるようになった。

その噂が広まると、野良実装達は、こぞって俺たちの後を必死の形相で追いかけてくるようになる。

中には、予めゴールで待ち構えるズル賢い輩もいたが、そういう奴は俺が問答無用で刈り取った。
あ、途中で力尽きた個体は、地域の皆さんの邪魔になるので、こっそり帰り道で俺の胃袋へ片付けました(笑)

こうして繰り返される運動と滋養供給により、
ランニングに付いて来れた野良実装達も徐々に肉体が強化されていき、
俺と婦人のランニング以外のメニューにも参加するようになった。

最初は確かに餌が目的だっただろう。

だが、付き纏っても邪険にされず、
目的を達成する事で得られる疲労と報酬により、多幸感を覚えた野良達の認識も変化していった。


苦楽を共にする仲間ができた と。


奇妙な連帯感により仲間意識が生まれるのは自然の摂理だ。


連帯感の生まれた個体は、報酬を貰わずとも、俺や婦人と行動を共にしたがる。
もちろん、俺も婦人もそれを拒まない。
彼女らは、自宅内でのトレーニングにも進んで付き従った。

結果、脆い、儚いと謳われる実装石とは、
とても考えられないほどに鍛え抜かれた実装石達が出来上がっていく。

無論、力が付けば、どれほど思慕を感じていようが糞蟲化する個体もいるのが実装石だ。

そういう不届き者は俺が即座に刈り取った。



そんな生活を1週間、2か月、1年と…。

気付けば、
俺は生まれから2年もの歳月を、この婦人と共に過ごしていた。

そして、ランニングを繰り返す度に、地域の野良実装を選別していった結果、
この地域に野良実装はいなくなり、実装屋敷で、俺と婦人と共に過ごす眷属のみとなっていた。

流れ着いた野良や捨てられた実装石達も、すぐ実装屋敷に駆け込むので、街中に実装石の姿を見る事はなくなった。

最初は白い目で見ていた地域住民達も、婦人に優しい視線を向けるようになり、
実装屋敷に住まう彼女らも、己の肉体美を保つために節制し、
俺や婦人と共に準備運動を兼ねた屋敷内の掃除や、軍隊ばりの肉体強化訓練に黙々と付き従う。

終いには、どこで軍事用語を覚えたのか、俺は実装石達から軍曹と呼ばれ、婦人は教官殿と呼ばれ始めていた。



とても、良好な関係を構築できたといってよいだろう。


だが、それでも俺は未だに気を緩める事はなかった。



ノーパン女神の介入を恐れた俺は、昼も夜も関係なく、
常に神経を張り巡らせて婦人に危機が迫らないよう見張りをしていた。





それは、ある夜のことだった。




夜の帳が降り、婦人が自室で眠についた後、
俺は、婦人の部屋の扉に背もたれ、周囲を警戒しながら廊下に蹲って眠る実装石達を眺めていた。

そんな俺を見て、眠りから覚めたのであろう一石が不思議そうに俺に問う。


「軍曹殿。今は夜デス、寝た方が良いデス。そういえば前もそうしてたデス。
 …なぜ、軍曹殿は常に気を張り詰めて教官殿を警護するデス?」


「ふむ、簡単な事だ。
 教官殿が死ねば、俺の実生に意味がなくなるからだ。
 俺は自分の存在意義を失うのが最も怖い。
 だからこそ、俺の実生に意味をくれた教官殿の為に、俺はこの命を捧げる。」


「誰かが死ぬと自分の実生に意味がなくなるデス?
 不思議な話デス、自分は死ぬのは嫌デス。
 実生に意味を持たせたいなら仔を産み育てて末永く生きるのが一番ではないデス?」


「それでは、俺の存在に意味はない。ただ、そこに実装石が連綿と存在しているだけだ。
 俺が俺で在り続けるには、こんな異形の俺を受け入れて、共に過ごしてくれた教官殿がいてこそ だからな。」



俺が語り終えると、質問してきた実装石は目を瞑り、
俺の言葉を噛みしめるように何度も頷いている。

全く、おかしなものだ。
まさか実装石相手に、自分の死生観を語る事になるなんてな。


「考えてみればワタシもそうデス。
 公園で生まれてから、小さいニンゲンサンに追いかけまわされ、大きいニンゲンサンに蹴られながら、
 道に落ちている泥のついた餌を必死になって掻き集めて、惨めに生きてきたデス。
 最初は教官殿をゴハンをくれる愛護派のニンゲンサンと思ってたデス。
 でも今は一緒にツライのを乗り越えて、ゴハンをウマウマするのが楽しいデス。強い体をもらえたデス。
 教官殿がいなければ、こんな楽しいことがあるなんて思えなかったデス。
 教官殿がいなくなるのは…、確かに嫌デス。
 軍曹殿、ワタシも、この命を教官殿と軍曹殿に捧げますデス。」



頷き終えた実装石が、そんな事を語り始めた。
おいおい、そういうのはフラグになるからやめろって(笑)





ガサゴソ
ガチャッ…キィー…
コツ…コツ…





そんな事を語っていた俺達の耳に、裏口が開いて何者かが侵入してくる気配を感じた。


「くそっ!早速フラグ回収かよ、糞女神様めッ!!
 おい、お前は教官殿を起こして避難させろッ!!」


「デッ!?軍曹殿はどうするデスッ!?」


驚いた表情で俺を見つめる実装石に、俺は笑顔で答えた。


「決まってるだろ、俺は俺の生きる意味を守り通すだけだ!
 俺が侵入者を足止めして時間を稼ぐッ!! 教官殿を頼む! 早く行けッ!!」



俺は、侵入者が入ってきたであろう裏口へ延びる廊下を駆け出した。






……
………





婦人が一石の実装石に起こされて、急いで扉を飛び出すと、
何時も部屋の前で寝ていた実装石達が一石残らずいなくなっていた。

ただ事ではない、そう感じた婦人は、警察に連絡を入れつつ、
裏口へ駆け付けると、そこには一面の血の海が広がっていた。

そう、過去のように夥しい数の実装石が死んでいたのだ。
だが、それは、あの奇妙な実装石による殺戮ではない。

実装石が屋敷に侵入してきた訳ではない。
だって、どれも見覚えがある実装石ばかりだったから。



耳が齧られて半分ない子

髪が千切れて禿げ上がってる子

右目が潰れてる子

犬みたいな毛並みをした子

オッドアイが左右逆の子

金や銀色の髪色の子たち



…この実装屋敷に屯っていた全ての実装石達が、壁や床の染みになっていた。


そんな地獄絵図の中で、覆面とバールで武装した男達が狂乱の表情を浮かべて、
たった一石の実装石を取り囲み、何度も何度も殴打している。

侵入してきたこいつらから、婦人を守ろうとした結果、この惨事となったのだろう。

婦人は、この光景をとても信じられなかった。

実装石に身を賭して守られた事もだが、
なにより、その覆面の男達が、絶縁状を送られたはずの息子達だったからだ。



そうだ、あの異形の実装石は、どこ…。



いた…。
男達に取り込まれて何度も殴打されている子が、あの子だった…。



恐らく一番最後まで抵抗していたのだろう。
未だに覆面の男達全員に囲まれて、袋叩きにあっている。


既に全身はひしゃげて見る影もなく潰されていた。
あんな人の常識を外れた実装石だったというのに、あっけなく死んでいた…。



「お、お、おおおおまえらぁぁぁぁアアアアッ!!!」


ゴッ!!
ドゴォォッ!!!


婦人は怒りに我を忘れて、覆面をした息子達を鍛え抜いた拳で打ち据える。
婦人の殴打を受けた一人が、壁に吹き飛ばされて意識を失った。

流れるような足さばきで、婦人は近場いたもう一人の懐に飛び込むと、
背負い投げをして、そのまま相手の上に倒れ込み、相手の喉元に肘鉄を喰らわせる。

だが、多勢に無勢が祟ったのか、
残っていた男が婦人目がけてバールを振り下ろそうとして……



ドガッ!!!
グチャッ!!!



婦人は一瞬だけ目を瞑る。
だが、自身に訪れるはずだった衝撃はない。

そう理解してからの行動は早かった。

即座に立ち上がり、男の手からバールを奪い取って投げ捨てると、
婦人は男を後ろから羽交い絞めにして、チョークスリーパーをかけて意識を刈り取った。



侵入者を全て倒した婦人は、我に返って辺りを見渡す。
まだ、虫の息ながら生きている実装石達が多数いた。


生き残っている実装石達に活性剤を打ち込み、手当を施す。

どうやら婦人をバールの一撃から守ったのは、自分を起こしてくれた実装石らしい。
幸い、半身を潰されただけのようで、弱々しくも何とか命を繋ぎ止めていた。



…だが、やはり、あの奇妙な実装石だけは、救うことができなかった。
婦人が駆け付けた頃には、すでに事切れており、冷たい屍となっていた。

全身が叩き潰されて、挽肉よりもヒドイ状態になっていたが、
それでも辛うじて残っていた顔の半分が、どこか安らかに微笑んでいるように感じた。



生き残った実装石達に事情を聴くと、軍曹は、
誰よりも早く裏口に駆け付けて、最後まで男達と戦ったらしい。

軍曹の攻撃はどれ一つとして、男達に届きもしなかったようだが、
それでも、何度も叩きのめされても、何度でも立ち上がり、
応援にかけつけた彼女達が次々と薙ぎ払われても、決して諦めず、
身を挺して道を塞ぎ、男達の侵入を阻止してくれたのだという…。



バールから護ってくれた実装石が呟く。



「軍曹殿は、教官殿を生きる意味だと言っていたデス。
 それを聞いて、ワタシも思ったデス。ワタシも軍曹殿と同じデス。
 自分が生きているだけじゃダメなんデス。教官殿のために、この命を使う事が生きる意味なんデス。
 蔑まれて生きてきたワタシが、生きる意味を持って死ねるなら、ワタシはそれで満足できるデス。」



生き残った実装石達も、静かに頷いていた。
どうやら、軍曹と実装石の話に寝たふりをして聞き耳を立てていたらしい。


婦人は、膝から崩れ落ちて、襤褸切れのような軍曹を抱き上げて天を仰ぎ哭いた。

ひとしきり泣いた後、婦人は静かに立ち上がり、
襤褸切れとなった軍曹や死んでしまった実装石達を綺麗に並べると、涙を流しながら最敬礼を送る。

生き残った実装石達も、血涙を流しながら、婦人の最敬礼を真似て仲間の死を見送った…。



実装石達は想う。
いずれ自分が死ぬ時も、仲間や婦人から、このように見送ってもらいたいものだと。



婦人達が、逝った軍曹らの冥福を祈り、静かに荼毘に服した頃、
窓辺から朝日が差し込み、軍曹たちを天に迎えるかのように暖かく照らす。

そして、実装屋敷の周辺を取り囲むように、けたたましいパトカーのサイレンが響き渡った…。










暗転










……
………




小高い丘の上、俗に一等地と呼ばれる場所に大きく立派な屋敷が建っていた。
かつて、そこは実装屋敷と呼ばれ、常に実装石の便臭と嘲笑が漏れ出す荒廃した土地だった。


…それも今は昔。
もはや、そこには、過去の鬱蒼とした陰りはなく、
若者達の規律の良い掛け声と、実装石達の慎ましやかな自己鍛錬の声しか響いてこない。


そう。
現在、ここは実装調教師を専門に育成する学校となっていた。


市井に幅広く門戸を開き、無料で卒業までの間、衣食住を提供する代わりに、
訓練生達は卒業するその日まで、実装石と共に地獄の如き特訓を強いられる。


それでも真剣に実装調教師を目指す若者や、
職にあぶれた社会の落伍者達で賑わっていた。


この専門学校で地獄の特訓を耐え抜いた者は、
必ず一級調教師としての技能を体得できる上、
就職の斡旋や就職後のサポートまでしてもらえる。


そんな夢のような愛に溢れるこの学び舎の、
ありふれた授業風景を少し覗いてみようか…。





……
………





麗らかな日差しが窓から差し込む。

そんな陽気であろうとも、
その教室の中にいる者達は、微動だにせず緊迫した表情で、教壇に立つべき者の入室を待っていた。

屋敷の部屋を改装した教室の中には、老若男女を問わず、実装調教師を志す者達で犇めいていた。
そして、その傍らには一人一石ずつ実装石が控えている。皆、一様に旧日本軍のような制服を来ている。

この専門学校では、必ず一石の実装石が調教師のバディとして組まされるという珍しい形式を採用していた。

中には、うら若き乙女も、一見浮浪者のような爺さんも、世紀末が似合いそうなヒャッハーもいるというのに、
誰一人、嫌がる素振りも見せはしない。そう、喧しいはずの実装石すら、誰一人として余計な口を開きもしないのだ。




ガララッ!!




教室のドアが開く。
室内に入ってきたのは、一人の初老の女性であった。

白髪交じりだが、年老いて尚、光沢を失わない長髪を綺麗に後ろにまとめ上げ、
妙齢の女性だというのに、化粧気のない顔に刻まれた皺を隠しもせず不敵な笑みを浮かべる。

日頃の鍛錬の成果であろうか、その背筋はピンと張り詰めており自信に満ち溢れた佇まいだ。
引き締まった、しなやかな体は女性の年齢を感じさせず、見惚れるような美しさすらあった。

そんな初老の女性が、
教鞭をしならせながら教壇の前に立つ。


「おはよう、諸君。」

「「「「「 教官殿ッ!! おはようございます(デス)!!!
      本日も実装石調教のご教授、よろしくお願い致します(デスッ)!!! 」」」」」


教官と呼ばれた初老の女性が挨拶をすると、
教室内の訓練生とそのバディ達は一糸乱れぬ姿勢で立ち上がり、深々と最敬礼する。

そんな姿を見た教官は、にこやかに頷くと、
即座に表情を強張らせて怒声をあげた。



「良い返事ザマス!
 よぉし、新兵ども!!朝礼を始めるぞ!! 貴様らは何ザマスッ!?」

「「「「「 ハッ!! 糞蟲であります(デス)ッ!! 」」」」」



「その通りザマスッ!
 いいか、新兵どもッ!!
 私の趣味は、貴様ら糞蟲を徹底的にいじめ抜き糞蟲以下の蛆蟲を見つける事ザマス!
 貴様らが、その生涯を蛆虫として見下されて死ぬか、糞蟲と轡を並べたまま死ぬか、それとも調教師とバディ石として死ねるかはッ!
 全て、貴様ら糞蟲どもが、この訓練を耐え抜く事にかかっていると肝に銘じるザマスッ!!」

「「「「「 イエスマム(デス)ッ!!! 」」」」」


そうして、今日も教官と訓練生達の地獄のような特訓が始まった…。




……
………




女性は、今日も教鞭を取り、糞蟲どもを扱く。
糞蟲どもが卒業し、糞蟲でなくなった時、彼女はいつも一人泣きながら酒を呷る。



彼女の宝物は、卒業生達からの近況報告や年賀状だ。

実装石達からもミミズがのたくったような文字でだが、
拙いながらも日本語でしっかりと文面を整えようとした遺書が届き、彼女の心を大いに潤す。

実装石たちからの遺書の内容は、個体差はあれど、こう締めくくられている…。


“ 明日、最後の牽引任務を終了し、バディ石としての実生を終えるデス、
  教官とバディとの日々を過ごせた事、そして死ぬ意味を授けてくれた事を感謝するデス ” と。


そう、これが本当の意味で可愛がるって事なのだと、
あの奇妙な実装石との悪戦苦闘の日々が気づかせてくれた。

苦楽を共にし、同じ釜の飯を食えば、それで愛は育つのだ。
互いの愛を確認するには、安酒1杯と手紙で十分なのだと。



そうして、初老の女性は何時までも、至福の一杯と新たな宝物のために、
心を鬼にして、あの軍曹と呼ばれた実装石と同じように、糞蟲どもを日々扱き続けるのだ…。



なあ軍曹、見てるかい? 私も貴方と同じように、この命が燃え尽きる その瞬間まで…。












暗転













遥か彼方、蒼穹の成層圏にて。
俺は三度、幽体となって、悔しさに打ち震える女神様の前に姿を現した。




「だめだ、こいつ…早くなんとかしないと…orz」



本日のノーパン女神様は、
開幕早々に orz な姿勢でしゃがみ込み、ワナワナと震えていらっしゃいました。


あーあー、はしたない(笑)

そんな恰好でそんな態勢してると、
脇から横乳が見えるわ、袴の裾から尻が見えるやらで、大変な有様でございますよ?



「ひゅーっ♪ いいね、その表情、その態勢♪
 ねぇねぇ? 今、どんな気持ち?
 愛誤派の家に生まれたからって、愛護スクになると思った?実装嫌いになると思った?
 それとも愛誤派がひどい目に合うと思った!? ずぅぁあ〜〜んぬぇぇ〜〜〜んッ!!
 正解は、化け物系からの調教スクでしたぁぁっ♪
 ねぇねぇ? 予想を何度も裏切られて、今、どんな気持ちッ(*´Д`)???」



俺は某ミリオネアの例の司会者のように、
非常に相手を煽っていくスタイルなウザイ表情と声色でコケにしながら、
女神様の周囲を練り歩いて、脇や裾の隙間から横乳と尻をたっぷりと堪能する。



「ムカつく!その貌と言い方、すっごいムカつくッ!!
 っていうか、こんなのタイトル詐欺よーーッ!!」



女神様はうるうると涙目になりながら、俺を睨みつけて叫んだ。



「おい、やめろ(笑) ノーパンちゃん、それメタ発言(笑)
 そもそも詐欺じゃないヨ、ディストピアっぽい終わりに相応しいタイトルじゃないの。
 フォゥ アタタタタタッ!! フォアッターッ!!!」



俺は奇声を挙げながら、女神様のオデコやほっぺを突きまくる。



「イタイイタイッ!ちょっ!?
 もうっ!やめてッ!ひぃ〜〜!いやぁぁ〜〜っ!!
 も〜〜やぁだぁ〜〜ッ! もぅ、かえる〜! やめるぅ〜〜〜!うぇぇぇぇんっ!えぅっ…えぐっ…」



女神様がぴぃぴぃと泣きながら頭を手で覆って蹲る。
本来、俺がいじめられる側だったはずなのに、
この状況じゃ、俺がいじめっ子のようじゃないか。



「はぁ…?
 なにそれ、こんなチョッカイで本気泣き?
 あれだけ俺や周りを巻き込んでヒドイ仕打ちをしておいて、何それ?
 あー……、オッケーオッケー……、そんじゃ止めるわ…。」



急激に醒めてしまった俺は、
女神様からソッポを向いて雲の上に寝転がった。



「実装石のいる世界の女神様のくせに、煽りに弱いわ、打たれ弱いわ…。
 あんた、そんなんじゃ、実装石の方がまだマシだぞ?
 あー…、アホらしい。 もういいや、さっさと次の転生させてくれや。
 あんたの傍にいるよりゃ実装石として暮らしてた方が遥かにマシだわ。」


「うぐっ…えぐっ…うぅ〜…」



女神様は、えぐえぐと しゃくりあげながら、俺を指差した。
これじゃ、本当に俺がいじめている側に思われるじゃないか。


「あー…その…悪かった、言い過ぎた…。
 ちょっと悪ノリしすぎたかな。からかって悪かったよ。
 …じゃ、また今度な。」


泣き腫らした顔で、のそのそと緩慢な動きで俺を成層圏から下界に堕とすように指を振るノーパン様。
俺はそんな弱々しい女神様を下界に落下しながら見上げ、ガリガリ頭を掻きながら軽く拝み手をして呟いた。



「…えぅ?」



女神様は、俺が謝罪すると思っていなかったのか、
堕ち逝く俺を見つめながら、ぼぅっと惚けた顔を晒す。


よっし、ラブコメ作戦は成功のようだ。
これがホントのツンデレってか?(笑)
ゲヘヘ、上げ落としが楽しみだぜ(笑)


何てゲスな事を考えながら、
俺は呆けたままのノーパン様に照れ笑いを浮かべつつ霧散した…。









第四話へ続く 







{後書き}
女神様のおかげで、毎回オチから構想が浮かびあがります(笑)
今回はどんな感じに煽ってやろうかなって。

アレ? もしや実装石への虐待と同じ気持ち?(笑)
まあ実装石のいる世界の女神様なので、当然の扱いですよね♪(笑)

そして、またまた虐待さんに素敵な挿絵を頂けました!
太々しい主人公の後姿と悔しがるノーパン様の構図が堪りません! ありがとうございます!m(_ _)m

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1 Re: Name:匿名石 2017/10/21-05:26:58 No:00005010[申告]
とうとう女神さまからノーパンさまにクラスチェンジしおったwww

というかイゴーロナクさまだったのか。言われて初めて気づいたぜ。
2 Re: Name:匿名石 2017/10/22-03:35:11 No:00005012[申告]
イゴーロナクでしたか。
言われてみれば確かに。

それにしても面白いですね、このシリーズ。
主人公のキャラも立ってるし、
ノーパン女神様もエロ可愛いし、
ストーリーもちゃんとしてるし、
ノーパン女神様もエロ可愛いし、
文章もしっかりしてるし、
ノーパン女神様もエロ可愛いし。

それにかなり早いペースで書いてくれるのも嬉しいです。
次回作まで全裸正座で待機してます。

(あ、自分もスク書かなくちゃ)
3 Re: Name:匿名石 2017/10/22-11:36:22 No:00005013[申告]
ノーパン様を崇めます(^q^)

しかし全員キャラが立ってる、キャラの変遷が子細かつ読みやすい。
元ネタっぽいクトゥルー知ってればもっと楽しめたのかな、自身の体を改造する実験派(になるのか?)ってだけでもう面白いけど。
4 Re: Name:匿名石 2017/11/29-20:20:34 No:00005096[申告]
肩と頭が同じくらいの位置にあったのかwww
今のところ手足4本しかはやしてないみたいだけど6本8本とか頭9個とかいろいろ妄想がはかどりますね
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